プライド

和名:プライド

英名:Pride

2000年生

鹿毛

父:パントレセレブル

母:スペシフィシティ

母父:アレッジド

6歳時に本格化してGⅠ競走を3勝して凱旋門賞でも追い込んで2着するなど戦法も競走経歴も追い込みだった典型的晩成型の重馬場得意な牝馬

競走成績:2~6歳時に仏英香で走り通算成績26戦9勝2着5回3着4回

誕生からデビュー前まで

愛国の馬産団体であるNPブラッドストック社により生産・所有された仏国産馬で、仏国ジョン・E・ハモンド調教師に預けられた。

競走生活(2・3歳時)

2歳8月にドーヴィル競馬場で行われたノワールメール賞(T1400m)でデビュー。当時仏国に遠征していた武豊騎手を鞍上に、単勝オッズ6倍で13頭立ての3番人気とまずまずの評価を受けた。レースでは先行して残り400m地点で仕掛けて良く粘ったものの、勝った単勝オッズ2.5倍の1番人気馬エトワールモンタント(翌年にフォレ賞を勝つ実力馬)から2馬身半差の3着に敗れた。

2歳時はこの一戦のみで終え、翌3歳時には英国ジェラルド・A・ブルター厩舎に転厩し、馬主もS・ハンソン氏に変更となった。

3歳10月にリングフィールド競馬場で行われたオールウェザー8ハロンの未勝利ステークスで、エディ・アハーン騎手を鞍上に、1年以上ぶりの実戦を迎えた。長期休養明けにも関わらず、単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。道中は馬群の中団を進み、残り2ハロン地点でスパートした。スパート直後は素晴らしい加速を見せたが、これでも仕掛けが早すぎたようで、残り1ハロン地点で失速。大逃げを打って勝った単勝オッズ5倍の2番人気馬ミスペブルスから3馬身半差の2着に敗れた。

それから17日後には、ニューベリー競馬場で行われた芝10ハロン6ヤードの未勝利ステークスに出走。ここでもアハーン騎手を鞍上に単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持された。ここでは先行して残り2ハロン地点でスパートし、残り1ハロン地点からよく粘って、2着に追い上げてきた単勝オッズ6.5倍の3番人気馬ゴールドバーに2馬身差をつけて勝ち上がった。

さらに13日後には、ドンカスター競馬場で行われたリステッド競走ギリース牝馬S(T10F60Y)に出走した。しかしこの年の独1000ギニーと独オークスでいずれも2着だったホワイトローズでさえも単勝オッズ21倍の9番人気になるくらいのレベルであり、アハーン騎手騎乗の本馬は単勝オッズ34倍の12番人気という低評価だった。ここでは人気薄の気楽さからか、スタートから一か八かの逃げを打った。しかし残り1ハロン地点から失速して、先行して勝った単勝オッズ10倍の3番人気馬アルイーティザールの4馬身半差7着に終わった。3歳時の出走はこれが最後で、この年の成績は3戦1勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳時には仏国のアラン・ド・ロワイエ・デュプレ厩舎に2度目の転厩。馬主名義もNPブラッドストックに戻った。

まずは4月にロンシャン競馬場で行われたアクスマジュール賞(T2000m)で、主戦となるデイビー・ボニヤ騎手を鞍上に始動した。殆ど評価されておらず、単勝オッズ29倍の9番人気だったが、初めてとなる後方待機策から残り200m地点で強烈な末脚を繰り出した。結局は単勝オッズ3.1倍の1番人気に応えて勝ったルフー(モンジューの半弟)の2馬身1/4差4着に敗れてしまったが、印象的な末脚であり、この後の本馬のレースの多くが後方待機策になるきっかけともなった。

次走はグループ競走初出走となるアレフランス賞(仏GⅢ・T2000m)となった。前走のリステッド競走ラペピニエール賞を勝ってきたフロール賞3着馬アクトリーチェが単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持される一方で、前走で見せた末脚が今ひとつ評価されていなかった本馬は単勝オッズ16.5倍の6番人気での出走となった。今回は馬群の中団好位4番手につけていたが、勝負どころの残り400m地点で右側に持ち出そうとしたところに、左側によってきた単勝オッズ5.6倍の2番人気馬オボンヌと衝突してしまった。しかし今度は左側に進路を切り替えると、残り200m地点から一気に差し切り、2着となった単勝オッズ6.3倍の3番人気馬ルシアンヒルに1馬身半差をつけて勝利した(オボンヌは4位入線だったが、お互いにぶつかっていったために双方の着順変更無し)。なお、このレースは重馬場で行われており、陣営はこれに味を占めたのか、馬場が湿りそうなレースを狙って本馬を出走させるようになる。

続くコリーダ賞(仏GⅡ・T2100m)では稍重馬場となった。フロール賞の勝ち馬ヴィゾラマが単勝オッズ2.8倍の1番人気で、前走アレフランス賞で6着に終わっていたアクトリーチェと本馬が並んで単勝オッズ6.4倍の2番人気となった。レースでは後方待機策を採り、直線入り口後方2番手から追い込んだ。しかし直線入り口最後方だったアクトリーチェと、直線入り口後方3番手だったヴィゾラマとの末脚合戦に敗れて、勝ったアクトリーチェから2馬身差の3着に敗れた。

続いてGⅠ競走初登場となるサンクルー大賞(仏GⅠ・T2400m)に参戦した。本馬にとっては得意の稍重馬場だったが、さすがに、サンクルー大賞2年連続2着で三度目の正直を狙うドバイシーマクラシック・ドーヴィル大賞・エクスビュリ賞の勝ち馬ポリッシュサマー、前走ジョッキークラブSを勝ってきた前年の愛セントレジャー2着馬ガマット、ドーヴィル大賞・シャンティ大賞を勝ってきたポリシーメイカー、前年のカドラン賞・ロワイヤルオーク賞の勝ち馬でこの年はバルブヴィル賞を勝ちアスコット金杯で2着していたウェスターナー、前年の加国際S・ゴードンSの勝ち馬で英セントレジャー3着のフェニックスリーチ、エドヴィル賞の勝ち馬ショートポーズ、メルセデスベンツ大賞を勝ってきたタッチオブランド、ヴィゾラマなどの有力馬勢が相手では、単勝オッズ15倍の8番人気止まりなのは止むを得なかった。ポリッシュサマー、ガマット、ポリシーメイカーの3頭が並んで単勝オッズ4.5倍の1番人気で、ウェスターナーが単勝オッズ7倍の4番人気、フェニックスリーチが単勝オッズ9倍の5番人気、ショートポーズとタッチオブランドが並んで単勝オッズ11倍の6番人気となっていた。スタートが切られると、ウェスターナーやポリシーメイカーと同厩のペースメーカー役プーサンが逃げを打ち、本馬は馬群の中団後方を進んだ。そして直線入り口7番手から追い込んできたが、このメンバー構成の中で勝ち切るにはまだ実力が足りていなかったようで、勝ったガマットから3馬身3/4差の5着に敗れた。それでも、ポリッシュサマー、フェニックスリーチ、ウェスターナーといったGⅠ競走勝ち馬に先着した。

次走のジャンロマネ賞(仏GⅡ・T2000m)では、おあつらえ向きの不良馬場となった。プリティポリーS・ブランドフォードSの勝ち馬で前走ナッソーS3着のチョリストが単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ5倍の2番人気となった。1番人気のチョリストは完全な逃げ馬であり、ここでもスタートから先頭に立った。本馬もチョリストからあまり離されるわけにも行かず、ここでは馬群の中団につけた。そのままの位置取りで直線に入ると末脚を伸ばし、チョリストをゴール前でかわしたものの、好位から先に抜け出していた単勝オッズ13倍の4番人気馬ウォートルベリー(リディアテシオ賞・ミネルヴ賞を勝っていた)の2馬身差2着に敗れた。

次走はヴェルメイユ賞(仏GⅠ・T2400m)となった。このレースは前年まで3歳牝馬限定戦だったのだが、この年から古馬牝馬にも開放されていた。そのために例年よりメンバー構成は厚く、仏オークス・コンデ賞・ヴァントー賞など4戦全勝のラティス、マルレ賞・ポモーヌ賞など3連勝中のリュヌドール、サンクルー大賞で3着だったヴィゾラマ、ロワイヨモン賞・ミネルヴ賞の勝ち馬シルヴァースカヤ、ウォートルベリー、フェールホファー牝馬賞・ブレーメン牝馬大賞を連勝してきたヴァレラ、ポモーヌ賞で3着してきたスイートストリーム、独セントレジャーの勝ち馬ロイヤルファンタジーなどが参戦してきた。このレースは重馬場で行われており、実力だけでなく重馬場適性も試される場となっていたが、重馬場でも平気で勝っていたラティスを始め、全体的に重馬場を苦にしない馬が多かった。そのためラティスが単勝オッズ2.1倍の1番人気、リュヌドールが単勝オッズ4.5倍の2番人気、シルヴァースカヤが単勝オッズ10倍の3番人気、ヴィゾラマとウォートルベリーが並んで単勝オッズ13倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ15倍の6番人気だった。

スタートが切られると、リュヌドール陣営が用意したペースメーカー役のピルグリムオブグレイスが先頭に立ってレースを引っ張った。一方の本馬は後方待機策を選択し、13頭立ての最後方で直線に入ってから満を持して仕掛けた。先行したラティスが直線でいったん先頭に立っていたが、ゴール前で後続馬勢が一斉に押し寄せてきて、ラティスや本馬を含む合計8頭が団子状態となる大乱戦となった。その中からスイートストリームが一足早くゴールを駆け抜け、半馬身差の2着にロイヤルファンタジー、さらに半馬身差の3着に本馬が突っ込み、ラティスは本馬から僅か3/4馬身差ながら8着という結果だった。

その後は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に挑戦することになった。英ダービー・ダンテSの勝ち馬で愛ダービー2着のノースライト、愛ダービー・キラヴーランSの勝ち馬で愛2000ギニー3着のグレイスワロー、仏ダービー馬ブルーカナリ、英オークス・愛オークスなど3連勝中のウィジャボード、コロネーションC2回・バーデン大賞・ジョッキークラブS・ジョンポーターSの勝ち馬でミラノ大賞・エクリプスS2着のウォーサン、ユジェーヌアダム賞・ニエル賞を連勝してきたリュパン賞・仏ダービー3着馬ヴァリクシール、クリテリウム国際・ジャンプラ賞・パリ大賞・シェーヌ賞の勝ち馬で英国際S3着のバゴ、リス賞の勝ち馬で仏ダービー2着のプロスペクトパーク、バーデン大賞・オイロパ賞・ヨークシャーC・クイーンズヴァーズ・セプテンバーSの勝ち馬マムール、サンクルー大賞2着後にフォワ賞を勝って挑んできたポリシーメイカー、香港ヴァーズ・ポモーヌ賞・コンセイユドパリ賞の勝ち馬でコロネーションC3着のヴァレーアンシャンテ、ガネー賞・アルクール賞の勝ち馬でガネー賞2着2回のエグゼキュート、ラティス、前走6着のシルヴァースカヤ、ドーヴィル大賞を勝ってきたチェリーミックス、ローマ賞・スコティッシュクラシック・メルドS・セントサイモンSの勝ち馬インペリアルダンサー、日本から来たジャパンC・宝塚記念・金鯱賞2回・京都大賞典・朝日チャレンジCの勝ち馬タップダンスシチーといった実力馬達が参戦してきた。かなりの混戦模様ではあったが、この中で本馬が人気になる事はさすがになく、単勝オッズ34倍の13番人気だった。ノースライトが単勝オッズ5.5倍の1番人気、グレイスワローが単勝オッズ6倍の2番人気、ウィジャボードが単勝オッズ8倍の3番人気、ウォーサンとヴァリクシールが並んで単勝オッズ10倍の4番人気、バゴ、プロスペクトパーク、タップダンスシチーの3頭が並んで単勝オッズ11倍の6番人気となっていた。

スタートが切られると、英ダービーでは先行して勝っていたノースライトがここでは先頭に立ち、ボニヤ騎手ではなくティエリ・ジャルネ騎手とコンビを組んだ本馬は馬群の中団後方を追走した。しかしこのレースは速いタイムが出易い堅い馬場状態で行われており、この時点の本馬にこの馬場状態で直線での末脚勝負は分が悪く、中団から抜け出して勝ったバゴから8馬身3/4差の13着と大敗した。

その2週間後には、コンセイユドパリ賞(仏GⅡ・T2400m)に参戦した。鞍上はボニヤ騎手に戻っており、しかもレースは不良馬場で行われた。さらに対戦相手も、トーマブリョン賞の勝ち馬アプシス、モーリスドニュイユ賞・エドヴィル賞の勝ち馬マルタリン、クリテリウムドサンクルー2着馬シンプレックスなどで、凱旋門賞に比べると対戦相手のレベルは数段落ちていた。しかし前走の大敗が影響してか、本馬は単勝オッズ4.3倍の3番人気止まり。アプシスとマルタリンのカップリングが単勝オッズ2.1倍の1番人気、シンプレックスが単勝オッズ3.9倍の2番人気となっていた。しかしこのメンバー構成でこの馬場状態なら本馬に敵う存在はおらず、直線入り口最後方から怒涛の追い込みを見せた本馬が、2着シンプレックスに5馬身差をつけて圧勝した。

4歳時の成績は8戦2勝だったが、内容的には3歳時までとは比較にならないくらい向上していた。

競走生活(5歳時)

5歳時はガネー賞(仏GⅠ・T2100m)から始動した。同じくこのレースから始動した前年のカルティエ賞最優秀3歳牡馬バゴを筆頭に、リュパン賞・クリテリウムドサンクルー・ノアイユ賞の勝ち馬ヴォワデュノール、凱旋門賞では12着だったブルーカナリ、アルクール賞で2着してきたショートポーズ、デズモンドSの勝ち馬エース、ショードネイ賞の勝ち馬リーフスケープなどが出走してきた。バゴが単勝オッズ1.62倍の1番人気、ヴォワデュノールが単勝オッズ8倍の2番人気、ブルーカナリが単勝オッズ9倍の3番人気、ショートポーズが単勝オッズ10倍の4番人気、エースが単勝オッズ11倍の5番人気で、主戦だったボニヤ騎手に代わってイオリッツ・メンディザバル騎手と初コンビを組んだ本馬は単勝オッズ13倍の6番人気だった。

レースは本馬にとって大好きな重馬場で行われていた。いつもどおりに後方からレースを進めた本馬は、直線入り口後方2番手から一気に追い込んできた。そして先に抜け出していたバゴとの差をどんどん縮め、殆ど同時にゴールインした。写真判定の結果はバゴが1位入線で本馬が短首差の2位入線だったが、直線半ばで本馬が右側に進路変更した際に、隣を走っていたショートポーズ(6位入線)に衝突する場面があり、進路妨害を取られた本馬は、6着に降着となってしまった。斜行さえ無ければ本馬が勝っていたと思われ、メンディザバル騎手はこの1戦のみで本馬の鞍上から降ろされた。

次走はコロネーションC(英GⅠ・T12F10Y)となった。ジョッキークラブSを勝ってきたアルカセット、前年の凱旋門賞では9着に終わるも史上初の同競走3連覇を目指して参戦してきたウォーサン、バリサックスS・デリンズタウンダービートライアルSを連勝して前年の英ダービーの本命に挙げられるも故障で1年間を棒に振っていたイェーツ、ガネー賞で本馬の降着により2着に繰り上がっていたリーフスケープ、グレートヴォルティジュールS・プリンセスオブウェールズS・リングフィールドダービートライアルS・ゴードンS・ブリガディアジェラードSの勝ち馬で英セントレジャー3着のバンダリなどが対戦相手となった。このレースは良馬場で行われていたため、オリビエ・ペリエ騎手が騎乗した本馬は単勝オッズ9倍の5番人気止まりだった。アルカセットが単勝オッズ3倍の1番人気、ウォーサンが単勝オッズ4.5倍の2番人気、イェーツが単勝オッズ6倍の3番人気、リーフスケープが単勝オッズ6.5倍の4番人気だった。スタートが切られると、翌年から4年連続でカルティエ賞最優秀長距離馬に選ばれるスタミナ自慢のイェーツが先頭をひた走り、本馬は最後方からレースを進めた。直線入り口でもまだ最後方であり、ここからの直線勝負に賭けたが、やはり前が止まってくれずに、勝ったイェーツから8馬身半差の6着と完敗した。

その後は8月のジャンロマネ賞(仏GⅡ・T2000m)に向かった(「向かった」と書くよりも、「たまたま重馬場になったから出走した」と書くべきか)。フィリーズマイルの勝ち馬でプリティポリーS2着・ナッソーS3着のレッドブルーム、ポモーヌ賞で3着してきたルシアンヒル、前年の同競走で本馬を破ったウォートルベリーなどが出走してきた。レッドブルームが単勝オッズ3.25倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.5倍の2番人気、ルシアンヒルが単勝オッズ5倍の3番人気、ウォートルベリーが単勝オッズ7.5倍の4番人気となった。スタートが切られるとレッドブルームが先頭に立ち、このレースで本馬に初めて騎乗したクリストフ・ルメール騎手は、レッドブルームを意識したのか本馬を4番手の好位で進めさせた。そして残り200m地点で仕掛けると、逃げ粘るレッドブルームを差し切り、3/4馬身差で勝利した。

その後は稍重馬場のフォワ賞(仏GⅡ・T2400m)に向かった。コロネーションC2着後にサンクルー大賞を勝ってきたアルカセット、前年の独ダービー・伊ジョッキークラブ大賞の勝ち馬でバーデン大賞3着のシロッコ、伊共和国大統領賞・ミラノ大賞で連続2着してきたヴォルドニュイ、前年のコンセイユドパリ賞で本馬から5馬身1/4差の3着した後に実力をつけてシャンティ大賞を勝っていたジョージーランドなどが対戦相手となった。アルカセットが単勝オッズ1.91倍の1番人気、シロッコが単勝オッズ4.33倍の2番人気、ルメール騎手騎乗の本馬が単勝オッズ4.5倍の3番人気、ヴォルドニュイが単勝オッズ9倍の4番人気、ジョージーランドが単勝オッズ12倍の5番人気となった。

スタートが切られると、ジョージーランドのペースメーカー役としての出走だったキアズマが出遅れながらも強引に加速して先頭を奪った。本馬はスタートしてしばらくは、アルカセットやシロッコと共に馬群の後方につけていたが、レース中盤で進出して、直線には3番手で入ってきた。そして残り400m地点で先頭に立つと、追い上げてきた2着アルカセットに2馬身半差をつけて快勝した。

次走の凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)では、英ダービー・レーシングポストトロフィー・ダンテSの勝ち馬でエクリプスS・愛チャンピオンS2着のモティヴェイター、愛ダービー・オカール賞・ニエル賞の勝ち馬で仏ダービー2着のハリケーンラン、愛オークス・ヴェルメイユ賞・ロワイヨモン賞など5連勝中のシャワンダ、ガネー賞勝利後にタタソールズ金杯2着・サンクルー大賞・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS3着だったバゴ、パリ大賞・英セントレジャーを連勝してきた愛ダービー2着馬スコーピオン、本馬が5着した前年のサンクルー大賞9着後にカドラン賞・ロワイヤルオーク賞・アスコット金杯・ヴィコンテスヴィジェ賞・グラディアトゥール賞・バルブヴィル賞を勝ち2年連続のカルティエ賞最優秀長距離馬を当確としていたウェスターナー、前走フォワ賞で本馬の3着だったシロッコ、前年の凱旋門賞2着馬チェリーミックス、ジェフリーフリアS3回・セプテンバーS・カンバーランドロッジSの勝ち馬で一昨年の凱旋門賞2着のムブタケル、コロネーションC4着後にバーデン大賞の2連覇を果たしていたウォーサン、ソヴリンS・アールオブセフトンSの勝ち馬で英国際S・愛チャンピオンS・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS2着のノーズダンサー、ロワイヤリュー賞・エクスビュリ賞の勝ち馬サマンドなどが対戦相手となった。モティヴェイターが単勝オッズ3.5倍の1番人気、ハリケーンランが単勝オッズ3.75倍の2番人気、シャワンダが単勝オッズ4倍の3番人気、バゴが単勝オッズ9倍の4番人気、スコーピオンが単勝オッズ11倍の5番人気で、本馬は古馬勢ではバゴに次ぐ2番目である単勝オッズ17倍の6番人気と穴人気になった。

レースは稍重馬場で行われており、良馬場だった前年に比べると本馬には有利だった。スタートが切られると2頭のペースメーカーが先頭を引っ張り、ルメール騎手騎乗の本馬はバゴと共に最後方待機策を採った。そして直線で末脚を伸ばそうとしたが、この時点における本馬では稍重馬場でもこのメンバー構成で直線一気を決めるのは難しかったようで、先に抜け出したウェスターナーを追い上げていったハリケーンラン、バゴ、シロッコなどに置き去りにされてしまった。結局はハリケーンランが勝利を収め、本馬は7馬身1/4差の7着に敗退。着順は前年より上だが、勝ち馬との着差はたいして変わらず、馬場状態や前評判を考慮すると前年よりむしろ期待外れだった。

その後は稍重馬場となった英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)に参戦した。エクリプスS・愛チャンピオンS・ジャンリュックラガルデール賞・愛フューチュリティS・アングルシーSの勝ち馬で愛2000ギニー・愛フェニックスS・デューハーストS2着のオラトリオ、フォワ賞で本馬の2着に敗れた後に凱旋門賞を回避してここに向かってきたアルカセット、オペラ賞・香港C・プリティポリーS・ナッソーS・レパーズタウン1000ギニートライアルSの勝ち馬で愛1000ギニー・プリティポリーS・ファルマスS2着のアレクサンダーゴールドラン、伊ダービー・伊共和国大統領賞・英チャンピオンS・プリンスオブウェールズS・クイーンエリザベスⅡ世S・ロッキンジSとGⅠ競走で6勝を挙げプリンスオブウェールズS・香港C・クイーンアンSでも2着していたラクティ、ギョームドルナノ賞・ダフニ賞の勝ち馬ピンソン、ジョエルSを勝ってきたロブロイ、前年の凱旋門賞16着後にラクープドメゾンラフィットを勝っていたプロスペクトパーク、カブール賞・ソヴリンSの勝ち馬でモルニ賞2着・ジャンリュックラガルデール賞3着のサンデーサイレンス産駒レイマン、セレブレーションマイル2回・ハンガーフォードSの勝ち馬でサンチャリオットS・愛メイトロンS2着のシック、前年のサンクルー大賞で本馬より下の8着に終わった後にドラール賞2回・ヴィシー大賞を勝ち香港Cで3着していたタッチオブランド、セレクトSを勝ってきたデビッドジュニア、ゴードンS・ハクスレイSの勝ち馬で英国際S3着のマラーヘルなどが出走してきた。オラトリオが単勝オッズ3.25倍の1番人気、アルカセットが単勝オッズ7倍の2番人気、アレクサンダーゴールドランが単勝オッズ9倍の3番人気、ピンソンが単勝オッズ10倍の4番人気、本馬、ラクティ、ロブロイの3頭が並んで単勝オッズ13倍の5番人気となった。

ルメール騎手がタッチオブランドに騎乗したために、本馬にはクリストフ・スミヨン騎手が騎乗した。スタートが切られると単勝オッズ21倍の10番人気馬エコーオブライトが逃げを打ち、本馬は馬群の中団後方につけた。そして残り1ハロン地点から猛然と追い上げてきたが、一足早く抜け出していた単勝オッズ26倍の11番人気馬デビッドジュニアに3/4馬身差届かずに2着に惜敗した。

その後は香港に遠征して、香港C(香GⅠ・T2000m)に出走した。香港ダービー・クイーンエリザベスⅡ世C・香港チャンピオンズ&チャターC・香港国際Cトライアルを勝っていた地元香港の有力馬ヴェンジェンスオブレイン、前走8着からの巻き返しを図る前年の覇者アレクサンダーゴールドラン、前走3着のマラーヘル、同13着のタッチオブランド、ラホヤH・デルマーダービーを勝っていた米国調教馬ウィローオーウィスプ、香港ダービーでヴェンジェンスオブレインの2着だった新国のGⅠ競走ベイヤークラシックの勝ち馬ラシアンパール、香港国際Cトライアル2着のグリーントレジャー、前年のクイーンエリザベスⅡ世Cの勝ち馬リヴァーダンサー、シンガポール航空国際C・メルセデスベンツ大賞などを勝ちダルマイヤー大賞・マンノウォーSで2着していた独国調教馬エパロの合計9頭が対戦相手となった。ヴェンジェンスオブレインが単勝オッズ4倍の1番人気、アレクサンダーゴールドランが単勝オッズ4.5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ5.5倍の3番人気、マラーヘルが単勝オッズ6倍の4番人気、タッチオブランドが単勝オッズ13倍の5番人気となった。

ルメール騎手がタッチオブランドに騎乗したため、本馬には今回もスミヨン騎手が騎乗した。レースは生憎の堅良馬場だったが、はるばる香港まで来てじたばたしても仕方が無く、道中はいつもの後方待機策を採った。直線入り口でも後方2番手だったのだが、ここから外側を通って素晴らしい追い込みを見せた。先に抜け出していたヴェンジェンスオブレインには僅かに及ばず、首差の2着に敗れたが、この馬場状態で見せた末脚は、本馬が重馬場専用馬ではなくなってきている事を示すものだった。5歳時の成績は7戦2勝だった。

競走生活(6歳時)

6歳時は前年同様にガネー賞(仏GⅠ・T2100m)から始動した。前走のアルクール賞を勝ってきたヴィンターファヴォリテン賞・ドイツ統一賞の勝ち馬マンデュロ、プランスドランジュ賞の勝ち馬で前走アルクール賞2着のコールカミノ、マルレ賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞2着のロイヤルハイネス、コンセイユドパリ賞の勝ち馬モンターレ、グレフュール賞・トーマブリョン賞の勝ち馬ヴァトーリなどが対戦相手となった。出走馬のレベルは前年より低かった(少なくともこの時点ではそう思われていた)ため、素質馬としての評判が高かったマンデュロが単勝オッズ2.875倍の1番人気で、ルメール騎手が鞍上に戻ってきた(この年における本馬の全競走はルメール騎手騎乗による)本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気、コールカミノが単勝オッズ6.5倍の3番人気、ロイヤルハイネスとモンターレが並んで単勝オッズ7倍の4番人気となった。スタートが切られると、単勝オッズ151倍の最低人気馬ニアーオナーが逃げを打ち、本馬は馬群のちょうど中間を追走した。しかしここでは稍重馬場にも関わらずゴール前で伸びを欠き、勝ったコールカミノから6馬身3/4差の4着と結果を出せなかった。

次走のコリーダ賞(仏GⅡ・T2100m)では、前年の仏オークス・ヴェルメイユ賞でいずれも3着だったクリテリウムドサンクルー・アレフランス賞の勝ち馬パイタ、アレフランス賞で2着してきたバステット、フロール賞の勝ち馬インクローバー、前年の仏1000ギニーと前走アレフランス賞でいずれも3着だったイソルディナの4頭だけが対戦相手となった。レースが稍重馬場で施行された事もあり、本馬が単勝オッズ1.6倍でグループ競走16戦目にして最初(かつ最後の)1番人気となり、パイタが単勝オッズ3.6倍の2番人気、バステットが単勝オッズ7.9倍の3番人気、インクローバーが単勝オッズ8.9倍の4番人気、イソルディナが単勝オッズ11倍の最低人気となった。スタートが切られるとパイタが先頭に立ち、本馬は5頭立ての4番手につけた。出走頭数が少ないためか、かなりのスローペースでレースが進んだが、ルメール騎手がゴール前で仕掛けると瞬時に反応して突き抜け、2着パイタに1馬身半差で楽勝した。

次走のサンクルー大賞(仏GⅠ・T2400m)では、4歳初戦のタタソールズ金杯で2着アレクサンダーゴールドランを7馬身ちぎってきた前年のカルティエ賞年度代表馬ハリケーンラン、一昨年の凱旋門賞19着最下位以降は不振続きだったが前走シャンティ大賞を勝って久しぶりの勝利を挙げたポリシーメイカー、前走のイスパーン賞を勝ってきたフォンテーヌブロー賞の勝ち馬でクリテリウムドサンクルー3着のレイヴロックなど5頭が対戦相手となった。ハリケーンランが単勝オッズ1.22倍という断然の1番人気に支持され、ポリシーメイカーが単勝オッズ7倍の2番人気、本馬が単勝オッズ8倍の3番人気、レイヴロックが単勝オッズ15倍の4番人気となった。

稍重馬場の中でスタートが切られると、ポリシーメイカーのペースメーカー役ペトログラードと、ハリケーンランのペースメーカー役ニアーオナーの2頭が先頭を引っ張った。ハリケーンランが3番手、ポリシーメイカーが4番手で、本馬は5番手でレースを進めた。直線に入ったところでハリケーンランが堂々と先頭に立ち、残り300m地点でスパートしてそのまま勝利すると思われた。ところがそこへ後方から本馬が猛然と追い込んできた。そしてゴール寸前でハリケーンランを頭差かわして優勝。ようやく念願のGⅠ競走初勝利となった。

夏場は休養し、秋は凱旋門賞を目指して前年同様にフォワ賞(仏GⅡ・T2400m)から始動した。対戦相手は僅か4頭だったが、サンクルー大賞で本馬の2着に敗れた後にキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSを勝っていたハリケーンラン、前年の凱旋門賞4着後にBCターフ・ジョッキークラブS・コロネーションCと3連勝して世界有数の実力馬になっていたシロッコの強敵2頭が出走していた。ハリケーンランが単勝オッズ1.91倍の1番人気、シロッコが単勝オッズ2.625倍の2番人気、本馬が単勝オッズ4.33倍の3番人気となった。

レースでは、ハリケーンランとシロッコの2頭と同厩だったニアーオナーがペースメーカー役として先頭に立ち、シロッコが2番手、ハリケーンランが3番手で、本馬が4番手を進んだ。そして直線に入ると、逃げるシロッコにハリケーンランが並びかけ、さらに後方から本馬が前2頭に襲い掛かる展開となった。ゴール前では三つ巴の勝負となったが、シロッコが2着ハリケーンランに首差で勝利し、本馬はさらに首差の3着だった。しかしこのレースは本馬にとって不得手だったはずの良馬場であり、内容からすると、既に本馬は重馬場専用馬ではなくなっていたようである。

本番の凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)では、シロッコ、ハリケーンランの2頭に加えて、日本から皐月賞・東京優駿・菊花賞・天皇賞春・宝塚記念・弥生賞・神戸新聞杯・阪神大賞典を勝っていた史上6頭目の中央競馬牡馬三冠馬ディープインパクトが本馬のデビュー戦で騎乗した武豊騎手を鞍上に参戦。この3頭の前評判が凄まじく、当初は出走予定だった英ダービー・デューハーストSの勝ち馬サーパーシー、英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークスの勝ち馬アレクサンドローヴァ、アスタルテ賞・ヴェルメイユ賞の勝ち馬マンデシャといった有力馬達が次々と回避した。本馬と上記3頭以外の出走馬は、パリ大賞・ニエル賞・リス賞など4連勝中のレイルリンク、ゴードンS・英セントレジャーを連勝してきたシックスティーズアイコン、プランスドランジュ賞を勝ってきた仏ダービー2着馬ベストネーム、ドーヴィル大賞を勝ってきたアイリッシュウェルズの4頭だけであり、第二次世界大戦終了後では現在でも同競走最少となっている8頭立てとなった。ディープインパクトが単勝オッズ3.25倍の1番人気、ハリケーンランが単勝オッズ3.5倍の2番人気、シロッコが単勝オッズ3.75倍の3番人気で、4番人気のレイルリンクは単勝オッズ9倍、5番人気のシックスティーズアイコンは単勝オッズ11倍、6番人気の本馬は単勝オッズ12倍で、他の2頭はいずれも単勝オッズ100倍以上だった。

良馬場の中でスタートが切られると、アイリッシュウェルズが先頭に立ち、2番手にシロッコ、3番手にディープインパクト、4番手にハリケーンラン、5番手にレイルリンクがつけた。一方の本馬は相変わらずの最後方待機策だった。そのままの態勢で直線に入ると、アイリッシュウェルズとシロッコが後退し、ハリケーンランは失速するシロッコに進路を塞がれて抜け出せなくなった。そしてディープインパクトが外側から先頭に立った。レースをリアルタイムで見ていた日本の競馬ファンは、ここからいつもの飛ぶような走りを見せて後続を引き離すディープインパクトの姿を想像した(職場で残業中だった筆者は生で見ていない)。しかしそこへ馬群の中団から伸びてきたレイルリンクが外側からディープインパクトに並びかけて叩き合いに持ち込んだ。さらに直線入り口で最後方だった本馬も猛然と伸びてきた。そして最後はディープインパクトを競り落としたレイルリンクが勝利を収め、本馬が首差2着に突っ込み、ディープインパクトは本馬から半馬身差の3位入線(後日薬物検査に引っ掛かって失格)だった。

続いて本馬は英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)に向かった。対戦相手は、前走で4着(実際には3着に繰り上がるが、ディープインパクトが薬物検査に引っ掛かった旨が公表されるのはこの英チャンピオンSの5日後)と不完全燃焼に終わっていたハリケーンラン、凱旋門賞を回避してこちらに照準を向けてきた英ダービー・デューハーストS・ヴィンテージSの勝ち馬で英2000ギニー2着のサーパーシー、英国際S・アールオブセフトンS・ブリガディアジェラードSの勝ち馬でエクリプスS2着のノットナウケイト、前年の香港C3着後にハードウィックS・ハクスレイSを勝ち英国際Sで2着してきたマラーヘル、仏オークス・カルヴァドス賞の勝ち馬で英1000ギニー2着のコンフィディシャルレディ、前年の英チャンピオンS14着後にベットフレッドドットコムマイルを勝ちサセックスSで3着していたロブロイ、英2000ギニー3着馬オリンピアンオデッセイの7頭だった。ハリケーンランが単勝オッズ3.25倍の1番人気、サーパーシーが単勝オッズ3.75倍の2番人気、本馬が単勝オッズ4.5倍の3番人気、ノットナウケイトが単勝オッズ8倍の4番人気、マラーヘルが単勝オッズ12倍の5番人気となった。

稍重馬場の中でスタートが切られると、前走で進路を失った反省からかハリケーンランが予想外の逃げを打ち、ノットナウケイト、サーパーシー、コンフィディシャルレディ、マラーヘルが先行した。しかし本馬は焦らず騒がず、馬群の後方でじっくりとレースを進めた。そして残り1ハロン地点で満を持して仕掛けると、瞬く間にハリケーンラン以下をかわして先頭に踊り出た。そして2着に突っ込んできた単勝オッズ21倍の7番人気馬ロブロイに3馬身差をつけて完勝。ハリケーンランはロブロイから頭差の3着、サーパーシーは7着に終わった。

本馬の引退レースは、前年同様香港に遠征しての香港C(香GⅠ・T2000m)となった。香港ダービートライアル・香港国際Cトライアルを勝っていたハロープリティー、前年の覇者ヴェンジェンスオブレイン、この年の香港ダービー・香港チャンピオンズ&チャターCを勝っていたヴィヴァパタカ、前年の香港Cでは8着だったがこの年もプリティポリーSを勝ちタタソールズ金杯・ナッソーS2着など活躍していたアレクサンダーゴールドラン、ジャンロマネ賞・ヴァントー賞・プシシェ賞の勝ち馬でオペラ賞2着のサトワクイーン、豪州のGⅡ競走ウイニングエッジプレゼンテーションズSを勝ちマッキノンSで2着してきたグロウル、ラクープドメゾンラフィットの勝ち馬ミュージカルウェイ(2015年の優駿牝馬・秋華賞を勝ったミッキークイーンの母)、そして日本からも、弥生賞・札幌記念・札幌2歳S・共同通信杯の勝ち馬で天皇賞秋3着のアドマイヤムーン、優駿牝馬・ヴィクトリアマイル・エリザベス女王杯で各3着していたフローラSの勝ち馬ディアデラノビアの2頭が参戦してきた。実績からすると本馬が1番人気に支持されて当然だったが、香港のファンは地元馬ハロープリティーを単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持し、本馬は堅良馬場が嫌われたのか単勝オッズ3.55倍の2番人気での出走となった。そしてヴェンジェンスオブレインが単勝オッズ5倍の3番人気、ヴィヴァパタカが単勝オッズ8.3倍の4番人気、アレクサンダーゴールドランが単勝オッズ10倍の5番人気となった。

スタートが切られると地元香港のハイインテリジェントが先頭を引っ張り、本馬は相変わらずの最後方待機策だった。しかし直線に入る前から少しずつ位置取りを上げて、12頭立ての7番手で直線に入ってきた。そしてここから大外を突いて伸び、先に先頭に立っていたヴェンジェンスオブレインをこの年は鮮やかに差し切った。ゴール直前では単勝オッズ11倍の6番人気だったアドマイヤムーンが猛追してきたが、短頭差で抑えて勝利を収め、引退レースの花道を飾った。

この年の成績は7戦4勝(うちGⅠ競走3勝)で、カルティエ賞年度代表馬や最優秀古馬に選ばれても不思議ではなかったのだが、BCフィリー&メアターフ勝ちなど9戦3勝(3勝全てGⅠ競走)のウィジャボードにいずれも譲ることになった。カルティエ賞の年度表彰は、ブリーダーズカップまでの成績に基づくものであり、香港ミーティング(ジャパンCも)の成績は考慮されないという不条理さが少なからず影響したようである。それでも、この年の仏最優秀古馬には選出されている。

また、ワールド・サラブレッド・レースホース・ランキングと英タイムフォーム社のレーティングにおいては、いずれもウィジャボード(前者が122ポンド、後者が125ポンド)より本馬(前者が123ポンド、後者が128ポンド)のほうが上だった。

血統

パントレセレブル Nureyev Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Special Forli Aristophanes
Trevisa
Thong Nantallah
Rough Shod
Peinture Bleue Alydar Raise a Native Native Dancer
Raise You
Sweet Tooth On-and-On
Plum Cake
Petroleuse Habitat Sir Gaylord
Little Hut
Plencia Le Haar
Petite Saguenay
Specificity Alleged Hoist the Flag Tom Rolfe Ribot
Pocahontas
Wavy Navy War Admiral
Triomphe
Princess Pout Prince John Princequillo
Not Afraid
Determined Lady Determine
Tumbling
Mandera Vaguely Noble ヴィエナ Aureole
Turkish Blood
Noble Lassie Nearco
Belle Sauvage
Foolish One Tom Fool Menow
Gaga
Miss Disco Discovery
Outdone

パントレセレブルは当馬の項を参照。

母スペシフィシティは現役成績7戦2勝、英国で距離16ハロンのリステッド競走ジョージスタブスSを勝ったスタミナ自慢の馬だった。本馬の半妹にはフェイト(父テオフィロ)【フロール賞(仏GⅢ)】がいる他、本馬の半姉スペシフィカリー(父スカイクラシック)の子には、メジャーリズム【スターズ&ストライプスBCターフH(米GⅢ)】とスペシオーサ【英1000ギニー(英GⅠ)・ロックフェルS(英GⅡ)・ネルグウィンS(英GⅢ)】が、本馬の半姉テンダリー(父デインヒル)の子には、テンメローパ【ボールドウインS(米GⅢ)】がいる。スペシフィシティの半兄にはタッチングウッド(父ロベルト)【英セントレジャー(英GⅠ)・愛セントレジャー(愛GⅠ)】、半弟にはアフリカンダンサー(父ニジンスキー)【エルクホーンS(米GⅢ)2回】がいる。スペシフィシティの母マンデラ【プリンセスロイヤルS(英GⅢ)】の半兄には、ファニーフェロー【ローレンスリアライゼーションS・ローマーH・ギャラントフォックスH・ドンH】とプロタント【ホイットニーH・レムセンS・ローマーH】がいる。さらにマンデラの母フーリッシュワンの半兄には、米国の歴史的名馬にして歴史的名種牡馬であるボールドルーラーがいる。→牝系:F8号族③

母父アレッジドは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、英国や愛国で繁殖生活を送っている。ガリレオダンシリデインヒルダンサーといった一流種牡馬との間に産駒を産んでいるが、競走馬として特筆できる活躍した馬は今のところいない。競走成績や戦法と同じく、繁殖牝馬としても終盤に爆発してくれればよいだのが。

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