タグルーダ

和名:タグルーダ

英名:Taghrooda

2011年生

鹿毛

父:シーザスターズ

母:エジマ

母父:サドラーズウェルズ

英国調教の3歳牝馬としては史上初のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS制覇を果たした英オークス馬

競走成績:2・3歳時に英仏で走り通算成績6戦4勝2着1回3着1回

誕生からデビュー前まで

英国シャドウェルスタッドにおいて、ドバイのシェイク・ハムダン殿下により生産・所有され、英国ジョン・ゴスデン調教師に預けられた。

競走生活(3歳前半まで)

2歳9月にニューマーケット競馬場で行われた芝8ハロンの未勝利ステークスで、ダニー・オニール騎手を鞍上にデビューした。このレースで単勝オッズ2.875倍の1番人気に支持されていたのは、本馬の父シーザスターズと英オークス馬カジュアルルックの間に生まれたカジュアルスマイルだった。また、単勝オッズ3倍の2番人気には、コロネーションSの勝ち馬ゴールデンオピニオンの姪に当たるガリレオ産駒のクリテリアが推されていた。レースはこの2頭の一騎打ちムードであり、本馬は5番人気ながらも単勝オッズ21倍の評価だった。しかしレースでは馬群の後方を追走した本馬が、残り1ハロン地点で左側によれながらも先頭に立ち、好位追走からゴール前で並びかけてきたカジュアルスマイルを首差の2着に抑えて勝利した。

2歳時は1戦のみで終え、3歳時は5月にニューマーケット競馬場で行われたリステッド競走プリティポリーS(T10F)から始動した。ここでは主戦となるポール・ハナガン騎手と初コンビを組んだ本馬が、単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。レースでは、逃げる単勝オッズ5倍の2番人気馬サウンドリフレクションを見るように好位を進んだ。残り2ハロン地点ではやはり先行していた単勝オッズ7.5倍の3番人気馬ヨルダンプリンセスと一緒にサウンドリフレクションに並びかけた。しばらくは先頭を並走していたが、残り1ハロン地点で本馬が一気に他2頭を引き離し、最後は2着ヨルダンプリンセスに6馬身差をつけて圧勝した。レーシングポスト紙をして「息を飲むほどの勝ち方」と言わしめたこの勝ち方により、本馬は英オークスの有力候補に躍り出た。

そして迎えた本番の英オークス(英GⅠ・T12F10Y)は、ちょうど1年前に70歳で死去した英国の名伯楽ヘンリー・セシル調教師を追悼する競走として施行された。愛1000ギニーを3馬身差で快勝してきたマーヴェラス、ブルーウインドSを快勝してきたターファシャ、メイヒルS・スウィートソレラS・UAEオークスの勝ち馬で英1000ギニー・フィリーズマイル3着のイーティマル、スウェッテナムスタッドフィリーズトライアルSを勝ってきたボリューム、ムシドラSを勝ってきたマダムシャン、デリンズタウンスタッド1000ギニートライアルS2着のパレス、ハイトオブファッションSを勝ってきたマーシュデイジー、プレステージSの勝ち馬アメージングマリアなどが主な対戦相手となった。母がジャイアンツコーズウェイの全妹で父がガリレオという血統も評価されたマーヴェラスが単勝オッズ5倍の1番人気に支持され、ターファシャが単勝オッズ5.5倍の2番人気、「距離が1マイル半に伸びても全く問題ありません」と自信満々に語っていたハナガン騎手騎乗の本馬が単勝オッズ6倍の3番人気、イーティマルが単勝オッズ9倍の4番人気と続いた。

スタートが切られると、まず先頭に立った単勝オッズ41倍の14番人気馬リガーデズをかわして、単勝オッズ10倍の5番人気馬ボリュームが逃げを打ち、本馬やマーヴェラスはいずれも馬群の中団につけた。本馬は坂の頂上からマーヴェラスを置き去りにして加速を始め、馬群の外側でタッテナムコーナーを回ると、直線には3~4番手で入ってきた。そして逃げ粘るボリュームを残り2ハロン地点でかわして先頭に立つと、内埒沿いに進路を取って先頭を走り続け、直線入り口5番手から追い上げてきた2着ターファシャに3馬身3/4差をつけて勝利した。ハナガン騎手はレース後に「1か月前から頭の中でシミュレートしていたのと寸分変わらないレース運びが出来ました」と語った。

競走生活(3歳後半)

その後は愛オークスに向かうという大方の予想に反して、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(英GⅠ・T12F)に向かった。その理由に関して、ハムダン殿下の競馬マネージャーを務めたアンガス・ゴールド氏は「殿下は彼女を3歳限りで引退させるつもりでいますので、その持っている能力に見合うだけの競走をそれまでに出来る限り使いたいと考えているのです」と説明した。また、調教の動きも非常に良かったし、精神的にも落ち着いていた(ゴールド氏は、3歳牝馬としては滅多に見ないほど優れた気性の持ち主と本馬を評している)ため、たとえ古馬牡馬が相手でも勝負になるという目算もあったようである。

対戦相手は、グレートヴォルティジュールS・ハードウィックSの勝ち馬でデビュー以来3着以下が無かったテレスコープ、キングエドワードⅦ世Sを勝ってきたイーグルトップ、前年のBCターフ・愛2000ギニーの勝ち馬でこの年はムーアズブリッジSを勝ちタタソールズ金杯・プリンスオブウェールズSで2着してきた前年のカルティエ賞最優秀3歳牡馬マジシャン、前年の愛ダービー勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS・英国際S・エクリプスS2着のトレーディングレザー、前走のエクリプスSや前年のヨークSの勝ち馬でプリンスオブウェールズS・ドバイワールドC2着のムカドラム、前走の英ダービーでオーストラリアの3着してきたロムスダールなど7頭だった。前走ハードウィックSを7馬身差で圧勝してきたテレスコープが単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気、イーグルトップが単勝オッズ5倍の3番人気、マジシャンが単勝オッズ5.5倍の4番人気だった。

スタートが切られると、トレーディングレザー陣営が用意したペースメーカー役のレイティルモアが先頭に立って後続を引き離し、ムカドラムが2番手、テレスコープが3番手で、本馬は8頭立ての7番手を進んだ。残り3ハロン地点で仕掛けると、大外を通って加速しながら直線に入り、先頭を行くムカドラムとテレスコープの2頭を追撃。残り1ハロン地点で前の2頭に並びかけると、残り150ヤード地点で突き抜けて、2着テレスコープに3馬身差をつけて快勝した。

牝馬が同競走を勝ったのは2012年のデインドリーム以来2年ぶり史上7頭目(ダリアが2回勝っているため8回目)、英国調教の牝馬による制覇は1983年のタイムチャーター以来31年ぶり史上4頭目、3歳牝馬による制覇は1976年のポーニーズ以来38年ぶり史上3頭目、英国調教の3歳牝馬による制覇は史上初、英オークスと同競走を連勝した馬も史上初(1976年にポーニーズが両競走を勝っているが、その間に仏オークスを挟んでいる)となった。

次走はヨークシャーオークス(英GⅠ・T12F)となった。デビュータントSの勝ち馬でモイグレアスタッドS・愛オークス2着のタペストリー、英オークスでターファシャから首差の3着に粘っていたボリューム、愛オークス・ヨークシャーオークス・プリティポリーSと3度のGⅠ競走2着があったギブサンクスS・ムンスターオークスの勝ち馬ヴィーナスデミロ、前年のヴェルメイユ賞でトレヴの3着だったノネット賞・レゼルヴォワ賞・プシシェ賞の勝ち馬タサダイ、前年の英オークス馬で英セントレジャー2着のタレントなど6頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.2倍の1番人気、ガリレオと2005年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬ランプルスティルトスキンの間に生まれた良血馬タペストリーが単勝オッズ9倍の2番人気、愛オークスで勝ち馬ブレスレットから半馬身差の3着してきたボリュームが単勝オッズ15倍の3番人気で、本馬が一本かぶりの人気となった。

スタートが切られると、今回もボリュームが逃げを打った。本馬は当初こそ馬群の後方につけていたが、スタートして3ハロンほど進んだところから徐々に位置取りを上げて、ボリュームを射程圏内に捉えた位置でレースを進めた。ボリュームを先頭に全馬が団子状態になって直線に入ってくると、外側からスパートした本馬が残り2ハロン地点で先頭に立った。そのまま勝つかと思われたが、本馬のさらに外側から追い上げてきたタペストリーに並ばれると競り負けて、半馬身差の2着に敗れた(3着馬タサダイは本馬から7馬身後方だった)。ハナガン騎手はレース後に「相手が強かっただけで、言い訳はありません」とコメントした。

その後は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に向かった。前年の凱旋門賞・仏オークス・ヴェルメイユ賞を制してカルティエ賞年度代表馬に選ばれたトレヴ、クリテリウム国際・ニエル賞・シェーヌ賞・フォンテーヌブロー賞など6連勝中のエクト、仏1000ギニー・仏オークス・ノネット賞など6戦全勝のアヴニールセルタン、前走のフォワ賞を勝ってきた前年の英ダービー馬ルーラーオブザワールド、ヨークシャーオークス勝利後に出た愛メイトロンSでは9着に終わっていたタペストリー、パリ大賞の勝ち馬でコロネーションC・フォワ賞2着のフリントシャー、マルレ賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞3着のドルニヤ、レーシングポストトロフィー・英セントレジャーの勝ち馬で英ダービー2着の前年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬キングストンヒル、バーデン大賞・ウニオンレネン・ゲルリング賞の勝ち馬アワーアイヴァンホウ、クリテリウムドサンクルー・グレフュール賞の勝ち馬でパリ大賞2着・仏ダービー3着のプリンスジブラルタル、前年の愛オークス勝ち馬で仏オークス2着のチキータ、タタソールズ金杯・プリンスオブウェールズS・エクリプスSなどの勝ち馬アルカジーム、シャンティ大賞・エドヴィル賞の勝ち馬でサンクルー大賞1位入線失格のスピリットジム、コリーダ賞の勝ち馬でサンクルー大賞2着のシルジャンズサガ、オカール賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬フリーポートラックスなどに加えて、日本からも、天皇賞秋・ドバイデューティーフリー・安田記念・中山記念の勝ち馬ジャスタウェイ、桜花賞・札幌記念・新潟2歳S・チューリップ賞の勝ち馬で阪神ジュベナイルフィリーズ・優駿牝馬2着のハープスター、皐月賞・菊花賞・有馬記念・宝塚記念2回などの勝ち馬ゴールドシップの3頭が参戦してきた。本馬が単勝オッズ5.5倍の1番人気に支持され、エクトが単勝オッズ7倍の2番人気、ジャスタウェイが単勝オッズ8倍の3番人気、ハープスターとアヴニールセルタンが並んで単勝オッズ9倍の4番人気で、連覇を狙うトレヴはこの年3戦3敗だったために単勝オッズ12倍の6番人気となった。

スタートが切られると、エクト陣営が用意したペースメーカー役のモンヴィロンが先頭に立ち、本馬は馬群の中団好位につけた。そして5番手で直線に入ると外側に持ち出して、残り400m地点からスパートを開始。しかし内側の経済コースを通ったトレヴとフリントシャーの2頭に届かず、アレッジド以来36年ぶり史上6頭目の凱旋門賞2連覇を果たしたトレヴから3馬身1/4差、2着フリントシャーから1馬身1/4差の3着に敗退。

その後は英チャンピオンSに出走する予定だったが、馬場状態が悪くなりそうだったために出走せず、凱旋門賞から8日後に競走馬引退が発表された。3歳時の成績は5戦3勝で、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSの制覇が評価され、この年のカルティエ賞最優秀3歳牝馬を受賞した。

ゴールド氏は「こんなに素晴らしい牝馬が競馬場を去るのは惜しいと思われるでしょう。彼女は(同じくハムダン殿下の所有馬だった)サルサビル以来の稀にみる名牝でしたから」とコメントを出した。

馬名はアラブ首長国連邦やオマーン国にいるベドウィン達が使用する詩の形式の事であるらしい。

血統

Sea The Stars Cape Cross Green Desert Danzig Northern Dancer
Pas de Nom
Foreign Courier Sir Ivor
Courtly Dee
Park Appeal Ahonoora Lorenzaccio
Helen Nichols
Balidaress Balidar
Innocence
Urban Sea Miswaki Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Hopespringseternal Buckpasser
Rose Bower
Allegretta Lombard Agio
Promised Lady
Anatevka Espresso
Almyra
Ezima Sadler's Wells Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason
Lalun
Special Forli
Thong
Ezilla Darshaan Shirley Heights Mill Reef
Hardiemma
Delsy Abdos
Kelty
Ezana Ela-Mana-Mou ピットカーン
Rose Bertin
Evisa Dan Cupid
Albanilla

シーザスターズは当馬の項を参照。

母エジマは現役成績15戦4勝、バラシアフィナーレS・サヴァルベッグSに勝っている。エジマの母エジラの全姉エバジヤの子にはエバディーラ【愛オークス(愛GⅠ)・ロワイヤルオーク賞(仏GⅠ)】、エンゼリ【アスコット金杯(英GⅠ)・ドンカスターC(英GⅢ)】、エダビヤ【モイグレアスタッドS(愛GⅠ)】、エスティメイト【アスコット金杯(英GⅠ)・ドンカスターC(英GⅡ)・クイーンズヴァーズ(英GⅢ)・サガロS(英GⅢ)】がいる。母系は仏国の世界的名門牝系フリゼット系で、エジラの父である仏ダービー馬ダルシャーンも近親(エジラのはとこの子がダルシャーン)である。→牝系:F13号族①

母父サドラーズウェルズは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はシャドウェルスタッドで繁殖入りした。

TOP