スカイビューティ

和名:スカイビューティ

英名:Sky Beauty

1990年生

鹿毛

父:ブラッシンググルーム

母:メイプルジンスキー

母父:ニジンスキー

かなり気性が激しかったがニューヨーク牝馬三冠を達成しエクリプス賞最優秀古馬牝馬にも輝いた超良血馬

競走成績:2~5歳時に米で走り通算成績21戦15勝2着2回3着2回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州テイラーメイドファームにおいて、シュガーメイプルファームの所有者ハワード・カスケル氏とスーザン・カスケル夫人により生産された。1歳時にファシグ・ティプトン社が実施したサラトガセールにおいて、ウィカムハウススタッドの所有者ジョージア・E・ホフマン女史により35万5千ドルで購入された。ホフマン女史とその夫のフィリップ氏は、本馬の母メイプルジンスキーや祖母ゴールドビューティの生産者であり、ホフマン女史にとって本馬は思い入れのある血筋だった。

メイプルジンスキーはGⅠ競走2勝の名牝、ゴールドビューティは1982年のエクリプス賞最優秀短距離馬であり、これだけ取っても本馬は相当な良血馬だった。さらに本馬の父は大種牡馬ブラッシンググルーム、母父は英国三冠馬ニジンスキー、祖母の父は大種牡馬ミスタープロスペクター、叔父は欧州短距離王者デイジュールであるから、極めつけの良血馬と言ってもよく、35万5千ドルという購入価格でも安く思えるほどである。

本馬は、ハリー・アレン・ジャーケンズ調教師に預けられた。かつて管理馬のボーパープルで名馬ケルソを何度も破り、同じく管理馬のオニオンとプルーヴアウトでセクレタリアトを2度破り、バックパサークーガーフォアゴーなどにも黒星を付けていたジャーケンズ師は、“The Giant Killer(大物食い)”の異名で知られていた。しかし自身が時代を代表する強豪馬を手掛けた実績はあまり無く、その意味では本馬が彼にとって最初の大物競走馬となったと言える。

競走生活(2歳時)

2歳7月にベルモントパーク競馬場で行われたダート5ハロンの未勝利戦で、主戦となるエディ・メイプル騎手を鞍上にデビューした。意外とファンからの評価は低く、単勝オッズ6.3倍で8頭立ての3番人気止まりだったが、4番手追走から直線入り口で先頭に立って押し切り、2着に逃げ粘った単勝オッズ8.8倍の5番人気馬ポートオブシルヴァーに2馬身差をつけて勝ち上がった。

12日後に出走したベルモントパーク競馬場ダート5.5ハロンの一般競走では、単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持された。ここでは逃げる単勝オッズ3.2倍の2番人気馬テナシャスティファニーをマークするように2~3番手を追走。直線入り口で先頭に立つと、そのまま2着テナシャスティファニーに2馬身半差をつけて勝利した。

その4週間後にはアディロンダックS(GⅡ・D6F)に出走。このレースでは、アストリアBCS・スカイラヴィルSを連勝してきた3戦無敗のディスティンクトハビットとの対戦となった。しかしここで単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持されたのは本馬でもディスティンクトハビットでもなく、2週間前の未勝利戦を8馬身差で勝ち上がってきたばかりのミスドザストームだった。本馬が単勝オッズ2.7倍の2番人気で、ディスティンクトハビットは、本馬より5ポンド、ミスドザストームより7ポンド重い斤量が嫌われたのか、単勝オッズ5.3倍の3番人気に留まった。スタートからミスドザストームが軽量を活かして先頭を爆走し、ディスティンクトハビットが少し離れた2番手、本馬は4番手でレースを進めた。四角で上がってきた本馬がミスドザストームに並びかけた状態で直線に入ってきた。そしてここから本馬が一気に抜け出し、2着ミスドザストームに3馬身半差で完勝した。ミスドザストームも3着ディスティンクトハビット(このレースを最後に早くも引退繁殖入り)には7馬身差をつけていたが、本馬の強さばかりが目立つ結果となった。本馬の強さに恐れをなしたのかどうかは不明だが、ミスドザストームはこの後に短距離路線に転じ(テストS・アスタリタSを勝ち、牝馬短距離路線の一流馬として活躍)、本馬とは2度と対戦する機会は無かった。

一方の本馬は3連勝の勢いを駆って、8月末のスピナウェイS(GⅠ・D6F)に向かった。ソロリティSでハリウッドワイルドキャットの2着してきたファミリーエンタープライズ、アストリアBCSでディスティンクトハビットの3着していたトライインザスカイ、スカイラヴィルSでディスティンクトハビットの2着していたターニーなど4頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気に支持され、ファミリーエンタープライズが単勝オッズ5.3倍の2番人気、ターニーが単勝オッズ7.7倍の3番人気となった。レースではターニーがまずは先頭に立ち、本馬は3番手を追走した。そして直線に入ると2番手から先に抜け出そうとしたファミリーエンタープライズに並びかけて叩き合いに持ち込み、1馬身3/4差で競り勝った。

ところがこのレースは審議となった。スタートした瞬間に最内枠発走の本馬が外側に、3番枠発走のトライインザスカイ(ファミリーエンタープライズから10馬身差の3位入線)が内側にそれぞれ斜行して、2番枠発走だったスタンダードイクイップメント(トライインザスカイから2馬身半差の4位入線)という馬に体当たりする格好になっていたのである。審議の結果は、本馬とトライインザスカイのいずれも進路妨害で降着。2位入線のファミリーエンタープライズが繰り上がって勝利馬となり、4位入線のスタンダードイクイップメントが繰り上がって2着、1位入線の本馬が3着で、3位入線のトライインザスカイが4着となった(最下位入線のターニーのみ着順変更なし)。この時の妨害ぶりは、ジャーケンズ師が後年、「失格ではなく3着降着で済んだのは驚きだった」と述懐したほど壮絶なものであり、陣営が鞍上メイプル騎手に対する不信感を募らせるきっかけになったとされる。

降着にはなったが、内容的には他馬を圧倒していたため、20日後のメイトロンS(GⅠ・D7F)でも、ファミリーエンタープライズ、未勝利戦を6馬身3/4差で勝ち上がってきたエデュケイティドリスクなどを抑えて、単勝オッズ1.4倍という圧倒的な1番人気に支持された。レースでは単勝オッズ8.2倍の2番人気馬ファミリーエンタープライズが先手を取り、単勝オッズ8.6倍の3番人気馬エデュケイティドリスクが2番手、本馬は少し離れた3~4番手を追走した。そして四角で仕掛けて直線入り口で先頭に立ち、2着エデュケイティドリスクに2馬身3/4差、3着ファミリーエンタープライズにはさらに2馬身1/4差をつけて楽勝した。

しかし脚の腱に炎症を起こしてしまったために、2歳時はこのまま5戦4勝の成績で休養入りとなり、ガルフストリームパーク競馬場で行われたBCジュヴェナイルフィリーズには不参戦となった。そのためにエクリプス賞最優秀2歳牝馬の座は、BCジュヴェナイルフィリーズ・アルキビアデスS・ラッシーS勝ちなど5戦4勝のエライザのものとなった。

エライザが勝ったBCジュヴェナイルフィリーズでは、メイトロンSで本馬に2馬身3/4差をつけられて敗れた後にフリゼットSを勝って挑んだエデュケイティドリスクが1馬身差の2着に入っており、単純にエデュケイティドリスクを物差しにすれば、エライザより本馬のほうが1馬身3/4差ほど上位だった事になる。もちろんそんな単純なものではなく、おそらく本馬が無事にBCジュヴェナイルフィリーズに出ても勝てなかった確率が高いと筆者は思う。その理由は後で述べる。

競走生活(3歳時)

3歳時は3月にガルフストリームパーク競馬場で行われたボニーミスS(GⅡ・D8.5F)から始動した。ゴールデンロッドSなどの勝ち馬でフォワードギャルBCS・ダヴォナデイルS2着・BCジュヴェナイル3着のブーツンジャッキー、ダヴォナデイルSの勝ち馬でフォワードギャルBCS3着のルナスプーク(後のアッシュランドSの勝ち馬)、ガルフストリームパーク競馬場で一般競走を2連勝してきたアスタリタS2着馬ディスピュートといった、かなり強力なメンバー構成となった。114ポンドと斤量に恵まれた本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気、117ポンドのルナスプークが単勝オッズ3倍の2番人気、114ポンドのディスピュートが単勝オッズ3.7倍の3番人気で、デビューから既に14戦4勝2着6回3着3回とかなり走りまくっていたために122ポンドを課せられたブーツンジャッキーは斤量が嫌われて単勝オッズ7.3倍の4番人気だった。レースではディスピュートが先手を取り、本馬は2番手を追走した。そして直線に入るとディスピュートに並びかけて叩き合いに持ち込んだのだが、3/4馬身差の2着に敗れた。

後のディスピュートの活躍ぶりと、本馬はディスピュートと異なり久々だった事を考えると、この敗北は止むを得ない面があったと思うのだが、前年のスピナウェイSにおける3着降着以来、メイプル騎手に対して不信感を抱いていたホフマン女史は、これを最後に本馬の主戦をマイク・スミス騎手に交替させた。そして本馬はスミス騎手と共にニューヨーク牝馬三冠路線に進むことになった。

まずはボニーミスSから2か月後のエイコーンS(GⅠ・D8F)に出走した。対戦相手は、3歳初戦の一般競走を順当に勝ってきたエデュケイティドリスク、ガーランドオブローゼズSを勝ってきたダヴォナデイルS3着馬インハーグローリー、フェアグラウンズオークスを勝ってきたシルキーフェザーなど5頭だった。実績的には本馬とエデュケイティドリスクの2頭が抜けており、本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、エデュケイティドリスクが単勝オッズ3.8倍の2番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ34.5倍の最低人気馬チュースデイエディションが逃げを打ち、エデュケイティドリスクが2番手、本馬が3番手を追走した。向こう正面でチュースデイエディションが早くも失速すると、エデュケイティドリスクが先頭に立ったが、それを三角で本馬がかわすと後は独走。2着エデュケイティドリスクに5馬身1/4差をつけて圧勝した。この時のレースぶりはニューヨーク・タイムズ紙の記者ジョセフ・ダルソー氏をして「それは競技会ではなく独演会でした」と言わしめたほどだった。

続くマザーグースS(GⅠ・D9F)では、前走のケンタッキーオークスで2着エライザ以下に完勝してきたディスピュート、前年のメイトロンSでは本馬から7馬身1/4差の4着だったが3歳になってハニービーS・ファンタジーSを連勝していたアズテックヒル、前走4着のシルキーフェザーの3頭だけが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気、ディスピュートが単勝オッズ2.7倍の2番人気で、ケンタッキーオークスでディスピュートの5着に沈んでいたアズテックヒルが単勝オッズ6.3倍の3番人気となった。スタートが切られるとディスピュートが先頭に立ち、本馬はその直後2番手を追走した。2頭の位置関係が変わらないまま三角に入ってくると、本馬が仕掛けてディスピュートの前に出た。そして先頭で直線に入ると、一気に後続を引き離し、2着ディスピュートに5馬身差をつけて圧勝した。

次走のCCAオークス(GⅠ・D10F)では、ディスピュート、かつて本馬が降着となったスピナウェイSにおける進路妨害の被害馬スタンダードイクイップメント(その後のフリゼットSでエデュケイティドリスクの2着している)、ポストデブSで3着してきたフューチャープリテンス、前走3着のシルキーフェザーの4頭だけが、本馬のニューヨーク牝馬三冠達成を阻止するべく立ち向かってきた。本馬が単勝オッズ1.1倍という圧倒的な1番人気に支持され、ディスピュートが単勝オッズ5.2倍の2番人気となった。レース展開は前走のマザーグースSと同様であり、ディスピュートが先頭に立ち、本馬が2番手を追走した。そして三角で本馬がディスピュートをかわして先頭に立ち、後は直線をそのまま独走するかに思われた。しかし直線で1頭の馬が猛然と本馬に詰め寄ってきた。道中は最後方でじっと我慢し、直線入り口後方2番手からの追い込みに賭けた単勝オッズ15.5倍の4番人気馬フューチャープリテンスだった。本馬とフューチャープリテンスの差はみるみる縮まり、あわやと思われたのだが、最後は本馬がフューチャープリテンスの追撃を半馬身凌いで勝利を収め、1989年のオープンマインド以来4年ぶり史上8頭目のニューヨーク牝馬三冠馬となった。ダルソー氏はニューヨーク・タイムズ紙上において「競馬界の新たなスターをベルモントパーク競馬場で見つけました」と書いた。

本馬以降にニューヨーク牝馬三冠を達成した馬は、ニューヨーク牝馬三冠競走からエイコーンSが外れてアラバマSが加わっていた2003年から2006年までの期間、そしてマザーグースSが外れてアラバマSが再度加わった2010年以降を含めても出現しておらず、2015年時点においては本馬が最後のニューヨーク牝馬三冠馬である。

そして本馬の次走はそのアラバマS(GⅠ・D10F)となった。ポストデブSを5馬身1/4差で、モンマスオークスを6馬身半差で連続圧勝してきたジャコディ、フューチャープリテンス、デモワゼルSの勝ち馬フォーチュネイトフェイス、加オークスの勝ち馬でモンマスオークス2着のデピュティジェーンウエスト、前走3着のシルキーフェザーなど7頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気、勢いが買われたジャコディが単勝オッズ3.6倍の2番人気、フューチャープリテンスが単勝オッズ7.9倍の3番人気となった。スタートが切られると、単勝オッズ60.4倍の最低人気馬ミスオブセッションが逃げを打ち、単勝オッズ16.1倍の5番人気馬デピュティジェーンウエストが2番手、本馬がかなり離れた3番手につけた。三角でミスオブセッションが失速すると本馬は自動的に2番手に上がり、そして直線入り口でデピュティジェーンウエストをかわして先頭に立った。直線で本馬を追いかけてきたのはジャコディではなく、今回も最後方待機策から追い込みに賭けたフューチャープリテンスだった。しかし今回は前走ほど際どい勝負にはならず、本馬が2着フューチャープリテンスに1馬身半差で勝利した。

アラバマSの後は短い夏休みを取り、10月のレアパフュームS(GⅡ・D8F)に出走した。エイコーンS3着後は不振だったが前走ガゼルHで3着して復調気配のインハーグローリー、テンプテッドS・ブッシャーBCSの勝ち馬トゥルーアフェアー、一般競走を9馬身差で圧勝してきたグレード競走初出走のフォーオールシーズンズ、一般競走を2連勝してきたグレード競走初出走のファデッタなどが対戦相手となった。本馬と他馬勢には圧倒的な実力差があるとみなされており、本馬には斤量2位のフォーオールシーズンズより10ポンドも重い124ポンドのトップハンデが課せられたが、それでも単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持された。112ポンドのファデッタが単勝オッズ6.8倍の2番人気、同じく112ポンドのトゥルーアフェアーが単勝オッズ11.8倍の3番人気だった。レースでは単勝オッズ15.6倍の5番人気止まりだったフォーオールシーズンズが逃げて、本馬は2番手を追走。そして直線入り口でフォーオールシーズンズをかわして先頭に立った。直線では最後方からの追い込みに賭けたファデッタが追いかけてきたが、最後まで影は踏ませず、2着ファデッタに1馬身3/4差で勝利した。

そして米国西海岸に向かい、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCディスタフ(GⅠ・D9F)に参戦した。この年のBCディスタフはかなりの好メンバーが揃っていた。前年にBCディスタフ・サンタマリアH・サンタマルガリータ招待H・アップルブロッサムH・ミレイディH・ヴァニティHとGⅠ競走6勝を挙げ、この年もアップルブロッサムH・ミレイディH・スピンスターSとGⅠ競走3勝を挙げて2年連続のエクリプス賞最優秀古馬に選ばれる亜国出身の名牝パセアナ、本馬とは同世代で西海岸を本拠地としていたハリウッドオークス・デルマーオークス・ソロリティSの勝ち馬ハリウッドワイルドキャット、CCAオークス4着後にガゼルH・ベルデイムSを勝ってきたディスピュート、ヴァニティ招待Hを勝っていた亜国出身馬レトスなどが対戦相手となったのである。地元の期待を受けたハリウッドワイルドキャットが単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持され、連覇を目指すパセアナが単勝オッズ3.5倍の2番人気、東海岸から遠征してきた本馬は単勝オッズ5.3倍の3番人気止まりだった。

スタートが切られるとハリウッドワイルドキャットが先頭に立った。いつもの本馬なら逃げ馬をマークするように先行するのだが、ここでは馬群の中団5番手を追走した。そして三角から四角にかけて外側から上がっていったが、直線で伸びを欠き、前方で叩き合うハリウッドワイルドキャットとパセアナの2頭に追いつくどころか、後方から来たレトスやディスピュートに差されてしまい、勝ったハリウッドワイルドキャットから4馬身1/4差の5着と完敗を喫してしまった。

3歳時の成績は7戦5勝で、ニューヨーク牝馬三冠競走3戦を含むGⅠ競走4勝を挙げたにも関わらず、9戦5勝(うちGⅠ競走2勝)のハリウッドワイルドキャットにエクリプス賞最優秀3歳牝馬の座を奪われてしまった。

競走生活(4歳時)

4歳時は5月にベルモントパーク競馬場で行われたヴェイグランシーH(GⅢ・D7F)から始動した。バレリーナS・アルキビアデスS・フォワードギャルBCS・ヴェイグランシーHを勝っていたスピニングラウンド、前走ベッドオローゼズHで2着してきた前年のレアパフュームS3着馬フォーオールシーズンズ、ハニービーHの勝ち馬でフリゼットS・ガゼルH2着のヴィヴァノなどが対戦相手となった。他馬勢よりも4~15ポンド重い122ポンドを課せられた本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、114ポンドのフォーオールシーズンズが単勝オッズ4.9倍の2番人気、118ポンドのスピニングラウンドが単勝オッズ8.6倍の3番人気となった。レースでは単勝オッズ52.4倍の最低人気馬リーチフォークレヴァーが先頭を引っ張り、本馬は馬群の中団4番手を追走した。そして三角から進出を開始すると、直線入り口で先頭に立ち、2着フォーオールシーズンズに3馬身差で勝利した。

次走のシュヴィーH(GⅠ・D8.5F)では、フォーオールシーズンズ、ハリウッドスターレットS・アップルブロッサムH・トップフライトHと3度のGⅠ競走2着があったサンタイネスBCSの勝ち馬ルーイーカポウティ、ニューヨーク牝馬三冠競走とアラバマSで本馬に全敗した後にガゼルHで2着していたシルキーフェザーの3頭だけが対戦相手となった。125ポンドの本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気、113ポンドのフォーオールシーズンズが単勝オッズ5.2倍の2番人気、112ポンドのルーイーカポウティが単勝オッズ6.5倍の3番人気、111ポンドのシルキーフェザーが単勝オッズ8.1倍の最低人気となった。最低人気のシルキーフェザーでも単勝オッズ一桁台だった事からしても、この斤量差なら他馬にも本馬に付け入る隙があると思っていた人も多かったようである。しかしこのレースにおける本馬には全く付け入る隙は無く、逃げるルーイーカポウティを2番手で追走すると、三角で先頭に立った後はひたすら後続を引き離し続け、最後は2着フォーオールシーズンズに9馬身半差をつけるという、圧倒的な走りを披露した。

次走のヘンプステッドH(GⅠ・D9F)では、前年のトップフライトH・ジョンAモリスHを勝っていたユードビーサプライズド、前年にウッドバインナッソーS・オンタリオメイトロンS・ベルマホーンS・メイプルリーフSに勝ちEPテイラーSで2着してソヴリン賞最優秀古馬牝馬に選ばれていた加国の名牝ダンスフォードナなど4頭が対戦相手となった。前走シュヴィーHの勝ち方が逆に仇となった本馬には128ポンドの斤量が課せされたのだが、それでも単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持された。118ポンドのユードビーサプライズドが単勝オッズ3.3倍の2番人気、114ポンドのダンスフォードナが単勝オッズ9.8倍の3番人気となった。このレースでは逃げる馬がいなかった事もあってか、好スタートを切った本馬はそのまま先頭に立った。しかしユードビーサプライズドが徹底的に本馬をマークしてきた。そのまま本馬とユードビーサプライズドが並ぶような格好で直線に突入すると、後続を大きく引き離して2頭の壮絶な叩き合いが始まった。3着馬スクウェイベイビースウェイを実に12馬身半も引き離す一騎打ちは、10ポンド重い斤量の本馬に首差で軍配が上がった。

次走のゴーフォーワンドS(GⅠ・D9F)は定量戦のため全馬同斤量であり、他馬が本馬に勝つには実力で打ち負かすか、本馬が不利を受けるか何かの理由で自滅する必要があった。対戦相手としては、リンクリヴァー、ライフイズデリシャス、スクウェイベイビースウェイ、ミスポケットコートの4頭が出走してきたが、グレード競走に勝った実績がある馬は1頭もおらず、本馬に勝つのが目的ではなく入着賞金目的の雰囲気が漂っていた。本馬が単勝オッズ1.1倍の1番人気に支持され、グレード競走初出走ながらも一般競走を3連勝してきたリンクリヴァーが未知の魅力と勢いが買われて単勝オッズ5倍の2番人気となった。スタートが切られると本馬が真っ先にゲートを飛び出していき、そのまま先頭をひた走った。これでは他の出走馬は何をどうすることも出来ず、一応は対抗馬に推されていたリンクリヴァーが本馬を追いかけてはみたものの、直線入り口では既に白旗を揚げる事になった。むしろ盛り上がったのは2着争いのほうで、粘るリンクリヴァーと、後方から並びかけたライフイズデリシャスが激戦を演じ、リンクリヴァーが鼻差で競り勝った。もちろん勝者は本馬であり、2着リンクリヴァーの10馬身半前で既にゴールしていた。

本馬にまったく敵わなかったリンクリヴァーだったが、この次走ジョンAモリスHで、ユードビーサプライズドを2着に、ディスピュートを3着に打ち負かしてGⅠ競走初勝利を挙げた。

そんなわけで、そのジョンAモリスHから4週間後に行われた本馬の次走ラフィアンH(GⅠ・D8.5F)で、リンクリヴァー、ユードビーサプライズド、ディスピュート、本馬とはエイコーンS以来の対戦となるエデュケイティドリスクの4頭が揃って本馬に挑んでくると、ハンデキャッパーは困った。本馬と他4頭の実力差は歴然としていたが、他4頭もかなりの実力馬ばかりであり、それらに110ポンドを切るような軽い斤量を課する事もなかなか難しかった。そしてハンデキャッパーは悩んだ末に、本馬に130ポンドの斤量を課す事を決めた。牡馬でさえ130ポンド以上を背負うことが稀な近代米国競馬において、牝馬が130ポンドを背負うというのは極めて珍しかった。

この斤量でも本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持されたが、119ポンドのユードビーサプライズドが単勝オッズ4.4倍、117ポンドのリンクリヴァーが単勝オッズ6.2倍、117ポンドのディスピュートと114ポンドのエデュケイティドリスクのカップリングが単勝オッズ6.5倍となり、この斤量ではさすがの本馬も厳しいと考えるファンも少なからずいたようである。

スタートが切られると、最軽量のエデュケイティドリスクが先頭に立ち、本馬が直後の2番手、ディスピュートが3番手につけた。三角で本馬がエデュケイティドリスクに並びかけると、16ポンドのハンデを与えたエデュケイティドリスクを徐々に引き離していった。そして直線に入ると、後方からはエデュケイティドリスクをかわして2番手に上がったディスピュートが追いかけてきた。しかし2頭の斤量差13ポンドにも関わらず、その差は縮まらず、本馬が2着ディスピュートに1馬身1/4差をつけて勝利。これで2年連続のGⅠ競走4連勝を達成した。

そしてチャーチルダウンズ競馬場で行われたBCディスタフ(GⅠ・D9F)に前年の雪辱を期して挑んだ。対戦相手は、この年はゲイムリーHを勝ちビヴァリーヒルズH・ラモナHで2着していた前年の覇者ハリウッドワイルドキャット、アラバマS・ガゼルH・ベルデイムSを3連勝してきた3歳馬ヘヴンリープライズ、サンタアナH・サンタバーバラH・エルエンシノS・ラカナダS・チュラヴィスタHの勝ち馬エクスチェンジ、ラフィアンHで4着だったリンクリヴァー、EPテイラーSを勝ってきたトゥルーリーアドリーム、ルイビルBCHの勝ち馬ワンドリーマー、スピンスターSで3着してきたミスドミニク、前月の凱旋門賞でホワイトマズルに騎乗して6着に終わり、ホワイトマズルを管理するピーター・チャプルハイアム調教師から散々に酷評された雪辱を期する武豊騎手が騎乗する、チャプルハイアム厩舎所属の伊1000ギニー馬エリンバード(優駿牝馬勝ち馬エリンコートの母)の8頭だった。連覇を狙うハリウッドワイルドキャットが単勝オッズ2.8倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.9倍の2番人気、ヘヴンリープライズが単勝オッズ3.1倍の3番人気となった。

スタートから単勝オッズ48.1倍の8番人気馬ワンドリーマーが芦毛の馬体を光らせながら逃げ、ハリウッドワイルドキャットやエクスチェンジなどがそれを追走。本馬は馬群の中団後方6~7番手につけた。そして三角手前で外側から上がっていこうとしたが、四角途中で早くも手応えを無くして失速。レースは終始主導権を握ったワンドリーマーがヘヴンリープライズの追撃を首差で凌いで勝利し、直線入り口で最後方まで下がった本馬は、勝ったワンドリーマーから12馬身1/4差をつけられた9着最下位に沈んでしまった(エリンバードは4着だった)。連勝は5で止まり、4歳時の成績は6戦5勝となったが、それでもこの年のエクリプス賞最優秀古馬牝馬に選ばれ、過去2年逃していたエクリプス賞を受賞した。

競走生活(5歳時)

5歳時も現役を続行し、前年同様に5月のヴェイグランシーH(GⅢ・D7F)から始動した。前年のトップフライトH2着馬トライアンフアットドーンなど遥かに格下の馬3頭だけが対戦相手となり、他馬勢より10~15ポンド重い125ポンド、BCディスタフの惨敗、休養明けという悪条件が揃っていても、地元ニューヨーク州では無敵の本馬が単勝オッズ1.35倍の1番人気に支持された。レースでは4頭立ての3番手を追走し、一時は最後尾まで下がる場面もあったが、四角で瞬く間に先頭に踊り出ると、2着に粘った単勝オッズ6.3倍の3番人気馬アリズコンクエストに4馬身差をつけて圧勝した。

次走のシュヴィーH(GⅠ・D8F)でも対戦相手は3頭だけだったが、ここには本馬にとって初対戦となる1頭の強豪馬が出走していた。その強豪馬とは、前年のアッシュランドS・エイコーンS・ボニーミスSをいずれも圧勝していたインサイドインフォメーションだった。インサイドインフォメーションは、本馬との対戦成績3戦全敗に終わっていたエデュケイティドリスクの1歳年下の半妹(この2頭は馬主も調教師も同じ)であり、ラフィアンHで本馬の3着に敗れた後に、ベルデイムSで2着して、その後はチャーチルダウンズディスタフH・トップフライトH・ヴァージニアH・シャーリージョーンズH・ランパートHと5連勝して既に引退していた姉に代わって本馬に挑戦状を叩きつけてきたのだった。

実はインサイドインフォメーションの主戦もスミス騎手であり、本馬とどちらに乗るのか注目されたが、スミス騎手はインサイドインフォメーションを選択。そのために本馬にはジュリー・クローン騎手が騎乗した。13戦連続で鞍上を務めたスミス騎手を取られた上に、インサイドインフォメーションより7ポンド重い126ポンドのトップハンデを課された本馬だが、それでも単勝オッズ1.35倍の1番人気に支持され、インサイドインフォメーションが同馬主同厩のリーガルソリューションとのカップリングで単勝オッズ3.25倍の2番人気となった。

スタートが切られると、レアトリートH・ネクストムーヴBCHを勝ってきた単勝オッズ5.5倍の3番人気(最低人気)馬リストアドホープが先頭に立ち、インサイドインフォメーションが2番手、本馬が少し離れた3番手につけた。三角でインサイドインフォメーションが先頭に立つと、本馬もそれを追って上がっていったが、その差は縮まるどころか逆に広がっていった。結局はインサイドインフォメーションが圧勝して、本馬は5馬身半差の2着に敗れ、地元ニューヨーク州のレースにおいて、初めて先頭でゴールできなかった。本馬も3着リストアドホープには16馬身差をつけていたから決して凡走したわけではなく、インサイドインフォメーションには7ポンドのハンデを与えていたわけでもあり、しかも歴史の結果を見るとインサイドインフォメーションはこの年のBCディスタフにおいて2着ヘヴンリープライズに実に13馬身半差をつけて勝ち、1990年代米国最強古馬牝馬の称号を得るほどの馬だったわけであるから、この敗戦は仕方が無いだろう。

本馬は続いてヘンプステッドH(GⅠ・D8.5F)に向かった。ここでも対戦相手は僅か3頭だったが、そのうち1頭はアップルブロッサムHを勝ってきたヘヴンリープライズであり、相手にとって不足は無かった。124ポンドの本馬が単勝オッズ1.75倍の1番人気、122ポンドのヘヴンリープライズが単勝オッズ2倍の2番人気で、まったくの一騎打ちムードだった。レースでは単勝オッズ27倍の最低人気馬リトルバックレスが先頭に立ち、鞍上にスミス騎手が戻ってきた本馬は2番手につけた。しかし111ポンドの軽量を活かして快調に逃げるリトルバックレスに徐々に付いていけなくなってしまい、向こう正面では5馬身差をつけられた。そして三角で後方から来たヘヴンリープライズにかわされると、何の抵抗も出来ずに失速。2着リトルバックレスに1馬身1/4差をつけて差し切り勝ちを収めたヘヴンリープライズから、実に11馬身3/4差をつけられた3着と完敗。これはもう言い訳のしようが無い敗戦だった。

その後に2歳時に患った腱の炎症が再発したために、5歳時3戦1勝の成績で現役を引退した。

競走馬としての特徴

本馬はかなり神経質な馬であり、2歳時のスピナウェイSで3着降着となったのも、その性格が大きく影響したようである。ジャーケンズ師は「彼女は興奮しやすくて非常に扱いづらい馬でした。本当に優れた馬はやらないような、あらゆる問題行動をやらかしました。普通の馬は調教後にたくさん食べるものですが、彼女はまったく食べようとしないこともしばしばありました」と述懐しており、本馬の気性は悩みの種だったという。本馬の気性難について尋ねられたスミス騎手は「女性と仲良くする最良の方法は、何をしても許してあげることですよ」と笑って応えたという。

ブリーダーズカップではまったく振るわなかったが、いずれも地元ニューヨーク州からの遠征競馬であった。2~4歳時においては、ニューヨーク州のレースにおいてトップゴールできなかった事は1度も無かった(敗戦は1位から3着に降着となったスピナウェイSのみ)のに対して、ニューヨーク州外のレースでは3戦全敗であり、神経質な性格が影響して、遠征競馬に弱かったのではないかと思われる。先にガルフストリームパーク競馬場で行われたBCジュヴェナイルフィリーズに参戦しても勝てなかった確率が高いと筆者が書いた理由はこれである。

本馬がニューヨーク州外で勝たなかった事は、後年に本馬が米国競馬の殿堂入り選考対象となった際に、賛成しなかった人達から理由として挙げられている。ブリーダーズカップがニューヨーク州で施行されていたら、また違った結果になったかもしれない。

ラフィアンHで130ポンドを背負って勝ったことがあるくらいだから、同時代の牝馬の中では指折りの実力を持っていた事は間違いないだろうし、スミス騎手も「あれ(ラフィアンH)は驚くべきことでした」と褒め称えている。

血統

Blushing Groom Red God Nasrullah Nearco Pharos
Nogara
Mumtaz Begum Blenheim
Mumtaz Mahal
Spring Run Menow Pharamond
Alcibiades
Boola Brook Bull Dog
Brookdale
Runaway Bride Wild Risk Rialto Rabelais
La Grelee
Wild Violet Blandford
Wood Violet
Aimee Tudor Minstrel Owen Tudor
Sansonnet
Emali Umidwar
Eclair
メイプルジンスキー Nijinsky Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Flaming Page Bull Page Bull Lea
Our Page
Flaring Top Menow
Flaming Top
Gold Beauty Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gold Digger Nashua
Sequence
Stick to Beauty Illustrious Round Table
Poster Girl
Hail to Beauty Hail to Reason
Lipstick

ブラッシンググルームは当馬の項を参照。

母メイプルジンスキーは本馬の馬主ホフマン夫妻の生産馬で、本馬の生産者カスケル夫妻により75万ドルという高額で購入されて競走馬生活を送った。そして、モンマスオークス(米GⅠ)・アラバマS(米GⅠ)に勝つなど9戦5勝の成績を残した。競走馬引退後はテイラーメイドファームで繁殖入りしていたが、本馬の活躍を受けて日本のシンコーファームに購入されて来日し、1995年から99年まで日本で繁殖生活を送った。米国に帰国後はスリーチムニーズファームで暮らし、2003年に大動脈瘤破裂のため他界している。本馬以外にこれといった活躍馬を産んではいないが、かなり優秀な牝系を構築している。本馬の半妹アワーカントリープレイス(父プレザントコロニー)の子にカントリーハイドアウェイ【ファーストフライトH(米GⅡ)2回・ヴェイグランシーH(米GⅢ)・ベッドオローゼズBCH(米GⅢ)】、プレザントホーム【BCディスタフ(米GⅠ)・ベッドオローゼズBCH(米GⅢ)】、孫にボカグランデ【デモワゼルS(米GⅡ)・カムリーS(米GⅡ)】、BCディスタフのレース中に散ったパインアイランド【アラバマS(米GⅠ)・ガゼルS(米GⅠ)】、ポイントオブエントリー【マンノウォーS(米GⅠ)・ソードダンサー招待S(米GⅠ)・ジョーハーシュターフクラシック招待S(米GⅠ)・ガルフストリームパークターフH(米GⅠ)・マンハッタンH(米GⅠ)・エルクホーンS(米GⅡ)】、それに日本で走ったバーディバーディ【兵庫チャンピオンシップ(GⅡ)・ユニコーンS(GⅢ)】が、本馬の半妹サイレンスビューティ(父サンデーサイレンス)の子にテイルオブエカティ【ウッドメモリアルS(米GⅠ)・シガーマイルH(米GⅠ)・ベルモントフューチュリティS(米GⅡ)・ジェロームH(米GⅡ)】がいる。

メイプルジンスキーの母ゴールドビューティは現役成績12戦8勝。3歳時にフォールハイウェイトH(米GⅡ)・テストS(米GⅡ)・ラッシュランドS・スプリングヴァレーHを勝ち、6戦無敗で迎えたヴォスバーグH(米GⅠ)では脚を骨折しながらも3着(2着に繰り上がり)して、1982年のエクリプス賞最優秀短距離馬に選出された。故障休養明けの4歳時にもトゥルーノースH(米GⅢ)・リグレットHに勝っている。メイプルジンスキーの半弟デイジュール(父ダンチヒ)は、テンプルS(英GⅡ)・キングズスタンドS(英GⅡ)・ナンソープS(英GⅠ)・スプリントC(英GⅠ)・アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)などを勝ちまくり、近代欧州競馬における最強短距離馬として鳴らした名馬。しかし現役最後のレースとなったBCスプリント(米GⅠ)のゴール直前で、コース内に伸びていた影を飛び越えた拍子に失速して敗れてしまうという珍事をやらかした事でも知られている。→牝系:F1号族⑥

母父ニジンスキーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はホフマン夫妻の所有のもと、生まれ故郷のテイラーメイドファームで繁殖入りした。7歳時に牡駒ベストユーキャンビー(父ダンチヒ)、8歳時に牝駒ストーミングビューティ(父ストームキャット)、9歳時に牝駒スカイレジェンド(父デピュティミニスター)と3頭の子を産んだ後、ゴーンウエストの子を受胎した状態で9歳11月のキーンランドセールに出品された。そして285万ドルでクールモアグループに購入され、クリークビューファームに移動した。このときに身篭っていたゴーンウエスト産駒は死産か何かだったらしく、記録に名前は無い。その後は毎年必ずストームキャットと交配され、11歳時に4番子の牡駒ピーヴィーティーリンチ、12歳時に5番子の牝駒デザートチグリス、13歳時に6番子の牡駒ハリケーンキャットを産んだ。2004年に7番子となる牡駒ポートベローロードを産んだが、その際に脚を痛めてしまった。それが原因で蹄葉炎を発症し、同年7月にクリークビューファームにおいて14歳で安楽死の措置が執られた。2011年に米国競馬の殿堂入りを果たした。

本馬の子は、ストーミングビューティが120万ドル、スカイレジェンドが80万ドルで取引されるなど、かなり高額がついたが、いずれも活躍できなかった。ベストユーキャンビーは9戦1勝、ストーミングビューティは7戦1勝、スカイレジェンドは不出走、ピーヴィーティーリンチは3戦未勝利、デザートチグリスは6戦1勝、ポートベローロードは13戦1勝だった。唯一競走馬として活躍したと言える子は、ホーリスヒルS(英GⅢ)を勝ったハリケーンキャットだが、その成績は8戦2勝止まりだった。しかしストーミングビューティの孫からはヴァイオレンス【キャッシュコールフューチュリティ(米GⅠ)・ナシュアS(米GⅡ)】が出ており、牝系を維持している。

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