ディミニュエンド

和名:ディミニュエンド

英名:Diminuendo

1985年生

栗毛

父:ダイイシス

母:キャクティ

母父:トムロルフ

抜群の瞬発力を武器に英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークスを連勝して1988年の欧州3歳牝馬最強の称号を得る

競走成績:2・3歳時に愛英仏で走り通算成績12戦8勝2着2回3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州の馬産家ナンシー・S・ディルマン女史(後にエクリプス賞年度代表馬ハヴァードグレイスも生産している)により生産された米国産馬で、ドバイのシェイク・モハメド殿下に購入され、英国ヘンリー・リチャード・アマースト・セシル調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳6月にレスター競馬場で行われた未勝利ステークスでウィリー・ライアン騎手を鞍上にデビュー。スタートは悪かったが、ゴールした時には2着馬に10馬身差をつけていた。その2週間後にはニューマーケット競馬場に移動して、イーウォースタッドファームS(T6F)に出走。そして2馬身半差で勝利した。さらにその10日後にはチェリーヒントンS(英GⅢ・T6F)に出走。後にミルリーフS・コロネーションSを勝つマジックオブライフという強敵が対戦相手となったが、主戦となるスティーブ・コーゼン騎手を鞍上に迎えた本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持された。そしてマジックオブライフを1馬身半差の2着に退けて、1分11秒32のコースレコード勝ちを収めた。

その後は一間隔を空けて、9月のフィリーズマイル(英GⅡ・T8F)に出走した。翌月にマルセルブサック賞を勝利するアシェイアーなどが対戦相手となったが、本馬が単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。そして2着ハイアティに2馬身差、3着アシェイアーにはさらに3/4馬身差をつけて勝利した。2歳時は4戦全勝の成績を挙げた本馬だが、管理するセシル師は、この年の本馬は本調子ではなかったと感じていたという。

競走生活(3歳前半)

3歳時はニューマーケット競馬場で行われたネルグウィンS(英GⅢ・T7F)から始動した。ロウザーSの勝ち馬でチェヴァリーパークSで3着していた後のナッソーSの勝ち馬エラロマラ、後にEPテイラーSを勝つサドンラヴなどを抑えて、単勝オッズ2.75倍の1番人気に支持された。レース序盤は後方につけ、残り1ハロン地点から豪快に追い上げてきたが、先に抜け出した単勝オッズ6.5倍の3番人気馬ガリバ(本馬より斤量が5ポンド軽かった)に3/4馬身届かず2着に敗れた。

次走の英1000ギニー(英GⅠ・T8F)では、ガリバ、前走4着のエラロマラ、チェヴァリーパークS・アランベール賞の勝ち馬ラヴィネラ、チェリーヒントンS2着後にプリンセスマーガレットSで3着してミルリーフSを勝っていたマジックオブライフ、フィリーズマイル・ナッソーS勝ち馬アクリマティスの半妹という期待馬ダバウェヤー、プリンセスマーガレットS・フレッドダーリンSの勝ち馬ブルーブック、カンデラブラSの勝ち馬オベアなどが対戦相手となった。ラヴィネラが単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ7倍の2番人気だった。今回は前走と異なりスタートから積極的に先行して、レース中盤で早くも先頭に立った。しかし後方から追い上げてきたラヴィネラに差された上に、先行したダバウェヤーにも差し返されて、勝ったラヴィネラから3馬身差の3着だった。

その後は英オークスに直行せず、ムシドラS(英GⅢ・T10F110Y)に出走した。これといって目立つ対戦相手はおらず、本馬が単勝オッズ1.62倍の1番人気に支持された。ここでは逃げるプリンセスジェニスタを見る形で3番手を追走し、直線に入って早々に先頭に立つと、そのまま2着エーエスエルに4馬身差をつけて圧勝した。

次走が英オークス(英GⅠ・T12F)となった。英1000ギニーの後に仏1000ギニー・コロネーションSとマイル路線に向かったラヴィネラ(仏1000ギニーは勝ち、コロネーションSはマジックオブライフの3着だった)は不在であり、英1000ギニー2着馬ダバウェヤー、クレオパトル賞の勝ち馬で後にヴェルメイユ賞を勝つインディアンローズ、ネルグウィンS3着後にサーチャールズクロア記念Sを勝ってきたサドンラヴ、クレオパトル賞2着馬で後にマルレ賞を勝つアニマトリス、アサシSで2着してきたカティナ、サラマンドル賞・ロウザーS3着馬で後にリブルスデールSを勝つミスボニフェイスなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.75倍の1番人気に支持され、ダバウェヤーが単勝オッズ5倍の2番人気、インディアンローズが単勝オッズ5.5倍の3番人気、サドンラヴが単勝オッズ6.5倍の4番人気となった。スタートが切られるとアトロパやサンデースポーツスターが先頭に立ち、本馬は馬群の中団を追走した。そして加速しながらタッテナムコーナーを回って6番手で直線に入ってきた。そしてすぐにスパートすると瞬く間に前との差を縮めて、残り2ハロン地点手前で先頭に立った。そして一気に突き抜けて、2着サドンラヴに4馬身差(筆者が映像を見ると6馬身程度の着差に思える)をつけて楽勝した。

続く愛オークス(愛GⅠ・T12F)では、愛1000ギニー2着馬ダンシングゴッデス(日本で札幌記念・神戸新聞杯・函館記念・オールカマーに勝ったエアエミネムの祖母)、英オークス8着後にリブルスデールSを勝ってきたミスボニフェイス、伊オークス馬メロディスト、グロット賞の勝ち馬シルバーレーン(日本でGⅠ競走を勝ったブラックホークやピンクカメオの母)、プリティポリーSで3着してきたアードグレンなどとの対戦となった。本馬が単勝オッズ1.22倍という圧倒的な1番人気に支持され、オペラ賞・フォレ賞などを勝ち愛オークスで2着した名牝プロデューサーの娘であるダンシングゴッデスが単勝オッズ9倍の2番人気、ミスボニフェイスが単勝オッズ11倍の3番人気、メロディストが単勝オッズ12倍の4番人気となった。スタートが切られるとミスボニフェイスやダンスレネーが先頭を引っ張り、メロディストがそれを追って3番手、本馬は今回も馬群の中団を追走した。そして5番手で直線を向くと、残り2ハロン地点からスパートして、先を行くメロディストに並びかけた。しかしここからメロディストも素晴らしい粘りを発揮して叩き合いに持ち込んできた。ゴールラインを通過するまで続いた2頭の一騎打ちは、写真判定でも着差を確定できずに、同着勝利という結果となった。メロディストもモハメド殿下の所有馬だったため、殿下にとってはこれ以上無いほどの好結果となった。

競走生活(3歳後半)

次走のヨークシャーオークス(英GⅠ・T12F)では、英オークス2着後にナッソーSでも2着してきたサドンラヴ、ランカシャーオークスを勝ってきたアンダリーブ、愛オークス4着後に出走したナッソーSでは7着最下位だったミスボニフェイスなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気に支持され、サドンラヴが単勝オッズ7.5倍の2番人気、アンダリーブが単勝オッズ10倍の3番人気となった。スタートが切られると英オークスでも逃げを打ったサンデースポーツスターが先頭に立ち、一応の対抗格だったサドンラヴは中団につけた。一方の本馬はここでは最後方を追走していたが、直線に入ると速やかに他馬との差を詰めていった。そして残り2ハロン地点で先頭に立つと、そのまま2着サドンラヴを5馬身ちぎって勝利。まったく危なげのない内容だった。

牝馬相手に敵無しとなった本馬は、英セントレジャー(英GⅠ・T14F127Y)で初めて牡馬に挑んだ。対戦相手はキングエドワードⅦ世S・グレートヴォルティジュールSを連勝してきたシェリフズスター(言わずと知れたセイウンスカイの父)、ゴードンS・ニューマーケットSの勝ち馬ミンスターサン、ジェフリーフリアSを勝ってきたトップクラス、ザファラン、後にグッドウッドCを勝ちアスコット金杯で2着するマッツァカノ(ティンバーカントリーの半兄)の5頭の牡馬だけだった。ここではコーゼン騎手が怪我で騎乗できなかったため、ウォルター・スウィンバーン騎手とコンビを組んだ。乗り代わりと初の牡馬相手の競走にも関わらず本馬が単勝オッズ1.57倍の1番人気に支持され、シェリフズスターが単勝オッズ4.5倍の2番人気、ミンスターサンが単勝オッズ8.5倍の3番人気となった。スタートが切られるとマッツァカノが逃げを打ち、ミンスターサンやザファランがそれを追って先行。一方の本馬はここでも徹底した後方待機策を採り、離れた最後方を追走した。そして直線に入ってしばらくしたところでスパートしたが、ゴール前で脚色が鈍ってしまい、先に抜け出していたミンスターサンに1馬身届かず2着までだった。

当初の予定では英セントレジャーを最後に引退する予定だったが、陣営は方針を転換して、本馬を仏国に向かわせ、凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に出走させた。エクリプスS2回・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・プリンスオブウェールズS2回・ブリガディアジェラードS・セレクトSの勝ち馬ムトト、英ダービー・愛ダービー・リングフィールドダービートライアルSの勝ち馬でニエル賞2着のカヤージ、英オークス4着後にヴェルメイユ賞を勝ってきたインディアンローズ、伊共和国大統領賞2回・ミラノ大賞2回・伊ジョッキークラブ大賞の勝ち馬で前年の凱旋門賞で2着していた伊国最強馬トニービン、仏グランクリテリウム・パリ大賞・ニエル賞の勝ち馬でジャンプラ賞2着のフィジャータンゴ、プリンセスオブウェールズS・チェスターヴァーズの勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS2着のアンフワイン、プリティポリーS・愛セントレジャーの勝ち馬ダークロモンド、サンクルー大賞・コンセイユドパリ賞・アルクール賞・エクスビュリ賞の勝ち馬で前年のBCターフ3着のヴィレッジスター、マルセルブサック賞・愛2000ギニー・英チャンピオンS2回・ガネー賞・コロネーションC2回・英国際S・愛チャンピオンSとGⅠ競走を9勝していたトリプティクなどが出走しており、かなり高レベルな凱旋門賞となった。引き続きスウィンバーン騎手とコンビを組んだ本馬は、ムトト、カヤージに次ぐ3番人気の評価を受けた。過去に本馬が出走してきたどのレースよりも多い24頭立ての多頭数だったためか、今回はいつもの後方待機策ではなく、好位につけた。そして4番手で直線に入ってきたが、ここから今ひとつ伸びず、勝ったトニービンから6馬身3/4差10着に敗れた。英セントレジャーから凱旋門賞という鬼門とも言える日程だったのも影響したのかもしれない。このレースを最後に、3歳時8戦4勝の成績で競走馬引退となった。

血統

Diesis Sharpen Up エタン Native Dancer Polynesian
Geisha
Mixed Marriage Tudor Minstrel
Persian Maid
Rocchetta Rockefella Hyperion
Rockfel
Chambiges Majano
Chanterelle
Doubly Sure Reliance Tantieme Deux-Pour-Cent
Terka
Relance Relic
Polaire
Soft Angels Crepello Donatello
Crepuscule
Sweet Angel Honeyway
No Angel
Cacti Tom Rolfe Ribot Tenerani Bellini
Tofanella
Romanella El Greco
Barbara Burrini
Pocahontas Roman Sir Gallahad
Buckup
How Princequillo
The Squaw
Desert Love Amerigo Nearco Pharos
Nogara
Sanlinea Precipitation
Sun Helmet
Desert Vision Roman Sir Gallahad
Buckup
Desert Sun Hyperion
Brulette

ダイイシスは当馬の項を参照。本馬は父の初年度産駒。

母キャクティは米国で走り24戦1勝。本馬の全妹プリケット【2着英オークス(英GⅠ)】も産んでいる。本馬の半姉シスターソフィー(父エファーヴェシング)の子にはポートルカヤ【ヴィットリオディカプア賞(伊GⅠ)・デュッセルドルフ大賞(独GⅡ)・バーデナーマイレ(独GⅢ)】、曾孫にはドームサイド【ヴィコンテスヴィジェ賞(仏GⅡ)・グラディアトゥール賞(仏GⅢ)】がいる。キャクティの半妹デザーテッド(父ササフラ)は本邦輸入繁殖牝馬。日本ではその子孫から活躍馬が出ていないが、孫のヒーローズサンがブラジルで走ってベントゴンサルヴェス大賞(伯GⅠ)を2連覇している。キャクティの母デザートラヴはヴァニティH・ポストデブSの勝ち馬で、デザートラヴの半妹にはデザートロウ【ミレイディH・ヴァニティH】、半弟にはアストレイ【サンルイレイS(米GⅠ)・サンフアンカピストラーノ招待H(米GⅠ)・センチュリーH (米GⅠ)】がいる他、デザートラヴの半妹デザートフライトの玄孫には日本で走ったメイショウドメニカ【福島記念(GⅢ)】がいる。近親とは言い難いが、ヴェイグリーノーブルオールアロングの両凱旋門賞馬は同じ牝系に属する。→牝系:F1号族①

母父トムロルフは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、モハメド殿下が所有する米国ケンタッキー州ダーレースタッドで繁殖入りした。母としては9頭の子を産んだが、勝ち星を挙げたのは、2番子の牡駒カーパシアン(父ダンチヒ)、6番子の牝駒カランド(父ストームキャット)、9番子の牡駒ナイツヴィクトリー(父ケープクロス)の3頭のみ。ステークス競走を勝ったのはメイヒルS(英GⅢ)を勝ち、フィリーズマイル(英GⅠ)で2着したカランドの1頭のみと、繁殖牝馬としては今ひとつだった。2010年に25歳で他界した。

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