グラインドストーン

和名:グラインドストーン

英名:Grindstone

1993年生

黒鹿

父:アンブライドルド

母:バズマイベル

母父:ドローン

ケンタッキーダービーを制した直後に故障を起こしてプリークネスSの施行前に競走馬引退に追い込まれたアンブライドルドの初年度産駒

競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績6戦3勝2着2回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州オーバーブルックファームの牧場主ウィリアム・T・ヤング氏の生産・所有馬で、ダレル・ウェイン・ルーカス調教師に預けられた。父アンブライドルドにとっては初年度産駒の1頭だった。

競走生活(2歳時)

2歳6月にベルモントパーク競馬場で行われたダート5ハロンの未勝利戦で、ホセ・サントス騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ4.05倍で5頭立て2番人気の評価だったが、最後方から怒涛の追い込みを決めて、2着となった単勝オッズ1.5倍の1番人気馬シエラグランデに5馬身差をつけて圧勝。アンブライドルド産駒として初めての勝ち上がり馬となった。

ドンナ・バートン騎手を鞍上に出走した翌月のバッシュフォードマナーS(GⅢ・D6F)では、やはり未勝利戦を5馬身差で圧勝してきたエイヴィーエイト、未勝利戦で評判馬ヘネシーを破ってきたアンドザリヴィンイズイージー、未勝利戦を6馬身差で圧勝してきたマーリン(後に芝路線に転向して、アーリントンミリオンS・セクレタリアトS・ハリウッドダービー・サンルイレイS・サンフアンカピストラーノ招待H・サンセットHに勝利)などを抑えて、単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。しかし今回は追い込みが不発に終わり、エイヴィーエイトの1馬身1/4差4着に敗退。

レース後に右脚膝の剥離骨折が判明して摘出手術を受けたために長期休養入りし、2歳時の成績は2戦1勝となった。本馬が休養入りしている間に同じアンブライドルド産駒のアンブライドルズソングがBCジュヴェナイルを優勝して名を馳せ、本馬はすっかり陰に隠れた存在になってしまった。

競走生活(3歳初期)

3歳2月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走で7か月ぶりに復帰した。久々の実戦ではあったが、単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された。ゲイリー・スティーヴンス騎手騎乗の本馬はやはり最後方からレースを進め、直線で一気に追い込んできたが、バドロワイヤルに3馬身届かず2着に敗れた。バドロワイヤルは後に、サンバーナーディノH・マーヴィンルロイH・グッドウッドBCH・サンアントニオHとGⅡ競走を4勝して、BCクラシックでも2着する実力馬だった。

翌3月のルイジアナダービー(GⅢ・D8.5F)では、リズンスターSを5馬身差で圧勝してきたザーブズマジック、ブリーダーズフューチュリティ2着馬シティバイナイトなどが対戦相手となった。ザーブズマジックが単勝オッズ2.5倍の1番人気で、主戦となるジェリー・ベイリー騎手と初コンビを組んだ本馬が単勝オッズ3.4倍の2番人気となった。今回は今までのような最後方待機策でなく、好位の4番手を追走した。そして直線に入ると、逃げるザーブズマジックを一気に差し切り、最後は3馬身半差をつけて快勝した。

翌4月のアーカンソーダービー(GⅡ・D9F)では、ゴールデンステートダービーを快勝してきたサンラファエルS2着馬ヘイローサンシャイン、レベルSで2着してきたブロウアウト、ラッシュアウェイSを6馬身差で勝ってきたプグナシャス、ザーブズマジックなどを抑えて、単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された。今回は馬群がかなり縦長となる展開で、本馬は馬群の中団後方を追走した。そして四角で位置取りを上げて2番手で直線を向き、先行して先に抜け出していたザーブズマジックを追撃したが、今度は首差届かず2着に敗れた。

ケンタッキーダービー

そして迎えたケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)では、フロリダダービー・ウッドメモリアルSを連勝してきたアンブライドルズソング、サンタアニタダービーを8馬身1/4差で圧勝してきたキャヴォニア、ブルーグラスSを6馬身差で圧勝してきたスキップアウェイ、フロリダダービー2着・BCジュヴェナイル・ブルーグラスS3着だったケンタッキーCジュヴェナイルSの勝ち馬エディターズノート、ホープフルS・ベルモントフューチュリティS・ブルーグラスSで各2着のルイカトルズ、レキシントンSで2着してきたサンタカタリナSの勝ち馬プリンスオブシーヴズ、サンタアニタダービーで2位入線(ただし8着に降着)だったアリロブ、サンタアニタダービーで3位入線(2着に繰り上がり)だったブリーダーズフューチュリティ・サンラファエルSの勝ち馬オナーアンドグローリー、サンタアニタダービーで4位入線(3着に繰り上がり)だったコーカー、ハリウッドフューチュリティの勝ち馬マティージー、ファウンテンオブユースSの勝ち馬ビルトフォープレジャー、ウッドメモリアルSで2着してきたチェリーヒルマイルSの勝ち馬インコンテンション、シャンペンS2着馬ディリジェンス、ファウンテンオブユースS・ジムビームSで各3着のヴィクトリースピーチ、ザーブズマジック、アーカンソーダービーで3着だったヘイローサンシャイン、アーカンソーダービーで5着だったブロウアウト、リミントンパークダービーの勝ち馬セモランの、計18頭が対戦相手となった。

実績最上位のアンブライドルズソングが単勝オッズ4.5倍の1番人気に支持されたが、アンブライドルズソングは裂蹄のため特製の蹄鉄を装着しているという状態であり、かなり人気は割れていた。キャヴォニアとセモランのカップリングが単勝オッズ6.6倍の2番人気、本馬とエディターズノートの同馬主同厩馬2頭のカップリングが単勝オッズ6.9倍の3番人気、前年3着馬ティンバーカントリーの半弟プリンスオブシーヴズが単勝オッズ8倍の4番人気、アリロブが単勝オッズ8.2倍の5番人気、スキップアウェイが単勝オッズ8.7倍の6番人気と続いていた。

同競走史上3番目に多い14万2668人の大観衆が詰め掛けたレースではオナーアンドグローリーが逃げを打ち、アンブライドルズソング、スキップアウェイ、キャヴォニアなどの有力馬勢が先行態勢を取る中、外枠15番枠発走の本馬は19頭中15番手を慎重に進んだ。三角手前でアンブライドルズソングが早くも仕掛けて先頭を奪うと、後続馬もそれを追って上がって行った。本馬も遅れずに前の馬を巧みにかわしながら上がって行き、5番手で直線を向いた。さすがに仕掛けが早すぎたのかアンブライドルズソングは直線で今ひとつ伸びず、それをかわしてキャヴォニアが先頭に立ってゴールを目指した。しかしキャヴォニアがほぼ勝利を手中にしたと思われたとき、本馬が大外から一気に飛んできた。そしてゴール寸前でキャヴォニアを差し切って鼻差で優勝した。

ルイジアナダービーの勝ち馬がケンタッキーダービーを制したのは1924年のブラックゴールド以来72年ぶりだった。キャリア6戦目でケンタッキーダービーを制したのは1933年のブローカーズティップ以来63年ぶりとなる少経歴となった。また、ルーカス師は米国三冠競走6連勝(2年前のプリークネスSとベルモントSをタバスコキャットで、前年のケンタッキーダービーとベルモントSをサンダーガルチで、前年のプリークネスSをティンバーカントリーで制していた)という快挙を成し遂げた。

これでアンブライドルズソングから父の代表産駒の座を奪い取ったのも束の間、かつて発症した膝の剥離骨折再発が判明、栄冠の5日後に無念の引退となってしまった。ケンタッキーダービー馬が優勝直後に引退したのは1926年のバブリングオーヴァー以来70年ぶりであり、結局本馬の真の実力は未知数のままだったが、アンブライドルズソングだけでなく、後の米国三冠競走勝ち馬であるルイカトルズとエディターズノートの2頭、後のエクリプス賞年度代表馬スキップアウェイなどが出走していたハイレベルなケンタッキーダービーを制したのであるから、その実力は推して知るべしであろう。

血統

Unbridled Fappiano Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gold Digger Nashua
Sequence
Killaloe Dr. Fager Rough'n Tumble
Aspidistra
Grand Splendor Correlation
Cequillo
Gana Facil Le Fabuleux Wild Risk Rialto
Wild Violet
Anguar Verso
La Rochelle
Charedi In Reality Intentionally
My Dear Girl
Magic Buckpasser
Aspidistra
Buzz My Bell Drone Sir Gaylord Turn-to Royal Charger
Source Sucree
Somethingroyal Princequillo
Imperatrice
Cap and Bells Tom Fool Menow
Gaga
Ghazni Mahmoud
Sun Miss
Chateaupavia シャトーゲイ Swaps Khaled
Iron Reward
Banquet Bell Polynesian
Dinner Horn
Glenpavia Pavot Case Ace
Coquelicot
Gaffery Fairy Manhurst
Galtown

アンブライドルドは当馬の項を参照。

母バズマイベルは現役成績13戦3勝、スピナウェイS(米GⅠ)・アディロンダックS(米GⅢ)を制した活躍馬。バズマイベルの従兄弟にはベルモントSの勝ち馬パスキャッチャーがいる。バズマイベルの曾祖母ギャファリーはスカイラヴィルS・セリマS・レディーズHの勝ち馬。ギャファリーの甥にはジャイロ【ヴォスバーグH】が、ギャファリーの全妹ゲイフェアリーの玄孫にはコマーサント【EPテイラーS(加GⅠ)】がいる。→牝系:F1号族⑦

母父ドローンはダンシングブレーヴの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はオーバーブルックファームで種牡馬入りした。初年度の種付け料は2万ドルに設定された。あまり活躍馬は多くない(ステークスウイナーは16頭)が、それでも3年目産駒のバードストーンがベルモントS・トラヴァーズS・シャンペンSとGⅠ競走を3勝する活躍を見せてくれた。日本でもエコルプレイスがグランシャリオCを6馬身差で圧勝するなど活躍した。

2009年にオーバーブルックファームが解散すると、獣医師のジャック・ルート氏に購入されてオレゴン州オークハーストファームに移動した。ケンタッキーダービー馬が米国北西部で常時種牡馬生活を送るのは史上初の事であった。オレゴン州では人気種牡馬となっているが、お世辞にも馬産のレベルが高いとは言えないオレゴン州だけに繁殖牝馬の質には恵まれず、今のところ目立つ産駒は出ていない。2013年現在の種付け料は2500ドルとなっている。2010年のケンタッキーダービーウイークには米国の競馬ファンの前に姿を現して、写真のポーズを取るなど紳士的で元気な姿を見せてくれた。

バードストーンが後継種牡馬として成功している他、母父としてカレンブラックヒルを出すなど、後世にその血を伝える事は出来ている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1998

Ommadon

ナシュアS(米GⅢ)

1999

Miss Grindstone

ベッサラビアンH(加GⅢ)

2000

Smooth Maneuvers

アンアランデルS(米GⅢ)

2000

エコルプレイス

グランシャリオC(GⅢ)

2001

Birdstone

ベルモントS(米GⅠ)・シャンペンS(米GⅠ)・トラヴァーズS(米GⅠ)

2001

Organ Grinder

カナディアンダービー(加GⅢ)

2002

Kid Grindstone

フィフスシーズンS(米GⅢ)

2006

Frumious

パロスヴェルデスS(米GⅡ)

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