ヴィニーロー

和名:ヴィニーロー

英名:Vinnie Roe

1998年生

黒鹿

父:ディフィニットアーティクル

母:カユ

母父:タップオンウッド

愛セントレジャーを4連覇してカルティエ賞最優秀長距離馬のタイトルも獲得した21世紀初頭の名長距離馬

競走成績:2~7歳時に愛伊仏英豪で走り通算成績29戦13勝2着4回3着5回

誕生からデビュー前まで

ヴァージニア・モーラン夫人により生産された愛国産馬で、当歳時にゴフ社が主催したノーベンバーセールに出品され、4万8千ギニーで落札された。しかしその1年後に再度ゴフ社主催のオービーセールに出品され、ギルドフォード・パブ爆破事件(英国司法当局が容疑者のアリバイを隠蔽していた冤罪事件)を描いた映画「父の祈り」でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した映画監督ジム・シェリダン氏の代理人ダーモット・K・ウェルド調教師により5万ポンドで落札された。

シェリダン氏とアントニオ・バルザリーニ氏の共同所有馬となった本馬は、シェリダン氏の甥ヴィニー・ロー氏の名前にちなんで命名され、ウェルド師の管理馬となった。多くのレースでブリンカーとシャドーロールを着用しており、それがトレードマークでもあった。主戦はパット・スマレン騎手で、本馬の29戦中28戦に騎乗した。

競走生活(2歳時)

2歳6月にレパーズタウン競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利戦でデビューした。後に愛ダービー馬ソルジャーオブフォーチュンの母となるアファイアンストが単勝オッズ3.25倍の1番人気に推されており、本馬は単勝オッズ5倍の2番人気だった。しかし直線入り口後方2番手から猛然と追い込み、ゴース寸前でアファイアンストを頭差でかわして勝ち上がった。

その後はしばらくレースに出ず、10月のベレスフォードS(愛GⅢ・T8F)で復帰した。ここではロイヤルロッジSで2着してきたターンベリーアイルが単勝オッズ1.36倍という断然の1番人気に推されており、本馬は単勝オッズ6.5倍の3番人気だった。スタートで後手を踏んだ本馬は馬群の中団後方につけ、残り2ハロン地点から追い上げてきたが、ターンベリーアイルの4馬身差3着に敗れた。

次走のリステッド競走エアフィールドS(T9F)では、単勝オッズ6倍の2番人気となった。ここでも馬群の中団につけ、残り3ハロン地点から着実に前との差を縮めてきた。残り1ハロン地点からは、後にプリティポリーS・タタソールズ金杯を勝つ牝馬リベラインとの叩き合いとなったが、リベラインを競り落として1馬身半差で勝利を収め、2歳時の成績を3戦2勝とした。

競走生活(3歳時)

3歳時は英ダービーを目指して、4月にレパーズタウン競馬場で行われたリステッド競走バリサックスS(T10F)から始動。このレースで単勝オッズ1.33倍という断然の1番人気に支持されていたのは、デビュー戦を14馬身差という非常識な大差で勝っていた良血馬ガリレオであり、本馬は単勝オッズ6倍の2番人気だった。本馬は馬群の中団後方につけ、直線入り口6番手から追い上げてきたが、ガリレオだけでなく、単勝オッズ8倍の3番人気だった後の英セントレジャー馬ミランを捕らえる事にも失敗し、勝ったガリレオから4馬身半差、2着ミランから1馬身差の3着に敗れた。

次走のデリンズタウンスタッドダービートライアルS(愛GⅢ・T10F)でも、ガリレオと顔を合わせた。ガリレオが単勝オッズ1.53倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ11倍の3番人気に落ちていた。レースでは直線入り口最後方から末脚に賭けたが不発に終わり、勝ったガリレオから4馬身差の4着に敗れた。

この時点で陣営は1か月後の英ダービーは諦めたようで、その2週間前に行われる伊ダービー(伊GⅠ・T2400m)に本馬を向かわせた。ここでは、ドクトルブッシュ記念を7馬身差で圧勝してきた独国調教馬ライムリックボーイと並んで単勝オッズ4.5倍の1番人気に支持された。しかしこのレースだけ手綱を取ったT・クイン騎手騎乗の本馬は直線入り口5番手から伸びずに、モルシュディの6馬身1/4差4着と完敗した(2着にはこの時点では無名だった後のジャパンC馬ファルブラヴが入った)。

本国に戻って愛ダービー(愛GⅠ・T12F)には出走したが、ここで単勝オッズ1.36倍という圧倒的な人気を集めていたのは英ダービーを圧勝してきたガリレオで、本馬は単勝オッズ67倍の7番人気と蚊帳の外だった。レースでは馬群の中団後方を追走したが、直線で見せ場を作る事はできず、2着に入ったモルシュディにも再び屈して、勝ったガリレオから11馬身差の7着に沈んだ。

陣営は本馬を長距離路線に進ませる事にしたようで、次走は愛ダービーの20日後にレパーズタウン競馬場で行われたリステッド競走チャレンジS(T14F)となった。ここでは単勝オッズ2.875倍の1番人気に支持されると、3番手追走から直線ですんなりと抜け出し、2着サドラーズウイングスに4馬身差で圧勝した。

次走のリステッド競走バリカレンS(T14F)では、愛ダービーで本馬に3馬身先着する4着に入っていたピュージンと顔を合わせた。本馬より3ポンド斤量が軽いピュージンが単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ2.75倍の2番人気だった。道中は馬群の中団を進み、レース中盤で進出を開始。そして直線に入ると前を行くピュージンに並びかけて叩き合いに持ち込み、最後は頭差で競り勝った。愛ダービーとは順位が逆転した事により、本馬の長距離適性が示される形となった。

続いてバリカレンSと同コースで行われる愛セントレジャー(愛GⅠ・T14F)に出走。前年の英セントレジャー馬ミレナリー、ヨークシャーCを勝っていた後の凱旋門賞馬マリエンバード、アスコット金杯で2着した後にグッドウッドC・ロンズデールSを連勝してきたパーシャンパンチなどの強敵が相手となった。ミレナリーが単勝オッズ3.25倍の1番人気、マリエンバードが単勝オッズ3.5倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ6倍の3番人気だった。レースでは好位追走から残り4ハロン地点でスパートを開始。ミレナリーを残り1ハロン地点で差し切り、最後は2馬身差をつけて勝利した。

さらに仏国遠征してロワイヤルオーク賞(仏GⅠ・T3100m)に出走。ショードネイ賞を勝ってきたワリードが単勝オッズ2.8倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ4.7倍の2番人気、前走カドラン賞を2着ジェネリックに6馬身差で勝ってきたジェルミニスが単勝オッズ5.3倍の3番人気となった。レースでは馬群の中団を追走し、3番手で直線に入ってきた。そして1番人気のワリードが馬群に沈むのを尻目に残り2ハロン地点で先頭に立つと、ゴール前で右側によれながらも、2着ジェネリックに2馬身半差で勝利した。

1993年に愛セントレジャーを勝った管理馬ヴィンテージクロップを豪州に遠征させてメルボルンCを勝ち取った経験があるウェルド師は、本馬も豪州に遠征させてメルボルンCに出走させる事を考えた。しかし豪州まで28時間を要する長距離輸送はまだ3歳の本馬には負担が大きい(ヴィンテージクロップの遠征は6歳時)と判断したウェルド師はこの年の遠征を断念した。

3歳時の成績は7戦4勝、長距離GⅠ競走で2勝を挙げたのだが、カルティエ賞最優秀長距離馬の座は、7戦2勝でGⅠ競走勝ちが無いパーシャンパンチに奪われてしまった。この年に既に8歳だったパーシャンパンチは長年に渡り欧州長距離路線を賑わせていた人気馬であり、その人気に屈したような結果だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は5月にレパーズタウン競馬場で行われたリステッド競走サヴァルベグS(T14F)から始動。141ポンドというトップハンデを課されたせいか、単勝オッズ3倍の2番人気に留まった(単勝オッズ2.5倍の1番人気は、後に障害に転向してGⅠ競走バリーモアプロパティーズチャンピオンステイヤーズハードルを勝つホーリーオーダーズ)。しかし直線で瞬く間に先行馬勢を差し切り、2着クリンプヒルに4馬身差で楽勝した。

続いてアスコット金杯(英GⅠ・T20F)に出走。ヴィコンテスヴィジェ賞の勝利でロワイヤルオーク賞最下位の汚名を払拭してきたワリード、後のグッドウッドC勝ち馬ジャーディンズルックアウト、4年前のカドラン賞勝ち馬インヴァーマーク、パーシャンパンチ、前年の覇者ロイヤルレベルなどを抑えて、単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持された。今回も馬群の中団を進み、直線入り口でスパートを開始。残り1ハロン地点でロイヤルレベルをかわして先頭に立ったのだが、ここから粘りを見せたロイヤルレベルに差し返されて首差2着に惜敗した。

その後は2か月後のリステッド競走バリローンS(T12F)に出走。140ポンドのトップハンデが課されたが、単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。例によって中団を進み、直線入り口2番手から残り1ハロン地点で先頭に立った。ここで18ポンドのハンデを与えたミルストリートが食い下がってきたが、半馬身差で勝利を収めた。

そしてこれをステップに愛セントレジャー(愛GⅠ・T14F)に出走。プリンセスオブウェールズSで勝ち鞍を増やしてきたミレナリー、次走の加国際Sを勝つバリンガリー、バリカレンSを勝ってきたピュージン、愛オークス馬マルガルラ、後にコロネーションCとバーデン大賞を2連覇するウォーサンなどを抑えて、単勝オッズ1.57倍の1番人気に支持された。ここでは3番手の好位を追走し、直線に入るとピュージンをかわして先頭に立った。そして粘る2着ピュージンに1馬身半差で勝利を収め、1993・94年のヴィンテージクロップ、1996・97年のオスカーシンドラー、1998・99年のカイフタラに次ぐ史上4頭目の同競走2連覇を果たした。レース後にウェルド師は本馬を「私がかつて調教した中で最も勇敢で頑健な馬」と評した。

この言葉がゴーサインだったのか、その後は長距離輸送を経て豪州に渡り、メルボルンC(豪GⅠ・T3200m)に出走した。59kgのトップハンデを課されたが、単勝オッズ5.5倍の1番人気に支持された。レースでは23頭立ての多頭数の中で10番手を追走。直線に入ると残り2ハロン地点で先頭に立って粘り込みを図ったが、同厩のメディアパズルに差されると後退し、メディアパズルの3馬身半差4着に敗退。ウェルド師は「馬場が堅すぎました。また戻ってきます。」と語った。

この年は5戦3勝の成績で、GⅠ競走勝ちは前年より少ない1勝だったが、それでも前年は逃したカルティエ賞最優秀長距離馬を受賞した。

競走生活(5歳時)

5歳時は前年勝てなかったアスコット金杯が当初の目標だったが、復帰が遅れてしまい、シーズン初戦は8月のバリローンS(T12F)となった。140ポンドのトップハンデが課せられたが、それでも単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。レースでは直線入り口5番手から追い込み、17ポンドのハンデを与えた2着カルパネットをゴール直前で頭差かわして勝利した。

そしてこれを叩き台に愛セントレジャー(愛GⅠ・T14F)に出走。しかし本馬の3連覇を阻むべく、前年の英セントレジャー馬ボーリンエリック、前走グレートヴォルティジュールSでこの年の英セントレジャー馬ブライアンボルを破ってきたパワーズコート(後のタタソールズ金杯・アーリントンミリオンS勝ち馬)の2頭が挑戦してきた。ボーリンエリックが単勝オッズ2.875倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ3倍の2番人気、パワーズコートが単勝オッズ3.75倍の3番人気となった。スタートから単勝オッズ9倍の4番人気馬ガマットが逃げて、本馬は3番手を追走。そのまま直線に入ると、逃げるガマットを残り1ハロン半地点でかわして、そのまま2着ガマットに1馬身差で勝利し、史上初の愛セントレジャー3連覇を果たした。

その後は再度豪州遠征するのではと噂されたが、陣営はこの年は豪州遠征を行わず、本馬を仏国に送った。そして出走したのは凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)だった。英ダービー・愛ダービー・BCターフ・愛チャンピオンS・レーシングポストトロフィーなどの勝ち馬ハイシャパラル、リュパン賞・仏ダービー・クリテリウム国際などの勝ち馬ダラカニ、後のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS勝ち馬ドワイエン、英ダービー馬クリスキン、サンクルー大賞2回・香港ヴァーズの勝ち馬アンジュガブリエル、独ダービー馬ダイジン、伊ジョッキークラブ大賞・タタソールズ金杯の勝ち馬ブラックサムベラミー、愛セントレジャーで4着だったボーリンエリックなどが出走しており、本馬は単勝オッズ12倍の5番人気だった。レースでは馬群の中団好位を追走し、最終コーナーで上がっていった。さすがに直線のスピード勝負では分が悪く、ダラカニの8馬身3/4差5着に敗れたが、ブラックサムベラミー(6着)、ダイジン(7着)、ボーリンエリック(8着)、アンジュガブリエル(9着)、クリスキン(11着)などには先着した。

そのまま仏国に留まり、3週間後のロワイヤルオーク賞(仏GⅠ・T3100m)に出走した。カドラン賞を勝ってきたウェスターナー、ショードネイ賞勝ち馬ベーカラ、2年前のカドラン賞勝ち馬で前走カドラン賞2着のジェルミニスなどを抑えて、単勝オッズ3.1倍の1番人気に支持された。レースでは中団を追走し、3番手で直線に入ると残り400m地点で先頭に並びかけた。しかしここから伸びを欠き、ウェスターナーの4馬身半差4着に敗れた。

5歳時の成績は4戦2勝だった。この年のカルティエ賞最優秀長距離馬は、10歳にしてグッドウッドC・ドンカスターCを勝ち、アスコット金杯で2着したパーシャンパンチが、やはりGⅠ競走未勝利ながらも2度目の受賞を果たしている。

競走生活(6歳時)

6歳時も現役を続け、5月のサヴァルベグS(T14F)から始動した。142ポンドのトップハンデが課せられたが、単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。しかし後続を1ハロンも引き離す大逃げを打った単勝オッズ15倍の最低人気馬ウインダミアを捕まえられずに4馬身半差2着に敗れ、アスコット金杯は回避した。

その後は愛セントレジャー4連覇を目指して、前年同様にバリローンS(T12F)に出走。やはり140ポンドのトップハンデだったが、単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。しかし馬群の中団から直線で末脚を伸ばすも、ゴール前で単勝オッズ8倍の4番人気馬フォーリンアフェアーズに競り負けて首差2着に終わった。

そして迎えた愛セントレジャー(愛GⅠ・T14F)では、前年の英セントレジャー馬ブライアンボル、前走のマーチSを11馬身差で圧勝してきたオレンジタッチ、ロンズデールSを勝ってきたファーストチャーターなどが対戦相手となった。本馬とブライアンボルが並んで単勝オッズ4.5倍の1番人気となった。冷たい雨が降りしきる中で行われたレースでは、逃げ馬を見る形で先行し、直線に入ると残り2ハロン地点で先頭に立った。そして観衆の大喝采に迎えられながら、ブライアンボルを2馬身半差の2着に下して完勝し、愛セントレジャー4連覇の偉業を見事に成し遂げた。

その後は再度豪州に渡ってメルボルンC(豪GⅠ・T3200m)に出走した。やはりトップハンデの58kgを課されたが、前年の覇者である牝馬マカイビーディーヴァは56kgであり、牡牝の差を考慮すると互角の条件だった。馬場が堅かったためにウェルド師は直前まで出走を決めかねていたようだが、大雨で馬場が柔らかくなったために出走を決めた。マカイビーディーヴァが単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ7倍の2番人気、メディアパズルが単勝オッズ10倍の3番人気となった。レースでは馬群の中団好位を進み、直線では馬場の真ん中を進出してきたが、内側から先に抜け出したマカイビーディーヴァに届かず1馬身1/4差の2着に敗れた。6歳時の成績は4戦1勝だった。

競走生活(7歳時)

7歳時も現役を続行し、やはりサヴァルベグS(T14F)から始動した。例によって142ポンドのトップハンデとなったが、単勝オッズ1.73倍の1番人気に応えて、好位追走から直線で抜け出し、2着ムタカリムに1馬身半差で勝利を収めた。

そして3年ぶりにアスコット金杯(英GⅠ・T20F)に参戦した(アスコット競馬場が改修中だったため、この年はヨーク競馬場で行われた)。このレースは、前年にカドラン賞とロワイヤルオーク賞を共に連覇してカルティエ賞最優秀長距離馬に選ばれたウェスターナー、前年のアスコット金杯を制したパピノーとの、欧州長距離頂上決戦となった。ウェスターナーが単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ5.5倍の2番人気、パピノーが単勝オッズ7倍の3番人気となった。しかし先行するも直線で伸びずにウェスターナーの5馬身1/4差3着と完敗してしまった。レース後にウェルド師とスマレン騎手は口を揃えて、この距離は本馬には長かった旨を語っている。

その後はバリローンSを叩いて愛セントレジャーへ向かうお馴染みの日程を採用。バリローンS(T12F)には、愛ダービーでハリケーンランの3着だったシャラプールが出走してきた。本馬より18ポンドも斤量が軽かったシャラプールが単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ2.375倍の2番人気となった。レースでも好位から進出してきたこの2頭が直線で争っていたが、そこへ後方から突っ込んできたチェルシーローズに2頭まとめて差された。本馬はシャラプールにも競り負けて、チェルシーローズの2馬身1/4差3着に終わった。しかも軽い負傷によって調教を中断するアクシデントもあった。

それでも5連覇を目指して愛セントレジャー(愛GⅠ・T14F)に参戦。英ダービーに出ていれば勝てたのではと言われたコロネーションC勝ち馬イェーツ(後にアスコット金杯4連覇を果たし4年連続でカルティエ賞最優秀長距離馬に選出されている)、シャラプール、一昨年の愛セントレジャー2着後にサンクルー大賞・ジョッキークラブS・プリンセスオブウェールズSを勝っていたガマット、障害競走から平地競走に転向してゲルリング賞を勝っていたコリアーヒルなどが対戦相手となった。本馬とイェーツが並んで単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持された。ここでは3番手の好位を追走し、直線に入ると残り2ハロン地点で先頭に立った。これで5連覇が成ったかと思われたのだが、本馬の直後から上がってきた単勝オッズ11倍の4番人気馬コリアーヒルと単勝オッズ34倍の8番人気馬ザホイッスリングティールの2頭にゴール前で差されてしまい、コリアーヒルの1馬身差3着に敗退。5連覇の偉業は成らなかった。

このレース後に本馬はクールモアグループによって購入され、競走馬引退後はクールモアで種牡馬入りする事が決定した。

その後は三度豪州に遠征してメルボルンC(豪GⅠ・T3200m)に挑戦することになった。しかし空輸中に疝痛を起こして治療を受けるなど、状態は良くなかった。それでも出走には踏み切ったが、マカイビーディーヴァと共にトップハンデの58kgを背負っての出走となった(牡牝の差を考慮すると実質的には斤量2位)。しかし単勝オッズ4.4倍で1番人気のマカイビーディーヴァとは対照的に、単勝オッズ16倍の5番人気止まりだった。レースでは馬群の中団後方から直線で末脚を伸ばしてきたが、突き抜けるほどの勢いは無く、3連覇を果たしたマカイビーディーヴァの5馬身1/4差8着に終わり、このレースを最後に7歳時5戦1勝の成績で現役引退となった。

血統

Definite Article Indian Ridge Ahonoora Lorenzaccio Klairon
Phoenissa
Helen Nichols Martial
Quaker Girl
Hillbrow Swing Easy Delta Judge
Free Flowing
Golden City スカイマスター
West Shaw
Summer Fashion Moorestyle Manacle Sing Sing
Hard and Fast
Guiding Star SWE Reliance
Star of Bethlehem
My Candy Lorenzaccio Klairon
Phoenissa
Candy Gift Princely Gift
Kandy Sauce
Kayu タップオンウッド Sallust Pall Mall Palestine
Malapert
Bandarilla マタドア
Interval
Cat o'Mountaine Ragusa Ribot
Fantan
Marie Elizabeth Mazarin
Miss Honor
Ladytown イングリッシュプリンス Petingo Petition
Alcazar
English Miss Bois Roussel
Virelle
Supreme Lady Grey Sovereign Nasrullah
Kong
Ulupi's Sister Combat
Puff Adder

父ディフィニットアーティクルは快速自慢の名種牡馬インディアンリッジの息子で、現役成績は11戦5勝。愛ナショナルS(愛GⅠ)・タタソールズ金杯(愛GⅡ)を勝ち、愛ダービー(愛GⅠ)でウイングドラヴの短頭差2着している。ディフィニットアーティクルの母父ムーアスタイルは欧州短距離路線でGⅠ競走4勝を挙げた馬であるし、祖母の父はインディアンリッジの父方の祖父ロレンザッチオ、曾祖母の父はプリンスリーギフトと、血統的にはどこを切っても短距離向きなのだが、その割には長い距離でも活躍した馬だった。種牡馬としては本馬以外にGⅠ競走勝ち馬を出していない。

母カユは双子で産まれたためなのか、競走馬としては不出走に終わっている。繁殖牝馬としては本馬以外にも5頭の勝ち上がり馬を産んでおり、成功している。カユの双子の妹ピースインザウッズもやはり不出走だが繁殖入りしており、孫にホーマイク【スプリントS(英GⅢ)】が出ている。サラブレッド血統界では双子で産まれた馬は成功しないとよく言われる(そのため出産前に片方の子を殺してしまうのが一般的)が、果たしてそれは科学的根拠があるのだろうか。筆者なりに調べてみたが、筆者を納得させる理由を示している文献は見つけられなかった。→牝系:F19号族②

母父タップオンウッドはリッジウッドパールの項を参照。

本馬の血統構成は、BCマイルなどマイルGⅠ競走4勝を挙げた名牝リッジウッドパール(父インディアンリッジ×母父タップオンウッド)にかなり近いが、それにも関わらず距離適性がここまで違ってしまうのだから血統は奥が深い。カユとピースインザウッズの母レディタウンの半兄エムロルシャンは愛セントレジャー・バーデン大賞の勝ち馬であり、遠縁には長距離馬が多いが近親にはいないリッジウッドパールと比べると本馬のほうが長距離向きの母系であるのは確かではある。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はクールモアグループが所有する愛国グランジスタッドで障害競走用種牡馬となった。2015年の種付け料は2000ポンドとなっている。

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