誕生からデビュー前まで
和名:ファピアノ |
英名:Fappiano |
1977年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:ミスタープロスペクター |
母:キラロー |
母父:ドクターファーガー |
||
父ミスタープロスペクターの2年目産駒としてメトロポリタンHを勝利し、父の最初の大物後継種牡馬となる |
||||
競走成績:2~4歳時に米で走り通算成績17戦10勝2着3回3着1回 |
本馬の母の父でもある稀代の快速馬ドクターファーガーの管理調教師として名を馳せ、後にはブリーダーズカップの創設にも尽力する事になるジョン・A・ネルド氏が、調教師引退の直前に、自身が所有していたフロリダ州タータンズファームにおいて生産・所有した。管理調教師はネルド氏の息子ジャン・H・ネルド師、主戦はアンヘル・コルデロ・ジュニア騎手だった。
父ミスタープロスペクターにとっては2年目産駒に当たる。後に大種牡馬として君臨するミスタープロスペクターも当初はまだ無名種牡馬だったため、本馬もそれほど期待を掛けられていたわけではなかった。ちなみにミスタープロスペクター産駒のGⅠ競走初制覇は、本馬がデビューする1週間前に初年度産駒のイッツインジエアが勝ったヴァニティHである。
競走生活(2歳時)
2歳7月にベルモントパーク競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦でデビューした。このレースは、後にベルモントS・トラヴァーズS・ジョッキークラブ金杯・サバーバンHとGⅠ競走で4勝を挙げ、エクリプス賞最優秀3歳牡馬にも選ばれるテンパランスヒルのデビュー戦でもあった。しかし本馬が2着バックアイランドに3馬身半差をつけて快勝し、テンパランスヒルは本馬から11馬身後方の4着に沈んだ。
その後はしばらく休養を取り、11月にアケダクト競馬場で行われたダート6ハロンの一般競走で復帰すると、これも3馬身差の完勝を収めた。次走のアケダクト競馬場ダート7ハロンの一般競走も、1馬身1/4差で勝利。翌12月にはメドウランズ競馬場でモーヴェンH(D6F)に出走。2着となった後のモンマス招待Hの勝ち馬サンクストゥトニーに3馬身1/4差をつけて、1分08秒6のコースレコードを計時して勝利を収め、2歳時を4戦全勝で終えた。しかし、父ミスタープロスペクターと母父ドクターファーガーの現役成績から短距離馬と判断されていた本馬を、ケンタッキーダービーを始めとする米国三冠路線に進ませる意思は陣営には無かった。
競走生活(3歳時)
3歳時は5月にアケダクト競馬場で行われたダート6ハロンの一般競走から始動。鼻差ながらも勝利を収めた。しかし2週間後のアケダクト競馬場ダート7ハロンのハンデ競走で3馬身差の2着に敗れて初黒星を喫し、その後はしばらく休養した。8月にサラトガ競馬場ダート6ハロンの一般競走で復帰すると、1馬身1/4差で勝利。
続いてジェロームH(GⅡ・D8F)に出走した。ここでは、ローレルフューチュリティ・フロリダダービー・ウッドメモリアルS・レムセンS・トムフールS・ジムダンディSの勝ち馬プラグドニックル、カリフォルニアダービーの勝ち馬でケンタッキーダービー3着のジャクリンクラッグマンという強敵が登場した。レースではプラグドニックルを7馬身引き離して、本馬とジャクリンクラッグマンの大接戦となったが、ジャクリンクラッグマンが首差で勝利を収め、本馬は2着に惜敗した。次走のパターソンH(GⅡ・D9F)では、フォアゴーHを勝ってきたタンゼムには先着したものの、ジャージーブルースHを勝ってきたテューナラップの3/4馬身差2着に敗れた。
次走は、GⅠ競走初出走となるヴォスバーグS(GⅠ・D7F)となった。ここでは、パトリオットS・メリーランダーH・ボールドルーラーS・ローズベンHを勝ちモンマス招待Hで2着していたデーヴズフレンド、セリマS・アッシュランドSの勝ち馬キャンディエクレアに加えて、プラグドニックル、ジャクリンクラッグマンとの再戦となった。しかし今回はプラグドニックルが2着ジャクリンクラッグマンを半馬身抑えて勝利を収め、本馬はプラグドニックルから2馬身半差の5着に敗れた。なお、この勝利が決め手となり、プラグドニックルはこの年のエクリプス賞最優秀短距離馬に選ばれることになる。
一方の本馬はその後にディスカヴァリーH(GⅢ・D9F)に出走。ここではパトリオットS・キーストーンSの勝ち馬リ-フサーチャーを3馬身1/4差の2着に破って勝利を収め、3歳時を7戦3勝2着3回で終えた。
競走生活(4歳時)
4歳時は4月にアケダクト競馬場で行われたボールドルーラーS(D6F)から始動したが、2連覇を達成したデーヴズフレンドから3馬身差の3着に敗れた。翌月に出走したベルモントパーク競馬場ダート7ハロンの一般競走では、4馬身差で快勝。
次走のメトロポリタンH(GⅠ・D8F)では、スタイミーH・グレイラグH・エクセルシオールHを勝ってきたアイリッシュタワー、ドワイヤーS・カーターHの勝ち馬でスワップスS2着・モンマス招待H・トラヴァーズS3着のアンバーパスなどとの対戦となったが、2着アイリッシュタワーに2馬身3/4差をつけて勝利を収め、GⅠ競走勝ち馬となった。
その後はニューヨークハンデキャップ三冠でも目指そうと思ったのか、サバーバンH(GⅠ・D10F)に向かった。距離が長かった上に不得手な不良馬場となったが、デビュー戦で本馬に敗れた前年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬テンパランスヒルから1馬身1/4差、2着となったエクセルシオールH・マサチューセッツHの勝ち馬でブルックリンH3着のリングオブライトから1馬身差、3着となったこの年のベルモントS・ウッドメモリアルS2着馬で後にパンアメリカンS・ブルックリンH・マールボロカップ招待HとGⅠ競走を3勝するハイランドブレイドから首差の4着と健闘した。
次走のフォアゴーH(D8F)では、カーターH2着馬で後にヴォスバーグS・ブージャムを勝利してこの年のエクリプス賞最優秀短距離馬に選ばれるギルティコンサイエンスとの対戦となったが、本馬が2着ハーブウォーターに3/4馬身差をつけて1分33秒8のレースレコードで勝利を収め、ギルティコンサイエンスは3着に敗れた。
続いてマールボロC招待H(GⅠ・D10F)に出走した。対戦相手の層の厚さは本馬が今まで出走したレースの中でも最高級であり、ケンタッキーダービー・プリークネスS・レムセンS・ウッドメモリアルS・ウッドワードSの勝ち馬でトラヴァーズS2着・ベルモントS3着の現役米国最強3歳牡馬プレザントコロニー、ドワイヤーS・スワップスS・ジェロームHの勝ち馬でシャンペンS2着の3歳馬ノーブルナシュア、ラカナダS・サンタマルガリータS・トップフライトH・ミシガンマイル&ワンエイスH・サンタマリアH・ドミニオンデイH2回を勝ちエイモリーLハスケルH・マールボロCH・サンタマルガリータHで2着していた前年のエクリプス賞最優秀古馬牝馬グローリアスソング、テンパランスヒル、メトロポリタンH3着後にモンマスH・ウィリアムデュポンジュニアHを勝ちウッドワードSで2着してきたアンバーパスなどが出走してきた。今回もサバーバンHと同じく距離も向いていなかったし馬場状態も悪かった。そして今回は好走することが出来ず、勝ったノーブルナシュアから6馬身半差5着に敗れた。これが現役最後のレースとなり、4歳時の成績は6戦3勝だった。
馬名は、ニューヨーク・タイムズ紙のスポーツ記者を50年間も務め、数多くの競馬記事を手掛けたジョセフ・C・ニコルズ氏の出生地である、米国コネチカット州ニューヘイブン市のジュゼッペ・カルミネ・ファピアノ教会にちなんでいる。
血統
Mr. Prospector | Raise a Native | Native Dancer | Polynesian | Unbreakable |
Black Polly | ||||
Geisha | Discovery | |||
Miyako | ||||
Raise You | Case Ace | Teddy | ||
Sweetheart | ||||
Lady Glory | American Flag | |||
Beloved | ||||
Gold Digger | Nashua | Nasrullah | Nearco | |
Mumtaz Begum | ||||
Segula | Johnstown | |||
Sekhmet | ||||
Sequence | Count Fleet | Reigh Count | ||
Quickly | ||||
Miss Dogwood | Bull Dog | |||
Myrtlewood | ||||
Killaloe | Dr. Fager | Rough'n Tumble | Free for All | Questionnaire |
Panay | ||||
Roused | Bull Dog | |||
Rude Awakening | ||||
Aspidistra | Better Self | Bimelech | ||
Bee Mac | ||||
Tilly Rose | Bull Brier | |||
Tilly Kate | ||||
Grand Splendor | Correlation | Free America | Blenheim | |
Columbiana | ||||
Braydore | Roidore | |||
Bray Beauty | ||||
Cequillo | Princequillo | Prince Rose | ||
Cosquilla | ||||
Boldness | Mahmoud | |||
Hostility |
父ミスタープロスペクターは当馬の項を参照。
母キラローは現役成績32戦4勝。繁殖牝馬としては本馬の他に、本馬の全弟ポートロウ【イロコイS(米GⅢ)】、半弟トレンシャル(父ガルチ)【ジャンプラ賞(仏GⅠ)】などを産み、11頭の産駒のうち競走馬になった9頭が全て勝ち上がるという優秀な成績を収めた。牝系子孫もまずまず発展しており、本馬の半姉ジェディナ(父ワットアプレジャー)の子にはクラバーガール【トップフライトH(米GⅠ)・チュラヴィスタH(米GⅡ)・ランチョベルナルド(米GⅢ)】、孫にはキーパーヒル【ケンタッキーオークス(米GⅠ)・ラスヴァージネスS(米GⅠ)・スピンスターS(米GⅠ)】と、日本で走ったエリザベスローズ【セントウルS(GⅢ)】がいる。エリザベスローズの子にはフサイチゼノン【弥生賞(GⅡ)】、アグネスゴールド【スプリングS(GⅡ)・きさらぎ賞(GⅢ)】、リミットレスビッド【東京盃(GⅡ)2回・ガーネットS(GⅢ)・根岸S(GⅢ)・兵庫ゴールドトロフィー(GⅢ)2回・黒船賞(GⅢ)・さきたま杯(GⅢ)】の重賞3兄弟がいる。また、本馬の半妹ボートトゥワイス(父インリアリティ)の子にはコメンダブル【ベルモント(米GⅠ)】がいる。
キラローの半妹ゴンファロン(父フランシスエス)の子にはオジジアン【ベルモントフューチュリティS(米GⅠ)・ドワイヤーS(米GⅠ)・ジェロームH(米GⅠ)】、孫にはオナーアンドグローリー【メトロポリタンH(米GⅠ)】がいる。近親には他にも日本で走ったエーシンフォワード【マイルCS(GⅠ)】、トーホウジャッカル【菊花賞(GⅠ)】など活躍馬が多数おり、牝系としては優秀であると言える。→牝系:F16号族③
母父ドクターファーガーは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は1株30万ドル(何株かは資料に記載が無く不明)のシンジケートが組まれて、生まれ故郷のタータンズファームで種牡馬入りした。本馬が種牡馬生活を開始した1982年には父の最初の超大物産駒コンキスタドールシエロが大活躍して、父の評価を高めると同時に、本馬の種牡馬人気にもある程度貢献したと思われるが、やはり米国馬産の中心地ケンタッキー州から離れたフロリダ州での種牡馬入りというハンデは大きく、それほど優良な繁殖牝馬を集めたわけではなかった。しかし本馬は初年度産駒からBCジュヴェナイル勝ち馬タッソーなどを輩出するなどの活躍を見せた。
その後、本馬の最高傑作アンブライドルドが誕生した1987年の夏に、本馬の生産者ネルド氏がサラブレッド生産から撤退した。そして本馬はセリに掛けられ、ケンタッキー州レーンズエンドファームに購買された。しかしその3年後の1990年に慢性の蹄葉炎を発症した本馬は、同年9月に13歳の若さで安楽死の措置が執られた。アンブライドルドがケンタッキーダービーを制してから4か月後の事であった。
結果的にはレーンズエンドファーム繋養時代には、タータンズファーム繋養時代に比べるとそれほど多くの活躍馬を出す事は出来なかった。しかしそれでも通算410頭の産駒からステークスウイナーを48頭送り出しており、ステークスウイナー率は11.7%と高率である。本馬の産駒にはアンブライドルド、クリプトクリアランス、クワイエットアメリカンなど後継種牡馬として活躍した馬が多く、現在でも本馬の直系はミスタープロスペクター直系の有力勢力として繁栄している。また、繁殖牝馬の父としても優秀で、資料によると1998年までに41頭のステークスウイナーを出しており、その後も相当数増えているはずである。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1983 |
Funistrada |
フォールハイウェイトH(米GⅡ) |
1983 |
Mustin Lake |
ケンタッキージョッキークラブS(米GⅢ) |
1983 |
Tasso |
BCジュヴェナイル(米GⅠ)・デルマーフューチュリティ(米GⅠ)・ブリーダーズフューチュリティS(米GⅡ) |
1983 |
With a Twist |
レアトリートH(米GⅢ) |
1984 |
Cryptoclearance |
フロリダダービー(米GⅠ)・ペガサスH(米GⅠ)・ドンH(米GⅠ)・ワイドナーH(米GⅠ)・エヴァーグレイズS(米GⅡ)・ホーソーン金杯(米GⅡ)2回・パターソンH(米GⅡ) |
1984 |
Tappiano |
スピナウェイS(米GⅠ)・メイトロンS(米GⅠ)・デモワゼルS(米GⅠ)・シャーリージョーンズH(米GⅢ)・サラブレッドクラブオブアメリカS(米GⅢ)・ガーデンステートパークBCH(米GⅢ)・ジェニュインリスクH(米GⅢ)・バーバラフリッチーH(米GⅢ) |
1985 |
Aptostar |
エイコーンS(米GⅠ)・ベッドオローゼズH(米GⅡ)・ヴェイグランシーH(米GⅢ) |
1986 |
Electric Flash |
スウィフトS(米GⅢ) |
1986 |
Quiet American |
NYRAマイルH(米GⅠ)・サンディエゴH(米GⅢ) |
1986 |
Some Romance |
メイトロンS(米GⅠ)・フリゼットS(米GⅠ)・ポストデブS(米GⅢ) |
1986 |
Surging |
カムリーS(米GⅡ) |
1987 |
Defensive Play |
マンノウォーS(米GⅠ)・チャールズHストラブS(米GⅠ)・エクセルシオールH(米GⅡ)・サンダウンクラシックトライアルS(英GⅢ)・ローズオブランカスターS(英GⅢ) |
1987 |
Fappaburst |
カムリーS(米GⅡ)・バーバラフリッチーH(米GⅢ) |
1987 |
Grand Canyon |
ノーフォークS(米GⅠ)・ハリウッドフューチュリティ(米GⅠ)・ケンタッキージョッキークラブS(米GⅢ) |
1987 |
Rubiano |
NYRAマイルH(米GⅠ)・カーターH(米GⅠ)・ヴォスバーグS(米GⅠ)・トムフールS(米GⅡ)・フォアゴーH(米GⅡ)・ウエストチェスターH(米GⅢ)2回 |
1987 |
ケンタッキーダービー(米GⅠ)・BCクラシック(米GⅠ)・フロリダダービー(米GⅠ) |
|
1988 |
Cahill Road |
ウッドメモリアル招待S(米GⅠ) |
1988 |
Jeano |
シャーリージョーンズH(米GⅢ)・サラブレッドクラブオブアメリカS(米GⅢ) |
1988 |
Serape |
バレリーナS(米GⅠ) |
1989 |
Cristofori |
コンデ賞(仏GⅢ) |
1989 |
Speakerphone |
フェデリコテシオS(米GⅢ) |
1989 |
エーピージェット |
京成杯(GⅢ) |
1991 |
Signal Tap |
ブーゲンヴィリアH(米GⅢ)・ハイアリアターフCH(米GⅢ) |