和名:サイトシーク |
英名:Sightseek |
1999年生 |
牝 |
栗毛 |
父:ディスタントビュー |
母:ヴィヴィアナ |
母父:ヌレイエフ |
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名伯楽ロバート・フランケル調教師をして自身が手掛けた最高の牝馬と言わしめ、米国古馬牝馬路線で圧勝を続けたがエクリプス賞には縁が無かった無冠の女王 |
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競走成績:3~5歳時に米で走り通算成績20戦12勝2着5回 |
誕生からデビュー前まで
サウジアラビアのハーリド・ビン・アブドゥッラー王子が所有する米国ケンタッキー州ジャドモントファームの生産・所有馬で、アブドゥッラー王子が所有して米国で走った馬の大半を任されていたロバート・J・フランケル調教師に預けられた。多くの名馬を手掛けたフランケル師だが、自分が手掛けた中で最高の牝馬と評価したのが本馬である。
競走生活(3歳時)
デビューはかなり遅く、3歳7月にサラトガ競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦だった。このレースでは、ケンタッキーオークス・ガゼルH・ベルデイムS・スピンスターSとGⅠ競走4勝を挙げていた名牝ディスピュートと名種牡馬シーキングザゴールドの間に産まれたアドヴァーシティが単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持されており、主戦となるジェリー・ベイリー騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ2.7倍で僅差の2番人気だった。レース序盤は馬群の中団やや後方を進んだ本馬は、三角から四角にかけて一気に位置取りを上げて直線入り口で先頭に立ち、後続を引き離して、2着トゥルーリーアレジェンドに7馬身3/4差をつけて圧勝した。
翌8月のサラトガ競馬場ダート8ハロンの一般競走では、単勝オッズ1.85倍の1番人気に支持された。今回はスタートから2番手を進み、四角で先頭に立った。しかし後方から上がってきた単勝オッズ4.5倍の2番人気馬タイトルナインに外側から並びかけられ、叩き合いに競り負けて3/4馬身差の2着に終わった。
翌9月のベルモントパーク競馬場ダート8.5ハロンの一般競走では、単勝オッズ1.35倍という圧倒的な1番人気に支持された。好スタートを切った前走と異なりスタートは今ひとつだったが、それでもすぐに先頭争いに加わった。そして三角から後続との差をどんどん広げ始め、直線入り口では7~8馬身もの差をつけた。後は直線を独走して、2着クリアディスティニーに12馬身差をつけて大圧勝した。
翌10月にはキーンランド競馬場に向かい、レイヴンランS(GⅢ・D7F)に出走。セイフリーケプトSを勝ってきたミスローディ、フォワードギャルSの勝ち馬テイクザケーキといったGⅢ競走の勝ち馬が2頭参戦していたが、グレード競走はおろかステークス競走の勝ちも無い本馬は上記2頭より6ポンド軽い最軽量となった。そのために本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、ミスローディは単勝オッズ6.2倍の2番人気、テイクザケーキは単勝オッズ7倍の3番人気だった。今回は前走以上にスタートが悪かった本馬だが、それでもミスローディと一緒に先行集団に加わった。そして直線に入ると先に抜け出そうとしたミスローディを並ぶ間もなく差し切り、最後は3馬身1/4差をつけて完勝した。
ニューヨーク州に戻ってきた本馬は、11月のトップフライトH(GⅡ・D8F)に出走した。このレースには、ラフィアンH・シカゴBCH・オナラブルミスHの勝ち馬でベルデイムS2着のマンディーズゴールドという強敵が出走していた。しかし斤量はマンディーズゴールドの120ポンドに対して、本馬は113ポンド。この斤量差が影響して、本馬が単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持され、マンディーズゴールドは単勝オッズ3.65倍の2番人気となった。今回は普通にスタートを切った本馬は、逃げる単勝オッズ33.25倍の7番人気馬ゾンクを見るように2~3番手を追走した。そのままの態勢で直線に入ると、直線半ばでゾンクをかわして1馬身3/4差で勝利。直線の末脚が不発に終わったマンディーズゴールドは4着だった。3歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は5戦4勝だった。
競走生活(4歳時)
4歳時は米国西海岸のサンタアニタパーク競馬場に移動し、1月から始動。まずはGⅠ競走初挑戦となるサンタモニカH(GⅠ・D7F)に出走した。このレースにおける強敵は、クイーンエリザベスⅡ世CCS・ラブレアS・ラモナH・ハリウッドオークス・エルエンシノSの勝ち馬でデルマーオークス・アップルブロッサムH・ミレイディBCH・ヴァニティHと4度のGⅠ競走2着があったアフルーエント、カリフォルニアブリーダーズチャンピオンSの勝ち馬でアグリームH2着のキティオンザトラックだった。115ポンドの本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気、119ポンドのアフルーエントが単勝オッズ3.5倍の2番人気、117ポンドのキティオンザトラックが単勝オッズ6.6倍の3番人気となった。レースではキティオンザトラックが逃げを打ち、本馬は馬群の中団、アフルーエントは最後方から競馬を進めた。四角でキティオンザトラックが失速すると本馬が入れ代わりに先頭に立ち、そのまま直線を押し切ろうとした。しかし後方から来たアフルーエントに差されて、半馬身差の2着に敗れた。
翌2月のラカナダS(GⅡ・D9F)では、ラブレアS・エルエンシノSを連勝してきたゴットココ、アスタリタS・カムリーSの勝ち馬でBCジュヴェナイルフィリーズ・エイコーンS・ガゼルHと3度のGⅠ競走3着があったベラベルーシの2頭が強敵だった。本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気、ゴットココが単勝オッズ3.1倍の2番人気、ベラベルーシが単勝オッズ4倍の3番人気となった。今回ベイリー騎手に代わって本馬の手綱を取ったパトリック・ヴァレンズエラ騎手は、スタートしてすぐに本馬を先頭に立たせた。そのまま後続を引き付けながら逃げ続け、直線でも逃げ切る勢いだったが、ゴール前でゴットココに差されて3/4馬身差の2着に敗れた。
翌3月のサンタマルガリータH(GⅠ・D9F)では、ゴットココ、前走3着のベラベルーシ、サンタマリアH・プリンセスS・バヤコアH2回の勝ち馬でスピンスターS2着・BCディスタフ4着のスターラーが主な対戦相手となった。スターラーが単勝オッズ2.6倍の1番人気、ゴットココが単勝オッズ3倍の2番人気、今回はホセ・ヴァルディヴィア・ジュニア騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ3.5倍の3番人気となった。今回もスタートから逃げを打った本馬だったが、2番手を追走してきたスターラーに直線入り口で捕まると、引き離されて2馬身差の2着に敗れた。
カリフォルニア州で3戦して全て2着と勝ち切れなかった本馬は、5月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたヒューマナディスタフH(GⅠ・D7F)に出走した。スカイラヴィルS・プリンセスルーニーH2回・ケンタッキーBCS・チャーチルダウンズデビュータントS・フォワードギャルSの勝ち馬で前年のヒューマナディスタフH2着のゴールドムーバー、前年のレイヴンランSで本馬の2着に敗れた後は1戦未勝利だったミスローディ、亜オークスを勝って米国に移籍してきたパルマロラ、前年のレイヴンランSで本馬の9着に終わった後にラブレアSで2着してラスフローレスHを勝っていたスプリングメドウなどが対戦相手となった。ベイリー騎手が鞍上に復帰した本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、ゴールドムーバーが単勝オッズ4倍の2番人気、ミスローディが単勝オッズ10倍の3番人気となった。過去2戦は逃げた本馬だが、今回は中団待機策を選択。そして四角で一気にまくって先頭に踊り出た。そして後方で2着争いを演じるゴールドムーバーとミスローディの2頭を尻目に直線を独走し、2着ゴールドムーバーに4馬身半差をつけて圧勝。これでGⅠ競走勝ち馬となった。
その後は6月のオグデンフィップスH(GⅠ・D8.5F)へと向かった。ここでは、アッシュランドS・スピンスターS・アルキビアデスS・フェアグラウンズオークスなどの勝ち馬でケンタッキーオークス・ガゼルH・アップルブロッサムH2着のテイクチャージレディー、デモワゼルS・コティリオンH・テンプテッドS・ネクストムーヴHの勝ち馬でスピナウェイS2着のスモークンフローリック、前年暮れのトップフライトH4着後にアップルブロッサムHで3着してピムリコBCディスタフHを勝っていたマンディーズゴールドなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.05倍の1番人気、テイクチャージレディーが単勝オッズ2.65倍の2番人気、スモークンフローリックが単勝オッズ6.9倍の3番人気となった。スタートが切られるとテイクチャージレディーが先頭に立ち、本馬はその直後の2番手を追走した。直線入り口で本馬がテイクチャージレディーをかわして先頭に立つと、後は独走。2着テイクチャージレディーに5馬身差をつけて圧勝した。
翌7月のゴーフォーワンドH(GⅠ・D9F)では、亜国のGⅠ競走セレクシオン大賞・エンリケアセバル大賞の勝ち馬で米国移籍後にスピンスターSを勝ちアップルブロッサムHで3着していたミスリンダ、マザーグースS・ナッソーカウンティBCSの勝ち馬ノンサッチベイなどが対戦相手となった。前走までは他馬から多少のハンデを貰う立場だった本馬だが、ここでは他馬勢より5~9ポンド重い121ポンドのトップハンデを課せられた。それでも本馬が単勝オッズ1.15倍という圧倒的な1番人気に支持され、ミスリンダが単勝オッズ10.5倍の2番人気となった。レースでは逃げるミスリンダを見るように2~3番手を追走。三角でミスリンダをかわして先頭に立つと、どんどん後続との差を広げていった。直線入り口では既に7~8馬身の差をつけると、最後は2着シーズゴットザビートに11馬身半差をいう記録的大差をつけて圧勝した。
その後は風邪を引いたために少し休養して、10月のベルデイムS(GⅠ・D9F)に出走した。英国から移籍してきて初戦のガゼルHを勝ってきたバイザスポーツ、ケンタッキーオークス・エイコーンSの勝ち馬でテストS2着のバードタウン、アラバマS・デラウェアオークスの勝ち馬アイランドファッション、オグデンフィップスHで4着だったスモークンフローリック、パーソナルエンスンHを勝ちラフィアンHで3着してきたパッシングショット、パーソナルエンスンH・ラカナダS・モリーピッチャーBCHなどの勝ち馬で前年のベルデイムS3着のサマーコロニーの6頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.3倍という断然の1番人気に支持され、バイザスポーツが単勝オッズ8.3倍の2番人気、バードタウンが単勝オッズ12.2倍の3番人気となった。スタートが切られるとバードタウンが先頭に立ち、スモークンフローリックやアイランドファッションなどもそれを追って先行。本馬は前方の先頭争いを見るように7頭立ての5番手を追走した。三角でベイリー騎手が本馬に合図を送ると、即座に反応して四角では先頭に立った。直線でベイリー騎手は鞭を使わずに手と足だけで本馬を追い続け、2着バードタウンに4馬身半差をつけて圧勝した。
その後は再びカリフォルニア州に向かい、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCディスタフ(GⅠ・D9F)に参戦した。対戦相手は、サンタマルガリータHで4着に終わるも前走レディーズシークレットHを勝って立て直してきたゴットココ、ベルデイムSで3着だったバイザスポーツ、オグデンフィップスH2着後にアーリントンメイトロンH・スピンスターSを勝ってきたテイクチャージレディー、ハリウッドスターレットS・アッシュランドS・サンタイネスSの勝ち馬でラスヴァージネスS・サンタアニタオークス2着のエローラヴ、テストS・フェアグラウンズオークスの勝ち馬でアッシュランドS・エイコーンS・ガゼルH2着のレディタク、ハリウッドBCオークス・セニョリータSの勝ち馬アドレーションの計6頭だった。本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持され、ゴットココが単勝オッズ5倍の2番人気、テイクチャージレディーが単勝オッズ7.8倍の3番人気、エローラヴが単勝オッズ9.8倍の4番人気と続いた。スタートが切られると単勝オッズ41.7倍の最低人気馬アドレーションが先頭に立ち、テイクチャージレディー、エローラヴなども先行。本馬は7頭立ての6番手という後方からレースを進めた。しかし三角を通過して四角に入ってきても本馬の反応は悪く、直線入り口でもまだ6番手。そして直線でも伸びず、まんまと逃げ切って勝ったアドレーションから10馬身半差をつけられた4着と惨敗してしまった。
4歳時の成績は8戦4勝で、勝ち星は全てGⅠ競走だったが、最後のBCディスタフの印象が悪かったようで、エクリプス賞最優秀古馬牝馬の座は、この年に本馬と対戦が無かった前年のエクリプス賞年度代表馬アゼリ(同年5戦4勝でGⅠ競走は3勝)に奪われてしまった。
競走生活(5歳時)
翌5歳時はそのままサンタアニタパーク競馬場に留まり、1月のサンタモニカH(GⅠ・D7F)に出走。ベルデイムS6着後にラブレアSを勝っていたアイランドファッション、BCディスタフで3着だったゴットココなどが対戦相手となった。122ポンドの本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気、120ポンドのアイランドファッションが単勝オッズ2.5倍の2番人気、119ポンドのゴットココが単勝オッズ3.9倍の3番人気だった。今回も6頭立ての5番手と後方からレースを進めた本馬だったが、BCディスタフと同様に反応が悪く、直線でも後方のままで、好位から抜け出して勝ったアイランドファッションから4馬身3/4差の4着に敗退。これで本馬はサンタアニタパーク競馬場では5戦全敗となってしまい、管理するフランケル師も本馬が同競馬場を苦手とする事を認めざるを得なくなった。そして本馬は、2度とカリフォルニア州のレースに出ることは無かった。
その後はフロリダ州ガルフストリームパーク競馬場に向かい、3月のランパートH(GⅡ・D9F)に出走した。ここでは、ブラックアイドスーザンS・デモワゼルS・セイビンHの勝ち馬ロアエモーション、チャーチルダウンズディスタフH・フォールズシティHの勝ち馬リードストーリーなど3頭だけが対戦相手となった。121ポンドの本馬が単勝オッズ1.5倍の1番人気、前走セイビンHを5馬身半差で勝ってきた118ポンドのロアエモーションが単勝オッズ2.5倍の2番人気、117ポンドのリードストーリーが単勝オッズ10.7倍の3番人気となった。スタートが切られるとロアエモーションが先頭に立ち、本馬が2番手につけた。ロアエモーションと本馬が他2頭をどんどん引き離し、道中では10馬身以上の差がついた。特にペースは速くなかったが、単騎で逃げられなかったロアエモーションは三角に入ると徐々に失速。代わって先頭に立った本馬がそのまま独走し、2着に突っ込んできた単勝オッズ21.6倍の最低人気馬リダブルドミスに7馬身半差をつけて圧勝した。
次走は4月のルイビルBCH(GⅡ・D8.5F)となった。前走3着のリードストーリー、ダヴォナデイルS・レイヴンランSの勝ち馬でマザーグースS2着・ケンタッキーオークス3着のイェル、ラカナダSの勝ち馬キャットファイター、ターンバックジアラームHの勝ち馬ポーカスホーカスなどが対戦相手となった。122ポンドの本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、114ポンドのイェルが単勝オッズ6.2倍の2番人気、116ポンドのキャットファイターが単勝オッズ7.8倍の3番人気、116ポンドのリードストーリーが単勝オッズ11倍の4番人気となった。スタートが切られるとキャットファイターが先頭に立ち、本馬は2~3番手につけた。そのままの態勢で三角に入ってきたが、ここで最後方を追走していたリードストーリーが猛然と上がってきて先頭を奪った。それに食らいついたのは本馬ではなくイェルであり、本馬は直線で徐々に差を広げられていった。結局、勝ったリードストーリーから7馬身差をつけられた4着に敗退してしまった。
次走は2連覇がかかる6月のオグデンフィップスH(GⅠ・D8.5F)となった。対戦相手は僅か3頭だったが、いずれも強敵だった。まずは、BCジュヴェナイルフィリーズ・メイトロンS・フリゼットS・シュヴィーHを勝っていた一昨年のエクリプス賞最優秀2歳牝馬ストームフラッグフライング。次に、前年のベルデイムSでは7着に終わるも、前々走のベッドオローゼズBCHを勝ち、前走シュヴィーHで2着してきたパッシングショット。そして、BCディスタフ・サンタマルガリータ招待H・アップルブロッサムH3回・ミレイディBCH2回・ヴァニティH2回と既にGⅠ競走9勝を挙げていたアゼリだった。123ポンドのアゼリが単勝オッズ1.8倍の1番人気、120ポンドの本馬が単勝オッズ3.35倍の2番人気、117ポンドのストームフラッグフライングが単勝オッズ4倍の3番人気、116ポンドのパッシングショットが単勝オッズ12.7倍の4番人気となった。スタートが切られるとアゼリが先頭に立ち、本馬が直後の2番手、残り2頭がさらにその直後につけ、少頭数らしく全馬が一団となって進んだ。三角手前で本馬が仕掛けてアゼリをかわして先頭に立った。他馬3頭はどれも本馬に付いてくる事が出来ず、直線入り口で5馬身ほどの差をつけて勝負を決めた。直線では流すように走り、2着ストームフラッグフライングに3馬身1/4差をつけて快勝。さらに6馬身半差の3着にパッシングショットが入り、アゼリはさらに2馬身差の4着最下位だった。
次走はこれまた2連覇がかかる8月のゴーフォーワンドH(GⅠ・D9F)となった。アゼリとストームフラッグフライングの2頭もオグデンフィップスHから直行してきていた。122ポンドの本馬が単勝オッズ1.75倍の1番人気に支持され、120ポンドのアゼリが単勝オッズ3.95倍の2番人気、117ポンドのストームフラッグフライングが単勝オッズ4.05倍の3番人気となった。スタートが切られるとやはりアゼリが先頭に立ち、本馬が2番手につけた。しかしオグデンフィップスHと比べるとペースはかなり緩く、アゼリは楽に逃げていた。そのために四角で本馬が加速してもアゼリにはまだ余力があり、本馬に抜かさせなかった。直線に入ると本馬とアゼリがほぼ並んで2頭の一騎打ちとなった。実況アナウンサーが「直線で先頭にいるのはアメリカで最も優れた牝馬2頭です!」と絶叫した好勝負となったが、最後はアゼリが意地を見せて勝利を収め、ゴール前で遅れた本馬は1馬身3/4差の2着に敗れた。
次走は9月のラフィアンH(GⅠ・D8.5F)となった。アゼリも前走3着のストームフラッグフライングも不在であり、亜国のGⅠ競走ヒルベルトレレーナ大賞・コパデプラタ大賞を勝った後に米国に移籍して前走クレメントLハーシュHを勝ってきたミスローレンくらいしか強敵と言える馬はいなかった。122ポンドの本馬が単勝オッズ1.25倍の1番人気に支持され、117ポンドのミスローレンが単勝オッズ5.6倍の2番人気となった。本馬の鞍上は左手を骨折して休養中だったベイリー騎手からジョン・ヴェラスケス騎手に代わっていた。しかしレースでは乗り代わりを感じさせない圧倒的な走りを披露。逃げる単勝オッズ13.1倍の4番人気馬ポーカスホーカスを見るように3番手を追走すると、三角手前で先頭に立って延々と後続馬との差を広げ続け、2着ポーカスホーカスに11馬身1/4差をつけて大圧勝した。
その後は2連覇を目指してベルデイムS(GⅠ・D9F)に出走した。このレースにもアゼリは不在だったが、ゴーフォーワンドH3着後に出走したパーソナルエンスンHでアゼリを2着に破って勝っていたストームフラッグフライング、フリゼットS・テストS・アラバマSの勝ち馬でエイコーンS2着のソサエティセレクションという強敵2頭が出走してきた。今回はハビエル・カステリャーノ騎手とコンビを組んだ本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持され、ストームフラッグフライングが単勝オッズ5.4倍の2番人気、ソサエティセレクションが単勝オッズ5.7倍の3番人気となった。今回は本馬がスタートから先頭に立ち、後続を引き付けながら逃げを打った。ペースはそれほど速くなく、自分のペースで走ることが出来た本馬は、三角から徐々に後続馬との差を広げ始めた。直線入り口で5馬身ほどの差をつけると、後は馬なりのまま走り、2着ソサエティセレクションに2馬身3/4差をつけて完勝した。
その後はBCディスタフに向かうかと思われたが、フランケル師が、ブリーダーズカップが行われるローンスターパーク競馬場は本馬に向かないと判断したため出走せず、そのまま5歳時7戦4勝の成績で競走馬を引退した。
エクリプス賞最優秀古馬牝馬の座は、前年同様アゼリとの争いとなった。両馬ともGⅠ競走3勝で、直接対決も1勝1敗の五分。しかし投票の結果選ばれたのはアゼリだった。本馬はこれだけの実績を残しながら、遂にエクリプス賞では無冠となってしまった。本馬が勝つときの圧勝ぶりはアゼリを遥かに上回るインパクトがあったが、米国西海岸に本拠地を置きながらも他地区でも活躍したアゼリと異なり、本馬は米国東海岸地区以外の成績が芳しくなく、その点ではアゼリに一歩を譲る印象があったのかもしれない。
血統
Distant View | Mr. Prospector | Raise a Native | Native Dancer | Polynesian |
Geisha | ||||
Raise You | Case Ace | |||
Lady Glory | ||||
Gold Digger | Nashua | Nasrullah | ||
Segula | ||||
Sequence | Count Fleet | |||
Miss Dogwood | ||||
Seven Springs | Irish River | Riverman | Never Bend | |
River Lady | ||||
Irish Star | Klairon | |||
Botany Bay | ||||
La Trinite | Lyphard | Northern Dancer | ||
Goofed | ||||
Promessa | Darius | |||
Peseta | ||||
Viviana | Nureyev | Northern Dancer | Nearctic | Nearco |
Lady Angela | ||||
Natalma | Native Dancer | |||
Almahmoud | ||||
Special | Forli | Aristophanes | ||
Trevisa | ||||
Thong | Nantallah | |||
Rough Shod | ||||
Nijinsky Star | Nijinsky | Northern Dancer | Nearctic | |
Natalma | ||||
Flaming Page | Bull Page | |||
Flaring Top | ||||
Chris Evert | Swoon's Son | The Doge | ||
Swoon | ||||
Miss Carmie | T. V. Lark | |||
Twice Over |
父ディスタントビューはミスタープロスペクター直子で、母がロベールパパン賞・モルニ賞とGⅠ競走2勝のセヴンスプリングスという良血馬。本馬と同じジャドモントファームの生産馬で、現役時代は主に欧州で走り通算成績7戦2勝2着2回。未勝利馬の身で果敢に挑戦した英2000ギニーで9番人気ながらミスターベイリーズの5着と好走。その後は徹底してマイル路線を進み、未勝利戦を勝った後のセントジェームスパレスS(英GⅠ)でグランドロッジの頭差2着。続くサセックスS(英GⅠ)ではバラシア、グランドロッジ、ミスターベイリーズ、ビッグストーンといった強敵を大外から豪快に差し切ってコースレコードで優勝した。しかしその後はクイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ)・BCマイル(米GⅠ)と大敗し、3歳時のみの現役生活となった。国際クラシフィケーションでは128ポンドで、同年のカルティエ賞年度代表馬バラシアの127ポンドよりも評価が高かった。引退後は米国ジュドモントファームで種牡馬入りし、2006年に種牡馬を引退している。
母ヴィヴィアナは現役成績12戦3勝。メリザンド賞・テュイルリを勝ち、プシシェ賞(仏GⅢ)では2着だった。母としては本馬の半姉テーツクリーク(父ラーイ)【イエローリボンS(米GⅠ)・ゲイムリーS(米GⅠ)・ダイアナH(米GⅡ)・ラスパルマスH(米GⅡ)・サンゴルゴーニオH(米GⅡ)・ジェニーワイリーS(米GⅢ)・ノーブルダムゼルH(米GⅢ)】も産んでいる。また、本馬の全妹クエストトゥピークの子には、2009年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬スペシャルデューティ【英1000ギニー(英GⅠ)・仏1000ギニー(仏GⅠ)・チェヴァリーパークS(英GⅠ)・ロベールパパン賞(仏GⅡ)】がいる。ヴィヴィアナの半姉にはリバッサー(父リヴァーマン)【タイダルH(米GⅡ)】がいる他、ヴィヴィアナの半姉ホームタウンクイーン(父プレザントコロニー)の子には、BCフィリー&メアスプリントを2連覇したグルーピードールの父となったボウマンズバンド【メドウランズカップBCS(米GⅡ)】が、ヴィヴィアナの全妹ウィルスターの子にはエトワールモンタント【フォレ賞(仏GⅠ)・パロマーBCH(米GⅡ)・ラスシエネガスH(米GⅢ)】がいる。ヴィヴィアナの母ニジンスキースターは不出走馬だが、英国三冠馬ニジンスキーとニューヨーク牝馬三冠馬クリスエヴァートの間に産まれた超良血馬だった。本馬の牝系からは数多くの活躍馬が出ている世界的名牝系であり、その詳細はクリスエヴァートの項を参照してほしい。→牝系:F23号族②
母父ヌレイエフは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は生まれ故郷のジャドモントファームで繁殖入りした。エンパイアメーカー、エーピーインディ、ジャイアンツコーズウェイ、オーサムアゲイン、ディストーテッドユーモア、タピットといった種牡馬達との間に産駒がいるが、勝ち上がった子はいてもステークスウイナーはおらず、繁殖牝馬としては今のところ期待に応えられていない。