ヴェンジェンスオブレイン

和名:ヴェンジェンスオブレイン

英名:Vengeance of Rain

2000年生

鹿毛

父:ザビール

母:デーンラー

母父:デインヒル

香港国内限定有力馬だったが遠征先のドバイシーマクラシックを優勝して香港調教馬として史上初めて香港国外における2000m以上の国際GⅠ競走を制覇

競走成績:2~7歳時に豪香首で走り通算成績27戦10勝2着3回3着4回

誕生からデビュー前まで

新国ケンブリッジスタッドにおいて誕生し、豪州の不動産業者で大馬主でもあるロイド・ウィリアムズ氏とグレイム・ロジャーソン氏によって30万ドルで購入され、豪州ブラッドリー・マルザート調教師に預けられた。最初は“サブスクライブ(Subscribe)”という名前だった。

競走生活(2歳時)

02/03シーズンの2歳2月にフレミントン競馬場で行われたリステッド競走タリンダートS(T1100m)でデビュー。勝ち馬ロザリーノから2馬身差の3着という結果だった。次走のリステッド競走ヴーヴクリコS(T1200m)では、16頭立ての5番人気ながら、2着ワインストックに1馬身差で勝利した。

3戦目のサイアーズプロデュースS(豪GⅠ・T1400m)では、単勝オッズ2.5倍で堂々の1番人気に支持されたが、前走で負かしたワインストックの3馬身3/4差5着に敗れ、02/03シーズンの成績は3戦1勝となった。

競走生活(3歳時)

3歳になった直後の2003年9月に香港の馬主である周耀南(チョウ・ヤオ・ナン)氏に購入された本馬は、香港のデビッド・E・フェラリス厩舎に転厩した。この際に“ヴェンジェンスオブレイン(爪皇凌雨)”と改名されている。周耀南氏は馬主として最初に所有した馬に、有名小説「三国志演義」で曹操が乗っていた名馬「爪黄飛電」の名前をそのまま付けようとしたが、「黄」の字を誤って「皇」としたために「爪皇飛電」という名前にしてしまった。そしてそのまま「爪皇」を自身の所有馬の冠名にしていた。

移籍最初の03/04シーズンは、まずは沙田競馬場で行われた李福深C(T1200m)に出走。単勝オッズ9.6倍で14頭立ての5番人気とまずまずの支持を集めた。しかし後方から伸びず、勝ち馬オールウェイズウェルカムから5馬身1/4差の10着に敗れた。次走の上水H(T1400m)では単勝オッズ20倍で14頭立ての7番人気と、前走より評価を落とした。しかし後方から伸ばして、勝ち馬バンパーバンパーから3/4馬身差の3着と好走した。次走の香港馬主協会トロフィー(T1600m)では、単勝オッズ5.8倍の2番人気となった。ここでも後方から鋭く差してきたが、本馬よりさらに後方から追い込んだ単勝オッズ3倍の1番人気馬パーフェクトパートナー(後の香港金杯勝ち馬)に差されて、1馬身1/4差の2着に敗退。03/04シーズンは3戦未勝利に終わった。

競走生活(4歳時)

翌04/05シーズンは9月の広州H(T1600m)から始動して、単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。ここでは前走よりも後方からレースを進めたが、追い込みきれずに、アザリの1馬身半差3着に敗北。その後に右肩甲骨の疲労骨折が判明したため休養入りした。

翌年になって主戦のアンソニー・デルペッチ騎手とコンビを組むようになるとようやく素質が開花する。年明け1月のフェアリーキングプローンH(T1600m)では、単勝オッズ17倍で6番人気の低評価だった。しかし馬群の中団追走から6番手で直線に入ると、単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持されていた豪州のGⅠ競走ザBMWの勝ち馬グランドズールーを1馬身3/4差の2着に破って移籍後初勝利を挙げた。もっとも、このレースにおける斤量はグランドズールーより本馬のほうが17ポンドも軽く、実力による勝利であるとは言い難かった。

それでも次走のセンテナリーヴァーズ(香港国内GⅢ・T2000m)では、単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持された。道中は馬群の中団後方につけると、直線に入る前からスパートを開始。残り200m地点で先頭に立つと、2着フローラルダイナマイトに1馬身1/4差で快勝した。

次走の香港ダービー(香港国内GⅠ・T2000m)では、本馬が単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、グランドズールーが単勝オッズ4.8倍の2番人気、新国のGⅠ競走ベイヤークラシックを制して香港に移籍してきたラシアンパールが単勝オッズ6.1倍の3番人気となった。ここでは6番手の好位を走り、直線には3番手で入ってきた。そして残り300m地点で先頭に立つと、2着ラシアンパールに2馬身3/4差をつけて完勝し、一気に香港のトップホースの仲間入りを果たした。

しかしこのレースの僅か5日後に所有者の周耀南氏が心臓発作のため72歳で死去。そのため、本馬は周耀南氏の息子である周漢文(チョウ・ハン・ウェン)氏と、周耀南氏の周朱美(チョウ・シュ・メイ)未亡人に相続され、「周漢文及び周耀南の遺産執行者」名義となった。

続くクイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ・T2000m)では、ドンカスターH・クイーンエリザベスS2回・ジョージメインS・マッキノンS・チッピングノートンS・ランヴェットSと豪州GⅠ競走を7勝してきたグランドアーミー、ラシアンパール、前走ドバイシーマクラシックを勝ってきた加国際S・香港ヴァーズ勝ち馬フェニックスリーチ、ヴィクトリアダービー・アンダーウッドS・コーフィールドC・CFオーアSと豪州GⅠ競走を4勝した後に海外遠征に出て前走ドバイデューティーフリーを勝ってきたエルヴストローム、香港金杯・スチュワーズCを勝っていた後の安田記念馬ブリッシュラック、シンガポール航空国際Cを勝っていた独国調教馬エパロ、ダーバンジュライなど南アフリカのGⅠ競走を4勝してきたグレイズインなど、国内外の実力馬達が対戦相手となった。グランドアーミーが単勝オッズ2.7倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ5.7倍の2番人気、ラシアンパールが単勝オッズ6.3倍の3番人気となった。本馬は馬群の好位5番手を追走し、直線に入ると馬場の真ん中を突き抜けて残り200mで先頭に立った。そして追い上げてきた2着グレイズインに3/4馬身差をつけて優勝。史上初めて香港ダービーとクイーンエリザベスⅡ世Cを連勝した馬となった。

次走の香港チャンピオンズ&チャターC(香港国内GⅠ・T2400m)では、単勝オッズ1.4倍という断然の1番人気に支持された。ここでは後方3番手を追走し、直線入り口ではちょうど馬群の中団5番手だった。そしてここからベストギフトと一緒に伸びてきて、最後はベストギフトを半馬身差の2着に抑えて勝利。

04/05シーズンは6戦5勝の成績で、香港最優秀長距離馬・最優秀中距離馬に選出された。

競走生活(5歳時)

翌05/06シーズンは10月のナショナルデイC(T1400m)から始動した。単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持されたのだが、距離不足に加えて133ポンドのトップハンデが響いたのか、後方から直線で差を詰めただけで、勝ったフォーキンから4馬身半差の8着に敗れて連勝は5で止まった。

2週間後の沙田トロフィー(香港国内GⅢ・T1600m)でも、チャンピオンズマイルで香港の英雄サイレントウィットネスに初黒星をつけていたブリッシュラック共々133ポンドのトップハンデが課された。ブリッシュラックが単勝オッズ4.2倍の1番人気に支持される一方で、やや距離不適とみなされていた本馬は128ポンドの香港クラシックマイル勝ち馬ティバー(単勝オッズ5.9倍)、118ポンドのベストギフト(単勝オッズ6.4倍)より低い単勝オッズ6.8倍の4番人気となった。そして斤量が影響したのか、本馬とブリッシュラックはいずれも後方から末脚不発。勝ったのはベストギフトで、本馬は2馬身3/4差の5着、ブリッシュラックは本馬から短頭差の6着に終わった。

しかし128ポンドで出走した香港国際カップトライアル(香港国内GⅡ・T2000m)では、123ポンドのベストギフト(単勝オッズ3.6倍の2番人気)を抑えて単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。そして中団待機策から、直線で単勝オッズ17倍の4番人気馬グリーントレジャーと叩き合いながら伸び、ゴール直前で前に出て頭差で勝利した。

そして臨んだ香港C(香GⅠ・T2000m)では、単勝オッズ1.8倍(英国ブックメーカーのオッズでは単勝オッズ4倍)の1番人気に支持された。対戦相手は、オペラ賞・プリティポリーS・ナッソーSなども勝っていた前年の覇者アレクサンダーゴールドラン、英チャンピオンSで2着してきたコンセイユドパリ賞・ジャンロマネ賞・フォワ賞などの勝ち馬プライド、ドバイのシェイク・モハメド殿下が送り込んできたゴードンS・ハクスレイS2回の勝ち馬で英国際S3着のマラーヘル、米国から参戦したデルマーダービー・ラホヤHなどの勝ち馬ウィローオウィスプ、ラシアンパール、エパロ、前年のクイーンエリザベスⅡ世C勝ち馬リヴァーダンサー、グリーントレジャーなどだった。本馬はスタートから4~5番手の好位を追走。最終コーナーで外側に持ち出すと、内側で粘る先行馬勢を撫で斬りにして、最後は大外から追い込んできたプライドの追撃を首差で封じて優勝した。

この勝利でワールドレーシングチャンピオンシップのポイントが24となり、アジア所属馬として初めてワールドレーシングチャンピオンシップ総合優勝を果たした。本馬が1度も香港国外に出ずに総合優勝を達成したことは議論を呼び、翌年以降のワールドレーシングチャンピオンシップが中止になる一因となったが、本馬の快挙を貶めるものではない。

翌年はドバイに遠征してドバイシーマクラシックに出走する事を視野に入れていたが、年明け1月に心臓疾患を発症したため、生まれ故郷の新国ケンブリッジスタッドで放牧に出されて身体を癒した。

05/06シーズンの成績は4戦2勝で、香港年度代表馬の座はサイレントウィットネスのものとなったが、香港最優秀中距離馬のタイトルを獲得した。

競走生活(6歳時)

半年間の放牧により心臓は順調に回復し、翌06/07シーズンの10月に行われたHSBCプレミアボウル(香港国内GⅢ・T1200m)で実戦に復帰。この復帰初戦は距離不足、長期休養明け、133ポンドのトップハンデなど悪条件が重なったために、単勝オッズ85倍の13番人気とまったく評価されていなかった。そしてレースでも、次走の香港スプリントでサイレントウィットネス以下に圧勝するアブソルートチャンピオン(ここでは111ポンドの斤量で単勝オッズ35倍の8番人気だった)に歯が立たず、後方から少し差を詰めただけで、勝ったアブソルートチャンピオンから5馬身差の10着に終わった。

次走の香港マイルトライアル(香港国内GⅡ・T1600m)では、後の安田記念2着馬アルマダ(単勝オッズ2.7倍)と、後の香港クラシックマイル勝ち馬フローラルペガサス(単勝オッズ4.1倍)の2頭に人気が集中し、本馬は単勝オッズ12倍の6番人気だった。ここでは直線後方一気の末脚を繰り出すも、勝ったアルマダから1馬身3/4差の5着までだった。

次走の香港C(香GⅠ・T2000m)では、香港ダービートライアル・香港国際カップトライアルを勝っていたハロープリティー、前年の香港C2着後にサンクルー大賞・英チャンピオンSを勝ち凱旋門賞で2着するなど一気に開花していたプライド、香港ダービー・香港チャンピオンズ&チャターCの勝ち馬ヴィヴァパタカ、プリティポリーSでGⅠ競走5勝目を挙げてきたアレクサンダーゴールドラン、前走天皇賞秋でダイワメジャーの3着してきた弥生賞・札幌記念勝ち馬アドマイヤムーン、エリザベス女王杯で3着してきたディアデラノビアの2頭の日本馬などが対戦相手となった。上昇度が期待されたハロープリティーが単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持され、プライドが単勝オッズ3.55倍の2番人気、連覇がかかる本馬が単勝オッズ5倍の3番人気となった。ここでは馬群の好位5番手を追走し、直線に入ると抜け出しにかかった。しかしプライドとアドマイヤムーンの末脚は本馬を上回るものであり、この2頭に差されて、勝ったプライドから1馬身3/4差の3着に敗れた。しかし内容は悪くなく、少しずつ調子を取り戻していたようだった。

年明けのスチュワーズC(香港国内GⅠ・T1600m)では、前年の香港マイルを制したザデューク、香港マイルで2着だったアルマダ、前年の安田記念を制覇したブリッシュラック、ハロープリティー、ヴィヴァパタカなどとの顔合わせとなった。ここでは距離適性の面で不利であり、単勝オッズ9.1倍の4番人気だった。レースでは馬群の中団好位を追走したが、やはり勝負どころにおける反応が今ひとつで、単勝オッズ2.1倍の1番人気に応えて勝ったアルマダから4馬身半差の5着に敗れた。

次走の香港金杯(香港国内GⅠ・T2000m)では、ヴィヴァパタカ、ベストギフト、ブリッシュラックなどとの対戦となった。ヴィヴァパタカが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ2.9倍の2番人気だった。このレースで本馬は新境地を開拓した。今までは馬群の中団から後方辺りを走る競馬が主だったのに、今回はスタートから2番手につけ、直線に入る前に先頭に立つという積極的な走りを見せたのである。これで凡走したら非難を受けるのは確実であり、鞍上のデルペッチ騎手はかなりの覚悟でこの戦法を採ったはずだが、ゴール前で猛追してきたヴィヴァパタカを首差抑えて勝利した。これで本馬は、香港調教馬として初となる香港における2000m戦のGⅠ競走全制覇を達成した。

それから4週間後、前年には出走できなかったドバイシーマクラシック(首GⅠ・T2400m)に挑戦した。このレースは過去に本馬が出走したどのレースよりも対戦相手の面子が揃っていた。前年の英ダービーと一昨年のデューハーストSを勝ち英2000ギニーで2着していたサーパーシー、前年のBCターフ優勝馬でパリ大賞2着・英セントレジャー3着のレッドロックスの2頭を筆頭に、後に凱旋門賞で3年連続2着する事になるオイロパ賞・グレートヴォルティジュールS勝ち馬ユームザイン、イスパーン賞・伊ジョッキークラブ大賞の勝ち馬レイヴロック、EPテイラーS・フラワーボウル招待H・オーキッドH2回・シープスヘッドベイHなどを勝っていた米国調教馬ハニーライダー、前年のメルボルンCと有馬記念で2着していた目黒記念勝ち馬ポップロック、前哨戦のドバイシティオブゴールドなど10連勝中の独国調教馬キハーノ、モーリスドニュイユ賞勝ち馬でロワイヤルオーク賞2着のベラミーケイ、愛ダービーで3着していたヨークS勝ち馬ベストアリバイ、チリ2000ギニーの勝ち馬で米国に移籍してターフマイルS・ニッカーボッカーHなどを勝っていたホスト、ハリウッドダービー2着馬オブリガード、フジキセキ産駒の豪州調教馬スシサン、南アフリカからやって来たドバイシティオブゴールド勝ち馬オラクルウエストなど、まさしく世界中の実力馬達が本馬の前に立ち塞がった。

英国ブックメーカーのオッズでは、サーパーシーが単勝オッズ5倍の1番人気で、レッドロックスとポップロックが並んで単勝オッズ5.5倍の2番人気、ユームザインが単勝オッズ7.5倍の4番人気で、本馬はキハーノと並んで単勝オッズ10倍の5番人気だった。

スタート直後に先頭を伺った本馬は、少し下げて4番手を追走。やや行きたがる素振りもあったが、鞍上のデルペッチ騎手が上手く馬群の中に入れたために折り合いをつける事が出来た。そして直線に入ると残り300m過ぎで先頭に立ち、そのまま後続の追撃を完封。2着オラクルウエストに1馬身1/4差をつけて優勝し、香港調教馬として初めて国外の2000m以上の国際GⅠ競走勝利、及びドバイミーティングにおける勝利を飾った。また、この勝利によってサイレントウィットネスの記録を抜き、香港最多賞金獲得馬になった。

この勝利を喜んだ香港ジョッキークラブは、翌月に本馬のウェブサイトを作成した。特定の競走馬専用のウェブサイトが作成されたのは、香港競馬史上初めての事だった。さらにその翌月には本馬のドバイシーマクラシック優勝記念のオクトパスカード(香港の公共交通機関などにおいて使用できるプリペイドカードで、公共交通機関のプリペイドカードとしては世界で最初に導入されていた)が発行された。さらにフェラリス師のサイン入りキーホルダーも発売されるなど、本馬の人気は沸騰した。

帰国してきた本馬は、クイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ・T2000m)に参戦。ドバイデューティーフリーを勝ってきたアドマイヤムーンとのドバイミーティング覇者対決となった。アドマイヤムーンが単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ4.4倍の2番人気、ドバイに向かわずに地元香港で鋭気を養っていたヴィヴァパタカが単勝オッズ7.5倍の3番人気となった。レースでは中団好位追走から直線で抜け出しを図ったが、外からやって来たヴィヴァパタカとの追い比べに屈して、1馬身3/4差2着に敗れた。しかし追い込んできたアドマイヤムーンの追撃は首差封じた。

次走の香港チャンピオンズ&チャターC(香港国内GⅠ・T2400m)では、単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持された。ヴィヴァパタカが単勝オッズ2.5倍の2番人気で、3番人気以下は単勝オッズ19倍以上だったから、完全な一騎打ちムードとなった。レースでも好位を追走した本馬と、それをマークするように走ったヴィヴァパタカの一騎打ちとなるかと思われたが、残り200m地点で抜け出したヴィヴァパタカがあっさりと勝利を収め、本馬は3馬身1/4差をつけられて2着に敗れた。

06/07シーズンの成績は8戦2勝に留まったが、しかしドバイシーマクラシック制覇が評価されて、香港年度代表馬・最優秀長距離馬・最高人気馬に選出された。

競走生活(7歳時)

再び新国ケンブリッジスタッドで休養した本馬は、翌07/08シーズンは11月の国際マイルトライアル(香港国内GⅡ・T1600m)から始動した。デルペッチ騎手が騎乗停止処分を受けていたため、K・シェイ騎手に乗り代わった。シーズン初戦で距離不適のマイル戦では評価はされず、単勝オッズ27倍の9番人気だった。そして例によってゴール前で差を詰めただけで、後に香港マイルを3連覇するグッドババの2馬身半差5着に終わった。

次走の香港C(香GⅠ・T2000m)では、デルペッチ騎手が鞍上に復帰。香港国際カップトライアルを勝ってきたヴィヴァパタカ、同年のクイーンアンS・サセックスS・クイーンエリザベスⅡ世Sを勝っていた欧州のトップマイラーであるラモンティ、ドラール賞・ラクープドメゾンラフィット2回の勝ち馬ミュージカルウェイ(2015年の優駿牝馬・秋華賞の勝ち馬ミッキークイーンの母)、半年前のシンガポール航空国際Cを勝っていた日本馬シャドウゲイトなどが対戦相手となった。ヴィヴァパタカが単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気で、ラモンティが単勝オッズ4.8倍の2番人気、本馬が単勝オッズ9.4倍の3番人気となった。ここではスタートから最後方を走り直線の末脚に賭けたが、後方のまま、ラモンティの4馬身1/4差6着に敗退した。

翌年は1月のスチュワーズCに出走予定だったが回避し、2月のセンテナリーヴァーズ(香港国内GⅢ・T1800m)に出走した。ここでは単勝オッズ7.7倍の3番人気だった。しかし道中で手応えが怪しくなり、残り150m地点で競走を中止(勝ち馬ブリッシュラック)。

医師の診察により心房細動と診断された。香港競馬の規則により、心房細動を発症した馬は6か月間出走が禁止されることになっていた事もあり、陣営は本馬の現役引退を決断した。07/08シーズンの成績は3戦未勝利だった。

血統

Zabeel Sir Tristram Sir Ivor Sir Gaylord Turn-to
Somethingroyal
Attica Mr. Trouble
Athenia
Isolt Round Table Princequillo
Knight's Daughter
All My Eye My Babu
All Moonshine
Lady Giselle Nureyev Northern Dancer Nearctic
Natalma
Special Forli
Thong
Valderna Val de Loir Vieux Manoir
Vali
Derna Sunny Boy
Miss Barberie
Danelagh デインヒル Danzig Northern Dancer Nearctic
Natalma
Pas de Nom Admiral's Voyage
Petitioner
Razyana His Majesty Ribot
Flower Bowl
Spring Adieu Buckpasser
Natalma
Palatious Semipalatinsk Nodouble Noholme
Abla-Jay
School Board Reverse
Merry Marlboro
Delicious Blue Rascolnik Reliance
English Miss
All in Vain Vain
Hildegarde

ザビールは当馬の項を参照。

母デーンラーは現役成績18戦4勝、ブルーダイヤモンドS(豪GⅠ)を勝ち、豪1000ギニー(豪GⅠ)で2着した名牝。繁殖牝馬としては本馬の1歳年下の全妹ディゼル【AJCオークス(豪GⅠ)・ウッドストックマイル(豪GⅡ)・ランドウィックシティS(豪GⅢ)】も産んでいる。デーンラーの母パラティウスもパースC(豪GⅡ)を勝った実力馬。母系は豪州の活躍馬が数多く出ているオセアニアの名門牝系である。→牝系:F1号族③

母父デインヒルは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、現役最後のレースとなったセンテナリーヴァーズの2週間後に引退式が行われ、その後は生まれ故郷の新国ケンブリッジスタッドで余生を送った。2011年10月に心臓病のため11歳の若さで睡眠中に他界した。本馬を管理したフェラリス師は「現役時代から心臓が悪かったのですが、それにも関わらず実績を残してくれた素晴らしい馬でした。引退後の時間は短かったですが、幸福な余生を送ったと思っています」と追悼の言葉を述べた。

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