サイエダティ

和名:サイエダティ

英名:Sayyedati

1990年生

鹿毛

父:シャディード

母:ドゥビアン

母父:ハイライン

3歳までに英1000ギニーなどGⅠ競走4勝を挙げ、BCスプリント出走を境に陥ったスランプから5歳時に脱出に成功してGⅠ競走勝ちを上乗せする

競走成績:2~5歳時に英愛仏米日で走り通算成績22戦6勝2着5回3着3回

誕生からデビュー前まで

ドバイのシェイク・マクトゥーム殿下が所有するゲインズボロースタッドマネージメント社により生産された英国産馬である。マクトゥーム殿下の友人でドバイの不動産開発業者だったモハメド・オバイダ氏の所有馬となり、英国クライヴ・ブリテン調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳6月にアスコット競馬場で行われた未勝利ステークスで、マイケル・ロバーツ騎手を鞍上にデビューした。ここでは後にエクリプスSの勝ち馬コンプトンアドミラルとクイーンエリザベスⅡ世Sの勝ち馬サモナーの母、ナッソーS・ヨークシャーオークス・愛チャンピオンS・プリンスオブウェールズSの勝ち馬ザフューグの祖母となるスモトが単勝オッズ1.91倍の1番人気に支持されており、本馬は単勝オッズ7倍の3番人気だった。レースでは先行して抜け出そうとしたものの、好位から差してきたスモトにかわされて2馬身差の2着に敗退。それでも3着馬には8馬身差をつけており、次のレースでは勝ち上がれそうな雰囲気だった。

その「次のレース」はグループ競走のチェリーヒントンS(英GⅢ・T6F)となった。クイーンメアリーSで2着してきたミスティックゴッデス(後にロッキンジS・エクリプスSの勝ち馬メディシアンの母となる)、ノーフォークSを勝ってきたニッチも出走していたが、ロバーツ騎手騎乗の本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、ミスティックゴッデスは単勝オッズ3倍の2番人気、ニッチは単勝オッズ6倍の3番人気だった。このレースで本馬はあまりスタートが良くなく、ミスティックゴッデスに先手を許す苦しい展開となった。しかし残り2ハロン地点でミスティックゴッデスをかわして先頭を奪うと、そのままゴールまで粘り切り、2着トゥーキャンドゥー(クイーンメアリーSで3着だった)に半馬身差、3着ミスティックゴッデスにはさらに短頭差で勝利した。

その後は愛国に移動してモイグレアスタッドS(愛GⅠ・T7F)に出走した。ロバーツ騎手騎乗の本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持され、ミルカーズSを7馬身差で圧勝してきた後の伊オークス馬ブライトジェネレーションが単勝オッズ3.5倍の2番人気となった。重馬場で行われたレースでは、本馬が2着ブライトジェネレーションに1馬身半差で勝利を収めた。

英国に戻ってきた本馬は、英国2歳最強牝馬決定戦のチェヴァリーパークS(英GⅠ・T6F)に出走。対戦相手は僅か3頭だったが、前述のミスティックゴッデスが2着したクイーンメアリーSを5馬身差で圧勝しただけでなく、前走ナンソープSではこの年のカルティエ賞最優秀短距離馬・最優秀古馬のミスターブルックスを2着に破って勝っていた5戦無敗のリリックファンタジーという強敵が出走していた。リリックファンタジーが単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ3.5倍の2番人気、フライングチルダースSを勝ってきたポーカーチップが単勝オッズ10倍の3番人気だった。リリックファンタジーの主戦でもあったロバーツ騎手は当然リリックファンタジーに騎乗したため、本馬にはウォルター・スウィンバーン騎手が騎乗した。レースは本馬が先行してリリックファンタジーが追いかけてくる展開となった。しかし残り1ハロン地点で本馬がリリックファンタジーを突き放し、2馬身差をつけて勝利した。この結果により、ロバーツ騎手に代わってスウィンバーン騎手が本馬の主戦として固定されることになった。

2歳時の成績は4戦3勝で、カルティエ賞最優秀2歳牝馬の座こそリリックファンタジーに譲ったが、翌年の英1000ギニーの最有力候補として認知された。

競走生活(3歳時)

3歳時は英1000ギニーの前哨戦ネルグウィンS(英GⅢ・T7F)から始動して、単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持された。このレースではやや抑え気味に進み、残り2ハロン地点で仕掛けて追い上げる戦法を採った。しかし残り1ハロン地点からの伸びが今ひとつ悪く、かつてチェリーヒントンSで4着に破ったニッチに逃げ切りを許して、1馬身半差の3着に敗れてしまった。この時期の本馬は体調が悪かったようで、ブリテン師は本馬の馬房の温度管理に細心の注意を払い、担当厩務員は本馬の馬房に寝泊りして世話をした。

本番の英1000ギニー(英GⅠ・T8F)では、エクリプス賞の勝ち馬でアンプルーダンス賞2着のエリザベスベイ、ニッチ、前走ネルグウィンSで本馬に短頭差先着する2着だったザラニシディアンナ、ぶっつけ本番で臨んできたリリックファンタジー、プティクヴェール賞・アンプルーダンス賞の勝ち馬ウィクソン、モルニ賞でザフォニックの3/4馬身差2着に入っていたカブール賞の勝ち馬セクラージュなどが対戦相手となった。大種牡馬ミスタープロスペクターとマザーグースS・レディーズHのGⅠ競走2勝馬ライフアットザトップの間に生まれた良血馬エリザベスベイが単勝オッズ3.25倍の1番人気、本馬が単勝オッズ5倍の2番人気、ザラニシディアンナが単勝オッズ6倍の3番人気、ニッチが単勝オッズ7倍の4番人気となった。本馬はレース前に発汗が見られたが、ブリテン師は「汗をかかない馬は木馬(もくば)だけだ」と気にも掛けなかった。このレースで本馬は出遅れてしまい、序盤は馬群の後方を走ることになった。しかし残り3ハロン地点でスパートを開始すると、逃げていたニッチを残り1ハロン地点でかわして先頭に立った。そして粘るニッチを半馬身差の2着に抑えて勝利した。

その後は怪我のために3か月間休養し、7月のサセックスS(英GⅠ・T8F)で復帰した。古馬混合戦ではあったが、中心視されたのは本馬を含む3歳馬勢だった。その中でも最大の注目株は、英2000ギニー・モルニ賞・サラマンドル賞・デューハーストSを勝っていた前年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬ザフォニックで、英2000ギニーの圧勝ぶりから近年最強の英2000ギニー馬と言われていた。他の出走馬は、グリーナムS・クリテリオンSの勝ち馬で英2000ギニー2着のインチナー、ジャージーSを勝ってきたアードキングラス、ジャンプラ賞・パリ大賞で連続2着してきたビッグストーン、フィリーズマイル・マルセルブサック賞・仏1000ギニー・ロウザーS・エミリオトゥラティ賞・クイーンメアリーSを勝っていた一昨年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬カルチャーヴァルチャーなどだった。ザフォニックが単勝オッズ1.83倍の1番人気に支持され、インチナーが単勝オッズ6倍の2番人気、本馬は単勝オッズ12倍の3番人気だった。本馬は今回も大胆な後方待機策を採り、直線入り口ではまだ最後方だった。ここから末脚を伸ばして次々に他馬を抜き去ってきたが、好位から抜け出したビッグストーンだけに届かず、1馬身半差の2着に敗れた。なお、レース中に鼻出血を発症して7着に終わったザフォニックはそのまま現役引退となった。

その後は渡仏してジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)に参戦した。仏2000ギニー・セントジェームズパレスSの勝ち馬でサラマンドル賞2着のキングマンボ、マルセルブサック賞・コロネーションSの勝ち馬ゴールドスプラッシュ、サンドリンガム賞・アスタルテ賞を連勝してきた仏1000ギニー2着馬スキーパラダイス、英1000ギニー8着後にコロネーションSで2着して立て直してきたエリザベスベイなどが対戦相手となった。レースでは本馬、スキーパラダイス、キングマンボの3頭がゴール前で大接戦を演じたが、本馬が2着スキーパラダイスに頭差、3着キングマンボにはさらに首差で勝利した。

地元英国に戻って、今度はクイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ・T8F)に出走した。ジャックルマロワ賞3着後にムーランドロンシャン賞を勝ってきたキングマンボ、サセックスS勝利後に出たムーランドロンシャン賞で3着だったビッグストーン、ロッキンジS・セレブレーションマイル・キヴトンパークSなどを勝ってきたスウィングロウ、愛2000ギニーの勝ち馬で英2000ギニー2着のバラシアなどが対戦相手となった。キングマンボが単勝オッズ3.5倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4倍の2番人気となった。本馬は馬群の中団後方からレースを進めたものの、今回は末脚が不発に終わり、本馬よりさらに後方の位置取りからの追い込みを決めて勝ったビッグストーンから5馬身半差の4着に敗れた。

本馬の同世代はかなり有力なマイラーが顔を連ねている激戦世代であった。そのためだろうか、本馬は米国サンタアニタパーク競馬場に遠征して出走したブリーダーズカップにおいて、BCマイルではなくBCスプリント(米GⅠ・D6F)にエントリーした。マクトゥーム殿下がオバイダ氏に対して、BCスプリント出走を強く勧めたのだと言われている。

この年のBCスプリントは、ヴォスバーグS・トムフールH・フォアゴーHと同年グレード競走3勝のバードオンザワイヤーが単勝オッズ4.2倍の1番人気に支持されていたが、単勝オッズ6.3倍の2番人気のカードマニアは前年のBCスプリントで12着に敗れていた馬で、この年も前走のエインシェントタイトルBCHを人気薄で勝った以外は未勝利だった。確かにこの年のBCマイル(前年の覇者ルアーが2連覇を達成。本馬と対戦してきたスキーパラダイス、ビッグストーン、バラシアなどはいずれも人気薄だった)に比べればメンバーは手薄だったのは間違いないが、今まで芝のマイル路線を進んできた馬がいきなりダートのスプリント戦で通用するほど甘くは無いと米国競馬ファンは考えたようで、単勝オッズ18.4倍で8番人気の低評価。そしてレースでも後方を付いて回っただけで、勝ったカードマニアから11馬身3/4差をつけられた12着に惨敗してしまった。このレースを境に本馬はスランプに陥ってしまうのだった。

3歳時の成績は6戦2勝で、カルティエ賞最優秀3歳牝馬の座も英オークス・サンタラリ賞・ヴェルメイユ賞とGⅠ競走3勝を挙げたイントレピディティに取られてしまった。

競走生活(4歳時)

4歳時は安田記念を目指して日本に向かい、前哨戦の京王杯スプリングC(日GⅡ・T1400m)に出走。このレースには、前年のジャックルマロワ賞からムーランドロンシャン賞・フォレ賞・BCマイルと4戦連続GⅠ競走2着だったスキーパラダイス、フォレ賞の勝ち馬ドルフィンストリート、ミドルパークSの勝ち馬ザイーテンといった海外馬が大挙して出走して人気を集めていた。スキーパラダイスが単勝オッズ2.2倍の1番人気、ドルフィンストリートが単勝オッズ5.9倍の2番人気、本馬が単勝オッズ7倍の3番人気、ザイーテンが単勝オッズ10.8倍の4番人気で、ダート路線に本格参戦する直前だったエリザベス女王杯の勝ち馬ホクトベガが単勝オッズ12.1倍で日本馬最上位の5番人気だった。本馬はこのレースでも後方待機策を採り、直線入り口13番手から追い込んできた。しかし好位から豪脚を繰り出したスキーパラダイス、2番手で粘ったザイーテンの2頭に届かず、勝ったスキーパラダイスから1馬身半差の3着だった。

本番の安田記念(日GⅠ・T1600m)では、京王杯スプリングCで上位4着までを独占した海外馬4頭全てに加えて、前年のスプリンターズSの勝ち馬サクラバクシンオー、マイラーズCなど3連勝中のノースフライトといった日本が誇る快速馬達が参戦してきた。スキーパラダイスが単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ4倍の2番人気、サクラバクシンオーが単勝オッズ6.9倍の3番人気、前走4着のドルフィンストリートが単勝オッズ7倍の4番人気、ノースフライトが同じ単勝オッズ7倍の5番人気だった。今回の本馬はスキーパラダイスと一緒に馬群の中団につけた。しかし直線に入ってもスキーパラダイス共々伸びを欠き、直線で豪脚を繰り出して勝ったノースフライトから5馬身差の7着に敗れた。

欧州に戻った本馬は、サセックスS(英GⅠ・T8F)に出走した。英2000ギニー・ロイヤルロッジSの勝ち馬ミスターベイリーズ、セントジェームズパレスS2着馬ディスタントヴュー、前走イスパーン賞を勝ってきたビッグストーン、デューハーストS・セントジェームズパレスSの勝ち馬で英2000ギニー2着のグランドロッジ、クイーンアンSを勝ってきた前年のクイーンエリザベスⅡ世S2着馬バラシア、ミドルパークS・リッチモンドSを勝っていた前年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬ファーストトランプといったマイル路線の実力馬達が勢揃いしており、本馬は単勝オッズ9倍の6番人気止まりだった。今回は久々に先行策を採り、直線には3番手で入ってきた。しかし馬群に包まれてしまい、残り1ハロン地点でようやく馬群を抜け出してきた時には既に遅く、勝ったディスタントヴューから3馬身3/4差の4着に敗れた。

次走のジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)では、仏1000ギニー・仏オークスを連勝してきたイーストオブザムーン、サセックスSで2着だったバラシア、安田記念で5着だったスキーパラダイス、愛1000ギニーの勝ち馬メサーフ、ロッキンジS・クレイヴンSの勝ち馬でクイーンアンS2着のエンペラージョーンズ、クリテリウムドメゾンラフィット・ダフニ賞の勝ち馬シニュディヴァンなどが対戦相手となった。キングマンボの半妹でもあるイーストオブザムーンが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ6.7倍の4番人気だった。今回の本馬は馬群の中団に控えて、残り400m地点でスパートを開始。残り300m地点で先頭に立ったが、ここから踏ん張り切れずに、イーストオブザムーンに差されて1馬身半差の2着に敗れた。

次走のムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)では、イーストオブザムーン、前走4着のシニュディヴァン、同5着のスキーパラダイス、サセックスSで8着に終わっていたビッグストーン、ガネー賞の勝ち馬マリルド、仏2000ギニー馬グリーンチューンの計6頭が対戦相手となった。イーストオブザムーンが単勝オッズ1.4倍の1番人気、マリルドが単勝オッズ4.2倍の2番人気、本馬が単勝オッズ8.5倍の3番人気となった。しかしレースは武豊騎手が手綱を取るスキーパラダイスが念願のGⅠ競走初勝利を収め、本馬はスキーパラダイスから3馬身差の5着に敗れた。

英国に戻った本馬は、クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ・T8F)に出走。スキーパラダイス、前走2着のイーストオブザムーン、同4着のビッグストーン、サセックスSから直行してきたディスタントヴュー、ジャックルマロワ賞3着後にセレブレーションマイルを勝ってきたメサーフ、ジャックルマロワ賞で6着だったバラシア、愛2000ギニーを15馬身差で圧勝していたタートルアイランドなど8頭が対戦相手となった。出走馬9頭中本馬を含む8頭がGⅠ競走勝ち馬であり、同レース史上でも稀に見るほどのメンバー構成となり、本馬は単勝オッズ21倍の8番人気まで評価を落としていた。レースでは唯一のGⅠ競走未勝利馬だったために単勝オッズ67倍の最低人気だったマルーフが先手を取り、本馬はそれを追って先行した。しかし残り1ハロン地点から大きく失速。まんまと逃げ切って勝ったマルーフから8馬身差の8着と大敗した。4歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は6戦未勝利に終わった。

競走生活(5歳時)

4歳限りで引退かと思われたが、翌5歳時も現役を続行した。まずは5月のパレロワイヤル賞(仏GⅢ・T1400m)に出走した。前年のフォレ賞3着馬ネヴァーネイエフなどの姿もあったが、前年未勝利とはいえ実績では本馬が群を抜いており、単勝オッズ2.4倍の1番人気に支持された。レースでは3番手を進み、残り200m地点で先頭に立ったものの、ゴール直前で単勝オッズ6.8倍の4番人気馬チェロキーローズに差されて、頭差の2着に惜敗した。

次走のクイーンアンS(英GⅡ・T8F)では、前走ロッキンジSを筆頭にキヴトンパークS・スプリームS・香港国際ボウルを勝っていたソヴィエトラインと人気を分け合い、ソヴィエトラインが単勝オッズ2.625倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3倍の2番人気となった。スウィンバーン騎手がソヴィエトラインに騎乗したため、本馬にはランフランコ・デットーリ騎手が騎乗した。本馬は馬群の中団を進んだものの、道中で進路が塞がって外側に持ち出すロスがあった影響もあり、勝った単勝オッズ17倍の5番人気馬ニコロットから2馬身3/4差の5着に敗れた。

次走は3年連続出走となるサセックスS(英GⅠ・T8F)となった。ニコロット、前走3着のソヴィエトラインに加えて、セントジェームズパレスSを勝ってきたバーリ、愛国際Sを勝ってきたダーネイも参戦してきた。バーリが単勝オッズ2倍の1番人気、ソヴィエトラインが単勝オッズ6倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.5倍の3番人気、ニコロットが単勝オッズ8倍の4番人気となった。スウィンバーン騎手はソヴィエトラインに、デットーリ騎手はゴドルフィン所属のダーネイに騎乗したため、本馬は豪州出身のブレット・ドイル騎手と初コンビを組んだ。

スタートが切られると単勝オッズ51倍の最低人気馬スルブが先頭に立ち、バーリなどがそれを追って先行。一方の本馬は最後方に陣取った。そして残り2ハロン地点で満を持してスパートを開始。先に先頭に立っていたバーリとダーネイの2頭を残り1ハロン地点で抜き去って先頭に立った。ここでバーリが粘りを発揮したために差を広げられなかったが、差し返されることは無く、2着バーリに首差で勝利を収め、3歳時のジャックルマロワ賞以来約2年ぶりの勝ち星を挙げた。

次走も3年連続出走となるジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)となった。サンドリンガム賞・アスタルテ賞の勝ち馬でコロネーションS2着のスモレンスク、仏オークスの勝ち馬で仏1000ギニー2着のカーリング、ミュゲ賞・イスパーン賞を連勝してきた前年のムーランドロンシャン賞3着馬グリーンチューン、アスタルテ賞2着・仏1000ギニー3着のシャンクシー、前走で4着だったニコロットなどが対戦相手となった。グループ競走初出走だった3歳馬タマヤズが前走ボーダページ条件Sの圧勝ぶりから単勝オッズ3.8倍の1番人気に押し出され、引き続きドイル騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ5.2倍の2番人気となった。ここでも本馬は後方待機策を採り、残り400m地点で仕掛けて残り300m地点で先頭に立った。しかし残り200m地点で左側によれて失速したところを、単勝オッズ22.7倍の8番人気馬ミスサタミクサに差されて、1馬身差の2着に敗れた。ドイル騎手はレース後に仕掛けが早かった事を認めている。

次走のムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)では、ミスサタミクサ、前走3着のシャンクシー、同5着のグリーンチューン、同8着のスモレンスクに加えて、愛1000ギニー・コロネーションSを連勝してきたリッジウッドパール、ロンポワン賞・サンダウンマイル・モートリー賞の勝ち馬でフォレ賞2着のミスドフライト、本馬が勝ったサセックスSで3着だったダーネイなどが参戦してきた。リッジウッドパールが単勝オッズ2.3倍の1番人気、ミスサタミクサが単勝オッズ5.1倍の2番人気、ドイル騎手騎乗の本馬が単勝オッズ6.2倍の3番人気となった。ここでも後方待機策を採った本馬は直線入り口7番手から追い上げてきたが、突き抜けるだけの脚は見せられずに、勝ったリッジウッドパールから1馬身半差の4着に敗れた。

その後は米国に遠征して、ベルモントパーク競馬場で実施されたブリーダーズカップに参戦。さすがに今度はBCスプリントではなくBCマイル(米GⅠ・T8F)のほうに出走した。対戦相手は、ムーランドロンシャン賞勝利後のクイーンエリザベスⅡ世Sでバーリの奇襲戦法を受けて2着に敗れたリッジウッドパール、ムーランドロンシャン賞2着後にロンポワン賞を勝っていたシャンクシー、サセックスSで4位入線5着降着だったソヴィエトライン、パレロワイヤル賞で本馬を2着に破った後にポルトマイヨ賞・モーリスドギース賞・スプリントCを連勝してアベイドロンシャン賞で2着してきたチェロキーローズ、エディリードHの勝ち馬ファストネス、カナディアンターフH・ディキシーSなどの勝ち馬ザヴィド、フォレ賞を勝ってきたポプラーブラフ、カールトンFバークH・エルリンコンHの勝ち馬サヴィニオ、エルクホーンS・バーナードバルークH2回などを勝っていた4年前の愛2000ギニー馬フォースターズオールスター、ハリウッドパークターフH・シネマH・サンガブリエルHの勝ち馬アールオブバーキングなど12頭だった。リッジウッドパールが単勝オッズ3.55倍の1番人気、チェロキーローズが単勝オッズ5.9倍の2番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ17.3倍の10番人気という低評価だった。今回はコーリー・ナカタニ騎手が騎乗した本馬はスタートで出負けしたが、焦らずにそのまま後方待機策を選択。直線入り口7番手から末脚を伸ばしてきた。先行して勝ったリッジウッドパールと2着ファストネスには全く届かなかったが、リッジウッドパールから9馬身差をつけられながらも3着を確保した。

このレースを最後に、5歳時6戦1勝の成績で競走馬を引退した。ブリテン師は本馬を「単に速いだけでなく強靭な精神力を持った馬。こんな偉大な馬を育成できるのは調教師にとっての喜びです」と評している。

血統

Shadeed Nijinsky Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Flaming Page Bull Page Bull Lea
Our Page
Flaring Top Menow
Flaming Top
Continual Damascus Sword Dancer Sunglow
Highland Fling
Kerala My Babu
Blade of Time
Continuation Forli Aristophanes
Trevisa
Continue Double Jay
Courtesy
Dubian High Line ハイハット Hyperion Gainsborough
Selene
Madonna Donatello
Women's Legion
Time Call Chanteur Chateau Bouscaut
La Diva
Aleria Djebel
Canidia
Melodina Tudor Melody Tudor Minstrel Owen Tudor
Sansonnet
Matelda Dante
Fairly Hot
Rose of Medina Never Say Die Nasrullah
Singing Grass
Minaret Umidwar
Neolight

シャディードは当馬の項を参照。

母ドゥビアンは本馬と同様にオバイダ氏の所有馬で、チェルトナムチャンピオンハードル3連覇の名障害競走馬シーユーゼン(父ロイヤルパレス)の半妹に当たる。現役成績は12戦4勝で、リディアテシオ賞(伊GⅠ)・ロイヤルホイップS(愛GⅢ)を制し、英オークス(英GⅠ)はオーソーシャープの3着、愛オークス(愛GⅠ)はヘレンストリートの3着だった。1986年には伊最優秀古馬牝馬に選ばれている。繁殖牝馬としても、本馬の半弟ゴールデンスネイク(父ダンチヒ)【ジャンプラ賞(仏GⅠ)・オイロパ賞(独GⅠ)・伊ジョッキークラブ大賞(伊GⅠ)・ガネー賞(仏GⅠ)】を産むなど優秀な成績を残している。ドゥビアンの母メロディーナの半姉にはセリーナ【愛オークス】がいる他、メロディーナの半姉セントパディナの孫にはシュアブレード【英シャンペンS(英GⅡ)・セントジェームズパレスS(英GⅡ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅡ)】がいる。→牝系:F9号族③

母父ハイラインは現役成績17戦9勝、ジェフリーフリアS(英GⅡ)を2連覇、ジョッキークラブC(英GⅢ)は3連覇している。種牡馬としても複数のGⅠ競走勝ち馬を出して活躍している。ハイラインの父ハイハットはハイペリオン産駒のオックスフォードシャーS勝ち馬で、欧州で一定の種牡馬成績を残した後に日本に輸入され、ステイヤーズSを2度制したフジノハイハットを出した。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ゲインズボロースタッドで繁殖入りした。10歳時に産んだ4番子の牡駒アルムシャハー(父シルヴァーホーク)が英シャンペンS(英GⅡ)を勝って英2000ギニーの有力候補と目されたが、調教中の故障のため2戦2勝で底を見せないまま引退してしまった。他には勝ち上がり馬こそいるがグループ競走の勝ち馬は出なかった。本馬は2007年8月に17歳で他界した。

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