ルーラーオブザワールド

和名:ルーラーオブザワールド

英名:Ruler of the World

2010年生

栗毛

父:ガリレオ

母:ラヴミートゥルー

母父:キングマンボ

デビュー56日目で英ダービーを勝った時点では前途洋々の未来が待っているかに思えたが、その後は苦戦が続いた良血馬

競走成績:3・4歳時に愛英仏首で走り通算成績11戦4勝2着1回3着1回

誕生からデビュー前まで

本馬の半兄デュークオブマーマレードの生産者でもあるクールモアグループの関連団体サザンブラッドストックにより生産された愛国産馬で、クールモアの所有馬となり、クールモアの専属調教師である愛国エイダン・オブライエン師に預けられた。

競走生活(3歳前半)

デビューは遅く、3歳4月にカラー競馬場で行われた芝10ハロンの未勝利戦だった。オブライエン師の息子ジョセフ・オブライエン騎手が騎乗する本馬は、単勝オッズ3倍で11頭立ての2番人気だった。スタートが切られると単勝オッズ34倍の10番人気馬シアーディライトが逃げて、本馬は3番手を先行。単勝オッズ2倍の1番人気に支持されていたハドソンズベイは掛かり気味に先行して徐々に下がっていった。残り3ハロン地点で仕掛けた本馬はすぐに2番手に上がると、先に先頭に立っていた単勝オッズ26倍の7番人気馬マナラパンを追撃。残り50ヤード地点でかわして3/4馬身差で勝利を収めた。

次走は翌5月のチェスターヴァーズ(英GⅢ・T12F66Y)となった。対戦相手は僅か3頭で、ライアン・ムーア騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.91倍の1番人気、サセックスSの勝ち馬プロクラメーションの甥に当たるハヴァナビートが単勝オッズ3.75倍の2番人気、チェヴァリーパークS・コロネーションSの勝ち馬インディアンインクの半弟に当たるフィールライクダンシングが単勝オッズ5倍の3番人気となった。スタートが切られると単勝オッズ12倍の最低人気馬ミスターインペーシェンスが逃げを打ち、本馬はそれを追って先行した。人気になっていた他の2頭は伸びてこず、残り1ハロン地点でミスターインペーシェンスをかわした本馬が一気に差を広げ、最後は2着ミスターインペーシェンスに6馬身差をつけて勝利した。

次走は英ダービー(英GⅠ・T12F10Y)となった。対戦相手は、英2000ギニー・愛ナショナルS・デューハーストS・コヴェントリーSなど7戦全勝の前年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬ドーンアプローチ、ベレスフォードS・バリサックスS・デリンズタウンスタッドダービートライアルSなど5連勝中の同厩馬バトルオブマレンゴ、グレフュール賞・フランソワマテ賞など3戦無敗のオコヴァンゴ、1戦1勝の身で臨んだ英2000ギニーでは6着だった同厩馬マーズ、前走の独国のGⅢ競走ドクトルブッシュ記念を8馬身差で圧勝してきたショパン、前走ダンテSを勝ってきたリバタリアン、サンクルー大賞の勝ち馬ガマットの甥に当たるサンダウンクラシックトライアルS3着馬ガリレオロック、英1000ギニー馬スペシオーサの甥に当たるオカール賞3着の同厩馬フェスティヴチアー、エプソムダービートライアルSを勝ってきたミルサール、愛1000ギニー・ナッソーS・サンチャリオットSの勝ち馬ハーフウェイトゥヘヴンの息子である愛フューチュリティS2着の同厩馬フライングザフラッグ、16戦未勝利の身で果敢に挑戦してきたオーシャンアプローズの計11頭だった。クールモアの宿敵ゴドルフィンの所属馬ドーンアプローチが単勝オッズ2.25倍の1番人気、オブライエン騎手が騎乗するバトルオブマレンゴが単勝オッズ6.5倍の2番人気、ムーア騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ8倍の3番人気、オコヴァンゴが単勝オッズ9倍の4番人気、マーズとショパンが並んで単勝オッズ13倍の5番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ67倍の11番人気馬フライングザフラッグが先頭に立ち、バトルオブマレンゴなどがそれを追って先行。スタートで少し後手を踏んだ上に、壮絶なほどに掛かって首を振り回していたドーンアプローチは鞍上のケヴィン・マニング騎手が必死で馬群の中団で落ち着かせようとして、本馬はさらにその直後でレースを進めた。しばらくするとマニング騎手が制止できなくなったドーンアプローチが暴走するように加速して、レース中盤で先頭に立った。しかし本馬鞍上のムーア騎手はそれを追いかけるような真似はせず、タッテナムコーナーを回るところまで仕掛けを我慢した。直線に入るとドーンアプローチは瞬く間に馬群に飲み込まれて消えていき、代わりにバトルオブマレンゴが先頭に立ち、さらにそれを単勝オッズ26倍の8番人気馬ガリレオロックが追いかけていた。そこへ7番手で直線に入ってきた本馬が外側から追い上げてきた。内側によれながらも残り1ハロン地点で先頭に立つと、その後もしっかりと脚を伸ばし、直線入り口10番手からの追い込みに賭けて2着に入った単勝オッズ15倍の7番人気馬リバタリアンに1馬身半差をつけて優勝した。3歳4月7日のデビューから僅か56日目の英ダービー制覇だった。

2歳戦を走っていない馬が英ダービーを勝ったのは1993年のコマンダーインチーフ以来20年ぶりで、チェスターヴァーズの勝ち馬が英ダービーも勝ったのは1981年のシャーガー以来32年ぶりだった。リバタリアンから短頭差の3着にガリレオロック、さらに短頭差の4着にバトルオブマレンゴが入り、ドーンアプローチは本馬から33馬身差の12着最下位と惨敗した。レース後の本馬陣営の喜ぶ顔と、ドーンアプローチ陣営の苦虫を噛み潰したような表情があまりにも対照的だった。ドーンアプローチの敗因は結局距離だったようで、次走のセントジェームズパレスSではしっかりと勝利を収めている。

競走生活(3歳後半)

一方の本馬は、オブライエン師が7連勝中だった愛ダービー(愛GⅠ・T12F)へと向かった。対戦相手は、リバタリアン、ガリレオロック、前走10着のフェスティヴチアー、前走シルヴァーSを快勝してきたオータムSの勝ち馬でダンテS2着・愛2000ギニー3着のトレーディングレザー、サンダウンクラシックトライアルSの勝ち馬でバリサックスS2着のシュガーボーイ、ガリニュールS2着・デリンズタウンスタッドダービートライアルS3着のリトルホワイトクラウドなど計8頭だった。オブライエン騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、リバタリアンが単勝オッズ4.5倍の2番人気、トレーディングレザーが単勝オッズ7倍の3番人気、ガリレオロックとシュガーボーイが並んで単勝オッズ10倍の4番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ101倍の最低人気馬ラルストンロードが先頭に立って後続を引き離し、トレーディングレザーが3番手、リバタリアンが中団、本馬はさらにその後方からレースを進めた。そして直線に入る前の残り4ハロン地点からのロングスパートを仕掛けた。しかしどうしたわけかこのレースで本馬は全く伸びず、直線半ばでは前方の先行馬勢と脚色が同じになってしまった。レースはトレーディングレザーが勝利を収め、本馬は10馬身差をつけられた5着に敗退。トレーディングレザーはオブライエン師の管理馬ではなかったため、彼の同競走連覇記録は7で止まった。トレーディングレザーはこの段階ではゴドルフィンの所属馬では無かった(後にトレードされている)が、鞍上は英ダービーでドーンアプローチに乗っていたマニング騎手であり、彼にとっては英ダービーの借りを返した形となった。

オブライエン師は、3か月足らずの間に4戦という強行日程が影響したかもしれませんという見解を示した。そのために本馬にはしばらく休養が与えられた。

その後は凱旋門賞を目指すことになり、まずは前哨戦のニエル賞(仏GⅡ・T2400m)に出走した。対戦相手は、パリ大賞・リス賞の勝ち馬フリントシャー、ギョームドルナノ賞の勝ち馬バンクーバーライト、ユジェーヌアダム賞・フォルス賞の勝ち馬トリプルスレート、英ダービー5着後に出走したパリ大賞で3着だったオコヴァンゴ、そして東京優駿・京都新聞杯・毎日杯と3連勝して日本から遠征してきたキズナなど9頭だった。フリントシャーが単勝オッズ2.625倍の1番人気、バンクーバーライトが単勝オッズ4.5倍の2番人気、トリプルスレートが単勝オッズ5.5倍の3番人気、ムーア騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ6.5倍の4番人気、キズナが単勝オッズ7倍の5番人気(英国ブックメーカーのオッズ。地元仏国では少し違う)となった。

スタートが切られると単勝オッズ151倍の最低人気馬プリエンプトが先頭に立って後続を引き離し、本馬は馬群の中団内側、フリントシャーはその外側で、キズナはさらに後方からレースを進めた。プリエンプトと後続馬との差が縮まった以外は殆ど態勢に変化が無い状況で直線に入ってきたが、本馬は馬群の中に閉じ込められており、何度か進路が塞がる場面が見られた。それでも左に右に進路変更して脚を伸ばしてきた。しかし本馬が進路を失っている間に、外側からキズナが武豊騎手の檄に応えて豪快に脚を伸ばし、残り200m地点で先に先頭に立っていた単勝オッズ11倍の6番人気馬オコヴァンゴをかわしてゴール直前で先頭に立った。そこへようやく完全に馬群を抜け出してきた本馬が強襲したが僅かに及ばず、勝ったキズナから短頭差の2着に敗れた。

次走の凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)では、キズナに加えて、皐月賞・東京優駿・菊花賞・有馬記念・宝塚記念・スプリングS・神戸新聞杯・産経大阪杯・フォワ賞2回の勝ち馬で前年の凱旋門賞2着のオルフェーヴルも参戦してきて、日本調教馬の2トップで同競走制覇が期待された。他の対戦相手は、前走で本馬から3/4馬身差の3着だったオコヴァンゴ、同4着だったフリントシャー、仏オークス・ヴェルメイユ賞など4戦全勝の牝馬トレヴ、仏ダービー・メシドール賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬で仏2000ギニー・ジャックルマロワ賞3着のアンテロ、英セントレジャー・ガリニュールS・クイーンズヴァーズなど5連勝中のリーディングライト、タタソールズ金杯・プリンスオブウェールズS・エクリプスS・ジョッキークラブS・ゴードンリチャーズSの勝ち馬で愛チャンピオンS2着・英国際S3着のアルカジーム、パリ大賞・サンクルー大賞・ベルリン大賞・オイロパ賞の勝ち馬で香港ヴァーズ・ベルリン大賞・バーデン大賞3着のメオンドル、エドヴィル賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞2着のピリカ、カタールのGⅠ競走HHエミールズトロフィー・首長殿下トロフィーの勝ち馬でドバイシーマクラシック3着のベリーナイスネーム、亜国のGⅠ競走カルロスペレグリーニ大賞の勝ち馬でロワイヤルオーク賞2着のゴーイングサムウェア、加国際S2回・ロイヤルロッジS・ケルゴルレイ賞の勝ち馬で加国際S2着・バーデン大賞・コロネーションC3着のジョシュアツリーなどだった。オルフェーヴルが単勝オッズ3倍の1番人気、トレヴが単勝オッズ5.5倍の2番人気、ムーア騎手が騎乗する本馬とキズナが並んで単勝オッズ8倍の3番人気、アンテロが単勝オッズ10倍の5番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ101倍の13番人気馬ジョシュアツリーが先頭に立ち、本馬、オルフェーヴル、トレヴは馬群の中団、キズナは馬群の最後方辺りにつけた。フォルスストレートでオルフェーヴルやトレヴが加速していったが、本馬は反応が悪くて置いていかれ、直線入り口では馬群の後方まで下がってしまった。本馬の前には他馬の壁が出来ており、なかなかスパートをかける事が出来なかった。直線半ばで外側に進路が開いたためにようやくここから末脚を伸ばしたが、凱旋門賞はこんな内容で好走できるようなレースでは無かった。結果はトレヴがオルフェーヴルを5馬身差の2着に、キズナを4着に破って優勝し、本馬はトレヴから11馬身半差の7着に敗れた。

その後は英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)に向かった。対戦相手は、英チャンピオンS・ドバイシーマクラシック・ガネー賞・コンセイユドパリ賞・ドラール賞3回・ドーヴィル大賞・プランスドランジュ賞・ラクープ・ヴィシー大賞・ゴントービロン賞・ラクープドメゾンラフィットを勝ちイスパーン賞・サンクルー大賞・英チャンピオンSで2着していた一昨年のカルティエ賞最優秀古馬シリュスデゼーグル、素質はありながらなかなかそれに見合うだけのタイトルを手に出来なかったが前走ロッキンジSでGⅠ競走初制覇を果たしていたエクリプスS・サセックスS・英国際S・ムーランドロンシャン賞2着のファー、クリテリウムドサンクルー・コンデ賞の勝ち馬で仏ダービー2着のモランディ、キングエドワードⅦ世Sの勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS3着のヒルスター、ヨークS・ブリガディアジェラードSの勝ち馬でプリンスオブウェールズS2着・エクリプスS3着のムカドラム、ニエル賞8着から直行してきたトリプルスレート、ローマ賞・マクトゥームチャレンジR3・マクトゥームチャレンジR2・ローズオブランカスターSの勝ち馬ハンターズライト、デューハーストS・ダイアモンドSの勝ち馬パリッシュホール、リングフィールドダービートライアルSの勝ち馬で前年の英ダービー2着のメインシークエンスの計9頭だった。シリュスデゼーグルが単勝オッズ2.5倍の1番人気、ファーが単勝オッズ3.75倍の2番人気、ムーア騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ7.5倍の3番人気、モランディが単勝オッズ11倍の4番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ26倍の8番人気馬ハンターズライトが先頭に立ち、ファーが先行、シリュスデゼーグは馬群の中団、本馬は馬群の後方外側を進んだ。そして7番手で直線に入ると、残り2ハロン地点から猛然と追い上げてきた。そして残り1ハロン地点で先頭に立っていたファー、同じく残り2ハロン地点で仕掛けてファーを追いかけていたシリュスデゼーグルとの三つ巴の戦いとなった。しかしファーが押し切って勝ち、シリュスデゼーグルが首差の2着で、本馬はさらに半馬身差の3着だった。それでも4着ハンターズライトには6馬身差をつけていたから、能力の一端を見せることは出来た。

3歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は7戦3勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳時は、所有権の半分がカタールの王族シェイク・ジョアン殿下の馬主団体アルシャカブレーシング社に購入された。

そしてまずはドバイワールドC(首GⅠ・AW2000m)に出走した。対戦相手は、クイーンエリザベスⅡ世C・シンガポール航空国際C・香港金杯の勝ち馬ミリタリーアタック、マクトゥームチャレンジR3・マクトゥームチャレンジR2・コンセイユドパリ賞・プランスドランジュ賞・セプテンバーSの勝ち馬プリンスビショップ、香港C・香港ダービーの勝ち馬アキードモフィード、ゴドルフィンマイル・バージナハール2回の勝ち馬アフリカンストーリー、前走マクトゥームチャレンジR3で2着してきたサンショーウェズ、前年の英チャンピオンSで5着だったムカドラム、同6着だったヒルスター、香港ヴァーズ・ヨークシャーC・カラーCの勝ち馬で前年のドバイワールドC・メルボルンC2回・コロネーションC2着のレッドカドー、マッキノンS・ソヴリンS・ダイオメドSの勝ち馬でクイーンアンS・アーリントンミリオン3着のサイドグランス、ジェベルハッタで2着してきたギョームドルナノ賞の勝ち馬バンクーバーライト、サンタアニタH・スティーヴンフォスターH・ジョッキークラブ金杯の勝ち馬でホイットニー招待H2着・スティーヴンフォスターH3着のロンザグリーク、日本から参戦してきたジャパンCダート・武蔵野Sの勝ち馬で東京優駿・フェブラリーS3着のベルシャザール、かしわ記念・帝王賞・東京大賞典・川崎記念・レパードS・佐賀記念・名古屋大賞典・アンタレスSの勝ち馬でマイルCS南部杯・フェブラリーS2着・ジャパンCダート2回3着のホッコータルマエなど15頭だった。ミリタリーアタックが単勝オッズ4倍の1番人気、オブライエン騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ7倍の2番人気、プリンスビショップとアキードモフィードが並んで単勝オッズ9倍の3番人気、アフリカンストーリーとサンショーウェズが並んで単勝オッズ13倍の5番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ15倍の7番人気馬ムカドラムが先頭に立ち、本馬はホッコータルマエやアフリカンストーリー達と一緒にそれを追って先行した。しかし直線に入る前から手応えが悪くなり、直線に入ると完全に失速。勝ったアフリカンストーリーから16馬身半差をつけられた13着と惨敗した。

その後はコロネーションC出走が予定されていたが、筋肉痛のため回避となった。

その後もしばらくレースに出ず、秋は再び凱旋門賞を目指して、前哨戦のフォワ賞(仏GⅡ・T2400m)に出走した。対戦相手は、前年の凱旋門賞8着後にコロネーションCで2着していたフリントシャー、シャンティ大賞・エドヴィル賞の勝ち馬でサンクルー大賞でも1位入線するも薬物検査に引っ掛かって失格となっていたスピリットジム、レーシングポストトロフィーの勝ち馬でクイーンエリザベスⅡ世S3着のキングスバーンズなど5頭だった。フリントシャーが単勝オッズ2.5倍の1番人気、スピリットジムが単勝オッズ3.75倍の2番人気、ランフランコ・デットーリ騎手と初コンビを組んだ本馬が単勝オッズ4倍の3番人気、キングスバーンズが単勝オッズ11倍の4番人気となった。

スタートが切られると、デットーリ騎手は後方待機策が中心だった本馬を先頭に立たせ、そのまま逃げを打たせた。逃げるという事は当然他馬の目標にされるという事であり、スピリットジムは本馬を見るように経済コースを先行してきたし、フリントシャーも好位で本馬の様子を伺っていた。しかし本馬は自分のペースで逃げを刻むと、直線に入っても粘り続けた。本馬を追ってきたスピリットジムは道中で落鉄した影響があったようであまり伸びず、差してきたフリントシャーも本馬を捕らえるほどの勢いはなかった。2着フリントシャーに1馬身半差、3着スピリットジムにもさらに1馬身半差をつけた本馬が勝ち、英ダービー以来1年3か月ぶりの勝ち星を挙げた。

そして凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に向かった。対戦相手は、フリントシャー、スピリットジム、英オークス・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSの勝ち馬でヨークシャーオークス2着のタグルーダ、クリテリウム国際・ニエル賞・シェーヌ賞・フォンテーヌブロー賞など6連勝中のエクト、仏1000ギニー・仏オークス・ノネット賞など6戦無敗のアヴニールセルタン、前年のカルティエ賞年度代表馬に選ばれるもこの年は3戦してガネー賞2着・プリンスオブウェールズS3着など未勝利だった前年優勝馬トレヴ、ヨークシャーオークス・デビュータントSの勝ち馬でモイグレアスタッドS・愛オークス2着のタペストリー、マルレ賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞3着のドルニヤ、バーデン大賞・ウニオンレネン・ゲルリング賞の勝ち馬アイヴァンホウ、レーシングポストトロフィー・英セントレジャー・オータムSの勝ち馬で英ダービー2着のキングストンヒル、クリテリウムドサンクルー・グレフュール賞の勝ち馬でパリ大賞2着・仏ダービー3着のプリンスジブラルタル、前年の愛オークスの勝ち馬で仏オークス2着のチキータ、オカール賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬フリーポートラックス、前年の凱旋門賞6着後にウィンターヒルSを勝っていたアルカジーム、コリーダ賞の勝ち馬でサンクルー大賞2着のシルジャンズサガ、そして日本から参戦してきた、天皇賞秋・ドバイデューティーフリー・安田記念・中山記念・アーリントンCの勝ち馬ジャスタウェイ、桜花賞・札幌記念・新潟2歳S・チューリップ賞の勝ち馬で阪神ジュベナイルフィリーズ・優駿牝馬2着のハープスター、皐月賞・菊花賞・有馬記念・宝塚記念2回・神戸新聞杯・阪神大賞典2回の勝ち馬ゴールドシップなど計19頭だった。タグルーダが単勝オッズ5.5倍の1番人気、エクトが単勝オッズ7倍の2番人気、ジャスタウェイが単勝オッズ8倍の3番人気と続く一方で、引き続きデットーリ騎手とコンビを組んだ本馬は単勝オッズ13倍の7番人気だった。

スタートが切られると、アヴニールセルタン陣営が用意したペースメーカー役のモントヴィロンが先頭に立った。本馬はスタートで後手を踏んでしまったが、それでも加速して進出し、先行態勢をとった。そのまま直線に入ってくると、それなりに粘ったが、後続馬に次々と差されて順位は少しずつ落ちていった。最後は単勝オッズ12倍の6番人気止まりだったトレヴが勝って36年ぶり史上6頭目の凱旋門賞2連覇を果たし、本馬は5馬身3/4差の9着に敗れた。

その後は前年と同じく英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)に向かった。対戦相手は、前年の同競走2着後にガネー賞・イスパーン賞・コロネーションCを勝ちドバイシーマクラシック2着・香港C3着していたシリュスデゼーグル、前走エンタープライズSを7馬身差で勝ってきたフリーイーグル、タタソールズ金杯・サンクルー大賞・ゴードンS・ゴードンリチャーズS・ハクスレイSの勝ち馬で前走ダルマイヤー大賞2着のノーブルミッション、ユジェーヌアダム賞・サンダウンクラシックトライアルSの勝ち馬ウェスタンヒム、前走の凱旋門賞で10着だったアルカジーム、ボスフォラスS・グロリアスS・カンバーランドロッジSの勝ち馬ペザーズムーン、ノーザンダンサーターフS・ヨークSの勝ち馬シェイクザイアッドロードなど8頭だった。老いてなお盛んな8歳馬シリュスデゼーグルが単勝オッズ2.75倍の1番人気、フリーイーグルが単勝オッズ3.5倍の2番人気、オブライエン騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ7倍の3番人気、一昨年の同競走の勝ち馬フランケルの全弟ノーブルミッションが単勝オッズ8倍の4番人気、ウェスタンヒムが単勝オッズ15倍の5番人気となった。

スタートが切られるとノーブルミッションが先頭に立ち、本馬は単勝オッズ17倍の6番人気馬アルカジームと一緒にそれを追って先行した。そして3番手で直線に入ってきたが、他馬と比べると明らかに伸びが悪かった。そして残り2ハロン地点から大失速。逃げ切って勝ったノーブルミッションから12馬身半差をつけられた9着最下位と惨敗し、これを最後に4歳時4戦1勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Galileo Sadler's Wells Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason
Lalun
Special Forli
Thong
Urban Sea Miswaki Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Hopespringseternal Buckpasser
Rose Bower
Allegretta Lombard Agio
Promised Lady
Anatevka Espresso
Almyra
Love Me True Kingmambo Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer
Raise You
Gold Digger Nashua
Sequence
Miesque Nureyev Northern Dancer
Special
Pasadoble Prove Out
Santa Quilla
Lassie's Lady Alydar Raise a Native Native Dancer
Raise You
Sweet Tooth On-and-On
Plum Cake
Lassie Dear Buckpasser Tom Fool
Busanda
Gay Missile Sir Gaylord
Missy Baba

ガリレオは当馬の項を参照。

母ラヴミートゥルーは現役成績15戦1勝。繁殖牝馬としては優れており、本馬の半兄である2008年のカルティエ賞最優秀古馬デュークオブマーマレード(父デインヒル)【ガネー賞(仏GⅠ)・タタソールズ金杯(愛GⅠ)・プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS(英GⅠ)・英国際S(英GⅠ)】も産んでいる。ラヴミートゥルーの半兄にはバイトザバレット(父スペクタキュラービッド)【サンフォードS(米GⅡ)】がいる他、ラヴミートゥルーの半姉ランフォーラッシー(父ファピアノ)の子にはマディソンズチャーム【カムリーS(米GⅢ)】がいる。

ラヴミートゥルーの母ラッシーズレディの半弟にウルフハウンド【フォレ賞(仏GⅠ)・スプリントC(英GⅠ)】がいる他、ラッシーズレディの半姉ウィークエンドサプライズの子にサマースコール【プリークネスS(米GⅠ)・ホープフルS(米GⅠ)】とエーピーインディ【ベルモントS(米GⅠ)・BCクラシック(米GⅠ)・ハリウッドフューチュリティ(米GⅠ)・サンタアニタダービー(米GⅠ)】が、ラッシーズレディの半妹チャーミングラッシーの子にレモンドロップキッド【ベルモントS(米GⅠ)・ベルモントフューチュリティS(米GⅠ)・トラヴァーズS(米GⅠ)・ホイットニーH(米GⅠ)・ウッドワードS(米GⅠ)】がいるなど、近親には活躍馬が多数いる。→牝系:F3号族④

母父キングマンボは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、愛国クールモアスタッドで種牡馬入りした。同牧場には父ガリレオを筆頭に競合相手が多いためか、種付け料は1万ユーロと他の有力種牡馬と比べて安価に設定されている。

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