和名:アルサイド |
英名:Alcide |
1955年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:アリシドン |
母:シェニール |
母父:キングサーモン |
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現役時代は英ダービー直前回避など不運も多かったが英セントレジャー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを豪快な追い込みで勝った名長距離馬 |
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競走成績:2~4歳時に英で走り通算成績12戦8勝2着3回 |
誕生からデビュー前まで
第4代準男爵ハンフリー・エドマンド・ド・トラフォード卿により生産・所有された英国産馬で、英国セシル・ボイド・ロックフォート調教師に預けられた。
競走生活(2・3歳時)
2歳10月にニューマーケット競馬場で行われた未勝利ステークスでデビューしたが、着外に敗退。その後のホーリスヒルS(T7.5F)で2着ベンガルランサーに1馬身半差をつけて初勝利を挙げた。2歳時はこの2戦のみで終え、3歳時は本馬の長距離血統を鑑みて、陣営は英ダービーを目標に据えた。
まずは4月のロイヤルS(T10F・現サンダウンクラシックトライアルS)に出走して、前年の英オークス馬カロッツァの半弟スノーキャットの鼻差2着と好走。次走のチェスターヴァーズ(T12F65Y)では、2着ヴェロネーゼに3/4馬身差で勝利。さらにリングフィールドダービートライアルS(T11F106Y)では、2着となったグリーナムS勝ち馬パレサを12馬身差の2着に破って圧勝し、英ダービーの重要な前哨戦を2連勝した。リングフィールドダービートライアルSの勝ち方から、この時点で英ダービーの大本命と目されたものの、肝心の英ダービーはレース8日前に負傷して回避となってしまった(筋肉痛だったとする資料と、薬物投与など何らかの陰謀説を唱える資料があるが、詳しい事は判らない)。本馬が無事に英ダービーに出走していたら、間違いなく勝っていたと断言する資料もあるが、競馬に絶対は無いので断定は出来ない(可能性は高かったとは思うが)。
英ダービーに出られなかった本馬陣営は英セントレジャーに目標を切り替え、8月のグレートヴォルティジュールS(T12F)を前哨戦として選んだ。このレースにはゴードンSを勝ってきたセントジェームズパレスS2着馬ゲルシリウスも出走していたが、本馬が2着アークティシーラフに12馬身差、3着ゲルシリウスにはさらに3馬身差をつけて圧勝。これで英セントレジャーの大本命となった。
そして無事に迎えた英セントレジャー(T14F132Y)では、単勝オッズ1.44倍の1番人気に支持された。そして後方からの追い込みを決めて、ヨークシャーオークス・リブルスデールS勝ち馬ノンナイサーを8馬身差の2着に、英2000ギニーと英ダービーでいずれも3着だったナガミをさらに3/4馬身差の3着に退けて圧勝し、英国クラシック競走制覇を果たした。3歳時の成績は5戦4勝で、英最優秀3歳牡馬に選ばれている。
競走生活(4歳時)
4歳時はジョッキークラブC(T12F)から始動して、前年の愛セントレジャー勝ち馬で愛ダービー3着のロイヤルハイウェイ、前年のジャンプラ賞勝ち馬ヴァカームとの対戦となった。本馬は単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持されたが、単勝オッズ4.5倍の2番人気だったヴァカームに鼻差遅れて2着に敗れた。しかし次走のヴィクターワイルドS(T12F)では20馬身差で圧勝。さらに単勝オッズ1.36倍の1番人気に支持されたウィンストンチャーチルS(T16F)では、ゴールドヴァーズ・ドンカスターC・ジョッキークラブCを勝っていた3年前の英セントレジャー3着馬フレンチベージュを2馬身差の2着に退けて勝利と、徐々に距離を伸ばしながら成績を伸ばしていった。
コロネーションCは体調不良のため回避し、代わりにアスコット金杯(T20F)に参戦。しかし主戦のハリー・カー騎手は、腎臓結石の手術後であり、人馬共に体調が万全とは言えない状態だった。レースでは本馬に加えて、ロワイヤルオーク賞・ジャンプラ賞などを勝ちカドラン賞で2着していた仏国の名長距離馬ワラビー、フレンチベージュの3頭がゴール前で大接戦を展開し、3頭がほぼ同時にゴールインした。写真判定の結果、ワラビーが勝利を収め、本馬は短頭差の2着に敗れてしまった。
その後はキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(T12F)に参戦。このレースではワラビーに加えて、前年にアスコット金杯・グッドウッドC・エボアHを勝っていた牝馬グラッドネス、ジャックルマロワ賞・ユジェーヌアダム賞の勝ち馬で一昨年の凱旋門賞3着の実績もあったバルボ、独ダービーと独2000ギニーを勝っていたオルシニ、イスパーン賞・ガネー賞を勝っていたチーフ、ロイヤルロッジS・チェシャーオークス・リブルスデールSの勝ち馬で、英オークスでプティトエトワールの2着という実績もあった後の英セントレジャー馬カンテロなどが参戦していた。しかし単勝オッズ3倍の1番人気に支持された本馬はここで本領を発揮し、最後方から鮮やかな差し切り勝ちを決め、2着グラッドネスに2馬身差をつけて2分31秒39のタイムで優勝し、2つ目の大競走制覇を飾った。鞍上のカー騎手はレース後に手術の傷が悪化して病院に担ぎ込まれ入院する事になったという。これが本馬にとって現役最後のレースとなった。4歳時の成績は5戦3勝で、英最優秀古馬牡馬に選ばれている。
血統
Alycidon | Donatello | Blenheim | Blandford | Swynford |
Blanche | ||||
Malva | Charles O'Malley | |||
Wild Arum | ||||
Delleana | Clarissimus | Radium | ||
Quintessence | ||||
Duccia di Buoninsegna | Bridge of Earn | |||
Dutch Mary | ||||
Aurora | Hyperion | Gainsborough | Bayardo | |
Rosedrop | ||||
Selene | Chaucer | |||
Serenissima | ||||
Rose Red | Swynford | John o'Gaunt | ||
Canterbury Pilgrim | ||||
Marchetta | Marco | |||
Hettie Sorrel | ||||
Chenille | King Salmon | Salmon-Trout | The Tetrarch | Roi Herode |
Vahren | ||||
Salamandra | St. Frusquin | |||
Electra | ||||
Malva | Charles O'Malley | Desmond | ||
Goody Two-Shoes | ||||
Wild Arum | Robert le Diable | |||
Marliacea | ||||
Sweet Aloe | Cameronian | Pharos | Phalaris | |
Scapa Flow | ||||
Una Cameron | Gainsborough | |||
Cherimoya | ||||
Aloe | Son-in-Law | Dark Ronald | ||
Mother in Law | ||||
Alope | Gallinule | |||
Altoviscar |
父アリシドンは当馬の項を参照。
母シェニールは不出走馬。本馬以外に目立つ競走成績を残した産駒はいないが、本馬の半姉ライトニング(父ハイペリオン)の子にはパーシア【英ダービー・ホワイトローズS・リングフィールドダービートライアルS・ディーS・ジョッキークラブC】、玄孫にはノーザンスパー【BCターフ(米GⅠ)・オークツリー招待H(米GⅠ)】、サルサビル【英1000ギニー(英GⅠ)・英オークス(仏GⅠ)・愛ダービー(愛GⅠ)・マルセルブサック賞(仏GⅠ)・ヴェルメイユ賞(仏GⅠ)】、マルジュ【セントジェームズパレスS(英GⅠ)】などがいる。また、本馬の半妹パラディシア(父オリオール)は日本に繁殖牝馬として輸入され、持ち込み馬メジロサンマン【目黒記念秋】を産んだ。メジロサンマンはメジロイーグルの父でメジロパーマーの祖父である。→牝系:F2号族②
母父キングサーモンは英ダービー馬ブレニムの半弟で、エクリプスS・コロネーションC・ジュライS・ニューマーケットSなどを勝ち、英ダービーで2着した名馬。しかし種牡馬としては振るわずにブラジルに輸出されている。南米では成功種牡馬となっている。キングサーモンの父サーモントロートはザテトラーク産駒で、現役成績16戦5勝。英セントレジャー・プリンセスオブウェールズS・デューハーストSを制している。父ザテトラークからスピードを、母父セントフラスキンからスタミナを受け継いだようで、距離万能の名馬だった。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は英国で種牡馬入りした。しかしその長距離血統が時代に合わなくなってきたのか、英愛種牡馬ランキングでは6位が最高と今ひとつの結果に終わった。1973年に18歳で他界した。日本に種牡馬として輸入された息子のリマンドが出したアグネスレディーから流れる血が現代日本競馬に影響力を有している。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1961 |
Arnica |
フィユドレール賞 |
1961 |
Atilla |
伊ジョッキークラブ大賞・バーデン大賞 |
1961 |
Oncidium |
コロネーションC・ジョッキークラブC・ロイヤルS・リングフィールドダービートライアルS |
1962 |
Alcalde |
ジョッキークラブS |
1962 |
Nearside |
ロイヤルS |
1963 |
Alciglide |
グラディアトゥール賞 |
1963 |
Predicament |
プリンセスロイヤルS |
1964 |
Bamboozle |
プリンセスロイヤルS |
1965 |
Alignment |
エボアH |
1965 |
Remand |
ロイヤルロッジS・チェスターヴァーズ・ウェストベリーS・カンバーランドロッジS |
1967 |
Approval |
オブザーヴァー金杯・ダンテS |
1972 |
No Alimony |
クレイヴンS(英GⅢ) |
1972 |
Sea Anchor |
キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)・ヘンリーⅡ世S(英GⅢ)・ドンカスターC(英GⅢ) |
1973 |
Grey Baron |
グッドウッドC(英GⅡ)・ヘンリーⅡ世S(英GⅢ)・ジョッキークラブC(英GⅢ) |
1973 |
Waltz |
ウニオンレネン(独GⅡ) |