アーバンシー

和名:アーバンシー

英名:Urban Sea

1989年生

栗毛

父:ミスワキ

母:アレグレッタ

母父:ロンバルト

フロック視されていた凱旋門賞制覇の実力を繁殖入りしてから証明、2頭のチャンピオンホースを含む4頭のGⅠ競走の勝ち馬を産んだ世界的名繁殖牝馬

競走成績:2~5歳時に仏独加米香英日で走り通算成績24戦8勝2着4回3着3回

現役時代は人気薄ながら凱旋門賞を優勝し、繁殖入り後は歴史的名馬を次々出して21世紀初頭における世界最高の繁殖牝馬となった名牝。

誕生からデビュー前まで

仏国の競走馬生産者協会会長のミシェル・エノシュバーグ氏が経営する米国ケンタッキー州のマリーステッドファームで誕生した。1歳8月のドーヴィルセールに出品され、日本人実業家の沢田正彦氏の代理人だった仏国ジャン・レスボルド調教師により28万フラン(当時の為替レートで約800万円)という安値で購入された。しかし翌年に沢田氏の会社が倒産したため、再度売りに出された本馬は、レスボルド師の知人だった香港の実業家デヴィッド・ツイ氏に買い取られた。

競走生活(2・3歳時)

レスボルド師の調教を受けた本馬は、2歳9月にエヴリ競馬場で行われたモランジ賞(T1400m)において、しばらく主戦を務めるM・ブータン騎手を鞍上にデビュー。勝ち馬から3馬身差の2着だった。次走のベラパオラ賞(T1600m)では重馬場の中を首差で勝利した。しかしやはり重馬場となったピアジェC(T1400m)では4着に敗れて、半年間の休養に入った。2歳時は3戦1勝の成績だった。

3歳時は4月のリステッド競走インプルーデンス賞(T1400m)から始動したが、スタートして間もなく落馬競走中止となってしまった。続くグロット賞(仏GⅢ・T1600m)では、カルヴァドス賞勝ち馬でマルセルブサック賞3着のヴェルヴェーヌ、オマール賞勝ち馬ギスレーヌ、チェヴァリーパークS2着馬アブサルダなどが対戦相手となり、本馬は単勝オッズ31倍で8頭立ての最低人気だった。そしてレースでも見せ場無く、最後方から少し差を詰めただけで、アブサルダの3馬身3/4差6着に敗退した。

その翌週には独国に移動して独1000ギニー(独GⅡ・T1600m)に出走。直線入り口後方2番手から猛然と追い込み、勝ったプリンセスナナから首差の3着に入った。仏国に戻り、リステッド競走セーヌ賞(T2000m)に出走。これといった対戦相手はおらず、重馬場の中を2着サンゼスカールに半馬身差で勝利した。

続いて仏オークス(仏GⅠ・T2100m)に駒を進めた。サンタラリ賞を勝ってきたローズフィンチ、名馬ダンシングブレーヴの全妹で、サンタラリ賞2着のジョリファ、サンタラリ賞で3着してきたヴェルヴェーヌ、ヴァントー賞勝ち馬シーバダンサー、ギスレーヌなどが対戦相手となった。レースではやはり後方待機策を採り、直線入り口7番手から追い上げてきたが、勝ったジョリファから2馬身3/4差の6着に終わった。

夏場はミネルヴ賞(仏GⅢ・T2400m)に出走。仏オークスの走りからそれなりに評価は上がっており、単勝オッズ4倍の2番人気だった。レースでは今までと異なり積極的に先行。やがて先に仕掛けた後続馬に抜かれて4番手で直線を迎えたが、ここから再度盛り返し、勝ったリンガの首差2着に入った。

次走のリステッド競走ピアジェドール賞(T2000m)では、仏オークスで2着だったシーバダンサーとの顔合わせとなった。しかしここでは本馬の得意な重馬場となり、2着シーバダンサーに2馬身半差をつけて勝利した。

秋にはヴェルメイユ賞(仏GⅠ・T2400m)に参戦。ジョリファを筆頭に、愛1000ギニーと愛オークスで共に2着だったプリティポリーS勝ち馬マーケットブースター、3連勝中のカンニング、ヴェルヴェーヌ、マルレ賞勝ち馬トリシド、リンガなどが対戦相手となり、本馬は単勝オッズ18倍の7番人気だった。今回も本馬はスタートから先頭を走る積極策に打って出た。そして直線でも粘り、ゴール前で差されてジョリファの半馬身差の3着に敗れたものの、予想以上の好走を見せた。

その直後に北米大陸遠征を決行。初戦のEPテイラーS(加GⅡ・T10F)では、英1000ギニー・オペラ賞の勝ち馬ハトゥーフ、2年前の勝ち馬で、ナッソーS2連覇のルビータイガーなどが対戦相手となった。ハトゥーフが単勝オッズ3倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ4.15倍の2番人気となった。レースでは3番手の好位を追走し、直線に入ると先に抜け出したハトゥーフを追撃。結局は1馬身1/4差で届かなかったが、2着を確保した。

続くイエローリボン招待S(米GⅠ・T10F)では前走より対戦相手の層が厚くなり、メイトリアークS・ビヴァリーヒルズH・ラモナHなどを勝っていた後の米国顕彰馬フローレスリーを筆頭に、パロマーH・ラスパルマスHの勝ち馬スーパースタッフ、オールアロングSを勝ってきたマーブルメイデン、ローズフィンチ、デルマーオークス勝ち馬スイヴィなどが出走してきた。そのため、本馬は単勝オッズ15.2倍の5番人気止まりだった。そしてレースでも後方のまま、勝ったスーパースタッフから9馬身1/4差をつけられた9着最下位に敗れて帰国。3歳時は10戦したがリステッド競走を2勝しただけに終わった。

競走生活(4歳初期と中期)

4歳時は3月のエクスビュリ賞(仏GⅢ・T2000m)から始動。ここではシーバダンサー、クインシー賞勝ち馬ダンピエールなどを抑えて、単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持された。そして2着マリードに1馬身差をつけて勝利した。

続いて今度はツイ氏の地元香港に遠征して、香港国際C(香GⅢ・T1800m)に出走。香港ダービー・香港招待C・クイーンエリザベスⅡ世C勝ち馬リヴァーヴァードンが単勝オッズ1.6倍という断然の1番人気に推され、ウォルター・スウィンバーン騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ9.6倍の2番人気だった。しかし結果はロマネコンティの4馬身3/4差6着だった。

欧州に戻り、ジャンドショードネイ賞(仏GⅡ・T2400m)に出走。オイロパ賞・グレフュール賞の勝ち馬アップルツリーが単勝オッズ2.2倍の1番人気で、本馬は単勝オッズ5.2倍の2番人気だったが、モディシュの1馬身3/4差5着に敗れた。

続くプリンスオブウェールズS(英GⅡ・T10F)では、タタソールズ金杯などの勝ち馬ジョージアウグストゥス、タタソールズ金杯で2着してきたエズード、ダイオメドS勝ち馬エンハーモニック、クレイヴンS勝ち馬エンペラージョーンズなどが対戦相手となった。初騎乗となるキャッシュ・アスムッセン騎手を鞍上に迎えた本馬は、単勝オッズ9倍の4番人気だった。今回は逃げ馬を見るように好位を追走し、直線に入ると先に抜け出したプラサーヴィルを追撃。結局首差届かなかったものの2着と好走した。

そしてこの頃から本馬の潜在能力は開花する。続くリステッド競走エレヴァージェ賞(T2000m)では僅か3頭立てのレースとなった事もあり、2着ハーフアチックに2馬身差で快勝した。次走のゴントービロン賞(仏GⅢ・T2000m)では、中団から直線で抜け出し、2着ヴェルヴェーヌに半馬身差で勝利した。

凱旋門賞

次走は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)となった。さすがに欧州最強馬決定戦だけあって、対戦相手の層の厚さは今まで本馬が出てきたレースとはまるで比較にならないものだった。リュパン賞・仏ダービー・ニエル賞の勝ち馬で愛ダービー2着のエルナンド、この年のカルティエ賞最優秀古馬に選ばれるコロネーションC・エクリプスS・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・タタソールズ金杯などの勝ち馬オペラハウス、この年のカルティエ賞最優秀3歳牝馬に選ばれるサンタラリ賞・英オークス・ヴェルメイユ賞の勝ち馬イントレピディティ、英セントレジャーで2着してきたレーシングポストトロフィー勝ち馬アーミジャー、愛オークス・マルレ賞などの勝ち馬でヴェルメイユ賞2着のウィームズバイト、仏オークス・ノネット賞を連勝してきたシェマカ、伊2000ギニー・ローマ賞などを勝っていた本馬と同父のミシル、前年に英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークス・英セントレジャーを勝って凱旋門賞でも2着してカルティエ賞年度代表馬に選ばれ、この年もサンクルー大賞に勝っていたユーザーフレンドリー、グレートヴォルティジュールS・英セントレジャーを連勝してきたボブズリターン、ヨークシャーオークス・フォワ賞を連勝してきたオンリーロワイヤル、ガネー賞・モーリスドニュイユ賞などの勝ち馬で前年の凱旋門賞3着だったヴェールタマンド、サンタラリ賞2着・仏オークスとニエル賞3着のシェーヌ賞勝ち馬ダンシエンヌ、メルフィンク銀行賞・ミラノ大賞・独2000ギニーなどの勝ち馬プラティニ、ポモーヌ賞・ミネルヴ賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞3着のブライトムーン、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSでオペラハウスの2着だった伊ダービー馬ホワイトマズル、英国際Sを勝ってきたエズード、ダルマイヤー大賞・プリティポリーSなどの勝ち馬マーケットブースター、コンセイユドパリ賞の勝ち馬ガーデンオブヘヴンなどが出走していたのである。

しかも過去3戦で本馬に騎乗していたアスムッセン騎手がエルナンドに騎乗したため、本馬の鞍上はGⅠ競走未勝利のエリック・サンマルタン騎手(名手イヴ・サンマルタン騎手の息子)に乗り代わっていた。そんな状況で本馬の評価が高くなるわけも無かった。エルナンドが単勝オッズ4.7倍の1番人気、オペラハウスとイントレピディティのカップリングが単勝オッズ4.9倍の2番人気、アーミジャーとウィームズバイトのカップリングが単勝オッズ5倍の3番人気で、以下、単勝オッズ8.8倍のシェマカ、単勝オッズ10倍のミシル、単勝オッズ12.8倍のユーザーフレンドリー、単勝オッズ13.6倍のボブズリターン、単勝オッズ20倍のオンリーロワイヤル、単勝オッズ21倍のヴェールタマンド、単勝オッズ26倍のダンシエンヌと続き、本馬は単勝オッズ38倍の11番人気だった。それでもこのメンバー構成で本馬程度の実績ならば、もっと人気薄となってもおかしくないところだった。もしかしたらレースが超不良馬場で行われた事が少し影響したのだろうか。

レースは23頭立ての他頭数で行われ、ダリヨーンやユーザーフレンドリーを先頭に馬群が一団となって進んだ。エルナンドは後方から、オペラハウスは先行体勢でレースを進め、本馬はインコースの好位を追走した。そのまま直線に入るとまずはボブズリターンが先頭に立ち、続いて直線に3番手で入ってきたオペラハウスが抜け出した。しかし7番手の好位を維持したまま直線に入った本馬が最内の仮柵取り外し後の走りやすい馬場を強襲。残り200m地点で先頭に立つと、外側から追い込んできた単勝オッズ55倍の15番人気馬ホワイトマズルを首差抑えて見事に優勝した。牝馬が凱旋門賞を勝ったのは1983年のオールアロング以来10年ぶりの快挙だった。そして本馬の鞍上にはこのままサンマルタン騎手が固定されることになった。

競走生活(凱旋門賞以降)

本馬はその後に来日してジャパンC(日GⅠ・T2400m)に出走した。対戦相手は、BCターフ・サンルイレイS・サンフアンカピストラーノH・エディリードH・オークツリー招待Hなどを勝ってきた現役米国最強芝馬コタシャーン、ホワイトマズル、アーリントンミリオン・マンノウォーS・サンマルコスH・マンハッタンH・シーザーズ国際Hなどの勝ち馬スターオブコジーン、東京優駿・弥生賞・京都新聞杯の勝ち馬ウイニングチケット、ローズヒルギニー・AJCダービー・コーフィールドSと豪州のGⅠ競走で3勝を挙げていた前年のジャパンC2着馬ナチュラリズム、セントライト記念勝ち馬で前年の有馬記念2着馬レガシーワールド、菊花賞・天皇賞春・日経賞の勝ち馬で東京優駿2着のライスシャワー、コックスプレート・新ダービー・新国際Sの勝ち馬ザファントムチャンス、デルマー招待Hでコタシャーンを破っていたルアズー、前年の宝塚記念・有馬記念勝ち馬メジロパーマー、凱旋門賞で7着した後に伊ジョッキークラブ大賞を勝ってきたミシル、凱旋門賞で13着だったプラティニなどだった。ジャパンCとしてはかなり層が厚いメンバー構成であり、本馬は単勝オッズ15.2倍で10番人気の低評価だった。凱旋門賞で本馬より人気薄だったホワイトマズルがここでは単勝オッズ6.4倍の2番人気に推された(1番人気は単勝オッズ5.2倍のコタシャーン)のを見ると、本馬の凱旋門賞勝利は完全なフロックとみなされたようである(もっとも、ミシルやプラティニは本馬より人気薄だった)。

スタートが切られるとメジロパーマーが逃げを打ち、外側の7枠発走だった本馬は馬群の中団好位につけた。そしてそのままの体勢で直線に入ってきたが伸びを欠き、レガシーワールドの4馬身差8着に敗れた(4着プラティニ、6着ミシルには先着されたが、13着ホワイトマズルには先着した)。4歳時の成績は8戦4勝だった。

5歳時も現役を続行した本馬は4月のアルクール賞(仏GⅡ・T2000m)から始動。クリテリウムドサンクルー勝ち馬で、3戦連続2着中のマルシャンドサブル、北米遠征でターフクラシック招待Sを勝っていたアップルツリー、エクスビュリ賞を勝ってきたマタラン、オカール賞勝ち馬で加国際S3着のリージェンシー、アルクール賞などの勝ち馬マリルド、凱旋門賞で本馬の9着だったヴェールタマンドなどが対戦相手となったが、凱旋門賞馬の貫禄で本馬が単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持された。レースでは3番手を追走して直線に入ると抜け出すという横綱相撲で、追い込んできた2着ヴェールタマンドに1馬身差で勝利した。

次走のガネー賞(仏GⅠ・T2100m)では、凱旋門賞で本馬の4着だったイントレピディティに1番人気(単勝オッズ2.5倍)の座を譲り、単勝オッズ2.8倍の2番人気での出走となった。今回も好位を追走して4番手で直線に入ってきたが、前が塞がる不利があり、前走で負かしたマリルドの3馬身差3着に敗れた。

次走のコロネーションC(英GⅠ・T12F10Y)では、前走2着のイントレピディティ、ホワイトマズル、凱旋門賞で本馬の5着だったオンリーロワイヤル、アップルツリーといった既対戦組の他に、アラルポカル・オイロパ賞などを勝っていた独国の名馬モンズーン、3年前のエクリプスS勝ち馬エンヴァイロンメントフレンドなども出走していた。イントレピディティが単勝オッズ3.5倍の1番人気、ホワイトマズルが単勝オッズ4.5倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ9倍の3番人気での出走となった。そして中団からレースを進めたが、直線に入って今ひとつ伸びを欠き、アップルツリーの3馬身3/4差4着に敗れた。ホワイトマズルは5着、オンリーロワイヤルは7着、イントレピディティは11着最下位と、前年の凱旋門賞好走組は揃って敗れ去った。そして本馬は球節の故障のため、結局これを最後に5歳時3戦1勝の成績で引退となった。

血統

Miswaki Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Hopespringseternal Buckpasser Tom Fool Menow
Gaga
Busanda War Admiral
Businesslike
Rose Bower Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Lea Lane Nasrullah
Lea Lark
Allegretta Lombard Agio Tantieme Deux-Pour-Cent
Terka
Aralia Alchimist
Aster
Promised Lady Prince Chevalier Prince Rose
Chevalerie
Belle Sauvage Big Game
Tropical Sun
Anatevka Espresso Acropolis Donatello
Aurora
Babylon Bahram
Clairvoyante
Almyra Birkhahn Alchimist
Bramouse
Alameda Magnat
Asterblute

ミスワキは当馬の項を参照。

母アレグリッタは現役成績9戦2勝。繁殖牝馬としては優秀で、本馬の半妹アレレトロワ(父リヴァーマン)【フロール賞(仏GⅢ)】、半弟キングズベスト(父キングマンボ)【英2000ギニー(英GⅠ)】も産んでいる。本馬の半姉アンジル(父プラグドニックル)の子にアンジレロ【ドイツ賞(独GⅠ)】が、半妹ターベイン(父トランポリノ)の子にテルテュリアン【キウスーラ賞(伊GⅢ)2回・ポルトマイヨ賞(仏GⅢ)】が、アレレトロワの子にアナバーブルー【仏ダービー(仏GⅠ)・ノアイユ賞(仏GⅡ)・シャンティ大賞(仏GⅡ)】、孫にタマユズ【ジャンプラ賞(仏GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)】が、半妹アルトリュイスト(父ダイイシス)の子にテルビ【モーリスドニュイユ賞(仏GⅡ)】がいる。

アレグリッタの牝系は元々独国で発展したもので、アレグリッタの全弟にはアンノ【ヘルティー大賞(独GⅡ)・独セントレジャー(独GⅡ)・フュルシュテンベルクレネン(独GⅢ)・ダルマイヤー大賞(独GⅢ)】、半弟にはアナタス(父プリアモス)【ウニオンレネン(独GⅡ)】がいる。アレグリッタの半姉アメジスタ(父ガルフパール)の子にはアポロニオス【ヘルティー大賞(独GⅡ)】、孫にはアッズーロ【MRC1000ギニー(豪GⅠ)】が、アレグリッタの全妹アリヤの子にはサルザバーバー【コールダーダービー(米GⅢ)】、孫にはアドラーフルク【独ダービー(独GⅠ)・ドイツ賞(独GⅠ)】がいる。→牝系:F9号族①

母父ロンバルトは現役成績29戦20勝。デュッセルドルフ大賞3連覇の他、オイロパ賞・ノルトラインヴェストファーレン大賞(現ベルリン大賞)2回・独2000ギニー・独セントレジャー・ハンザ賞・ゲルリング賞2回・フュルシュテンベルクレネンなどを制し、2度の独年度代表馬に選ばれた独国の歴史的名馬。ロンバルトの父アジオはタンティエーム産駒で、ノルトラインヴェストファーレン大賞勝ちなど24戦5勝の成績だった。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、馬主ツイ氏が愛国に設立した馬産団体サンダーランド・ホールディングスの所有馬として、愛国ナショナルスタッドで繁殖入りした。愛国ナショナルスタッドで繁殖入りした理由は同牧場の管理者ジョン・クラーク氏とツイ氏の母親が知り合いだったためであるらしい。

初年度はベーリングと交配され、7歳時に初子となる牡駒アーバンオーシャンを産んだ。アーバンオーシャンはガリニュールS(愛GⅢ)勝ちなど14戦4勝の成績を挙げた。

8歳時は2番子の牝駒メリカー(父ラムタラ)を産んだ。メリカーは英国のリステッド競走プリティポリーSを勝った他、英オークス(英GⅠ)でラヴディヴァインの3着、愛オークス(愛GⅠ)でペトルシュカの2着など4戦1勝の成績を残した。

9歳時は3番子の牡駒ガリレオ(父サドラーズウェルズ)を産んだ。ガリレオは、英ダービー(英GⅠ)・愛ダービー(愛GⅠ)・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ)・デリンズタウンスタッドダービートライアルS(愛GⅢ)を勝って8戦6勝の成績を残し、本馬の繁殖牝馬としての名声を不動のものにした。

10歳時は4番子の牡駒ブラックサムベラミー(父サドラーズウェルズ)を産んだ。ブラックサムベラミーは現役当初は活躍せず同厩のハイシャパラルのペースメーカーとして使われた事もあったが、3歳暮れにジョッキークラブ大賞(伊GⅠ)を勝ってGⅠ競走勝ち馬となり、翌年にはタタソールズ金杯(愛GⅠ)も勝利して最終的には18戦4勝の成績を残した。

11歳時は5番子の牡駒アティキャス(父サドラーズウェルズ)を産んだが、この子は不出走に終わった。

12歳時は6番子の牝駒オールトゥビューティフル(父サドラーズウェルズ)を産んだ。オールトゥビューティフルはミドルトンS(英GⅢ)を勝ち、英オークス(英GⅠ)でウィジャボードの2着するなど6戦3勝の成績を残した。

13歳時は7番子の牝駒マイタイフーン(父ジャイアンツコーズウェイ)を産んだ。2002年のタタソールズノーベンバーセールにおいて当歳牝馬としては世界史上最高額の180万ギニー(当時の為替レートで約3億6千万円)で取引されたマイタイフーンは、ダイアナS(米GⅠ)・ミセスリヴィアS(米GⅡ)・ボールストンスパH(米GⅡ)・ジャストアゲームH(米GⅡ)・ミントジュレップH(米GⅢ)・ジェニーワイリーS(米GⅢ)勝ちなど22戦9勝の成績を残し、本馬の産駒として3頭目のGⅠ競走勝ち馬となった。

14歳時は産駒がおらず、15歳時は8番子の牝駒チェリーヒントン(父グリーンデザート)を産んだ。チェリーヒントンは5戦未勝利だったが、英オークス(英GⅠ)でライトシフトの5着になっている。

16歳時は9番子の牡駒シーズレガシー(父グリーンデザート)を産んだが、この子は不出走に終わった。

17歳時は10番子の牡駒シーザスターズ(父ケープクロス)を産んだ。シーザスターズは、英2000ギニー(英GⅠ)・英ダービー(英GⅠ)・エクリプスS(英GⅠ)・英国際S(英GⅠ)・愛チャンピオンS (愛GⅠ)・凱旋門賞(仏GⅠ)・ベレスフォードS(愛GⅡ)を勝って9戦8勝の成績を残し、史上2組目の母子凱旋門賞制覇を果たし、カルティエ賞年度代表馬にも選出された。

しかし本馬はシーザスターズが大活躍する直前の2009年3月2日、11番子となる牡駒ボーントゥシー(父インヴィンシブルスピリット)を出産した直後、合併症により他界した。ボーントゥシーは現役成績8戦1勝だったが、愛ダービー(愛GⅠ)でキャメロットの2着、ロイヤルホイップS(愛GⅡ)・キラヴーランS(愛GⅢ)でも2着するなどの活躍を見せた。

本馬は11頭の産駒を産み、9頭が競走馬となり、8頭が勝ち上がり、6頭がグループ及びグレード競走勝ち馬となり、4頭がGⅠ競走勝ち馬となり、2頭がチャンピオンホースとなった。英ダービー馬2頭の母となったのは、20世紀以降では本馬が2頭目(1頭目はブレイクニーとモーストンの母ウインドミルガール)である。この繁殖成績は21世紀に入ってからの世界競馬界において最高レベルと言っても過言では無いほどで、凱旋門賞の勝利は決して運に恵まれただけのものでは無かった事を示している。

後世に与えた影響

既にガリレオが種牡馬として既に大きな成功を収め、シーザスターズも人気種牡馬となっており、本馬の血は世界中に広まりつつある。

最近は本馬の牝系も発展を始めており、メリカーの子にはマスターストローク【ドーヴィル大賞(仏GⅡ)】、孫にはクワーラー【UAEダービー(首GⅡ)・UAEオークス(首GⅢ)】と、ヴァンクーヴェリテ【ギョームドルナノ賞(仏GⅡ)】が、チェリーヒントンの子にはワーディング【ロックフェルS(英GⅡ)】と、ブレスレット【愛オークス(愛GⅠ)・リブルスデールS(英GⅡ)・レパーズタウン1000ギニートライアル(愛GⅢ)】が登場している。

この調子で本馬の血が広まっていけば、22世紀に入った頃には本馬が史上最も偉大な繁殖牝馬としての評価を受けることになるかもしれない。

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