エクセレブレーション

和名:エクセレブレーション

英名:Excelebration

2008年生

鹿毛

父:エクシードアンドエクセル

母:サンシャワー

母父:インディアンリッジ

同世代にフランケルがいなければ歴史的名マイラーの称号を獲得していたはずの、産まれた時期を間違えた名マイラー

競走成績:2~4歳時に英独仏愛米で走り通算成績15戦8勝2着4回3着1回

誕生からデビュー前まで

愛国オーウェンズタウンスタッドの生産馬で、1歳時に2万ユーロで購入されてジュリアーノ・マンフレディーニ氏の所有馬となり、2006年に英国ニューマーケットで開業した伊国出身の調教師マルコ・ボッティ師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳5月にノッティンガム競馬場で行われた芝6ハロン15ヤードの未勝利ステークスで、キーレン・ファロン騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ3.75倍で11頭立ての1番人気に支持された。しかしスタートで出遅れてしまい、2ハロンほど走ったところで早くもスパートするも、残り1ハロン地点で失速して、勝った2番人気馬プラネットウェイブスから7馬身3/4差の4着に敗れた。

次走は6月にドンカスター競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスだった。今回はネイル・キャラン騎手とコンビを組み、単勝オッズ1.67倍の1番人気に支持された。スタート直後に他馬に接触されて後手を踏んでしまったが、すぐに馬群に取り付くと、残り2ハロン地点で先頭に立って後続を引き離しにかかった。そして残り1ハロン地点で右側によれながらも末脚を伸ばし続け、2着ベルギーアンビルに2馬身半差をつけて勝利した。

その後は7月のスポーティングベットドットコム条件S(T6F)に向かった。今回はダレル・ホランド騎手とコンビを組み、単勝オッズ1.83倍の1番人気に支持された。レースでは馬群の中団につけると残り2ハロン地点で抜け出そうとした。一瞬進路が塞がる場面もあったが、残り1ハロン地点で先頭に立つと、2着ポアンドジュウルに2馬身差をつけて勝利した。2歳時は3戦2勝の成績だった。

競走生活(3歳時)

3歳時は4月のグリーナムS(英GⅢ・T7F)から始動した。このレースは、前年にデューハーストS・ロイヤルロッジSなど4戦全勝の成績でカルティエ賞最優秀2歳牡馬に選ばれたフランケルの3歳初戦でもあった。超大物の誉れ高かったフランケルが単勝オッズ1.25倍の1番人気に支持される一方で、主戦となるアダム・カービー騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ26倍で6頭立ての5番人気だった。スタートが切られるとフランケルの同厩馬ピクチャーエディターが先頭に立ち、フランケルと本馬は先行した。残り3ハロン地点でフランケルが先頭に立つと、本馬もスパートを開始。残り2ハロン地点でフランケルが少しもたついている間に並びかけていった。しかし体勢を立て直したフランケルがすぐに本馬を突き放していった。本馬は3着シュロップシャーには6馬身差をつけたものの、フランケルからは4馬身差をつけられて2着に敗れた。

英2000ギニーを諦めた陣営は本馬を独国に派遣し、独2000ギニー(独GⅡ・T1600m)に出走させた。この23日前に行われていた英2000ギニーではフランケルが6馬身差で圧勝していた。そのためフランケルを除けば本馬の実力は欧州同世代馬では上位に位置すると判断されており、単勝オッズ3.1倍の1番人気に支持された。前哨戦のリステッド競走ドライヤーリーゲン賞を勝ってきたアカディウスが単勝オッズ4.6倍の2番人気、GⅢ競走ヘルツォークフォンラティボアレネンの勝ち馬ゲレオンが単勝オッズ5倍の3番人気と続いていた。

スタートが切られると本馬が馬群の中団後方につけ、対抗馬2頭はいずれも本馬をマークするようにその後方につけた。しかし四角を回りながら本馬がスパートすると、対抗馬2頭はいずれも付いてこられなかった。直線に入ると本馬は馬場の真ん中を堂々と突き抜けて残り200m地点で先頭に立ち、さらに後続を引き離していった。そして最後は2着ゲレオンに7馬身差、3着アカディウスにはさらに半馬身差をつけて圧勝した。

英国に戻ってきた本馬はセントジェームズパレスS(英GⅠ・T8F)に出走した。対戦相手は、英2000ギニーから直行してきたフランケル、英2000ギニーと愛2000ギニーで連続2着してきたドバウィゴールド、ジャンリュックラガルデール賞の勝ち馬ウットンバセット、モルニ賞・ミドルパークSの勝ち馬ドリームアヘッド、愛フェニックスSの勝ち馬ゾファニー、それに日本から遠征してきた朝日杯フューチュリティS・NHKマイルC・京王杯2歳Sの勝ち馬グランプリボスなどだった。フランケルが単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ11倍の2番人気、ドバウィゴールドとウットンバセットが並んで単勝オッズ13倍の3番人気であり、フランケルの1強独裁状態だった。

スタートが切られると本馬は出遅れてしまい、そのまま馬群の中団につけた。一方のフランケルは本馬より少し前の3~4番手の好位を追走していたが、まだレースが半分も過ぎていない残り5ハロン地点で早くもスパートすると、大逃げを打っていた自身のペースメーカー役リルーテッドを残り3ハロン地点でかわして先頭に立った。そのまま後続を引き離したフランケルが圧勝するかとも思われたが、さすがのフランケルもこんな非常識なロングスパートで最後まで脚が保つ事は無かったようで、徐々にスピードが衰えてきた。そして残り2ハロン地点で満を持してスパートした本馬を始めとする後続馬達が追い上げていった。しかし本馬よりも、さらに後方で脚を溜めていたゾファニーの脚色のほうが良く、本馬は残り半ハロン地点でゾファニーにかわされて3番手に落ちた。そしてゾファニーがフランケルをあわやのところまで追い詰めたのだが、結局抜き去ることは出来なかった。フランケルが2着ゾファニーに3/4馬身差で辛うじて勝利を収め、本馬はゾファニーから1馬身半差、フランケルからは2馬身1/4差をつけられて3着に敗れた。

その後は一間隔を空けて、8月のハンガーフォードS(英GⅡ・T7F)に向かった。主な対戦相手は、セントジェームズパレスSで6着に終わっていたドバウィゴールド、ホーリスヒルS・シュマンドフェルデュノール賞の勝ち馬ビーコンロッジ、香港のGⅠ競走チャンピオンズマイルで3着してきたUAE2000ギニー・UAEダービー・ゴールデンホースシュー(南アフリカのGⅠ競走)の勝ち馬ムシール、ジュライSの勝ち馬ザチェカ、チャートウェルフィリーズSの勝ち馬パーフェクトトリビュートなどだった。本馬が単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持され、ドバウィゴールドが単勝オッズ3.5倍の2番人気、ビーコンロッジが単勝オッズ9倍の3番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ101倍の最低人気馬セレモニアルジェイドが先頭に立ち、本馬はそれを追って先行した。そして残り2ハロン地点で先頭に立ったが、残り1ハロン地点で右側によれた隙に、後方から追い込んできたビーコンロッジに並びかけられた。しかしカービー騎手が体勢を立て直すと、瞬く間にビーコンロッジをちぎり捨て、最後は6馬身差をつけて圧勝した。

このレース後に本馬はクールモアグループに購入されて馬主名義が変わった(マンフレディーニ氏も所有権の一部を保持した)が、この年いっぱいはボッティ厩舎の所属馬として走ることになった。

そして仏国に向かい、ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)に参戦した。ハンガーフォードS4着後にセレブレーションマイルを勝ってきたドバウィゴールド、ガネー賞・ノアイユ賞・アルクール賞の勝ち馬で仏ダービー・パリ大賞2着のプラントゥール、ダニエルウィルデンシュタイン賞の勝ち馬で前年の香港マイル2着のロイヤルベンチ、この年の仏2000ギニー馬でモルニ賞・ジャンリュックラガルデール賞2着のティンホース、ジャンリュックラガルデール賞・ヴィットリオディカプア賞・ローマ賞・ヴィンテージSなどの勝ち馬で前年のムーランドロンシャン賞2着のリオデラプラタ、ミュゲ賞・フォンテーヌブロー賞・パース賞の勝ち馬でイスパーン賞3着のラジサマンなどが対戦相手となった。カービー騎手に代わってジェイミー・スペンサー騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持され、ドバウィゴールドとプラントゥールが並んで単勝オッズ6.5倍の2番人気、ロイヤルベンチとティンホースが並んで単勝オッズ8倍の4番人気となった。

降りしきる雨のため馬場状態が悪化する中でスタートが切られると、単勝オッズ151倍の最低人気馬ハンサムマエストロが先頭に立って後続を引き離し、リオデラプラタが5~6馬身ほど離れた2番手、本馬はリオデラプラタからさらに4馬身ほど後方の3番手を進んだ。そして直線入り口で前との差を詰めると、残り400m地点から本格的にスパートを開始。残り300m地点でハンサムマエストロとリオデラプラタを同時にかわして先頭に立ち、粘るリオデラプラタを1馬身半差の2着に抑えて勝利した。

その後はクイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ・T8F)に向かった。対戦相手は、セントジェームズパレスS勝利後にサセックスSを勝っていたフランケル、サンドリンガム賞・コロネーションS・ジャックルマロワ賞と3連勝中のイモータルヴァース、ジャンプラ賞・ヴィットリオディカプア賞・ベット365マイル・サマーマイルSなどの勝ち馬ディックターピン、ムーランドロンシャン賞で4着に終わっていたドバウィゴールド、前年のクイーンエリザベスⅡ世S・セレブレーションマイルの勝ち馬ポエッツヴォイス、ソヴリンSの勝ち馬サイドグランス、それにフランケルの半兄でこのレースから弟のペースメーカー役を務める事になったリングフィールドダービートライアルS勝ち馬ブレットトレインの7頭だった。フランケルが単勝オッズ1.36倍の1番人気、スペンサー騎手騎乗の本馬が単勝オッズ7倍の2番人気、イモータルヴァースが単勝オッズ8倍の3番人気となった。

スタートが切られるとブレットトレインが先頭に立って後続を大きく引き離し、フランケルが好位、レース前に大量の発汗が見られた本馬はフランケルをマークするように進んだ。そしてレース中盤で仕掛けたのだが、ほぼ同様のタイミングで加速したフランケルには追いつけなかった。残り1ハロン地点で2番手に上がると後続を引き離し、3着イモータルヴァースには3馬身半差をつけたが、フランケルからは4馬身差をつけられて2着に敗れた。

3歳時の成績は6戦3勝で、負けた3戦は全てフランケルが勝ったレースだった。

競走生活(4歳時)

3歳シーズン終了後に本馬はクールモアの専属調教師エイダン・オブライエン師の元に転厩。打倒フランケルの一番手としてオブライエン師の訓練を受けた。

そして4歳時は4月のグラッドネスS(愛GⅢ・T7F)から始動した。目立つ対戦相手は前年のハンガーフォードSで本馬から6馬身差の2着だったビーコンロッジくらいであり、本馬が他の出走全馬より6ポンド重い133ポンドの斤量でも単勝オッズ1.29倍の1番人気に支持された。オブランエン師の息子ジョセフ・オブランエン騎手が騎乗する本馬は、先頭を走る同厩のペースメーカー役ウィンザーパレスからそれほど離されない位置の4番手を追走。そして残り1ハロン地点で楽々と先頭に立つと、2着クロワサルタンに3馬身1/4差をつけて完勝した。

次走のロッキンジS(英GⅠ・T8F)では、フランケルと4度目の顔合わせとなった。このレースが4歳初戦だったフランケルが単勝オッズ1.29倍の1番人気に支持され、前走に続いてオブライエン騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ4.33倍の2番人気、前年のクイーンエリザベスⅡ世Sで4着だったドバウィゴールドが単勝オッズ17倍の3番人気であり、レースの焦点はフランケルに本馬が一矢報いることが出来るかどうかだけだった。

スタートが切られるとブレットトレインが先頭に立ち、フランケルは兄の背中を見るように2番手を先行。そして本馬もフランケルを見るように3番手につけた。しかし残り2ハロン地点でフランケルが兄に代わって先頭に立つと、本馬との差が徐々に開いていった。本馬は3着ドバウィゴールドには4馬身差をつけたものの、フランケルからは5馬身差をつけられて2着に敗れた。

次走のクイーンアンS(英GⅠ・T8F)でもフランケルとの対戦となった。他にも、コヴェントリーS・レノックスS・チャレンジS・ジャージーSの勝ち馬ストロングスート(前年のグリーナムSで1度だけ本馬と対戦しているが6着最下位に終わっていた)、サイアーズプロデュースS・豪シャンペンS・コーフィールドギニーと豪州GⅠ競走3勝のヘルメット、伊ダービー・伊2000ギニー・リボー賞・カルロヴィッタディーニ賞の勝ち馬ワースアド、ダイオメドSを勝ってきたサイドグランスなどの姿もあった。フランケルが単勝オッズ1.1倍の1番人気、オブライエン騎手騎乗の本馬が単勝オッズ6倍の2番人気、ストロングスートが単勝オッズ11倍の3番人気となった。

スタートが切られるとブレットトレインが先頭に立ち、フランケルと本馬は揃ってブレットトレインの直後につけた。そして残り2ハロン地点でフランケルが加速して先頭に立つと本馬も加速を開始して、2頭の叩き合いが始まった。しかし本馬とフランケルが競り合ったのはほんの一瞬であり、フランケルが本馬との差をどんどん開きながら先頭を爆走していった。本馬はゴール前で強襲してきたサイドグランスを首差抑えて2着を死守するのが精一杯で、勝ったフランケルからは実に11馬身差をつけられてしまった。このレースでフランケルは英タイムフォーム社のレーティング史上最高となる147ポンド、ワールド・サラブレッド・レースホース・ランキングでも(結果的に)史上最高となる140ポンドを獲得している。要するにフランケルはこのレースでサラブレッド競馬史上最高のパフォーマンスを発揮したわけであるから、本馬にとってはあまりにも相手が悪すぎたと言うしかないだろう。

クールモアやオブライエン師はマイル戦でフランケルを負かすのは無理だと悟ったらしく、フランケルが出走を表明していたサセックスSは回避して、サセックスSから11日後のジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)に本馬を向かわせた。フランケルと戦いたくなかったのは本馬陣営だけではなかったようで、この年のジャックルマロワ賞には本来サセックスSに向かうような英国の有力マイラー達が集結。僅か4頭立てとなってフランケルが楽勝しただけに終わったサセックスSと異なり、このジャックルマロワ賞は約90年間の歴史を誇る同競走史上最高クラスと言っても過言ではないほどのメンバー構成となった。

モーリスドギース賞を2連覇してきた翌年のカルティエ賞最優秀古馬ムーンライトクラウド、セントジェームズパレスSを勝ってきたモストインプルーヴド、マルセルブサック賞・ロートシルト賞の勝ち馬でファルマスS2着のイルーシヴケイト、仏1000ギニー・仏オークス・イスパーン賞の勝ち馬でロートシルト賞2着のゴールデンリラ、コロネーションSを勝ってきたフォールンフォーユー、ドバイデューティーフリーの勝ち馬で香港マイル2着のシティスケープ、ジムクラックS・ミルリーフS・独2000ギニー・グリーナムSの勝ち馬カスパルネッチェル、それに前年のクイーンエリザベスⅡ世Sで3着だったイモータルヴァース、前年のムーランドロンシャン賞で7着に終わっていたティンホースといった既対戦馬も出走してきた(モストインプルーヴド、イルーシヴケイト、フォールンフォーユー、シティスケープ、カスパルネッチェルが英国調教馬)。しかしこのメンバー構成の中で単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持されたのは、クリストフ・スミヨン騎手が騎乗する本馬だった。そして、ムーンライトクラウドが単勝オッズ4倍の2番人気、モストインプルーヴドが単勝オッズ8倍の3番人気、イルーシヴケイトが単勝オッズ10倍の4番人気と続いた。

スタートが切られるとイルーシヴケイトが内埒沿いに逃げを打ち、本馬やシティスケープなども先行。ムーンライトクラウドは後方からレースを進めた。残り500m地点でシティスケープがイルーシヴケイトに並びかけて叩き合いを開始すると、本馬もシティスケープの外側に持ち出して並びかけ、この3頭が横一線となった。そして残り200m地点で抜け出した本馬が、2着シティスケープに1馬身1/4差、3着イルーシヴケイトにさらに首差をつけて勝利した。

その後はムーランドロンシャン賞ではなく、クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ・T8F)に向かった(本馬不在のムーランドロンシャン賞は、ジャックルマロワ賞で4着だったムーンライトクラウドが、サセックスSでフランケルの2着だったファーを頭差抑えて勝利した)。サセックスS勝利後に10ハロン路線に向かっていたフランケルは同日の英チャンピオンSに回っており、このレースには不在だった。対戦相手は、ジャックルマロワ賞2着後にウッドバインマイルSで3着していたシティスケープ、ジャックルマロワ賞3着後にサンチャリオットSで2着していたイルーシヴケイト、ジャックルマロワ賞で11着最下位に沈んでいたモストインプルーヴド、ダンテS・ブリガディアジェラードSの勝ち馬でプリンスオブウェールズS2着のカールトンハウス、クイーンアンS3着後に3戦して全て入着していたサイドグランスなどだった。オブランエン騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.91倍の1番人気に支持され、シティスケープが単勝オッズ6倍の2番人気、イルーシヴケイトが単勝オッズ6.5倍の3番人気、レース名の由来となった英国エリザベスⅡ世女王陛下の所有馬カールトンハウスが単勝オッズ8倍の4番人気となった。

スタートが切られるとイルーシヴケイトが先頭に立ち、シティスケープやカールトンハウスがそれを追撃。本馬は馬群の真ん中の4番手につけた。残り2ハロン地点でオブランエン騎手が仕掛けようとしたが、前方には他馬の壁が出来ており、すぐに抜け出すことが出来なかった。しかしオブランエン騎手は冷静に馬群の隙間を見つけると、本馬をそこに突っ込ませた。そして先に先頭に立っていたシティスケープに残り1ハロン地点で並びかけた。この段階でもまだ馬なりだった本馬にオブライエン騎手が合図を送ると、本馬の末脚が爆発。一瞬にしてシティスケープを置き去りにすると、最後は2着シティスケープに3馬身差、3着イルーシヴケイトにはさらに3馬身1/4差をつけて勝利した。

このレースは切れ味が殺される重馬場で施行されていたのだが、そうとは思えない素晴らしい瞬発力だった。本馬は独2000ギニー・ムーランドロンシャン賞・グラッドネスS、そして今回と重馬場のレースでは4戦全勝であり、フランケルが重馬場では良馬場ほどのパフォーマンスを見せられなかったことを考慮すると、仮定の話ではあるがフランケルが英チャンピオンSではなくこちらに出走していたら面白い勝負になっていたかもしれない。

その後は米国サンタアニタパーク競馬場に向かい、BCマイル(米GⅠ・T8F)に参戦。英チャンピオンSを最後に14戦全勝で引退していたフランケルの姿は無かったが、その代わりに本馬とは初顔合わせとなる1頭の強敵の姿があった。それは、クラークH・ウッドバインマイルS・シャドウェルターフマイルS・ファイアークラッカーH・ファイエットS・フォースターデイヴHなどを勝っていた米国現役最強芝マイラーのワイズダンだった。他にもムーランドロンシャン賞勝利から向かってきたムーンライトクラウド、デルマーマイルH・アロヨセコマイルを連勝してきたオビアスリー、前年のケンタッキーダービー馬でプリークネスS2着のアニマルキングダム、サーボーフォートS・アーケイディアS勝ち馬ミスターコモンズ、シューメーカーマイルS・ストラブS・サンガブリエルS・オークツリーマイルS・サイテーションHの勝ち馬ジェラニモ、ラウル&ラウルEチェバリエル大賞・エストレージャス大賞ジュヴェナイル・ドスミルギネアス大賞・亜ジョッキークラブ大賞と亜国のGⅠ競走を4勝した後に米国に移籍してシューメーカーマイルSで2着していたサジェスティヴボーイ、アメリカンダービー・ホーソーンダービー勝ち馬でシャドウェルターフマイルS2着のウィルコックスインが対戦相手となった。ワイズダンが単勝オッズ2.8倍の1番人気、オブライエン騎手騎乗の本馬が単勝オッズ3倍の2番人気、ムーンライトクラウドが単勝オッズ6.8倍の3番人気であり、米国最強マイラーであるワイズダンと、(フランケルを除けば)欧州最強マイラーである本馬のどちらが勝つかが焦点だった。

スタートが切られるとオビアスリーが先頭に立ち、サジェスティヴボーイとワイズダンが2~3番手につけた。本馬はワイズダンを見るように4番手につけたが、少々追走に苦労する場面が見られた。そのままの体勢で直線に入ると、粘るオビアスリーをワイズダンが残り1ハロン地点でかわして先頭に立った。それを本馬は一生懸命に追いかけたのだが、ワイズダンとの差は縮まらなかった。さらには後方から来たアニマルキングダムに差され、粘るオビアスリーも捕らえられなかった本馬は、勝ったワイズダンから2馬身差の4着に敗退。

このレースを最後に4歳時6戦3勝の成績で引退となった。ずっとフランケルの引き立て役だった本馬は、最後になってワイズダンという別の超強豪の引き立て役となってしまったのだった。もっとも、本馬は小回りの米国の競馬場における急なコーナーを回るのに苦労しており、過去に同様の理由でBCマイルを惨敗した欧州マイル王者も少なくなかった事からすると、それほど恥ずべき内容だったとは筆者には思えない。

血統

Exceed and Excel デインヒル Danzig Northern Dancer Nearctic
Natalma
Pas de Nom Admiral's Voyage
Petitioner
Razyana His Majesty Ribot
Flower Bowl
Spring Adieu Buckpasser
Natalma
Patrona Lomond Northern Dancer Nearctic
Natalma
My Charmer Poker
Fair Charmer
Gladiolus Watch Your Step Citation
Stepwisely
Back Britches Carry Back
Foxbritches
Sun Shower Indian Ridge Ahonoora Lorenzaccio Klairon
Phoenissa
Helen Nichols Martial
Quaker Girl
Hillbrow Swing Easy Delta Judge
Free Flowing
Golden City スカイマスター
West Shaw
Miss Kemble ウォーニング Known Fact In Reality
Tamerett
Slightly Dangerous Roberto
Where You Lead
Sarah Siddons Le Levanstell Le Lavandou
Stella's Sister
Mariel Relko
Ela Marita

父エクシードアンドエクセルはデインヒル産駒の豪州産馬で、現役成績は12戦7勝。ドバイレーシングクラブS(豪GⅠ)・ニューマーケットH(豪GⅠ)・トドマンS(豪GⅡ)・アップアンドカミングS(豪GⅡ)・ロイヤルソブリンS(豪GⅡ)・ローマンコンサルS(豪GⅢ)を勝っている。現役最後のレースは英国に遠征してのジュライC(英GⅠ)だったが、1番人気に応えられずに19着と惨敗している。引退後は英国ダルハムホールスタッドで種牡馬入り。種牡馬としては欧州・米国・豪州と各地で活躍する馬を出し、デインヒルの後継種牡馬の1頭として頑張っている。

母サンシャワーは競走馬としては1戦未勝利に終わったが、母としては本馬の半兄マルオブキロウ(父マルオブキンタイア)【ダーレーS(英GⅢ)・アールオブセフトンS(英GⅢ)2回】も産むなど活躍している。サンシャワーの母ミスケンブルも1戦未勝利だが、ミスケンブルの母サラシドンスは愛1000ギニー(愛GⅠ)・ヨークシャーオークス(英GⅠ)に勝利した名牝。サラシドンスは母としても優秀で、ミスケンブルの半兄シーマーヒックス(父バリーモア)【グレートヴォルティジュールS(英GⅡ)】、半姉プリンセスパティ(父トップヴィル)【愛オークス(愛GⅠ)・プリティポリーS(愛GⅡ)】も産んでいる。ミスケンブルの半姉ガートルードローレンス(父バリーモア)の孫にはレッジェーラ【ヴェルメイユ賞(仏GⅠ)】が、半姉カンタンタ(父トップヴィル)の子にはカンチレヴァー【ロワイヨモン賞(仏GⅢ)】がいる。サラシドンスの母マリエルはプリティポリーS(愛GⅡ)の勝ち馬で、マリエルの母エラマリータはフレッドダーリンS・ムシドラSの勝ち馬。エラマリータの半兄には名馬ラグーザ【愛ダービー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS・英セントレジャー・エクリプスS】がいる。→牝系:F9号族②

母父インディアンリッジは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は愛国クールモアスタッドで種牡馬入りした。豪州のクールモア・オーストラリアにもシャトルされている。

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