トランポリノ

和名:トランポリノ

英名:Trempolino

1984年生

栗毛

父:シャーペンアップ

母:トレフィン

母父:ヴァイスリーガル

GⅠ競走未勝利の身で出走した凱旋門賞で怒涛の追い込みを決めて、前年にダンシングブレーヴが樹立したコースレコードを1秒4も更新する

競走成績:2~3歳時に仏米で走り通算成績11戦4勝2着3回3着3回

誕生からデビュー前まで

仏国きっての近代的な施設を有する名門牧場メズレー牧場の所有者として知られる仏国の馬産家ポール・ド・ムサック氏が米国ケンタッキー州に所有していたマリーステッドファーム(後にアーバンシーが生まれる場所でもある)で誕生した。ムサック氏の所有馬として仏国アンドレ・ファーブル調教師に預けられた。

競走生活(3歳前半まで)

2歳8月にドーヴィル競馬場で行われたカン賞(T1600m)でデビュー。後のジャパンC勝ち馬ルグロリューを4馬身差の2着に退けて勝利した。しかし翌9月にロンシャン競馬場で出走したロシェット賞(仏GⅢ・T1600m)では、グランシュレムの3馬身半差4着に敗退。10月にメゾンラフィット競馬場で出走したクリテリウムドメゾンラフィット(仏GⅡ・T1400m)では、カルヴァドス賞で2着してきた牝馬グレシアニュルン(後にサンタラリ賞でインディアンスキマーの3着、ムーランドロンシャン賞でミエスクの3着している)から2馬身差、シェーヌ賞の勝ち馬でロベールパパン賞・仏グランクリテリウム3着のフォティテン(桜花賞馬ワンダーパヒュームの父)から1馬身差の3着だった。2歳時の成績は3戦1勝だった。

3歳時は4月にロンシャン競馬場で行われたリステッド競走クールセル賞(T2000m)から始動。ここで主戦となるパット・エデリー騎手と初コンビを組み、2着デピュートに1馬身半差で勝利を収めた。次走のリュパン賞(仏GⅠ・T2100m)では、3着馬ミラクルホースには5馬身差をつけるも、コンデ賞・ギシュ賞の勝ち馬グルームダンサーの1馬身半差2着に敗退。

次走の仏ダービー(仏GⅠ・T2400m)では、英ダービーに向かったグルームダンサーは不在だったが、2戦2勝馬ナトルーンの頭差2着と惜敗した(それでも次走の愛ダービーで2着するホーリスヒルSの勝ち馬ナヒーズは2馬身差の3着に抑えた)。

次走のパリ大賞(仏GⅠ・T2000m)ではナトルーンも不在となったが、ジャンプラ賞・グリーナムSの勝ち馬でミドルパークS・フォレ賞2着のリスクミーに4馬身差をつけられ、当時の世界最高記録となる1310万ドル(約31億円)で取引された事で知られるデリンスタウンスタッドダービートライアルS・ガリニュールSの勝ち馬シアトルダンサー(米国三冠馬シアトルスルーの半弟)との2着争いにも短頭差遅れて3着に敗退。

競走生活(3歳後半)

夏場も走り、8月にドーヴィル競馬場でギョームドルナノ賞(仏GⅡ・T2000m)に出走したが、後にロッキンジSを勝つブロークンハーティドから4馬身差、後にガネー賞を2連覇するセントアンドリュースから2馬身半差の3着に終わった。

秋はニエル賞(仏GⅡ・T2400m)に出走。ここではナトルーンと2度目の対戦となったが、本馬が2着ビデオロックに3/4馬身差、3着セントアンドリュースにはさらに首差、4着ナトルーンにはさらに半馬身差をつけて勝利した。

続いて出走したのは凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)だった。なお、凱旋門賞の1週間前に米国カリフォルニア州の実業家ブルース・マクネイル氏が本馬の権利の半分を購入している。マクネイル氏はこの年にナショナルホッケーリーグ所属のロサンゼルス・キングスを買収して、翌年には史上最高のホッケー選手と言われたウェイン・グレツキー選手を獲得する人物である。マクネイル氏とグレツキー選手は後にゴールデンフェザントソーマレズの共同馬主となる事でも知られる。

さて、この年の凱旋門賞は、英ダービー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・英セントレジャー・ウィリアムヒルフューチュリティS・ダンテS・グレートヴォルティジュールSの勝ち馬リファレンスポイント、牡馬を薙ぎ倒して勝ち星を増やしていたマルセルブサック賞・愛2000ギニー・英チャンピオンS・ガネー賞・コロネーションC・英国際S・愛チャンピオンSなどの勝ち馬トリプティク、エクリプスSでリファレンスポイントを破っていたプリンスオブウェールズS・ブリガディアジェラードSの勝ち馬ムトト、伊共和国大統領賞・ミラノ大賞の勝ち馬で伊ジョッキークラブ大賞・サンクルー大賞2着のトニービン、ローマ賞・ハードウィックSの勝ち馬オーバン、ベルトゥー賞・エスペランス賞・ラクープドメゾンラフィットを勝ってきたタバヤーン、ミネルヴ賞・ロワイヤリュー賞・エヴリ大賞の勝ち馬シャラニヤといった強豪馬が出走しており、英ダービー7着後にダフニ賞・プランスドランジュ賞を勝っていたグルームダンサー、ナトルーンといった過去に本馬と戦ってきた馬達が可愛く見えるほどだった。1番人気にはリファレンスポイント、2番人気にはトリプティクが支持され、本馬は6番人気に留まった。

スタートが切られると大方の予想どおりにリファレンスポイントが先頭に立ったが、そこへナトルーン陣営が送り込んだラビット役のシャラニヤが猛然と競りかけていった。そのためにリファレンスポイントが刻んだラップは超ハイペースとなった。一方の本馬は8番人気馬トニービンと一緒に馬群の最後方を追走した。直線に入るとリファレンスポイントはスタミナが切れて失速。直線入り口で最後方だった本馬をエデリー騎手は馬群の中に突っ込ませた。そしてちょうど1頭分だけ空いた隙間から瞬く間に突き抜けて、直線に入って僅か100mほど行ったところで早くも先頭に立った。そしてそのまま末脚を伸ばし続け、後方から追いかけてきた2着トニービンに2馬身差をつけて優勝した。

勝ち時計の2分26秒3は、前年にダンシングブレーヴが樹立した2分27秒7を一気に1秒4も更新するコースレコードであり、11年後の1997年にパントレセレブルが2分24秒6を計時するまで破られなかった。

その後は米国に遠征して、ハリウッドパーク競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に参戦した。ハイアリアターフC・ボーリンググリーンH・ソードダンサーH・ターフクラシックS・マンノウォーSとこの年にGⅠ競走で5勝を挙げていた前年2着馬シアトリカル、ハリウッド招待ターフH・カールトンFバークH・ゴールデンゲートHなどの勝ち馬リヴリア、パリ大賞・サンセットH・デルマー招待Hの勝ち馬スウィンク、オイロパ賞・オークツリー招待H・ゴードンS・ゴードンリチャーズSの勝ち馬で前年のジャパンC2着のアレミロード、ヨークシャーオークス・ヴェルメイユ賞・プリティポリーSの勝ち馬ビントパシャ、愛ダービー・ディーSの勝ち馬で英国際S・加国際S3着のサーハリールイス、カールトンFバークH・サンルイオビスポHの勝ち馬で前走オークツリー招待H2着のルイルグラン、コンセイユドパリ賞の勝ち馬ヴィレッジスター、ワシントンDC国際Sで2着してきた翌年のBCターフの勝ち馬グレートコミュニケーター、ラスパルマスHを勝ってきたオータムグリッター、ローレルターフカップS・ロイヤルパームHの勝ち馬ストームオンザルースなどが対戦相手となった。シアトリカルとルイルグランのカップリングが単勝オッズ2.8倍の1番人気、本馬が単独で単勝オッズ3.6倍の2番人気、リヴリアとスウィンクのカップリングが単勝オッズ5.2倍の3番人気となった。

スタートが切られるとグレートコミュニケーターが先頭に立ち、スタートがあまり良くなかった本馬はそのまま馬群の中団後方につけた。そして向こう正面で外側から一気に位置取りを上げて、三角では4番手まで押し上げてきた。そして直線入り口では、グレートコミュニケーターに代わって先頭に立っていたシアトリカルに外側から並びかけた。直線では本馬とシアトリカルの激しい叩き合いとなったが、シアトリカルが最後まで抜かさせずに勝利を収め、本馬は半馬身差の2着に惜敗した。

これが現役最後のレースとなったが、それでも凱旋門賞馬の実力は十分に発揮した内容となった(凱旋門賞の勝ち馬が同年のBCターフで入着したのは、これ以外には2015年に2着したゴールデンホーンの例があるのみ。同年に限定しない場合でも、他にはカーネギーが凱旋門賞を勝った翌年に3着している例があるのみである)。

3歳時の成績は8戦3勝だったが、凱旋門賞の内容が評価されて、国際クラシフィケーションでは134ポンド、英タイムフォーム社のレーティングでは135ポンドの数値を得て、いずれもこの年の全世代を通じて第2位の評価を受けた(いずれも第1位はリファレンスポイント)。

血統

Sharpen Up エタン Native Dancer Polynesian Unbreakable
Black Polly
Geisha Discovery
Miyako
Mixed Marriage Tudor Minstrel Owen Tudor
Sansonnet
Persian Maid Tehran
Aroma
Rocchetta Rockefella Hyperion Gainsborough
Selene
Rockfel Felstead
Rockliffe
Chambiges Majano Deiri
Madgi Moto
Chanterelle Gris Perle
Shah Bibi
Trephine ヴァイスリーガル Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Victoria Regina Menetrier Fair Copy
La Melodie
Victoriana Windfields
Iribelle
Quiriquina Molvedo Ribot Tenerani
Romanella
Maggiolina Nakamuro
Murcia
La Chaussee Tyrone Tornado
Statira
Flying Colours Massine
Red Flame

シャーペンアップは当馬の項を参照。

母トレフィンは現役成績24戦3勝。トレフィンの半兄にはトレパン(父ブレイクスピア)【ドラール賞(仏GⅡ)・ラクープドメゾンラフィット(仏GⅢ)・クインシー賞(仏GⅢ)】がいる。トレフィンの半姉バットゥータ(父ボージェンシー)の曾孫にはシャノンロック【ラエジュスラン賞(仏GⅠ)】が、トレフィンの祖母ラチョージーの半兄にはフォンテネー【フォレ賞・ガネー賞・シェーヌ賞】、半姉にはトスカネッラ【ヴァントー賞】、全兄にはルメニル【コンデ賞・オカール賞・グレフュール賞・シャンティ賞・2着凱旋門賞】などがいるが、近親の活躍馬はかなり少なく、優秀な牝系とは言えない。一応、ラチョージーの曾祖母ヴェイユーズの半弟に全日本首位種牡馬5回のセフトが、ヴェイユーズの母ヴォールーズの半弟にソラリオ【英セントレジャー・コロネーションC・アスコット金杯】がいるのだが、近親とは言い難い。→牝系:F26号族

母父ヴァイスリーガルはヴァイスリージェントの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ゲインズウェイファームで種牡馬入りした。2000年にはその5年前に死去したムサック氏がかつて所有していたメズレー牧場に移動して、2011年に種牡馬を引退した。2015年現在も存命中であれば31歳という高齢だが、種牡馬引退後の動向に関しては伝わってこない。種牡馬としては64頭のステークスウイナーを出しており、一定の成功を収めている。繁殖牝馬の父としては、仏ダービー馬ブルーカナリ、BCジュヴェナイルの勝ち馬アクションディスデイ、BCディスタフの勝ち馬ラウンドポンドなどを出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1989

Summer Ensign

セネカH(米GⅢ)

1989

Trampoli

ロングアイランドH(米GⅡ)・ラプレヴォヤンテH(米GⅡ)・オーキッドH(米GⅡ)・ペネロープ賞(仏GⅢ)・シープスヘッドベイH(米GⅢ)・アシーニアH(米GⅢ)

1990

Cox Orange

カルヴァドス賞(仏GⅢ)・ボーゲイH(米GⅢ)・ヴァインランドH(米GⅢ)・スワニーリヴァーH(米GⅢ)・バックラムオークH(米GⅢ)

1990

Dernier Empereur

英チャンピオンS(英GⅠ)・ギョームドルナノ賞(仏GⅡ)・デルマーH(米GⅡ)・カールトンFバークH(米GⅡ)・ラクープドメゾンラフィット(仏GⅢ)

1990

Hidden Trick

ハッチソンS(米GⅡ)

1990

Kindergarten

オマール賞(仏GⅢ)

1990

Talloires

サンセットH(米GⅡ)

1990

Triarius

セレクトS(英GⅢ)

1991

Germany

ダルマイヤー大賞(独GⅠ)・バーデン大賞(独GⅠ)・メルセデスベンツ大賞(独GⅡ)・ゲルゼンキルヒェン経済大賞(独GⅢ)

1993

For Valour

ラクープ(仏GⅢ)

1993

Mandarino

パリ大障害

1994

Neuilly

メシドール賞(仏GⅢ)

1995

Arkadian Hero

ミルリーフS(英GⅡ)・クリテリオンS(英GⅢ)・ハンガーフォードS(英GⅢ)

1995

Snow Polina

ビヴァリーDS(米GⅠ)・ブラックヘレンH(米GⅡ)

1995

Spirit of Love

シザレウィッチH

1996

Juvenia

マルセルブサック賞(仏GⅠ)

1999

Bike

ジアナ大賞(ガヴェア)(伯GⅠ)

1999

Zimbamia

ジアナ大賞(シダーヂジャルヂン)(伯GⅠ)

2001

Valixir

イスパーン賞(仏GⅠ)・クイーンアンS(英GⅠ)・ユジェーヌアダム賞(仏GⅡ)・ニエル賞(仏GⅡ)・メシドール賞(仏GⅢ)

2003

Starman

ベントゴンサルヴェス大賞(伯GⅠ)2回

2004

Vadapolina

クレオパトル賞(仏GⅢ)・プシシェ賞(仏GⅢ)

2006

Peligroso

ヘルツォークフォンラティボアレネン(独GⅢ)

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