ケイティーズ

和名:ケイティーズ

英名:Katies

1981年生

黒鹿

父:ノノアルコ

母:モルテフォンテーヌ

母父:ポリック

歴史的名牝ペブルスを愛1000ギニーで一蹴し、繁殖牝馬としてもヒシアマゾンの母となるなど日本競馬に大きな足跡を残す

競走成績:2・3歳時に英愛で走り通算成績10戦4勝2着2回3着1回

誕生からデビュー前まで

愛国の馬産家R・M・オーフェール氏の生産馬で、1歳時のセリにおいて1万1000ギニーでJ・フィッシャー氏という人物に購入され、愛国M・J・ライアン調教師に預けられた。

競走生活

2歳9月にニューマーケット競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスでデビューするが、7着に敗退。次走はリングフィールド競馬場で行われた芝7ハロン132ヤードの未勝利ステークスとなり、1馬身差で勝ち上がった。しかしニューベリー競馬場で出たスウィープS(T7F66Y)は11着に惨敗し、2歳時の成績は3戦1勝に終わった。

3歳時は4月にケンプトンパーク競走場で行われたスウィープSから始動したが着外だった。しかし次走のコーンSで2勝目を挙げ、続くプリンセスエリザベスS(T8.5F)では、後のヨークシャーオークス2着馬カンズの3着と好走。このレース後に、本馬の素質を見込んだテリー・P・ラムズデン氏という人物がフィッシャー氏から50万ポンドで本馬を購入した。

プリンセスエリザベスSの1か月後には愛1000ギニー(愛GⅠ・T8F)に出走。単勝オッズ21倍の人気薄だったが、フィリップ・ロビンソン騎手を鞍上に、最終コーナーで先頭に立つと、カラー競馬場の長い直線をそのまま押し切り、2着アリアンナに首差、3着ソーファインにはさらに短頭差で優勝した。

次走のコロネーションS(英GⅡ・T8F)では、英1000ギニーを勝ってきたペブルスとの英愛1000ギニー馬対決となった。ペブルスの主戦もロビンソン騎手だったが、ロビンソン騎手は本馬を選択。ペブルスには名手レスター・ピゴット騎手が騎乗した。ロビンソン騎手の選択にも関わらず、ペブルスが単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持され、本馬はネルグウィンSでペブルスの1馬身差2着だったライプチヒや、愛1000ギニー3着馬ソーファインよりも人気薄の単勝オッズ6.5倍の4番人気止まりだった。レースではペブルスが2番手を先行し、本馬はそれをマークするように追走。直線を向くとペブルスが抜け出したが、本馬もそれを猛然と追撃して2頭の一騎打ちとなった。後続を大きく引き離す2頭の激戦は、ゴール前で本馬がペブルスを突き放して決着。翌年にエクリプスS・英チャンピオンS・BCターフを制するこの歴史的女傑に1馬身半差をつけて完勝した。3着ソーファインはペブルスからさらに6馬身も後方であり、この年の3歳牝馬マイル路線の中では本馬が抜けた実力を有している事を立証した。

しかし、次走のチャイルドS(英GⅢ・T8F)では、英1000ギニーでペブルスの3馬身差2着だったマイスエルリームに5馬身差をつけられて2着に敗れた。

秋は牡馬相手のクイーンエリザベスⅡ世S(英GⅡ・T8F)に出走。最後の直線で、愛国際S・デズモンドS・クインシー賞を勝ってきたテレプロンプター(翌年のアーリントンミリオン優勝馬。カルティエ賞年度代表馬に2度選ばれたウィジャボードの母の全兄に当たる)との一騎打ちとなったが、首差敗れて2着となった。しかし前年のクイーンエリザベスⅡ世Sを勝っていたサックフォードはさらに6馬身差の3着であり、その能力は牡馬相手でも遜色ない事を立証することは出来た。

このレースの後、本馬は繁殖牝馬セールに上場されたが、280万ギニー(当時の為替レートで10億円以上)という高額な価格設定が影響して買い手はつかなかった。そのため、その後も現役を続行すると思われたが、結局以降はレースに出走することなく、そのまま3歳時7戦3勝の成績で引退した。

血統

ノノアルコ Nearctic Nearco Pharos Phalaris
Scapa Flow
Nogara Havresac
Catnip
Lady Angela Hyperion Gainsborough
Selene
Sister Sarah Abbots Trace
Sarita
Seximee Hasty Road Roman Sir Gallahad
Buckup
Traffic Court Discovery
Traffic
Jambo Crafty Admiral Fighting Fox
Admiral's Lady
Bank Account Shut Out
Balla Tryst
Mortefontaine ポリック Relic War Relic Man o'War
Friar's Carse
Bridal Colors Black Toney
Vaila
Polaire Le Volcan Tourbillon
Eroica
Stella Polaris Papyrus
Crepuscule
Brabantia Honeyway Fairway Phalaris
Scapa Flow
Honey Buzzard Papyrus
Lady Peregrine
Porthaven Portlaw Beresford
Portree
Peaceful Light Le Phare
Turtledove

ノノアルコは当馬の項を参照。

母モルテフォンテーヌは現役成績29戦1勝と振るわなかったが、モルテフォンテーヌの全兄ポリフォトはナンソープS・キングジョージS・アランベール賞・サンジョルジュ賞・テンプルS・パームビーチSに勝つなど25戦10勝の成績を残した名短距離馬だった。モルテフォンテーヌは本馬以外に特筆できる産駒を出してはいないが、本馬の半姉ポリフォンテーヌ(父ボールドラッドUSA)の孫にはザギーザー【ゴードンS(英GⅢ)】が、本馬の半妹ラモルトラ(父ボールドラッドIRE)の孫にはペッレクサ【エクリプス賞(仏GⅢ)】、曾孫には日本の地方競馬で活躍したショウリダバンザイ【浦和桜花賞・ロジータ記念・道営記念】がいる。また、本馬の半兄ミルフォンテーヌ(父ミルリーフ)はステークス競走の勝ちこそ無かったが10戦6勝の成績を挙げて種牡馬入りしている。→牝系:F7号族①

母父ポリックはレリックの子で、現役成績は25戦7勝、アランベール賞などを勝ち、フォレ賞・アベイドロンシャン賞で2着した短距離馬だった。種牡馬としては当初英国で供用されてポリフォトなどを出し、その後日本に輸入されてクイーンS勝ち馬ヒダコガネなどを出した。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は英国で繁殖入りした。5歳時にクリスと交配された後に米国に移され、クリスタルスプリングスファームで繋養された。6歳時に産んだ初子の牝駒ケイティーズファースト(父クリス)は19戦4勝、リメンバランスデイS・セルクル賞を勝っている。7歳時に産んだ2番子の牝駒ジェットルート(父アリダー)は11戦3勝、ステークス競走の勝ちは無いが、R&RランチSとクイーンブリーダーズカップSで2着している。8歳時に産んだ3番子の牝駒ホワットケイティーディド(父ヌレイエフ)は8戦3勝、タンティエーム賞を勝っている。

本馬は8歳11月にファシグ・ティプトン社が主催した繁殖牝馬セールにアリダーの子を受胎した状態で上場され、日本人馬主の阿部雅一郎氏により100万ドルで落札された。中野隆良調教師の助言を受けた安部氏の判断により、本馬はその後も米国に残り、ケンタッキー州テイラーメイドファームに預託される形で繋養された。9歳時に産んだ4番子の牡駒ヒシアリダー(父アリダー)は日本で走って20戦5勝の成績を残し、後に血統が評価されて種牡馬入りし、地方競馬の活躍馬を複数出した。

10歳時に産んだ5番子の牝駒が言わずと知れたヒシアマゾン(父シアトリカル)である。ヒシアマゾンは現役成績20戦10勝、阪神三歳牝馬S(GⅠ)・エリザベス女王杯(GⅠ)・ニュージーランドトロフィー四歳S(GⅡ)・ローズS(GⅡ)・オールカマー(GⅡ)・京都大賞典(GⅡ)・クイーンC(GⅢ)・クリスタルC(GⅢ)・クイーンS(GⅢ)を勝ち、有馬記念(GⅠ)・ジャパンC(GⅠ)で2着して、日本最強牝馬の名をほしいままにした。

11歳時には6番子の牡駒ヒシフジヤマ(父ベーリング)を産んだが。この子は8戦未勝利に終わった。12歳時に産んだ7番子の牡駒ヒシイースター(父シアトルダンサー)は27戦3勝。13歳時に産んだ8番子の牝駒ヒシナイル(父エーピーインディ)は29戦2勝だったが、そのうち1勝がフェアリーS(GⅢ)だった。14歳時に産んだ9番子の牝駒ヒシレイホウ(父デイジュール)は25戦4勝。15歳時に産んだ10番子の牝駒ヒシピナクル(父シアトリカル)は24戦4勝、ローズS(GⅡ)に勝ち、秋華賞(GⅠ)で3着している。

ここまで毎年のように子を産んできた本馬だったが、16・17歳時は産駒がいなかった。17歳時の1998年11月にキーンランド繁殖牝馬セールに出品され、後にベルモントS・BCクラシックの勝ち馬ドロッセルマイヤーの生産者となるアーロン・ジョーンズ氏とマリー・ジョーンズ夫人により62万5千ドルで購入され、安部氏の元を離れることになった。所有者が変わって以降も引き続きテイラーメイドファームで繋養された。18歳時に産んだ11番子の牡駒マチカネウコン(父シアトリカル)は3戦1勝。19歳時に産んだ12番子の牝駒ワードオブマウス(父セイントバラード)は不出走に終わった。20歳時に産んだ13番子の牡駒ロードレンジャー(父フォレストリー)は26戦2勝。21・22歳時には産駒がおらず、23歳時に産んだ14番子の牡駒ブロードウェイバウンド(父シアトリカル)は3戦未勝利だった。本馬の産駒14頭のうちステークス競走の勝ち馬は5頭いるが、全て牝馬である。ブロードウェイバウンドを産んだ2004年の8月、本馬は自力で立ち上がる事が出来なくなったために安楽死の措置が執られ、遺体はテイラーメイドファームに埋葬された。本馬の死については米ブラッドホース誌も「ヒシアマゾンの母ケイティーズ死す」の題で報じている。

後継繁殖牝馬としては競走馬引退後に日本に輸入されたケイティーズファースト、ホワットケイティーディドの2頭が活躍しており、前者は2007年の中央競馬年度代表馬アドマイヤムーン【ドバイデューティーフリー(首GⅠ)・宝塚記念(GⅠ)・ジャパンC(GⅠ)・弥生賞(GⅡ)・札幌記念(GⅡ)・京都記念(GⅡ)・札幌2歳S(GⅢ)・共同通信杯(GⅢ)】や、ダガーズアラベスク【東京2歳優駿牝馬・ローレル賞】の祖母となり、後者は2008年の中央競馬最優秀短距離馬スリープレスナイト【スプリンターズS(GⅠ)・CBC賞(GⅢ)・北九州記念(GⅢ)】の母となっている。また、ジェットルートは日本に輸入されていないが、その娘のシルクフレアーが日本に輸入されてプレイアンドリアル【京成杯(GⅢ)・ジュニアグランプリ】の祖母となっている。ヒシレイホウの孫には佐賀競馬で活躍中のプルーフポジティブ【宝満山賞(SⅡ)・鶴見岳賞(SⅡ)・六角川賞(SⅡ)】がいる。このように本馬は日本競馬に大きな功績を残している。

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