オルテロ

和名:オルテロ

英名:Ortello

1926年生

栗毛

父:テディ

母:ホーレベック

母父:ゴーゴス

伊国調教馬として史上初の凱旋門賞優勝を果たした伊国競馬史上有数の名馬は6度の伊首位種牡馬に輝くも最後は米国で生涯を終える

競走成績:2~4歳時に伊仏で走り通算成績19戦16勝2着2回

誕生からデビュー前まで

伊国ティチノ牧場において生産された馬で、伊国の馬主ジュゼッペ・デ・モンテル氏により購入された。モンテル氏はフェデリコ・テシオ氏と並ぶ伊国の名馬産家・馬主であり、彼が所有する牧場は非常に大きな規模を誇り、少数精鋭主義だったテシオ氏よりも収得賞金では上回っていたという。本馬は長じて体高17ハンドに達する非常に大型の馬になった。

競走生活

2歳時はデビューからコーンレド賞・ルイノ賞・ヴォルタ賞と簡単に3連勝。4戦目の伊グランクリテリウム(T1500m)ではアルンティウスの頭差2着に敗れたが、続く古馬混合の伊国短距離王決定戦であるキスラ賞(T1400m)では、前年の伊グランクリテリウムと同年の伊オークス・伊ジョッキークラブ大賞を制した名牝エルバに5馬身差をつけて優勝した。2歳時の成績は5戦4勝だった。

3歳になると、エマニュエレフィリベルト賞(T2000m)を勝利。そして迎えたダービーレアロ(T2400m・現在の伊ダービー)では、2着ミノダレッツォに4馬身差で余裕の逃げ切り勝ちを収めた。海外調教馬も参戦してきた6月のイタリア大賞(T2400m)もコースレコードを樹立して5馬身差で圧勝した。同月のミラノ大賞(T3000m)では、スタートで出遅れるが少しずつ位置取りを上げ、最後は仏国調教の4歳馬ピンソー(翌月のモーリスドニュイユ賞を勝っている)との叩き合いを制して3/4馬身差で勝利した。ファスキオ賞(T2800m・現在の伊セントレジャー)では後続を15馬身もちぎって勝利。

これで国内に敵がいなくなった本馬は隣国の仏国に移動して凱旋門賞(T2400m)に挑戦した。前年の同競走優勝馬でこの年もイスパーン賞やプランスドランジュ賞を勝っていたカンタールが単勝オッズ5.6倍の1番人気、バーデン大賞3連覇の独国最強馬オレアンダーが単勝オッズ7.7倍の2番人気、ロワイヤルオーク賞・ヴェルメイユ賞を連勝してきたカランドリアが3番人気と続き、本馬は単勝オッズ21倍の5番人気という評価に過ぎなかった。不良馬場で行われたレースで本馬は先行するオレアンダーをマークする形でレースを進め、直線では粘るオレアンダー、追い上げてきたカンタールとの三つ巴の叩き合いとなった。しかし最後は本馬が突き抜けて2着カンタールに半馬身差、3着オレアンダーにもさらに半馬身差をつけて優勝。凱旋門賞史上初の伊国調教馬による優勝を達成した。

自国に戻った本馬は連覇を目指してキスラ賞(T1400m)に出走したが、イタリア大賞・ミラノ大賞2回を勝っていた伊国最強古馬クラナッハの頭差2着に惜敗。3歳時の成績は9戦8勝だった。

4歳時はさらなる飛躍を目指してアスコット金杯に照準を合わせて渡英したが、調教中に負傷したために出走はかなわず帰国。連覇を狙った凱旋門賞(T2400m)では、パリ大賞・仏オークス・ヴェルメイユ賞を勝ってきた3歳牝馬コマンダリーに次ぐ2番人気に推されたが、プランスドランジュ賞を勝って挑んできたモトリコの7馬身差4着に敗退した(海外の資料では敗因を苦手の不良馬場になった事だとしているが、前年に本馬が優勝した時も不良馬場だったはずなのだが)。なお、モトリコはこの後にいったん競走馬を引退して種牡馬入りしたが2年後に競走馬に復帰して2度目の凱旋門賞優勝を果たしている。本馬は4歳時に5戦4勝の成績を残して競走馬を引退した(凱旋門賞以外に4歳時に出走したレースの名称等は不明)。

血統

Teddy Ajax Flying Fox Orme Ormonde
Angelica
Vampire Galopin
Irony
Amie Clamart Saumur
Princess Catherine
Alice Wellingtonia
Asta
Rondeau Bay Ronald Hampton Lord Clifden
Lady Langden
Black Duchess Galliard
Black Corrie
Doremi Bend Or Doncaster
Rouge Rose
Lady Emily  Macaroni
May Queen
Hollebeck Gorgos Ladas Hampton Lord Clifden
Lady Langden
Illuminata Rosicrucian
Paraffin
The Gorgon St. Simon Galopin
St. Angela
Andromeda  Minting
Stella 
Hilda Rabelais St. Simon Galopin
St. Angela
Satirical Satiety
Chaff
Helen Kendal Kendal Bend Or
Windermere
Helen Hampton Hampton
Helen Agnes

テディは当馬の項を参照。本馬は種牡馬テディが送り出した産駒の中でも最高の競走馬であると評されている。

母ホーレベックは仏国産馬で、競走馬としてはローマ賞を勝っている。本馬以外に直子の活躍馬はいないようだが、本馬の半姉オルバ(父キブウェシ)の子にはオルトナ【伊オークス】、オスティーリア【伊オークス】、オスティア【伊ジョッキークラブ大賞】が、孫にはオルセニゴ【伊ダービー・イタリア大賞・ミラノ大賞】、フィオールドルキデア【伊オークス】が、曾孫にはオルヴィエート【伊グランクリテリウム】が、牝系子孫にはオルサマジョーレ【伊オークス(伊GⅠ)・ミラノ大賞(伊GⅠ)・ローマ賞(伊GⅠ)】、オレンジベイ【伊ダービー(伊GⅠ)】、アンティーカ【ローレルフューチュリティ(米GⅠ)】、シーガール【5月25日大賞(亜GⅠ)2回・ラミッション大賞(亜GⅠ)】などがおり、21世紀まで残る牝系を発展させている。本馬の半姉オリヴォラ(父ギベルティ)の子にもオジモ【伊グランクリテリウム】がいる。ホーレベックの全妹にはエルリー【フィユドレール賞・ヴィシー大賞】がいる。

ホーレベックの祖母ヘレンケンダルの半妹ヘレンサーフは本邦輸入繁殖牝馬で、その牝系子孫からは、ハクショウ【帝室御賞典(阪神)】、デンコウ【帝室御賞典(阪神)】スモールジャック【帝室御賞典(阪神)】、ゼネラル【帝室御賞典(阪神)】、ブランドソール【中山四歳牝馬特別(桜花賞)】、サチホマレ【川崎記念】、ヤシマアポロ【阪神三歳S】、ホウシュウクイン【桜花賞】、トキノキロク【桜花賞】、アカネテンリュウ【菊花賞】、リニアクイン【優駿牝馬】、カツラギハイデン【阪神三歳S(GⅠ)】、オサイチジョージ【宝塚記念(GⅠ)】、ブルーファミリー【羽田盃・東京王冠賞】、ヒシミラクル【菊花賞(GⅠ)・天皇賞春(GⅠ)・宝塚記念(GⅠ)】、マイネルホウオウ【NHKマイルC(GⅠ)】と、多くの活躍馬が登場しており、日本の名牝系の1つとなっている。→牝系:F16号族①

母父ゴルゴスは英2000ギニー・ジュライSの勝ち馬。その父ラダスはハンプトン産駒で、現役成績12戦7勝、英2000ギニー・英ダービー・ミドルパークプレートの勝ち馬で、英セントレジャーでは2着だった。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、モンテル氏が所有するゴルナテ牧場で種牡馬入りした。本馬は初年度産駒から伊ダービー馬ウゴリノダシエナを出すと、その後も次々と活躍馬を送り出し、1937・39・40・41・42・44年と6度の伊首位種牡馬に輝いた。しかし種牡馬生活の後半に起こった第二次世界大戦の影響もあり伊国・独国以外の活躍馬がほとんどいないのが残念である。大戦終結後の1946年10月に米国カリフォルニア州のグレンコーブスタッドに購入されて渡米した。しかし米国における本馬の種牡馬生活は短く、翌1947年4月に心臓発作のため21歳で他界した。米国では13頭の繁殖牝馬としか交配しておらず、活躍馬を送り出す事は出来なかった。

なお、本項を執筆する際には海外の資料だけでは不足だったために、山野浩一氏の「伝説の名馬 PartⅢ」など日本の資料も参照しているが、これらには「本馬の生産者はモンテル氏である」「本馬は1945年、19歳時に米国に輸出されたが高熱を発症して同年に死亡している」といった、海外の資料と矛盾する記載がある。いずれが正しいのかは筆者にはよく分からない。マチェリオが伊首位種牡馬になるなど後継種牡馬として活躍したが、現在本馬の直系は衰退している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1932

Fiume

伊グランクリテリウム

1932

Ugolino da Siena

伊ダービー

1934

Actor

ノアイユ賞

1934

Milazzo

伊ジョッキークラブ大賞

1934

Sinni

伊2000ギニー・ローマ賞

1936

Vezzano

伊ダービー・ミラノ大賞

1937

Moroni

イタリア大賞・ローマ賞

1937

Sirte

ミラノ大賞

1938

Zuccarello

伊ジョッキークラブ大賞・ローマ賞

1939

Scire

イタリア大賞

1939

Vivere

独1000ギニー

1940

Allgau

独ダービー

1941

Macherio

伊2000ギニー・ミラノ大賞

1941

Nervesa

伊オークス

1941

Torbido

伊ダービー・イタリア大賞

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