デビッドジュニア

和名:デビッドジュニア

英名:David Junior

2002年生

栗毛

父:プレザントタップ

母:パラダイスリヴァー

母父:アイリッシュリヴァー

英チャンピオンS・ドバイデューティーフリー・エクリプスSを制して2005~06年の10ハロン路線の頂点に立った本邦輸入種牡馬

競走成績:2~4歳時に英首米で走り通算成績13戦7勝2着1回3着1回

誕生からデビュー前まで

米国フロリダ州オカラにあるブライドルウッドスタッドファームにおいて、同牧場の所有者で、シカゴの電気工業で財を築いた事業家でもあったアーサー・I・アップルトン氏により生産された。ブライドルウッドスタッドファームは、90頭ほどのステークスウイナーを誕生させたフロリダ州屈指の有力牧場であり、他の牧場から来た馬達の育成にも尽力していた。本馬より1歳年上のケンタッキーダービー・プリークネスSの勝ち馬スマーティジョーンズも、ここの産まれではないが、ブライドルウッドスタッドファームで育成された。

母パラダイスリヴァーの兄弟には、1994年のエクリプス賞最優秀芝牡馬パラダイスクリークを筆頭に、米国のGⅠ競走勝ち馬が3頭いるという血統背景から、米国で競走することが期待されていたらしいが、2歳春にファシグ・ティプトン社が実施したセールにおいて、本馬を17万5千ドルで購入した英国の出版業者デヴィッド・サリヴァン氏(実際にセリで購入したのは代理人のリチャード・ギャルピン氏)は、自身の馬主名義ロルドヴェイル株式会社の所有となった本馬を英国に呼び寄せて、ブライアン・ミーハン調教師に預けた。

サリヴァン氏は英国の大衆紙デイリースポーツ紙とサンデースポーツ紙の創設者であり、イングランドプレミアリーグ所属のウェストハム・ユナイテッドFCの筆頭株主でもある。馬名はサリヴァン氏の息子の名前そのままである。

競走生活(2歳時)

2歳9月に英国サースク競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスで、主戦となるリチャード・ヒルズ騎手を鞍上にデビュー。このレースでは愛1000ギニー馬クラシックパークの半弟であるハドリアンが単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持されており、本馬は単勝オッズ3.5倍の2番人気となった。スタートが切られるとハドリアンが果敢に先頭に立ち、本馬は馬群の中団を追走した。そして残り3ハロン地点で仕掛けて追い上げていったが、ゴール前で脚があがってしまい、ハドリアンと単勝オッズ8倍の4番人気馬モザフィンの2頭に届かず、勝ったハドリアンから1馬身半差の3着に敗れた。

それから10日後に出走したアスコット競馬場芝7ハロンの未勝利ステークスは、対戦相手4頭のうち3頭が結局は未勝利馬に終わるというぱっとしないレベルのレースであり、本馬が単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。しかし本馬もこの時点ではまだ青く、スタートから先頭に立ってそのままゴールを目指すも残り1ハロン地点で左側によれてしまい、その隙に乗じて並びかけてきた単勝オッズ3.25倍の2番人気馬マカブラの追撃をなんとか3/4馬身抑えて勝つという内容だった。

その後に体調を崩したため、2歳時の出走はこの2戦のみとなった。

競走生活(3歳時)

3歳時は初戦に7か月ぶりの実戦となる英2000ギニー(英GⅠ・T8F)を選択。しかし、名馬ドバイミレニアムの忘れ形見で愛ナショナルS・スーパーレイティヴSなど3戦無敗のドバウィ、クレイヴンS2着馬ロブロイ、キラヴーランSを勝ってきたフットステップスインザサンド、コヴェントリーSの勝ち馬で英シャンペンS2着・ミドルパークS3着のアイスマン、ジャンリュックラガルデール賞・愛フューチュリティS・アングルシーSの勝ち馬で愛フェニックスS・デューハーストS2着のオラトリオ、レイルウェイS・クレイヴンSの勝ち馬で愛フューチュリティS2着のデモクラティックディフィシット、タタソールSの勝ち馬ディクタトリアルなど粒揃いのメンバー構成の中であり、2戦1勝の本馬は単勝オッズ101倍の最低人気だった。レースでは抑え気味に走り、残り1ハロン地点から追い上げてきたが、勝ったフットステップスインザサンドから5馬身1/4差の11着に敗れた。着順からすれば凡走だが、前評判と着差からすれば好走だった。

その後は無難な路線を進み、5月にニューマーケット競馬場で行われたリステッド競走フェアウェイS(T10F)に出走。このレースではリングフィールドダービートライアルSで3馬身1/4差4着というなんとも微妙な着順だったリンガリが単勝オッズ3倍の1番人気に支持されており、本馬は単勝オッズ3.5倍の2番人気だった。スタートが切られると単勝オッズ10倍の最低人気馬ペルビアンプリンスと単勝オッズ8.5倍の4番人気馬ホールフーが先頭に立ち、本馬は馬群の中団後方につけた。そして残り4ハロン地点で早くも仕掛けると、残り2ハロン地点では既に先頭。その後も後続をどんどん引き離し、2着ホールフーに8馬身差をつけて圧勝してしまった。

翌月にサンダウンパーク競馬場で出走したリステッド競走フィンクガラS(T10F7Y)では、ドラール賞・プランスドランジュ賞・ゴードンリチャーズSを勝っていたウェイトレス、ウインターヒルS・セレクトSの勝ち馬レポレロといったグループ競走の勝ち馬も出走してきたのだが、前走の勝ち方に加えて123ポンドの最軽量も魅力だった本馬が単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持された。前走ゴードンリチャーズSを勝ってきたウェイトレスは137ポンドを課せらたために単勝オッズ4倍の2番人気、131ポンドのレポレロが単勝オッズ6.5倍の3番人気だった。スタートが切られるとウェイトレスが先頭に立ち、スタートで出遅れた本馬はそのまま最後方を走った。しかし残り2ハロン地点で仕掛けると、失速するウェイトレスと入れ代わるようにして残り1ハロン地点で先頭に立った。そしてそのまま突き抜けて、2着となった単勝オッズ9倍のフォワードムーヴに5馬身差をつけて圧勝した。

この2戦の内容からして、本馬は距離10ハロン前後の距離でその実力を存分に発揮できるようだった。しかし本馬の次走はマイル戦のサセックスS(英GⅠ・T8F)となった。筆者的には、このサセックスSから3週間後の英国際Sに向かってほしかった(それなら日本から遠征してきたゼンノロブロイとの対戦が見られたのに)。陣営もこの時点では本馬の距離適性を測りかねていたのだろうか。このサセックスSでは、フィリーズマイル・ファルマスS2回・サセックスS・メイトロンS・リッジウッドパールS・ウィンザーフォレストSを勝っていた前年のカルティエ賞最優秀古馬ソヴィエトソング、ジャージーSを勝ってきたプロクラメーション、3戦無敗のスリーピングインディアン、チャレンジS・レノックスS2回・ダイオメドSの勝ち馬でサセックスS2着のナイール、ミドルパークSの勝ち馬でセントジェームズパレスS2着のアドヴァロレム、ハンガーフォードS・セレブレーションマイルの勝ち馬でサンチャリオットS2着のシック、ヴィットリオディカプア賞・伊2000ギニー・ロシェット賞などの勝ち馬で仏グランクリテリウム2着のレヴェデイコローリなどが対戦相手となった。ソヴィエトソングが単勝オッズ3倍の1番人気、プロクラメーションが単勝オッズ4倍の2番人気、スリーピングインディアンが単勝オッズ7.5倍の3番人気、過去2戦の勝ち方が評価された本馬が単勝オッズ12倍の4番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ13倍の6番人気馬アドヴァロレムが先頭に立った。そして本馬はそれを積極的に追走するという今までと異なるレースぶりとなった。人気を集めていたソヴィエトソングとプロクラメーションの2頭がいずれも後方からレースを進めるタイプの馬だった事を意識したのだろうか。しかしこの新戦法は不発に終わり、残り2ハロン地点で右側によれて失速。出遅れたにも関わらず全馬をごぼう抜きにして勝ったプロクラメーションから5馬身差の7着と完敗した。

この敗戦を受けて、陣営も本馬を10ハロン路線に専念させる決意を固めた。それはいいのだが、今度はサセックスSから僅か10日後のローズオブランカスターS(英GⅢ・T10F120Y)に出走させるという愚行を犯した(くどいようだが、サセックスSから3週間後には英国際Sがあったというのに)。目立つ対戦相手は、前年のロイヤルロッジSの勝ち馬パーフェクトパフォーマンスくらいだった。本馬が単勝オッズ1.67倍の1番人気に支持され、パーフェクトパフォーマンスが単勝オッズ4.5倍の2番人気となった。このレースでは本馬もパーフェクトパフォーマンスも出遅れてしまい、パーフェクトパフォーマンスが強引に加速して先頭に立ち、本馬は好位につけるという状況となった。パーフェクトパフォーマンスは最初の無理が祟ったようでレース中盤で早くも失速したが、本馬も今ひとつ伸びを欠き、先行して抜け出した単勝オッズ6倍の3番人気馬ノータブルゲストに3馬身差をつけられて2着に敗退してしまった。ノータブルゲストはこれが生涯唯一のグループ競走勝利であり、本来なら本馬が引けをとる相手ではなかった。

さすがに次は1か月の間隔を空けてセレクトS(英GⅢ・T9F192Y)に出走。このレースから主戦はヒルズ騎手から“アイス・クール”ことジェイミー・スペンサー騎手に交代となった。前走の敗戦で若干は評価が下がったようだが、このレースには前走以上にこれといった対戦相手がいなかったため、本馬が単勝オッズ2.875倍の1番人気に支持された。ここではスタートから先行するという再度の積極策に打って出た。そして2ハロン地点で加速を開始すると、逃げていた単勝オッズ8.5倍の4番人気馬ヘイジービューを残り1ハロン地点で抜き去った。その後は右側によれる場面もあったが、2着に粘ったヘイジービューに1馬身半差をつけて勝利した。

次走はさらに1か月後の英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)となった。このレースはメンバーがかなり揃っていた。英2000ギニー4着後は不振に陥っていたがエクリプスS・愛チャンピオンSを連勝してようやく本格化したオラトリオ、サンクルー大賞・ジョッキークラブSの勝ち馬でコロネーションC2着のアルカセット、オペラ賞・香港C・プリティポリーS・ナッソーSの勝ち馬で愛1000ギニー・プリティポリーS・ファルマスS2着のアレクサンダーゴールドラン、ギョームドルナノ賞・ダフニ賞の勝ち馬ピンソンコンセイユドパリ賞・ジャンロマネ賞・フォワ賞・アレフランス賞の勝ち馬プライド、伊ダービー・伊共和国大統領賞・英チャンピオンS・プリンスオブウェールズS・クイーンエリザベスⅡ世S・ロッキンジSの勝ち馬でプリンスオブウェールズS・香港C・クイーンアンS2着のラクティ、ジョエルSを勝ってきたロブロイ、リス賞・ラクープドメゾンラフィットの勝ち馬で仏ダービー2着のプロスペクトパーク、カブール賞・ソヴリンSの勝ち馬でモルニ賞でも2着していたサンデーサイレンス産駒のレイマン、ゴードンS・ハクスレイSの勝ち馬で英国際S3着のマラーヘル、セレブレーションマイル2回・ハンガーフォードSの勝ち馬でサンチャリオットS・メイトロンS2着のシック、メルセデスベンツ大賞・ドラール賞2回・ヴィシー大賞の勝ち馬で香港C3着のタッチオブランドなどが参戦しており、おそらくは同競走史上でも屈指の層の厚さだった。この中に混ざってしまっては本馬の存在はいかにも小さく、単勝オッズ26倍で11番人気の低評価だった。上位人気は、オラトリオが単勝オッズ3.25倍の1番人気、アルカセットが単勝オッズ7倍の2番人気、アレクサンダーゴールドランが単勝オッズ9倍の3番人気となっていた。

スタートが切られると単勝オッズ21倍の10番人気馬エコーオブライトが先頭に立ち、オラトリオなどがそれを追って先行。アルカセット、アレクサンダーゴールドランなどは馬群の中団につけ、本馬は馬群の中団やや後方につけた。残り2ハロン辺りで馬群の後方にいた馬達が一斉に仕掛けたが、その中で最も本馬の伸びが良く、先に先頭に立っていたマラーヘルを残り1ハロン地点でかわして先頭に立った。そして追い上げてきたプライドを3/4馬身差の2着に抑えて優勝した。人気薄だった本馬が勝利したため、驚いた観衆達からの拍手はまばらだった。本馬を管理していた当のミーハン師にとっても予想外の勝利だったらしく、本馬が勝ったときの準備を何もしていなかったという。3歳時の成績は7戦4勝だった。

競走生活(4歳時)

翌4歳時はドバイに遠征し、ドバイデューティーフリー(首GⅠ・T1777m)に出走。このレースも英チャンピオンSと同じくかなりの好メンバーが顔を揃えた。違うのは国際色豊かであるという点であり、イスパーン賞・クイーンアンS・ユジェーヌアダム賞・ニエル賞・メシドール賞を勝っていた地元ドバイのヴァリクシール、クレメントLハーシュ記念ターフCSS・アメリカンH・サンルイオビスポH・サンマルコスSの勝ち馬でユナイテッドネーションズH2着の米国馬ザティンマン、サンマルコスS・アメリカンHの勝ち馬で前年のドバイデューティーフリー2着馬ウィリー、香港金杯・スチュワーズC・チャンピオンズマイルの勝ち馬で香港C・香港金杯2着の香港馬ブリッシュラック、新国のGⅠ競走ベイヤークラシックを勝った後に香港に移籍して香港スチュワーズCを勝ってきたルシアンパール、コックスプレート・豪フューチュリティSの勝ち馬でコーフィールドC・CFオーアS・トゥーラックH・コックスプレート・ヤルンバS2着の豪州馬フィールズオブオマー、南アフリカのGⅠ競走ケープフィリーズギニーを勝った後に豪州に移籍してCFオーアSを勝ってきた南アフリカ産馬パーフェクトプロミス、かつてフェアウェイSで本馬の4着に敗れた後に南アフリカに移籍してドバイ入り後にアルラシディヤ・アルファフィディフォートと2連勝してきたリンガリ、智2000ギニーの勝ち馬で米国に移籍してターフマイルS・ニッカーボッカーH・トロピカルターフHを勝っていたチリ出身のホスト、前年の英チャンピオンSでは本馬の13着に終わるも前哨戦のジェベルハッタを勝ってきたタッチオブランド、日本からも、前年のマイルCS・香港マイル・京都金杯・東京新聞杯を勝って中央競馬最優秀短距離馬に選ばれていたハットトリック、前年の京王杯スプリングC・安田記念を共に人気薄で制してファンを驚かせたアサクサデンエンの2頭が参戦していた。しかし英国ブックメーカーが単勝オッズ5.5倍の1番人気として評価したのは本馬であり、ハットトリック、ヴァリクシール、タッチオブランドの3頭が単勝オッズ7倍の2番人気で並んでいた。

スタートが切られるとザティンマンが先頭に立ち、フィールズオブオマー、アサクサデンエン、リンガリなどが先行。本馬は馬群の中団やや後方を追走した。そして直線に入るとすぐに仕掛けて、残り300m地点から一気に抜け出した。ゴール前では馬なりのまま走り、2着に粘ったザティンマンに3馬身半差をつける完勝を収めた。ハットトリックは12着、アサクサデンエンは15着最下位に終わり、日本調教馬は揃って振るわなかった。

その後は地元に戻って6月のプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)に出走した。これまた同競走としては歴代屈指の好メンバーが揃っており、前走ドバイワールドCを圧勝してきたミラノ大賞・英国際S・カルロダレッシオ賞・マクトゥームチャレンジR3の勝ち馬エレクトロキューショニスト、英オークス・愛オークス・BCフィリー&メアターフ・香港ヴァーズなどの勝ち馬でこの年に2度目のカルティエ賞年度代表馬を受賞することになる世紀の名牝ウィジャボード、デスモンドSの勝ち馬で前年のプリンスオブウェールズS・BCターフ2着のエース、アルクール賞の勝ち馬で前走イスパーン賞2着の未完の大器マンデュロ、アールオブセフトンS・ブリガディアジェラードSを連勝してきた後のGⅠ競走3勝馬ノットナウケイト、前走ガネー賞を5馬身差で圧勝していたプランスドランジュ賞の勝ち馬コールカミノが出走しており、どの馬が勝ってもおかしくない状況だった。その中でも本馬が単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持され、エレクトロキューショニストが単勝オッズ3.25倍の2案人気、ウィジャボードが単勝オッズ9倍の3番人気となった。スタートが切られるとエレクトロキューショニストが果敢に先頭に立ち、本馬は例によって馬群の中団後方につけた。そして残り2ハロン地点で仕掛けたのだが、ゴール前で右側によれてしまい、追い込み切れずに、勝ったウィジャボードから2馬身差の4着に敗れた。

次走のエクリプスS(英GⅠ・T10F7Y)では、英チャンピオンS・ドバイデューティーフリー・プリンスオブウェールズSよりも出走馬の層は薄かったが、それでも、ウィジャボード、前走5着のノットナウケイト、仏2000ギニー・タタソールSの勝ち馬オージールールズ、ラクープの勝ち馬ブルーマンデー、ローズオブランカスターSの勝ち馬ノータブルゲスト、チェスターヴァーズの勝ち馬ハッタンなどが参戦していた。ウィジャボードが単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、調教の動きが悪かった本馬は単勝オッズ3.25倍の2番人気、オージールールズが単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。

スタートが切られると、レース数日前にサリヴァン氏がペースメーカー役として購入したばかりのロイヤルアルケミストが逃げを打ち、本馬は最後方待機策を採った。そして直線に入ると残り2ハロン地点から「実に劇的な追い上げでした」と評される末脚を繰り出して猛然と追い上げてきた。そして残り1ハロン地点で先頭を奪うと、先行して2着に粘った単勝オッズ10倍の5番人気馬ノットナウケイトに1馬身半差をつけて快勝した。

その後は愛チャンピオンSに出走すると言われていたが、予想に反して出走せず、エクリプスSの後はしばらくレースに出なかった。その理由は、サリヴァン氏に対して日本中央競馬会から本馬を種牡馬として800万ドル(当時の為替レートで約9億2千万円)で購入したいという申し出があったためであり、サリヴァン氏が熟考している間に時が流れたようである。

10月になってサリヴァン氏は、日本中央競馬会からの申し出を受諾したことと、本馬がこの4歳限りで引退することを表明した。

そして最後の一仕事として米国に遠征し、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)に参戦した。プリークネスS・トラヴァーズS・ジョッキークラブ金杯・ジムダンディS・ウィザーズSなど6連勝中のバーナーディニ、サンタアニタH・チャールズウィッテンガム記念H・ハリウッド金杯・パシフィッククラシックS・グッドウッドBCHなど7連勝中のラヴァマン、ピムリコスペシャルH・サバーバンH・ホイットニーHと3連勝中のウルグアイ三冠馬インヴァソール、ペンシルヴァニアダービー・コモンウェルスBCSなどの勝ち馬でメトロポリタンH・ホイットニーS2着のサンキング、アーカンソーダービーなどの勝ち馬ローヤーロン、前年のケンタッキーダービー馬ジャコモ、ハリウッドフューチュリティ・サンタアニタダービー・ノーフォークS・サンラファエルS・サンタカタリナSの勝ち馬ブラザーデレク、ウッドワードSの勝ち馬プレミアムタップ、スティーヴンフォスターH・レーンズエンドS・ワシントンパークH2回・ケンタッキーCクラシックH・ホーソーン金杯の勝ち馬パーフェクトドリフト、トラヴァーズS・レーンズエンドS・ジムダンディSなどの勝ち馬フラワーアレイ、サラトガBCH・ワシントンパークHの勝ち馬スワーヴといった米国の有力馬勢に加えて、愛フェニックスS・愛ナショナルS・英2000ギニー・クイーンエリザベスⅡ世Sの勝ち馬でカルティエ賞最優秀2歳牡馬・3歳牡馬を連続受賞するジョージワシントンも出走していた。バーナーディニが単勝オッズ2.1倍の1番人気、ラヴァマンが単勝オッズ7.1倍の2番人気、インヴァソールが単勝オッズ7.7倍の3番人気、ジョージワシントンが単勝オッズ10.4倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ15.3倍の5番人気となった。

しかし本馬はスタートがあまり良くなく後方からのレースとなった上に、前から来る土煙を嫌がる仕草が見られた。それでも向こう正面までは馬群の中団後方を追走したが、三角に入る辺りで完全に走る気を無くしてしまったようで、どんどんと下がっていき、他馬から大きく離された最後方まで下がってしまった。そしてそのまま全く伸びずに、勝ったインヴァソールから74馬身以上も離された最下位(公式には競走中止扱い)という結末に終わった。ミーハン師は、この直前に行われていたBCターフを管理馬のレッドロックスで勝っていたのだが、本馬の惨敗で喜び半分といったところだった。4歳時の成績は4戦2勝だった。

本馬の10ハロン前後の距離における実力は確かなものだったが、レース終盤で右によれる癖がある、陣営の使い方にやや疑問がある、ダートが全然駄目であるなど、弱点も多々抱えていた馬だった。

血統

Pleasant Tap Pleasant Colony His Majesty Ribot Tenerani
Romanella
Flower Bowl Alibhai
Flower Bed
Sun Colony Sunrise Flight Double Jay
Misty Morn
Colonia URU Cockrullah
Nalga
Never Knock Stage Door Johnny Prince John Princequillo
Not Afraid
Peroxide Blonde Ballymoss
Folie Douce
Never Hula Never Bend Nasrullah
Lalun
Hula Hula Polynesian
Black Helen
Paradise River Irish River Riverman Never Bend Nasrullah
Lalun
River Lady Prince John
Nile Lily
Irish Star Klairon Clarion
Kalmia
Botany Bay East Side
Black Brook
North of Eden Northfields Northern Dancer Nearctic
Natalma
Little Hut Occupy
Savage Beauty
ツリーオブノレッジ Sassafras Sheshoon
Ruta
Sensibility Hail to Reason
Pange

プレザントタップは当馬の項を参照。

母パラダイスリヴァーは現役時代7戦未勝利だが、血統的には非常に優秀。パラダイスリヴァーの全兄には1994年のエクリプス賞最優秀芝牡馬パラダイスクリーク【ハリウッドダービー(米GⅠ)・マンハッタンH(米GⅠ)・アーリントンミリオンS(米GⅠ)・ワシントンDC国際S(米GⅠ)・米国競馬名誉の殿堂博物館S(米GⅡ)・カナディアンターフH(米GⅡ)・ETターフクラシックS(米GⅡ)・ディキシーH(米GⅡ)・アップルトンH(米GⅢ)】が、半兄にはワイルドイヴェント(父ワイルドアゲイン)【ETターフクラシックS(米GⅠ)・アーリントンH(米GⅡ)・WLマックナイトH(米GⅡ)・キーンランドBCマイルS(米GⅢ)・フォースターデイヴH(米GⅢ)・リバーシティH(米GⅢ)】が、半弟にはフォービドンアップル(父プレザントコロニー)【マンハッタンH(米GⅠ)・ベルモントBCH(米GⅡ)・ケルソH(米GⅡ)2回】がいる。

パラダイスリヴァーの母ノースオブエデンの半兄には1987年のエクリプス賞最優秀芝牡馬シアトリカル【BCターフ(米GⅠ)・ハイアリアターフカップH(米GⅠ)・ボーリンググリーンH(米GⅠ)・ソードダンサーH(米GⅠ)・ターフクラシックS(米GⅠ)・マンノウォーS(米GⅠ)】、半弟には日本で走ったタイキブリザード【安田記念(GⅠ)・大阪杯(GⅡ)・京王杯スプリングC(GⅡ)】がいる。パラダイスリヴァーの半姉セレスティアルブリス(父リローンチ)の孫にはボビーズキトゥン【BCターフスプリント(米GⅠ)】が、半妹エデンズコーズウェイ(父ジャイアンツコーズウェイ)の子にはエデンズムーン【ラスヴァージネスS(米GⅠ)・サンクレメンテH(米GⅡ)】が、ノースオブエデンの母ツリーオブノレッジの半妹センスオブリズムの曾孫には日本で走ったナカヤマフェスタ【宝塚記念(GⅠ)・セントライト記念(GⅡ)・東京スポーツ杯2歳S(GⅢ)・2着凱旋門賞(仏GⅠ)】が、ツリーオブノレッジの母センシビリティの半姉にはプリンスロイヤル【凱旋門賞・ミラノ大賞】がいる。これら近親の活躍馬を見れば一目瞭然だが、芝で活躍している馬が多い。父方の血統からすればダートでも走りそうだが、本馬は母方の血を強く受け継いだのかもしれない。→牝系:F3号族③

母父アイリッシュリヴァーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は予定どおり来日し、日本軽種馬協会静内種馬場で種牡馬生活を開始した。供用初年度の2007年は102頭の繁殖牝馬を集めたものの、2年目は29頭、3年目の2009年は4頭にまで急落。この2009年の暮れに日本軽種馬協会胆振種馬場に移動した。しかし状況は変わらず、4年目の交配数は8頭、5年目は1頭、6年目の2012年は3頭だった。この2012年の繁殖シーズン終了後にいったん日本軽種馬協会静内種馬場に戻ったが、すぐに日本軽種馬協会七戸種馬場に移動した。しかし7年目の交配数は12頭、8年目は9頭と交配数には全く恵まれていない。産駒数が少ない上に、活躍馬も殆ど出ていないため、全日本種牡馬ランキングでは2012年の99位が最高と、厳しい状況が続いている。

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