ノットナウケイト

和名:ノットナウケイト

英名:Notnowcato

2002年生

栗毛

父:インチナー

母:ランブリングローズ

母父:カドゥージェネルー

欧州10ハロン路線でGⅠ競走を3勝したが、特に外埒沿い直線一気の奇襲作戦で優勝したエクリプスSで世界的に有名となった稀少血統馬

競走成績:2~5歳時に英愛で走り通算成績20戦7勝2着2回3着4回

誕生からデビュー前まで

有名なロスチャイルド一族のアンソニー・ド・ロスチャイルド氏とデヴィッド・ド・ロスチャイルド氏が、一族が所有する英国ベッドフォードシャー州サウスコートスタッドにおいて生産・所有した馬で、英国サー・マイケル・スタウト調教師に預けられた。

馬名は有名なコメディ映画シリーズである「ピンク・パンサー」のレギュラー登場人物である、クルーゾー警部宅の使用人ケイトに由来しており、「ピンク・パンサー」シリーズが1993年製作の「ピンク・パンサーの息子」で終了した事から、「ケイトはもういない」という意味合いで名付けられたらしい。

競走生活(2・3歳時)

2歳9月に英国ウォーウィック競馬場で行われた芝7ハロン26ヤードの未勝利ステークスで、ケヴィン・ダーレイ騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ29倍の7番人気とあまり評価されていなかった。レースでは逃げる単勝オッズ4倍の2番人気馬ウォークオンザワイルドサイドを追いかけて先行。結局ウォークオンザワイルドサイドを捕らえることは出来なかったが、後続馬に差される事も無く、2馬身差の2着と好走した。

同月にソールスベリー競馬場で出走した出走したソールスベリーノービスS(T6F212Y)では、キーレン・ファロン騎手を鞍上に迎え、サドンディスミサルという馬と並んで単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持された。ここでも先行したが、ゴール前で粘り切れずに、勝ったサドンディスミサルから3馬身1/4差の3着に敗退。2歳時の成績は2戦未勝利となった。

3歳時は4月にニューマーケット競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスから始動。ここではマイケル・キネーン騎手とコンビを組み、単勝オッズ7.5倍の5番人気での出走となった。ここでは初めて後方待機策を採り、残り1ハロン地点から猛然と追い上げてきたが、勝った単勝オッズ4.5倍の1番人気馬ペーパートークから2馬身1/4差の3着に敗れた。

その後はハンデ競走路線に進み、同月にニューマーケット競馬場で行われた芝8ハロンのハンデ競走にキネーン騎手と共に出走。出走馬中最軽量の116ポンドだった事もあって、単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持された。そして先行して抜け出し、2着となった単勝オッズ11倍の6番人気馬デフィに1馬身3/4差をつけて初勝利を挙げた。

翌5月にグッドウッド競馬場で出走したヘリテージH(T9F)では、ロバート・ウィンストン騎手とコンビを組んだ、ここでは出走馬中2番目に重い129ポンドと一気に斤量が増えたが、それでも単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。レースでは馬群の中団を進んだが、残り5ハロン地点で馬群に包まれて進路を失い、残り2ハロン地点でようやく追い上げてきたが時既に遅く、勝った単勝オッズ9倍の4番人気馬エンフォーサーから7馬身1/4差の7着に敗れた。

夏場は休養に充て、前走から4か月後にニューマーケット競馬場で行われたトータリフェクタH(T7F)が次走となった。非常に人気が割れており、ファロン騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ8倍ながらも僅差の2番人気だった。スタートから本馬は直線コースのスタンド側を走りながら先行。そして残り2ハロン地点で仕掛けたが、残り1ハロン地点で一気に失速。勝った単勝オッズ7.5倍のオールアイヴォリーから6馬身1/4差の13着に敗れ去った。

その僅か6日後にはニューマーケット競馬場でウッドフォードリザーブH(T8F)に出走。ここでは単勝オッズ11倍の5番人気と評価を下げていた。ここでもファロン騎手とコンビを組んだ本馬は先行して、残り1ハロン地点でいったんは先頭に立ったものの、最後に単勝オッズ17倍の10番人気馬フォーカスグループに差されて首差2着に敗れた。

引き続きニューマーケット競馬場でライフタイムインレーシングH(T8F)に出走。ここでは単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持された。3戦連続本馬に騎乗したファロン騎手は、今回は後方待機策を選択。そして内側を突いて残り1ハロン地点で先頭に立ち、2着となった単勝オッズ26倍の12番人気馬コリセイに1馬身差で勝利した。

3歳時は6戦2勝の成績で、どこにでもいるハンデ競走の有力馬に過ぎなかった。

競走生活(4歳時)

しかし4歳になると急激に能力が上昇(海外の資料では“rapid progress”と表現されている)したため、ハンデ競走路線を離れて、グループ競走路線に転向した。

まずは4月にニューマーケット競馬場で行われたアールオブセフトンS(英GⅢ・T9F)に出走した。前年のニューマーケットSの勝ち馬で仏ダービー・ジャンプラ賞3着のロカマドゥールが単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持されていたが、グループ競走初出走となる本馬も同斤量ながら単勝オッズ3.5倍の2番人気に推されていた。このレースから再び本馬の手綱を取るようになったキネーン騎手は、馬群の中団で慎重にレースを進めた。そして残り1ハロン地点で先頭に踊り出ると、2着となった単勝オッズ8倍の3番人気馬キューグリーンに1馬身1/4差をつけて勝利した。

次走のブリガディアジェラードS(英GⅢ・T10F7Y)では、グレートヴォルティジュールS・プリンセスオブウェールズS・ハードウィックS・リングフィールドダービートライアルS・ゴードンS・ブリガディアジェラードSの勝ち馬で英セントレジャー3着のバンダリ、デュッセルドルフ大賞・グラッドネスSの勝ち馬コモンワールド、チェスターヴァーズの勝ち馬ハッタンなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.25倍の1番人気、バンダリが単勝オッズ3.25倍の2番人気、コモンワールドが単勝オッズ9倍の3番人気となった。スタートからバンダリが逃げて、本馬はそれを追って先行した。残り2ハロン地点でバンダリが失速すると代わって先頭に立ち、そのまま押し切って、2着となった後のサンルイレイHの勝ち馬ブルディオールに1馬身1/4差で勝利した。

次走はGⅠ競走初出走となるプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)となった。対戦相手のレベルは今までとは桁が違っていた。セレクトS・英チャンピオンS・ドバイデューティーフリーと3連勝してきたデビッドジュニア、前走ドバイワールドCを勝ってきたミラノ大賞・英国際S・カルロダレッシオ賞・マクトゥームチャレンジR3の勝ち馬エレクトロキューショニスト、英オークス・愛オークス・BCフィリー&メアターフ・香港ヴァーズ・プリンセスロイヤルSを勝っていた一昨年のカルティエ賞年度代表馬ウィジャボード、前年のプリンスオブウェールズS・BCターフで2着していたデスモンドSの勝ち馬エース、前走イスパーン賞で2着してきたアルクール賞の勝ち馬マンデュロ、ガネー賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬コールカミノの6頭が本馬の前に立ち塞がった。デビッドジュニアが単勝オッズ2.375倍の1番人気、エレクトロキューショニストが単勝オッズ3.25倍の2番人気、ウィジャボードが単勝オッズ9倍の3番人気、エースが単勝オッズ10倍の4番人気で、さすがの本馬もここでは単勝オッズ13倍の5番人気止まりであった。ここでは好位を追走して、残り4ハロン地点で2番手まで上がると、そのまま他馬達との追い比べとなった。最後は力尽きて5着に敗れたが、勝ったウィジャボードとの着差は2馬身であり、能力的にはそれほど見劣りしない事を示した。

次走のエクリプスS(英GⅠ・T10F7Y)では、ウィジャボード、前走4着のデビッドジュニア、仏2000ギニー・タタソールSの勝ち馬オージールールズ、ラクープの勝ち馬ブルーマンデー、ローズオブランカスターSの勝ち馬ノータブルゲストなどが対戦相手となった。ウィジャボードが単勝オッズ3倍の1番人気、デビッドジュニアが単勝オッズ3.25倍の2番人気、オージールールズが単勝オッズ6.5倍の3番人気、ブルーマンデーが単勝オッズ9倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ10倍の5番人気だった。スタートが切られると、デビッドジュニア陣営が送り込んできたペースメーカー役のロイヤルアルケミストが逃げを打ち、本馬はそれを見るように2~3番手を先行した。そして残り2ハロン地点で先頭に立ったが、最後方から突っ込んできたデビッドジュニアにかわされて、1馬身半差の2着に敗れた。

次走の英国際S(英GⅠ・T10F88Y)では、愛ダービー・デリンズタウンスタッドダービートライアルSの勝ち馬で英ダービー3着のディラントーマス、エクリプスSで3着だったブルーマンデー、伊ジョッキークラブ大賞・ラインラントポカル・ドーヴィル大賞の勝ち馬で一昨年の凱旋門賞2着のチェリーミックス、ハードウィックS・ゴードンS・ハクスレイS2回を勝ち前年の英国際S・英チャンピオンSで3着していた同厩馬マラーヘル、イスパーン賞の勝ち馬レイヴロックなどが対戦相手となった。ディラントーマスが単勝オッズ1.83倍の1番人気、ブルーマンデーが単勝オッズ6.5倍の2番人気、チェリーミックスが単勝オッズ8倍の3番人気で、本馬は単勝オッズ9倍の4番人気だった。

キネーン騎手がディラントーマスに騎乗したために、本馬は初コンビとなるライアン・ムーア騎手鞍上で出走した。スタートからチェリーミックスが逃げを打ち、本馬やディラントーマスがそれを見るように先行した。やがて残り2ハロン地点でチェリーミックスが後退すると、本馬が代わりに先頭に立った。そしてディラントーマスを置き去りにして押し切りを図ったところに、後方からマラーヘルが追い上げてきた。ゴール前では2頭の馬体が併さって、ほとんど同時にゴールインした。体勢はマラーヘル有利に見えたが、写真判定の結果は本馬が短頭差で先着しており、GⅠ競走初勝利を挙げた。

厳しいレースが続いたために短い休養が与えられ、次走は英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)となった。ここでは、前年の凱旋門賞を筆頭に愛ダービー・タタソールズ金杯・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・オカール賞・ニエル賞を勝っていたハリケーンラン、英ダービー・デューハーストS・ヴィンテージSの勝ち馬サーパーシー、サンクルー大賞・コンセイユドパリ賞・ジャンロマネ賞・フォワ賞・コリーダ賞の勝ち馬で前走の凱旋門賞2着のプライド、マラーヘル、仏オークス・カルヴァドス賞の勝ち馬で英1000ギニー2着のコンフィディシャルレディ、ジョエルS・ベットフレッドドットコムマイルの勝ち馬ロブロイなどが相手となった。ハリケーンランが単勝オッズ3.25倍の1番人気、英ダービー以来の実戦となるサーパーシーが単勝オッズ3.75倍の2番人気、プライドが単勝オッズ4.5倍の3番人気で、引き続きムーア騎手が騎乗した本馬は単勝オッズ8倍の4番人気だった。ここではスタートからハリケーンランと共に先頭を伺う積極的な走りを見せたが、残り3ハロン地点から失速。勝ったプライドに9馬身半差をつけられた8着最下位と惨敗してしまった。4歳時の成績は6戦3勝となった。

競走生活(5歳時)

5歳時は4月のゴードンリチャーズS(英GⅢ・T10F7Y)から始動した。ハードウィックS・プリンセスオブウェールズSで2着していた後のサンクルー大賞勝ち馬マウンテンハイ、前年のBCターフの優勝馬でパリ大賞2着・英セントレジャー3着のレッドロックス、セプテンバーS・マクトゥームチャレンジR2の勝ち馬で英2000ギニー3着のキャンディデートといった、なかなかの好メンバーとの対戦となった。出走馬中最軽量の126ポンドだったマウンテンハイが単勝オッズ3.5倍の1番人気、133ポンドのレッドロックスが単勝オッズ3.75倍の2番人気、ジミー・スペンサー騎手とコンビを組んだ133ポンドの本馬は単勝オッズ4.5倍の3番人気だった。ところが本馬はスタートで大きく躓いてしまい、最後方からの競馬となってしまった。道中は馬群の中団まで押し上げたが、ゴール前で伸びを欠き、レッドロックスの3馬身3/4差4着に敗れた。

次走のタタソールズ金杯(愛GⅠ・T10F)では、前年の英国際Sで本馬の4着に敗れた後に愛チャンピオンS・ガネー賞を勝っていたディラントーマス、オイロパ賞・グレートヴォルティジュールSの勝ち馬で前走ドバイシーマクラシック3着のユームザイン、アメジストSを勝ってきたダナク、ロイヤルホイップS・グラッドネスS2回・愛国際Sの勝ち馬ムスタミート、サンダウンクラシックトライアルS・デリンズタウンスタッドダービートライアルSの勝ち馬でラインラントポカル2着のフラカス、愛1000ギニー馬ナイタイムなどが出走していた。ディラントーマスが単勝オッズ1.5倍という圧倒的な1番人気に支持され、ジョニー・ムルタ騎手騎乗の本馬とユームザインが並んで単勝オッズ8倍の2番人気、ダナクが単勝オッズ11倍の4番人気となった。前走と違って好スタートを切った本馬は、フラカスを先に行かせて道中は2番手を追走。そして残り2ハロン地点で先頭に立ったところへ、中団につけていたディラントーマスが追い上げてきて、叩き合いとなった。しかしムルタ騎手がレース後に警告を受けるほど鞭を多用し、それに応えた本馬が最後に頭差だけ前に出て勝利を収めた。

次走のプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)では、前年のプリンスオブウェールズS3着後に勝ち切れない競馬が続いていたがこの年になってアールオブセフトンSを勝つと前走イスパーン賞を5馬身差で圧勝していたマンデュロ、ディラントーマス、ゴードンリチャーズSから直行してきたレッドロックス、前年の英チャンピオンS7着後は不振だったサーパーシーなどとの顔合わせとなった。仏国の名伯楽アンドレ・ファーブル調教師が過去に調教した中で最高の馬とまで絶賛したマンデュロが単勝オッズ2.875倍の1番人気、ディラントーマスが単勝オッズ3倍の2番人気、レッドロックスが単勝オッズ5倍の3番人気、前走に続いてコンビを組んだムルタ騎手騎乗の本馬は単勝オッズ7.5倍の4番人気に留まった。スタートからサーパーシーが先頭に立ち、本馬が2番手、マンデュロが3番手につけた。残り2ハロン地点で本馬が仕掛けようとしたが、マンデュロのほうが先に先頭に立ち、そのまま後続を引き離しにかかった。そこへ後方から来たディラントーマスが本馬をかわしてマンデュロを追いかけていった。結局はマンデュロが2着ディラントーマスを1馬身1/4差で抑えて勝ち、本馬はディラントーマスから4馬身差の3着と完敗した。

続いて、ムーア騎手を鞍上にエクリプスS(英GⅠ・T10F7Y)に出走した。対戦相手は、レーシングポストトロフイー・ダンテS・英ダービーと3連勝中のオーソライズド、前年の英2000ギニー・クイーンエリザベスⅡ世Sと一昨年の愛フェニックスS・愛ナショナルS・レイルウェイSの勝ち馬でいったんは種牡馬入りしながらも受精能力が低くて現役復帰させられていた前年のカルティエ賞最優秀3歳牡馬及び一昨年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬ジョージワシントン、ロイヤルロッジS・ディーSの勝ち馬アドミラルオブザフリート、デリンズタウンスタッドダービートライアルSの勝ち馬アーチペンコなどだった。オーソライズドが単勝オッズ1.57倍の1番人気、ジョージワシントンが単勝オッズ5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ8倍の3番人気、アドミラルオブザフリートが単勝オッズ13倍の4番人気、アーチペンコが単勝オッズ17倍の5番人気となっていた。

レース前半はオーソライズド陣営が用意したペースメーカー役のチャンペリーが後続を大きく引き離す逃げを打ち、本馬は馬群の中団好位を追走。オーソライズドとジョージワシントンは、馬群の一番後ろで馬体を併せる展開となった。ところが直線入り口で本馬ただ1頭が馬群から離れると大外に大斜行して一目散に外埒沿いまで行ってしまった。しかしこれはレース前にトラックを歩いて馬場状態を確認したムーア騎手が事前に温めていた作戦であった。直線内側ではオーソライズドとジョージワシントンが叩き合い、オーソライズドが競り勝って前に出た。しかしオーソライズドの鞍上ランフランコ・デットーリ騎手には大外を走る本馬の姿が目に入らなかった(目に入っていても離れ過ぎていてどちらが前なのか分からなかった)ようで、気がついたときには隔絶した大外で別の世界の競馬をしていた本馬が一足先に1馬身半差でゴールラインを駆け抜けていた。前年に22歳という史上2番目の若さで英平地首位騎手となったが、この年は腕の骨折で出遅れていたムーア騎手の会心の勝利となった。

このレースの模様は英国のみならず日本でもかなりの評判となり、インターネット上でも複数の動画がアップされている。筆者が本馬をこの名馬列伝集で取り上げた理由も、この動画を見て興味をそそられた部分が大きい。もっとも、地元英国ではこの騎乗に関して賛否両論あるようで、賞賛する意見もあれば、「乱れたレースを盗み取った」と否定的な意見を述べる人もいるようである。

続いて連覇を目指して英国際S(英GⅠ・T10H88Y)に出走。エクリプスSの敗戦で陣営側に謝罪する羽目になったデットーリ騎手が雪辱を期して騎乗するオーソライズド、プリンスオブウェールズS2着後にキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを勝ってきたディラントーマス、セントジェームズパレスSで2着してきた翌年のカルティエ賞最優秀古馬デュークオブマーマレード、UAE2000ギニー・UAEダービーの勝ち馬で亜国のGⅠ競走グランクリテリウム大賞2着のアジアティックボーイなども出走しており、かなりの激戦区となった。オーソライズドが単勝オッズ2.5倍の1番人気、ディラントーマスが単勝オッズ3倍の2番人気、ムーア騎手騎乗の本馬が単勝オッズ4.5倍の3番人気、デュークオブマーマレードが単勝オッズ13倍の4番人気で、3強対決ムードとなった。ディラントーマス陣営が送り込んだペースメーカー役のソングオブハイアワサが先頭に立ち、本馬はそれを追って先行した。前走のような奇襲作戦を使えるような馬場状態でも無かったようで、今回は普通に直線に入って残り2ハロン地点で先頭に立つ正攻法を採った。しかしここで、最後方で末脚を温存していたオーソライズドとディラントーマスの2頭が猛然と追い上げてきて、一気に本馬をかわして突き抜けていった。最後はオーソライズドが2着ディラントーマスを1馬身抑えて前走の雪辱を果たし、本馬はディラントーマスから3馬身差の3着に敗れた。

次走の英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)では、ギョームドルナノ賞・フォルス賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬で仏ダービー2着のリテラト、ベレスフォードS・ロイヤルホイップSの勝ち馬で英ダービー2着のイーグルマウンテン、ギョームドルナノ賞の勝ち馬マルティディメンショナル、仏2000ギニーと愛2000ギニーで共に2着だったレパーズタウン2000ギニートライアルS・テトラークS・ジョエルSの勝ち馬クラカドール、米国遠征でマンノウォーSを勝ってきたドクターディーノ、前年の英チャンピオンS6着後にジョンポーターS・ハクスレイS・ハードウィックSを勝ちキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSで3着していたマラーヘル、クリテリウム国際の勝ち馬マウントネルソン、英1000ギニー・ロックフェルS・ネルグウィンSの勝ち馬スペシオーサなどが対戦相手となった。ムーア騎手騎乗の本馬は単勝オッズ3.25倍で、GⅠ競走9戦目にして初めて1番人気に支持された。ところがレースでは先行するも、残り1ハロン地点から大きく失速して、勝った単勝オッズ4.5倍の2番人気馬リテラトから9馬身差をつけられた6着と大敗。このレースを最後に、5歳時6戦2勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Inchinor Ahonoora Lorenzaccio Klairon Clarion
Kalmia
Phoenissa The Phoenix
Erica Fragrans
Helen Nichols Martial Hill Gail
Discipliner
Quaker Girl Whistler
Mayflower
Inchmurrin Lomond Northern Dancer Nearctic
Natalma
My Charmer Poker
Fair Charmer
On Show Welsh Pageant Tudor Melody
Picture Light
African Dancer Nijinsky
Miba
Rambling Rose Cadeaux Genereux Young Generation Balidar Will Somers
Violet Bank
Brig O'Doon Shantung
Tam O'Shanter
Smarten Up Sharpen Up エタン
Rocchetta
L'Anguissola Soderini
Posh
Blush Rambler Blushing Groom Red God Nasrullah
Spring Run
Runaway Bride Wild Risk
Aimee
Nikitina Nijinsky Northern Dancer
Flaming Page
Vela Sheshoon
Cenerentola

父インチナーはアホヌーラの直子で、現役成績10戦5勝。主に短距離競走で活躍し、グリーナムS(英GⅢ)・クリテリオンS(英GⅢ)・ハンガーフォードS(英GⅢ)に勝ち、デューハーストS(英GⅠ)でザフォニックの2着している。競走馬引退後は第19代ダービー伯爵エドワード・スタンリー卿が所有するスタンリーハウススタッド(ウィジャボードが誕生した場所でもある)で種牡馬入りしていた。種牡馬としては500頭以上の勝ち上がり馬を送り出し、希少なトウルビヨンの直系を死守する1頭として活躍したが、本馬が1歳時の2003年10月に脚の骨折のために惜しくも13歳で他界している。

母ランブリングローズは2・3歳時に英仏で走り10戦2勝、リステッド競走ガルトレスSを勝ち、ランカシャーオークス(英GⅢ)で2着している。本馬は母の初子である。ランブリングローズの曾祖母ヴェガはクリテリウムデプーリッシュ(現マルセルブサック賞)の勝ち馬だが、近親からは目立つ活躍馬が他に出ていない。母系は愛ダービー・英セントレジャー・コロネーションC・エクリプスS・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS・凱旋門賞を勝った名馬バリモスと同じだが、本馬とはかなり離れている。→牝系:F2号族④

母父カドゥージェネルーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、父インチナーが繋養されていた英国ニューマーケットのスタンリーハウススタッドで種牡馬入りした。父の他界後にスタンリーハウススタッドには種牡馬が1頭もおらず、スタンリーハウススタッドとしては5年ぶりの種牡馬となった。初年度の種付け料は8千ポンドに設定された。トウルビヨン直系×テューダーミンストレル直系という本馬の血統は、今日の主流から大きくかけ離れたものであり、それが逆に本馬の種牡馬としての未知の魅力ともなっている。しかしながら種牡馬成績は振るわない。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2009

Custom Cut

ジョエルS(英GⅡ)・ベット365マイル(英GⅡ)・ブーメランS(愛GⅡ)・グラッドネスS(愛GⅢ)・デズモンドS(愛GⅢ)・ストレンソールS(英GⅢ)

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