サンクラシーク

和名:サンクラシーク

英名:Sun Classique

2003年生

栗毛

父:フジキセキ

母:エルフェンジャー

母父:ラストタイクーン

南アフリカの一流牝馬として活躍した後にドバイへ渡ってドバイシーマクラシックを優勝した日本の種牡馬フジキセキの娘

競走成績:2~4歳時に南首で走り通算成績15戦9勝2着2回

誕生からデビュー前まで

豪州ウィディンスタッドの生産馬で、日本の種牡馬フジキセキが豪州にシャトルされていた時に輩出した産駒である。生産者であるライオネル・コーエン氏とウェンディ・V・リッポン夫人の共同所有馬として豪州から南アフリカに輸出され、マイク・デ・コック調教師の管理馬となった。

競走生活(2・3歳時)

2歳5月にケニルワース競馬場で行われた芝1200mの未勝利ジュヴェナイルプレートでデビューして、2着セキュアに2馬身差で勝ち上がった。同コースで行われた2戦目のジュヴェナイルプレートも、2着カレイドに2馬身差で勝利。3戦目のセクウィニフィリーズS(南GⅠ・T1600m)では2番人気の支持を受けたが、ロイヤルファンタジーの短頭差2着と惜敗し、2歳シーズンを3戦2勝で終えた。

翌06/07シーズンは9月のダイアナS(南GⅢ・T1400m)から始動した。主戦となるジェフ・ロイド騎手を鞍上に、直線入り口9番手から鮮やかな差し切りを決めて、2着カウンテスコーリアに1馬身半差で勝利した。

続くケニルワース競馬場芝1200mのハンデ競走は129ポンドの斤量が響いたのか、2馬身1/4差の4着に終わった。しかし次走のケープフィリーズギニー(南GⅠ・T1600m)では1番人気に支持された。そして後方4番手追走から直線一気を決めて2着フェスティヴオケイジョンに首差で勝利し、GⅠ競走初勝利を挙げた。

次走のパドックS(南GⅠ・T1800m)では古馬に混ざって1番人気に推されたが、伏兵の6歳馬バジャーズギフトから2馬身半差の2着に敗れた。やはり古馬相手となったマジョルカS(南GⅠ・T1600m)では最後方を追走し、直線入り口でもまだ殿だったが、ここから全馬をごぼう抜きにして、2着フェスティヴオケイジョンに1馬身差で勝利した。

その後は調子を落とし、ウンジムフルS(南GⅡ・T1400m)では、同厩馬リヴァーイェツェツの3馬身3/4差7着に敗退。ZNフィリーズギニー(南GⅡ・T1600m)では、ロイヤルファンタジー、リヴァーイェツェツなどどの顔合わせとなった。しかしロイド騎手が抑えすぎて折り合いを欠いてしまい、勝ったサリーボウルズから4馬身1/4差の7着と完敗した。

しかし1か月挟んで出走したウーラヴィントン2200(南GⅠ・T2200m)では、バーナード・フェイデルベ騎手とコンビを組んで単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持された。本馬はスタートで出遅れてしまい、後方2番手を追走していたが、直線で猛然と追い上げると、2着アラビアンパールをゴール寸前で際どく捕らえて首差で勝ち、GⅠ競走3勝目を挙げた。

その後、南アフリカ最大のレースであるダーバンジュライ(南GⅠ・T2200m)に、P・ストリドム騎手と共に出走した。しかし、南アフリカのGⅠ競走であるケープギニー・ケープダービーの勝ち馬ジェイペグ、同じくGⅠ競走SAクラシックの勝ち馬ハンティングタワー、同じくGⅠ競走デイリーニューズ2200の勝ち馬バイアンドセル、同じくGⅠ競走プレミアズチャンピオンS・ゴールデンホーススプリントの勝ち馬キルドナンなど、同国を代表する強豪馬達が対戦相手となり、単勝オッズ13倍で8番人気の低評価。ここでも鞍上が抑えすぎて最後方からの競馬となってしまった本馬は、それでも残り400m地点から猛然と追い上げてきたが、勝ったハンティングタワーから2馬身3/4差の7着という結果に終わった(8着ジェイペグには一応は先着した)。

このシーズンの成績は9戦4勝で、南阿最優秀3歳牝馬(正確には最優秀3歳中長距離牝馬)に選出された。

競走生活(4歳時)

翌07/08シーズンは、本馬を管理していたコック師がドバイの国際厩舎も拠点の一つとしていたこともあり、目標をドバイシーマクラシックに定めて、本馬はドバイに渡った。

環境に慣れるため、本番7週間前にナドアルシバ競馬場で行われるリステッド競走ケープヴェルディS(T1600m)から始動した。地元ゴドルフィン所属の期待馬メニーカラーズ、ムシドラS2着馬スウィートリリーなどが出走していた。英国ブックメーカーのオッズでは本馬を含めたこの3頭の評価が高く、メニーカラーズが単勝オッズ2.25倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.33倍の2番人気、スウィートリリーが単勝オッズ5倍の3番人気となっていた。しかし本馬の斤量は61.5kgと過酷なものであり、他馬勢より2~7kg重いものだった。このレースで初コンビを組んだケヴィン・シェイ騎手は、今まで差し・追い込み戦法で勝ってきた本馬を馬群の中団好位6番手につけさせた。そのままの位置取りで直線を向くと、先行馬勢の間をすり抜けるようにして進出して一気に先頭に立ち、2着メニーカラーズに2馬身1/4差で見事に勝利した。

次走は本番5週間前にナドアルシバ競馬場で行われるリステッド競走バランシーンS(T1777m)となった。対戦相手の層は厚くなっており、メニーカラーズ、前走4着のスウィートリリーに加えて、ブラジルのGⅠ競走ピラシカーバ男爵大賞・エンリケデトレドララ大賞の勝ち馬でリオオークス2着のライトグリーンも出走してきた。今回は本馬が単勝オッズ1.67倍という断然の1番人気となっていた。ところが斤量はさらに増えて62kgであり、他馬勢より2.5~7.5kg重かった。今回も馬群の中団好位5番手を追走し、直線で抜け出そうとしたが、前を行くライトグリーンが壁になって進路を失い、シェイ騎手が立ち上がるほどの不利を受けた。本馬が体勢を崩している間に、ライトグリーン、メニーカラーズ、ゴーワーソングの3頭が本馬を引き離して行った。誰が見ても絶体絶命の状態だったが、ここから体勢を立て直すと前3頭を急追。残り150m地点では3馬身はあった差を瞬く間に縮めると、2着メニーカラーズを首差差し切るという、1995年のいちょうSでエアグルーヴが見せたパフォーマンスを髣髴とさせるレースぶりで勝利した。

そして本番のドバイシーマクラシック(首GⅠ・T2400m)を迎えた。さすがに今までとは対戦相手のレベルが違い、香港ダービー・香港チャンピオンズ&チャターC2回・クイーンエリザベスⅡ世C・香港金杯を勝っていた香港調教馬ヴィヴァパタカ、オイロパ賞・グレートヴォルティジュールSの勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSと凱旋門賞で共に2着していた英国調教馬ユームザイン、前年のマンノウォーS・香港ヴァーズを勝っていた仏国調教馬ドクターディーノ、前年のバーデン大賞を勝ち香港ヴァーズで2着していた独国調教馬キハーノ、仏オークス馬でヴェルメイユ賞2着の仏国調教馬ウェストウィンド、BCターフ・ソードダンサー招待H・ユナイテッドネーションズS・マンノウォーS・マンハッタンHとGⅠ競走5勝の米国調教馬ベタートークナウ、サンルイオビスポH・カールトンFバークHを勝っていた米国調教馬スプリングハウス、ドバイシティオブゴールドを勝っていた南アフリカ出身馬オラクルウエストなど、世界各国の実力馬が参戦してきた。(日本調教馬の参戦は無かった)。

英国ブックメーカーのオッズでは、ヴィヴァパタカが単勝オッズ3.25倍の1番人気、ユームザインが単勝オッズ6倍の2番人気、本馬が単勝オッズ8.5倍の3番人気、ドクターディーノが単勝オッズ9倍の4番人気、キハーノが単勝オッズ11倍の5番人気と続いていた。

スタートが切られるとまずはスプリングハウスが先頭に立ち、シェイ騎手鞍上の本馬は4番手の好位、ヴィヴァパタカ、ユームザイン、キハーノは馬群の中団、ドクターディーノは後方待機策を採った。本馬はそのままの位置でレースを進め、3番手で直線を向くと、前を行くスプリングハウスとウェストウィンドの間をすり抜けて一気に先頭に立った。そのままナドアルシバ競馬場の長い直線を先頭で走り抜け、外側から追い込んできた2着ヴィヴァパタカに2馬身3/4差をつけて、2分27秒45のコースレコードを樹立して快勝した。ドバイシーマクラシックを牝馬が勝ったのは初めての事だった。

なお、同日に施行されたドバイデューティーフリーでも、同じく南アフリカから来たジェイペグが勝利を収め(その50日後にはシンガポール航空国際Cも勝利)、世界中に南アフリカ旋風が吹き荒れることになった。かつて名馬ハワイが米国に移籍して活躍した程度しか南アフリカの馬を知らなかった筆者としては、ダーバンジュライで惨敗した2頭がドバイミーティングを勝ったという結果に驚愕し、南アフリカ競馬のレベルを見直す契機ともなった。

その後はキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを目指して渡英し、英国にもあったコック師の分厩に入った。しかしニューマーケットにおける調教中に腱を負傷したため出走を断念。その後も復帰を目指して長期の療養生活を送っていたが、結局復帰することは叶わず、翌年7月に引退が決定した。

血統

フジキセキ JPN サンデーサイレンス Halo Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
Wishing Well Understanding Promised Land
Pretty Ways
Mountain Flower Montparnasse
Edelweiss
ミルレーサー Le Fabuleux Wild Risk Rialto
Wild Violet
Anguar Verso
La Rochelle
Marston's Mill In Reality Intentionally
My Dear Girl
Millicent Cornish Prince
Milan Mill
Elfenjer ラストタイクーン トライマイベスト Northern Dancer Nearctic
Natalma
Sex Appeal Buckpasser
Best in Show
Mill Princess Mill Reef Never Bend
Milan Mill
Irish Lass Sayajirao
Scollata
Gamine Keen Sharpen Up エタン
Rocchetta
Doubly Sure Reliance
Soft Angels
Remember Century Bold Flip Bold Ruler
Cicada
Royal Suite Rego
Baraganda

父フジキセキはサンデーサイレンスの日本における初年度産駒で、朝日杯三歳S(日GⅠ)で父の産駒として初めてGⅠ競走を優勝した。その後弥生賞(日GⅡ)も勝ち、クラシックの最有力候補とされるが屈腱炎のため4戦4勝で引退、幻の三冠馬と呼ばれた。引退後すぐに種牡馬入りし、当初の産駒成績は今ひとつだったが、徐々に実績を積み重ね、父の有力な後継種牡馬の1頭となった。2013年に種牡馬を引退し、2015年12月に23歳で他界した。2015年12月現在、産駒の中央競馬における勝利数は1500勝を突破しており、これは日本における内国産種牡馬としては歴代1位の記録である(輸入種牡馬も含めると、サンデーサイレンス、ノーザンテーストブライアンズタイムに次ぐ4位)。地方競馬も含めた全日本勝利数では2015年12月現在で3500勝を突破しており、これはサンデーサイレンス、ブライアンズタイムに次いで3位である。代表産駒はカネヒキリ、グレイスティアラ、ファイングレイン、コイウタ、キンシャサノキセキ、エイジアンウインズ、ダノンシャンティ、サダムパテック、ストレイトガール、イスラボニータなど。豪州にもシャトルされており、本馬の他にキンシャサノキセキも豪州産馬である。

母エルフェンジャーは現役成績1戦未勝利。本馬を受胎した状態で豪州イングリス・イースター繁殖牝馬セールに出品され、コーエン氏により3万2500ドルで購入されていた。エルフェンジャーの母ガミーヌはサウスオーストラリアンオークス(豪GⅠ)の勝ち馬。ガミーヌの伯父には豪州の名競走馬にして名種牡馬のセンチュリー【VRCサイアーズプロデュースS・フリーウェイS・アスコットヴェイルS・ニューマーケットH・クレーブンAS・ライトニングS】がいる。→牝系:F20号族②

母父ラストタイクーンは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はジュドモントファームに繋養されていた名種牡馬オアシスドリームと交配されて受胎した後に豪州に戻った。翌2010年4月の豪州イングリス・イースター繁殖牝馬セールに出品され、同セールにおける最高値となる200万豪ドル(186万6770米ドル)でパティナックファームに購入された。しかしパティナックファームの所有者ネイサン・ティンクラー氏が石炭事業の不振により本馬を含む所有馬全てを売却する事を2013年に表明。セリに出される予定だった本馬産駒が上場取り消しとなるなど、その後の行く末は不透明となり、続報も現在のところない。

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