カラニシ

和名:カラニシ

英名:Kalanisi

1996年生

鹿毛

父:ドユーン

母:カランバ

母父:グリーンダンサー

強烈な末脚と闘争心を武器として、強豪馬がしのぎを削った西暦2000年の欧米芝路線のトップに君臨したBCターフ優勝馬

競走成績:3~5歳時に英米愛で走り通算成績11戦6勝2着4回3着1回

誕生からデビュー前まで

父ドユーンの生産・所有者だったアガ・カーンⅣ世殿下により生産・所有された愛国産馬で、英国ルカ・クマーニ調教師に預けられた。

競走生活(3歳時)

デビューは遅く、3歳4月に英国フォークストーン競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスだった。他馬との素質の違いは歴然であり、単勝オッズ1.73倍の1番人気に支持された。そして先行して残り2ハロン地点で先頭に立って後続馬をぐんぐんと引き離し、2着コンペンセーションに8馬身差をつける圧勝劇を演じた。

続いて5月にニューマーケット競馬場で行われたフーズ60トゥモロー条件S(T7F)に出走。出走頭数は本馬を含めて僅か4頭だったが、ネルグウィンSで2着してきたハウリヤー、チェヴァリーパークS3着馬サビーンの姿があり、レベルは決して低くなかった。キーレン・ファロン騎手と初コンビを組んだ本馬が単勝オッズ2.625倍の1番人気、ハウリヤーが単勝オッズ2.875倍の2番人気、サビーンが単勝オッズ4倍の3番人気となった。レースではハウリヤーが逃げて、本馬は2番手を追走。残り1ハロン地点で先頭を奪うと、そのまま2着ハウリヤーに3馬身差をつけて快勝した。

次走はケンプトンパーク競馬場で行われたリステッド競走アドヴァイザーズS(T8F)となった。前走の未勝利ステークスを6馬身差で圧勝してきたキラーインスティンクト、後の香港クラシックトライアル・香港金杯・クイーンエリザベスⅡ世Cの勝ち馬インダストリアリストなどが対戦相手となった。オペラハウスカイフタラの従兄弟という良血馬でもあったキラーインスティンクトと、ジェラルド・モッセ騎手騎乗の本馬が並んで単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持され、インダストリアリストが単勝オッズ11倍と離れた3番人気となった。本馬は先行すると、残り3ハロン地点で仕掛けた。しかし今ひとつ伸びが無く、最後方から追い込んできたインダストリアリストが迫ってきた。しかし残り1ハロン地点から粘りを見せて、2着インダストリアリストに頭差で勝利した。

しかしこの後に故障が判明してしまい、1年間に及ぶ長期休養を余儀なくされた。

競走生活(4歳時)

この休養中に英国サー・マイケル・スタウト厩舎に転厩した本馬は、4歳5月にウインザー競馬場で行われたリステッド競走ロイヤルウインザーS(T8F67Y)で復帰した。ファロン騎手を鞍上に、単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。ここでは中団を進み、残り3ハロン地点から進出を開始。ゴール前では力強く伸びてきたが、先行して押し切ったスワローフライトに半馬身届かず2着に敗れた。しかし他の全出走馬よりも5ポンド重い133ポンドの斤量を課せられていた事や、前年のハントC勝ち馬ショーボートに首差先着した事などを考慮すると、悪い内容ではなかった。

次走はクイーンアンS(英GⅡ・T8F)となった。さすがに対戦相手のレベルは本馬が今まで出走してきたどのレースよりも高く、サラマンドル賞・サセックスS・ロッキンジSと毎年GⅠ競走を勝っていた2年前のカルティエ賞最優秀2歳牡馬アルジャブル、エドモンブラン賞・ミュゲ賞を連勝してきた良血馬ダンシリ、前走で本馬を破ったスワローフライト、サンダウンマイル・アールオブセフトンSの勝ち馬でこの年のムーランドロンシャン賞・フォレ賞を勝つインディアンロッジ、パークSの勝ち馬シュガーフット、ヴィットリオディカプア賞・セレブレーションマイルの勝ち馬でこの年のジャックルマロワ賞を勝つムータティールといった強敵揃いだった。アルジャブルが単勝オッズ3.25倍の1番人気、ダンシリが単勝オッズ4.33倍の2番人気で、本馬が単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。今回も本馬の手綱を取ったファロン騎手は最後方待機策を選択。残り2ハロン地点から鋭く伸びてきて、残り1ハロン地点で先頭のダンシリに並びかけると、叩き合いを半馬身差で制して勝利した。斤量では本馬よりダンシリのほうが3ポンド重く、同斤量だったらどうなっていたかは分からないが、いずれにしても本馬の実力は欧州トップクラスに混ざっても遜色ないものである事を示す結果となった。

次走のエクリプスS(英GⅠ・T10F7Y)は、“The clash of the titans(巨人達の衝突)”と評されるほどの豪華メンバーとなった。出走馬は本馬の他に、サンダウンクラシックトライアルS・ダンテSの勝ち馬で英ダービー2着のサキー、タタソールズ金杯やブリガディアジェラードSを勝っていた日本産の牝馬シーヴァ、グレートヴォルティジュールS・ドバイシーマクラシックを勝っていた前年の同競走3着馬ファンタスティックライト、サラマンドル賞・セントジェームズパレスSの勝ち馬で英2000ギニー・愛2000ギニー2着のジャイアンツコーズウェイなどだった。サキーが単勝オッズ2.75倍の1番人気に支持され、パット・エデリー騎手とコンビを組んだ本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気となった。スタート直後にサキーが先頭に立ち、ジャイアンツコーズウェイがそれに続いたが、しばらくしてファンタスティックライト陣営が用意したペースメーカー役のサンチャームが強引に先頭を奪いハイペースを演出した。一方の本馬は後方からじっくりとレースを進めた。直線に入って残り3ハロン地点でサキーとジャイアンツコーズウェイが並んで先頭に立ち、この2頭の一騎打ちとなった。残り1ハロン地点でジャイアンツコーズウェイが競り勝ったところに後方から本馬が襲いかかり、今度はこの2頭による一騎打ちとなった。ゴール前では首の上げ下げの勝負になったが、ジャイアンツコーズウェイが勝利。本馬は頭差の2着で、さらに2馬身半差の3着にシーヴァが入った。本馬の鞍上エデリー騎手とジャイアンツコーズウェイの鞍上ジョージ・ダフィールド騎手がいずれも鞭の多用で10日間の騎乗停止となるほどの激戦だった。

次走の英国際S(英GⅠ・T10F85Y)でも、ジャイアンツコーズウェイと顔を合わせた。他の出走馬は、ダイオメドS・プリンスオブウェールズS・セレクトSの勝ち馬リアスピアー、グリーナムSの勝ち馬で仏グランクリテリウム2着・英2000ギニー3着のバラシアゲスト、前年のクイーンエリザベスⅡ世Sでドバイミレニアムの2着していたサンダウンマイル・パークSの勝ち馬アルムシュタラクなどだった。ジャイアンツコーズウェイが単勝オッズ1.91倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.25倍の2番人気となった。3番人気のリアスピアーは単勝オッズ15倍だったから、完全な2強対決だった。まずはジャイアンツコーズウェイ陣営が用意したペースメーカー役のショールクリークが先頭に立ち、ジャイアンツコーズウェイが2番手を追走。本馬はジャイアンツコーズウェイをマークするように3番手を追走した。直線に入って残り3ハロン地点でジャイアンツコーズウェイが内側から先頭に立ち、そこへ離れた外側から本馬が追い上げてきた。最初はかなり内外に離れていた2頭だったが、残り半ハロン地点では馬体が接近して叩き合いになった。本馬の鞍上エデリー騎手は再度の騎乗停止覚悟で鞭を使ったが、競り合いになったジャイアンツコーズウェイは強く、再度頭差屈して2着に敗れた(3着リアスピアーは7馬身後方だった)。

次走の英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)では、ジャイアンツコーズウェイは不在だったが、別の超強敵が本馬の前に立ち塞がった。それは前年に仏ダービー・愛ダービー・凱旋門賞を、この年もタタソールズ金杯・サンクルー大賞・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSを制していた欧州最強古馬モンジューだった。他にも、英オークス馬ラヴディヴァイン、英国際S・ガネー賞・タタソールズ金杯・愛チャンピオンSと4度のGⅠ競走2着があった独国GⅠ競走ダルマイヤー大賞の勝ち馬グリークダンス、エクリプスS3着後に出走したキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSでは7着だったシーヴァ、ガネー賞の勝ち馬インディアンデインヒル、デューハーストSの勝ち馬ディスタントミュージック、パリ大賞の勝ち馬スリックリーなどの実力馬達が出走してきて、非常にレベルが高い戦いとなった。2連覇を目指した凱旋門賞で4着に敗れた雪辱を期すモンジューが単勝オッズ1.91倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ6倍の2番人気となった。

エデリー騎手がシーヴァに騎乗したため、本馬はジョニー・ムルタ騎手と初コンビを組んだ。レースではスリックリーやシーヴァなどが先行し、本馬がそれを追走、モンジューは後方からレースを進めた。残り2ハロン地点で本馬が先頭に並びかけて抜け出したが、そこへ後方からモンジューが襲いかかってきた。今にもモンジューが本馬をかわすように思えたが、ここから本馬がジャイアンツコーズウェイとの死闘で鍛えられた闘争心を発揮し、粘り切って半馬身差で勝利した。

その後は渡米して、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に挑戦。今までマイル~10ハロン路線を進んできた本馬にとっては初の12ハロンという距離が懸念されていた。対戦相手も手強く、モンジューを筆頭に、ターフクラシックS・マンハッタンH・エルリンコンHの勝ち馬でアーリントンミリオン2着のマンダー、仏グランクリテリウム・リュパン賞・セクレタリアトSの勝ち馬シーロ、9歳にしてソードダンサー招待H・ターフクラシック招待SとGⅠ競走2勝を挙げてきたジョンズコール、ユナイテッドネーションズHの勝ち馬ダウンジアイル、エクリプスS5着後にキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSで2着し、渡米してマンノウォーSを勝っていたファンタスティックライト、ハードウィックS2回・プリンセスオブウェールズS・ドバイシーマクラシックの勝ち馬フルーツオブラヴ、キングエドワードⅦ世Sの勝ち馬サトルパワー、セプテンバーS・カンバーランドロッジSを連勝してきた後の加国際S勝ち馬ムタマム、スターズ&ストライプスBCH勝ち馬で加国際S2着のウィリアムニュース、アットマイルS・ディキシーSの勝ち馬クワイエットリゾルヴ、BCジュヴェヴァイル・ユナイテッドネーションズH・ソードダンサー招待Hで2着のアリズアリーが出走していた。モンジューが単勝オッズ4.2倍の1番人気、マンダーが単勝オッズ5.4倍の2番人気、本馬が単勝オッズ5.6倍の3番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ56.4倍の最低人気馬アリズアリーが先頭に立ち、ムタマム、ジョンズコール、クワイエットリゾルヴなどがそれを追って先行。最内枠から発走したムルタ騎手鞍上の本馬は、馬群の中団内側後方で脚を溜め、モンジューは最後方の位置取りとなった。レースは最初の6ハロン通過が1分15秒2というかなりのスローペースであり、明らかに先行馬有利の展開となった。そのために直線に入ってもクワイエットリゾルヴ、ジョンズコール、ムタマムといった先行馬勢が粘り続け、モンジューを始めとする後方待機馬勢の大半は伸びを欠く事になった。しかし後方待機馬勢の中で唯一、素晴らしい末脚を繰り出した馬がいた。それは四角で上手く外側に持ち出して9番手で直線を向いた本馬だった。次々に他馬を抜き去ると、ゴール前で先行馬勢をまとめて差し切り、2着クワイエットリゾルヴに半馬身差をつけて優勝した。

前年のデイラミに続き、2年連続で父ドユーンにBCターフの勝利をプレゼントした。また、馬主のアガ・カーンⅣ世殿下にとっても1984年の第1回BCターフをラシュカリで制して以来16年ぶり2度目のBCターフ勝利となった。

4歳時6戦3勝の成績を残した本馬は、この年のカルティエ賞最優秀古馬・エクリプス賞最優秀芝牡馬のタイトルを受賞した。

競走生活(5歳時)

5歳時も現役を続行し、5月のタタソールズ金杯(愛GⅠ・T10F110Y)から始動した。前年のBCターフでは5着だったが、その後はジャパンC3着・香港C1着・ドバイシーマクラシック2着と安定した走りを披露していたファンタスティックライト、ジャンプラ賞・オイロパ賞・伊ジョッキークラブ大賞・ガネー賞の勝ち馬ゴールデンスネイクの2頭が強敵だった。ファンタスティックライトが単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持され、休養明けの本馬が単勝オッズ2.75倍の2番人気、ゴールデンスネイクが単勝オッズ8倍の3番人気となった。ファロン騎手騎乗の本馬は後方2番手でレースを進め、直線に入る前から仕掛けて4番手で直線を向いた。しかし休養明けが影響したのかいつもの伸びは無く、好位から抜け出してゴールデンスネイクを首差かわして勝利したファンタスティックライトから3馬身1/4差の3着に終わった。

次走のプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)でも、ファンタスティックライトと顔を合わせた。他にも、ジャイアンツコーズウェイの連勝記録を5で止めたクイーンエリザベスⅡ世S・イスパーン賞の勝ち馬オブザーヴァトリー、マクトゥームチャレンジR3の勝ち馬でドバイワールドC3着のハイトーリ、ミラノ大賞・シンガポール航空国際Cの勝ち馬エンドレスホールなどが出走していた。1戦叩いた効果が期待された本馬が今回は単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、ファンタスティックライトが単勝オッズ4.33倍の2番人気、オブザーヴァトリーが単勝オッズ5倍の3番人気となった。ファロン騎手騎乗の本馬はスタートから最後方でレースを進めた。そして残り4ハロン地点で仕掛けると、直線では豪快に追い込み、やはり後方から差してきたファンタスティックライトとの追い比べとなった。ところが残り1ハロン地点で失速してしまい、ファンタスティックライトの2馬身半差2着に敗れた。このレース中に左前脚の管骨を亀裂骨折していた事が直後に判明したため、これを最後に5歳時2戦未勝利で競走馬引退となった。

2010年に完成した英国王立獣医科大学の建物「カラニシ・ビルディング」は本馬にちなんでいるという。

血統

Doyoun Mill Reef Never Bend Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Lalun Djeddah
Be Faithful
Milan Mill Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Virginia Water Count Fleet
Red Ray
Dumka Kashmir Tudor Melody Tudor Minstrel
Matelda
Queen of Speed Blue Train
Bishopscourt
Faizebad Prince Taj Prince Bio
Malindi
Floralie Pot o'Luck
Divel
Kalamba Green Dancer Nijinsky Northern Dancer Nearctic
Natalma
Flaming Page Bull Page
Flaring Top
Green Valley Val de Loir Vieux Manoir
Vali
Sly Pola Spy Song
Ampola
Kareena Riverman Never Bend Nasrullah
Lalun
River Lady Prince John
Nile Lily
Kermiya ヴィエナ Aureole
Turkish Blood
Embellie ヴェンチア
But Lovely

父ドユーンはデイラミの項を参照。

母カランバは現役成績5戦未勝利だが、母としては本馬の半弟カラマン(父デザートプリンス)【スコティッシュダービー(英GⅡ)】も産んでいる。カランバの半姉カルワダ(父ロベルト)の子には日本で走ったスターキングブル【大阿蘇大賞典】が、カランバの半妹カルディーラ(父シャーダリ)の子にはカードシア【マリオインチーサ賞(伊GⅢ)】が、カランバの半妹ジャネッタコクラン(父サドラーズウェルズ)の子にはサクソン【クイーンズランドギニー(豪GⅡ)・ドゥーンベンクラシック(豪GⅢ)】がいる。カランバの祖母ケルミヤの半姉カタナの子には1994年の仏首位種牡馬カルドゥンがいる。牝系は平地よりも障害競走の活躍馬が目立っており、カーリーフライト【フェルディナンデュフォーレ賞(仏GⅠ)・ルノーデュヴィヴィエ賞(仏GⅠ)】、サニーフライト【ラエジュスラン賞(仏GⅠ)】、ゴールデンフライト【ラエジュスラン賞(仏GⅠ)】といった仏国障害GⅠ競走の勝ち馬達が近親にいる。→牝系:F12号族①

母父グリーンダンサーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は愛国ギルタウンスタッドで種牡馬入りした。勝ち上がり率は25%ほどで決して低くは無いが、これといった活躍馬が登場せず、2008年からはボーズミルスタッドにおいて障害用種牡馬として供用されている。複数の優秀な障害競走馬を輩出しており、障害用種牡馬としては成功しそうである。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2003

Katchit

英チャンピオンハードル(英GⅠ)

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