スタセリタ

和名:スタセリタ

英名:Stacelita

2006年生

鹿毛

父:モンズーン

母:ソワニエ

母父:ダッシングブレイド

圧倒的な強さで無敗の仏オークス馬となり、古馬になっても米国等で活躍してエクリプス賞最優秀芝牝馬に選ばれた本邦輸入繁殖牝馬

競走成績:2~5歳時に仏英香米で走り通算成績18戦10勝2着2回

誕生からデビュー前まで

ジャン・ピエール・デュボワ氏により生産された仏国産馬で、エキュリー・モナスティック氏の所有馬となり、仏国ジャン・クロード・ルゲ調教師に預けられた。

競走生活(2・3歳時)

2歳10月に仏国サロンドプロヴァンス競馬場で行われたエスポワール賞(T1800m)で、フランク・ブロンデル騎手を鞍上にデビューして、単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。レースでは先行して残り100m地点で先頭に立ち、2着アレストに2馬身差で勝利した。

2歳時はこの1戦のみで終え、次走は3歳2月に仏国トゥールーズ競馬場で行われたシャトードー賞(T2000m)となった。イオリッツ・メンディザバル騎手騎乗の本馬は単勝オッズ1.1倍の1番人気に支持されると、スタートからゴールまで先頭を走り抜け、2着ジルガラに2馬身差で勝利した。

翌月にはサンクルー競馬場でリステッド競走ロゼドメ賞(T2100m)に出走。主戦となるクリストフ・ルメール騎手騎乗の本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持された。今回もやはりスタートから先頭に立つと、2着ディヴァインコメディに4馬身差をつけて逃げ切った。

その後は5月のサンタラリ賞(仏GⅠ・T2000m)に向かった。本馬が単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持され、ペネロープ賞で2着してきたプルマニアが単勝オッズ2.75倍の2番人気、レゼルヴォワ賞の勝ち馬アーティクルレアが単勝オッズ9倍の3番人気となった。レースの格が上がっても本馬のレースぶりは今までと変わりはなく、スタートから先頭に立って快調に逃げ脚を伸ばした。そして残り400m地点からラストスパートをかけると後続馬の誰も付いてくる事はできず、2着アーティクルレアに6馬身差をつけて圧勝した。

このレース後に米国の投資家マーティン・S・シュワルツ氏により権利の半分を購入された本馬は、4戦無敗の成績で仏オークス(仏GⅠ・T2100m)に出走。対戦相手は、プレステージS・ネルグウィンS勝ち馬でフィリーズマイル2着・仏1000ギニー3着のファンタジア、グロット賞勝ち馬で仏1000ギニー2着のタマジルト、ペネロープ賞など3戦無敗で臨んできたセリメーヌ、クレオパトル賞2着馬ボードミーティング、ヴァントー賞を勝ってきたデノミネーション、前走5着のプルマニアなどだった。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気、ファンタジアが単勝オッズ5.5倍の2番人気、タマジルトが単勝オッズ7倍の3番人気となった。

スタートが切られるとボードミーティング陣営が送り込んできたペースメーカー役のオネガレイクが先頭に立ち、本馬は馬なりのまま2番手を追走した。直線に入ってオネガレイクが失速すると、残り400m地点で本馬が代わりに先頭に立った。そして残り300m地点から加速して後続を引き離し、2着タマジルトに4馬身差をつけて圧勝。前年のザルカヴァに続く無敗の仏オークス馬が誕生した。また、タマジルトもルゲ師の管理馬であり、ワンツーフィニッシュを演出。さらに1週間前の仏ダービーを勝ったルアーヴルもルゲ師の管理馬であり、1人の調教師が同一年に仏ダービー・仏オークスの両方を勝ったのは1956年のC・エリオット師(仏ダービーをフィリュースで、仏オークスをアポロニアで勝利)以来53年ぶりの快挙となった。

夏場は休養に充て、秋はヴェルメイユ賞(仏GⅠ・T2400m)から始動した。対戦相手は、プリティポリーS・ヨークシャーオークスを2連勝してきた前年のヴェルメイユ賞2着馬ダーレミ、ポモーヌ賞など3連勝してきたアルミュール、仏オークス5着後にプシシェ賞を勝ってきたボードミーティング、ミネルヴ賞を勝ってきたカラ、仏オークスで3着だったプルマニアなどだった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、ダーレミが単勝オッズ3.75倍の2番人気、アルミュールが単勝オッズ11倍の3番人気であり、本馬とダーレミの一騎打ちムードだった。

今回はルゲ師が本馬のためにボルベールというペースメーカーを出走させており、スタートが切られるとボルベールが先頭に立ち、本馬は僚馬を見るように先行した。そして直線に入ると残り300m地点で先頭に立ち、そのまま押し切ろうとした。しかし直線入り口5番手だったダーレミが猛然と追い上げてきて、ゴール直前で捕まった本馬は短首差の2位入線。しかしダーレミが直線で追い上げてきた際に右側に斜行して後方から来たソベラニア(5位入線)の進路を妨害したと判定され、ダーレミは5着に降着。本馬が繰り上がって勝利馬となり、本馬から1馬身半差の3位入線だったプルマニアが2着となった。しかしダーレミが右側に斜行したのは、本馬のペースメーカー役ボルベールが直線で本馬に進路を譲るために左側に斜行してダーレミの進路を塞いだのが直接の原因だったため、この裁定は非常に物議を醸し、表彰式では本馬陣営にブーイングが浴びせられるという極めて後味が悪い結果となった。

次走は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)となった。主な対戦相手は、英2000ギニー・英ダービー・エクリプスS・英国際S・愛チャンピオンSなど7連勝中のシーザスターズ、愛ダービー・クリテリウムドサンクルー・デリンズタウンスタッドダービートライアルSなどの勝ち馬で英ダービー・愛チャンピオンS2着のフェイムアンドグローリー、英セントレジャー・BCターフ・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSの勝ち馬コンデュイット、パリ大賞とニエル賞を連勝してきたカヴァルリーマン、仏ダービー・ガネー賞・プリンスオブウェールズSなどの勝ち馬ヴィジョンデタ、オイロパ賞・サンクルー大賞の勝ち馬で凱旋門賞2年連続2着のユームザイン、ダーレミだった。シーザスターズが単勝オッズ1.67倍の1番人気、フェイムアンドグローリーが単勝オッズ7倍の2番人気、コンデュイットが単勝オッズ9倍の3番人気で、前年のザルカヴァと同じく無敗で仏オークス・ヴェルメイユ賞を制しての参戦と言っても前走が繰り上がり勝利だった上に、ルメール騎手からクリストフ・スミヨン騎手に乗り代わっていた本馬は単勝オッズ21倍の7番人気に留まった。

スタートが切られるとフェイムアンドグローリー陣営のペースメーカー役2頭が先頭を引っ張り、本馬は10馬身以上離された3番手を追走した。そのまま3番手で直線に入ると、残り400m地点で先頭に立ち、そのまま押し切ろうとした。しかし残り200m地点で後方から来たシーザスターズにかわされると、その後は伸びを欠いてゴール前で次々に他馬勢に差された。結局上記に挙げた主な対戦相手7頭のうちヴィジョンデタを除く全てに先着されてしまい、勝ったシーザスターズから5馬身差の7着に敗退。デビューからの連勝も6で途切れた。

3歳時はこれが最後のレースとなり、この年の成績は6戦5勝となった。カルティエ賞最優秀3歳牝馬は、英オークス・愛オークスを勝ち、ヨークシャーオークス2着・英チャンピオンS3着の6戦3勝馬サリスカとの争いになったが、牡馬相手の凱旋門賞と英チャンピオンSの内容で差をつけられ、本馬はタイトルを逃してしまった。

競走生活(4歳時)

4歳時も現役を続け、まずは5月のイスパーン賞(仏GⅠ・T1850m)から始動した。対戦相手の筆頭格は、BCマイル2回・ロートシルト賞2回・ムーランドロンシャン賞・ファルマスS・ジャックルマロワ賞を勝っていたゴルディコヴァであり、他にもミュゲ賞を勝ってきたバイワード、前年のヴェルメイユ賞3着(4位入線からの繰り上がり)後に出走したオペラ賞で2着していたボードミーティング、前年の独ダービー・ラインラントポカル・ウニオンレネンを勝っていたヴィーナーヴァルツァーなどの姿もあった。前年のイスパーン賞では惨敗していたゴルディコヴァだが、やはり実績は群を抜いており単勝オッズ1.67倍の1番人気。バイワードが単勝オッズ4.5倍の2番人気、凱旋門賞からそのまま主戦を務めることになったスミヨン騎手騎乗の本馬が単勝オッズ5.5倍の3番人気となった。しかし本馬にとってこのイスパーン賞は、スタートで致命的な出遅れを犯して後方からの競馬となった時点で事実上終わった。直線に入って外側から追い込もうとしたが全く手応えはなく後退。バイワードとの接戦を制して勝ったゴルディコヴァから16馬身半差をつけられた4着に敗れた。

次走は翌月のラクープ(仏GⅢ・T2000m)となった。対戦相手のレベルは低く、本馬が単勝オッズ1.62倍の1番人気、3歳時にギョームドルナノ賞を勝ったが故障のため4歳時を完全に棒に振り復帰後も今ひとつだった5歳馬ラシアンクロスが単勝オッズ4.33倍の2番人気となった。前走とは正反対に今回の本馬のスタートは非常に良く、スムーズに先行することが出来た。そして直線に入ると残り300m地点で加速して勝負を決めてしまい、ゴール前は馬なりのまま、2着に追い込んできたエクスビュリ賞勝ち馬コートカニバルに1馬身半差をつけて楽勝した。

次走は初の仏国外におけるレースとなる7月のナッソーS(英GⅠ・T9F192Y)となった。前年のナッソーSとBCフィリー&メアターフを勝っていた英オークス2着馬ミッデイ、前走の仏オークスで2着してきたマルセルブサック賞勝ち馬ロザナラ、ウィンザーフォレストS・ダリアSの勝ち馬ストロベリーダイキリ、プリンセスエリザベスSなどの勝ち馬アンタラ、伊オークスを勝ってきたコントルダンス、ランカシャーオークスを2連覇してきたバルシバの6頭が対戦相手だった。2連覇を狙うミッデイが単勝オッズ2.875倍の1番人気、ロザナラが単勝オッズ5倍の2番人気、本馬とストロベリーダイキリが並んで単勝オッズ5.5倍の3番人気となった。スタートが切られるとバルシバが先頭に立ち、本馬とミッデイは揃って先行した。直線に入ると残り2ハロン地点でいったん本馬が先頭に立ったが、その直後にミッデイが外側から突き抜けていった。一時は2馬身ほどの差をつけられた本馬だが、諦めずにミッデイを追撃。すると残り1ハロン地点でミッデイが左側によれて失速したため、本馬が再び先頭を奪い返した。しかし体勢を立て直したミッデイにすぐに抜き返され、結局1馬身1/4差の2着に敗れた。

仏国に戻った本馬は8月のジャンロマネ賞(仏GⅠ・T2000m)に向かった。ナッソーSで本馬から1馬身差の3着だったアンタラ、前年のオペラ賞勝ち馬でガネー賞2着のシャラナヤ、前年の仏オークスで本馬の4着だったフロール賞勝ち馬セリメーヌ、コロネーションS2着馬レッガーヌ、イスパーン賞で8着最下位だったボードミーティングなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、アンタラが単勝オッズ4倍の2番人気、シャラナヤが単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。スタートが切られるとボードミーティングが先頭に立ち、本馬が2番手、アンタラが3番手を進んだ。ボードミーティングはかなり粘ったが、残り300m地点で本馬がそれをかわして先頭に立った。そこへアンタラが本馬に並びかけてきて、残り200m地点から激しい叩き合いになった。そして最後は本馬が頭差で競り勝ち、GⅠ競走4勝目を挙げた。

その後は凱旋門賞を回避して同日のオペラ賞(仏GⅠ・T2000m)に回った。アンタラ、クロエ賞・ノネット賞など5連勝中のリリーオブザヴァレー、ナッソーSで7着最下位だったロザナラ、ジャンロマネ賞で本馬から1馬身1/4差の3着に粘ったボードミーティング、一昨年のコロネーションS・ヨークシャーオークス・愛メイトロンS勝ち馬だが古馬になって5戦全敗のラッシュラッシーズなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気、アンタラが単勝オッズ5倍の2番人気、リリーオブザヴァレーが単勝オッズ8倍の3番人気となった。スタートが切られると本馬、アンタラ、リリーオブザヴァレー、ボードミーティングなどの有力馬が挙って先行し、先頭を争いながら直線へと入ってきた。直線に入ると残り400m地点で本馬が抜け出し、リリーオブザヴァレーが追撃してきた。他馬達は直線の早い段階で圏外に去り、逃げる本馬と追うリリーオブザヴァレーの一騎打ちとなった。残り200m地点で2頭が並び、非常に激しい叩き合いとなったが、リリーオブザヴァレーが競り勝ち、本馬は3/4馬身差の2着に敗れた。

暮れには香港に遠征し、香港C(香GⅠ・T2000m)に出走した。主な対戦相手は、この年の英オークス・愛オークス勝ち馬で、前走のエリザベス女王杯では衝撃的な勝ち方を披露して日本のファンの度肝を抜いたこの年のカルティエ賞最優秀3歳牝馬スノーフェアリー、香港ダービー・香港金杯などの勝ち馬コレクション、前年の凱旋門賞10着後に出た香港Cを勝っていたヴィジョンデタ、香港へ移籍していた独2000ギニー馬イリアン、ノアイユ賞勝ち馬で仏ダービー・パリ大賞2着のプラントゥール、この年の香港ダービー勝ち馬スーパーサテン、ジャンロマネ賞で本馬の5着に敗れた後にEPテイラーSを勝ってきたレッガーヌ、コンセイユドパリ賞・ドラール賞の勝ち馬シリュスデゼーグルなどだった。スノーフェアリーが単勝オッズ2.5倍の1番人気、コレクションが単勝オッズ5.2倍の2番人気、ヴィジョンデタが単勝オッズ6.1倍の3番人気、イリアンが単勝オッズ6.3倍の4番人気、プラントゥールが単勝オッズ12倍の5番人気と続き、久々にルメール騎手とコンビを組んだ本馬は単勝オッズ13倍の6番人気だった。レースでは本馬は無理に先頭を狙わずに4番手の好位を追走。そのままの体勢で直線に入ると残り400m地点で仕掛けた。しかし伸びが悪く、残り150m地点で後続馬に飲み込まれてしまい、勝ったスノーフェアリーから2馬身3/4差の8着に敗れた。4歳時の成績は6戦2勝だった。

競走生活(5歳時)

5歳時も現役を続け、前年に勝利した6月のラクープ(仏GⅢ・T2000m)から始動した。対戦相手のレベルが低かった前年と異なり、この年は前年の香港Cで本馬に短頭差先着する7着だったシリュスデゼーグルがガネー賞3着・イスパーン賞2着と上り調子で出走してきた。また、コリーダ賞で2着してきたミネルヴ賞・アレフランス賞勝ち馬アナウンスも参戦していた。シリュスデゼーグルが単勝オッズ2.1倍の1番人気、ルメール騎手騎乗の本馬とアナウンスが並んで単勝オッズ4倍の2番人気となった。これまでは先行する競馬ばかりだった本馬だが、ルメール騎手は今回本馬を抑えて、6頭立ての5番手を進ませた。そして直線に入って残り400m地点から仕掛けたが、直線の末脚勝負は本馬には合わなかったようで、期待ほどには伸びず、アナウンスを3/4馬身抑えて勝ったシリュスデゼーグルから3馬身1/4差の3着に敗れた。

勝ったシリュスデゼーグルはこの勝利をきっかけに本格化して、英チャンピオンSなどグループ競走をこの年5勝して、カルティエ賞最優秀古馬に選ばれることになる。

一方の本馬は新天地を求めて米国に向かった。まずは前走ラクープからわずか19日後のユナイテッドネーションズS(米GⅠ・T11F)に出走した。主な対戦相手は、前年の同競走勝ち馬チンチョン、サンルイオビスポS・サンルイレイH・サンマルコスSの勝ち馬ブルボンベイ、ガルフストリームパークターフH・モンマスSを勝ってきたティークスノースなどだった。本馬が単勝オッズ3.3倍の1番人気、チンチョンが単勝オッズ3.4倍の2番人気、ブルボンベイが単勝オッズ4.8倍の3番人気だった。ジョー・ブラヴォ騎手騎乗の本馬は前走と同じく控える作戦を採り、馬群の中団後方からレースを進めた。そして向こう正面からじわじわと位置取りを上げて三角では先行馬群に取り付いた。そして直線に入ってすぐに先頭に立ったのだが、ゴールまであと一息というところでティークスノースとチンチョンの2頭に差されて、ティークスノースの1馬身差3着に敗れた。

しかし牡馬混合戦でこの内容なら満足がいくものだったため、本馬はこのレース後に米国チャド・ブラウン厩舎に転厩して、そのまま米国を主戦場とすることになった。

そして8月のビヴァリーDS(米GⅠ・T9.5F)に向かった。主な対戦相手は、南アフリカのGⅠ競走J&BメトロポリタンHやバランシーンSの勝ち馬でドバイデューティーフリー2着のリヴァージェティズ、ロバートGディック記念Sを勝ってきたチーター、本馬が勝った仏オークスの7着馬で、モデスティHを勝ってきたジャストアゲームS2着馬ファンタジア、ウィルシャーH・ゲイムリーSを連勝してきたドバウィハイツなどだったが、実績的には本馬が頭1つ抜けており、単勝オッズ2.8倍の1番人気。リヴァージェティズが単勝オッズ4.9倍の2番人気で、チーターが単勝オッズ5.2倍の3番人気となった。新しく主戦となったラモン・ドミンゲス騎手が騎乗する本馬は、逃げるドバウィハイツを見るように4番手を先行した。そして四角で仕掛けて直線入り口でドバウィハイツに並びかけた。そして残り1ハロン地点で先頭に立ち、2着に粘ったドバウィハイツに1馬身1/4差をつけて快勝した。

その後は10月のフラワーボウル招待S(米GⅠ・T10F)に向かった。サンタラリ賞2着馬デラックス、グレンズフォールズSを勝ってきたエメラルドビーチ、ボールストンスパH・ボーゲイSの勝ち馬ダイナスルーなどが主な対戦相手だったが、実績的には本馬が群を抜いており、他の全出走馬より4ポンド重い123ポンドの斤量でも単勝オッズ1.5倍の1番人気。デラックスが単勝オッズ4.8倍の2番人気、エメラルドビーチが単勝オッズ7.7倍の3番人気だった。スタートが切られるとダイナスルーが先頭に立ち、デラックスが2番手につけたが、本馬は前走とは打って変わって6頭立ての最後方から競馬を進めていた。しかし三角手前で仕掛けると外側から一気に順位を上げて、直線に入ったときには既に先頭。ここから本馬を差し返せるような馬はこのレースにはおらず、2着に突っ込んできた単勝オッズ43.5倍の最低人気馬ディストーテッドレガシーに2馬身差をつけて完勝した。

その後はチャーチルダウンズ競馬場に向かい、BCフィリー&メアターフ(米GⅠ・T11F)に参戦した。オペラ賞など4戦全勝のナーレイン、モイグレアスタッドS・マルセルブサック賞・愛1000ギニー・プリティポリーSとGⅠ競走4勝を挙げていた前年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬ミスティフォーミー、スピンスターS・ミセスリヴィアSなどの勝ち馬でダイアナS2着のアルナ、ビヴァリーDS2着後にイエローリボンSを勝ってきたドバウィハイツ、前年のアメリカンオークス・クイーンエリザベスⅡ世CCS勝ち馬ハーモニウス、前年のBCフィリー&メアターフ優勝馬シェアードアカウント、レイクジョージS勝ち馬パーフェクトシャール、アメリカンオークス・プロヴィデンシアSの勝ち馬キャンビーナ、ディストーテッドレガシー、前走3着のダイナスルーの合計10頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.9倍の1番人気、ナーレインが単勝オッズ3.9倍の2番人気、ミスティフォーミーが単勝オッズ6.1倍の3番人気となった。

スタートが切られるとドバウィハイツが先頭に立ち、ダイナスルーが2番手、本馬は3番手を追走した。しかし道中で何かアクシデントがあったのか、鞍上のドミンゲス騎手がしきりと本馬の顔を気にする仕草を見せていた。どうやらレース中に何かの破片が目に当たって負傷していたようである。それでもそのまま3番手で直線には入ってきたが、今度は前方のドバウィハイツが壁になって抜け出せなくなった。しかし外側に持ち出しても殆ど伸びなかったところを見ると、目の負傷が原因で既に全力疾走できる状態ではなかったようである(ドミンゲス騎手は直線途中で本馬を追うのを止めていた)。そして単勝オッズ28.8倍の8番人気という低評価を覆して勝ったパーフェクトシャールから5馬身3/4差の10着に敗退。

これが現役最後のレースとなった。5歳時の成績は5戦2勝だったが、それでもこの年のエクリプス賞最優秀芝牝馬に選出された。

血統

Monsun Königsstuhl Dschingis Khan Tamerlane Persian Gulf
Eastern Empress
Donna Diana Neckar
Donatella
Königskrönung Tiepoletto Tornado
Scarlet Skies
krönung Olymp
Kaiserkrone
Mosella Surumu Literat Birkhahn
Lis
Surama Reliance
Suncourt
Monasia Authi Aureole
Virtuous
Monacensia Kaiseradler
Motette
Soignee Dashing Blade Elegant Air Shirley Heights Mill Reef
Hardiemma
Elegant Tern Sea-Bird
Prides Profile
Sharp Castan Sharpen Up エタン
Rocchetta
Sultry One Tropique
Sweet Heart
Suivez Fioravanti Northern Dancer Nearctic
Natalma
Pitasia Pitskelly
Asian Princess
Sea Symphony Faraway Son Ambiopoise
Locust Time
Southern Seas ジムフレンチ
Schönbrunn

モンズーンは当馬の項を参照。

母ソワニエは現役時代に独仏で走り5戦2勝。ソワニエの半兄にはシムーン(父モンズーン)【メルセデスベンツ大賞(独GⅡ)】が、ソワニエの半妹サスーン(父モンズーン)の子にはジルヴァーナー【ヴィンターファヴォリテン賞(独GⅢ)・バーデンビュルテンベルクトロフィー(独GⅢ)】がいる。ソワニエの母シュイヴェの従兄弟にはザグレブ【愛ダービー(愛GⅠ)】、シュイヴェの叔父にはステインレン【BCマイル(米GⅠ)・アーリントンミリオンS(米GⅠ)・バーナードバルークH(米GⅠ)】がおり、サガス【凱旋門賞(仏GⅠ)・ガネー賞(仏GⅠ)・イスパーン賞(仏GⅠ)】、スリップアンカー【英ダービー(英GⅠ)】、日本で活躍したビワハイジ、マンハッタンカフェ、ブエナビスタ、ジョワドヴィーヴルなども同じ牝系である。→牝系:F16号族①

母父ダッシングブレイドは現役成績11戦6勝、イタリア大賞(伊GⅠ)・デューハーストS(英GⅠ)・愛ナショナルS(愛GⅠ)・ユジェーヌアダム賞(仏GⅡ)を勝っている。引退後は独国で種牡馬入りしている。ダッシングブレイドの父エレガントエアーはシャーリーハイツ産駒で、タタソールズ金杯(愛GⅡ)・ホーリスヒルS(英GⅢ)・ゴードンリチャーズS(英GⅢ)勝ちなど15戦6勝。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、BCフィリー&メアターフの直後に社台グループによって購入されたが、目の負傷を治療するためにすぐには来日せず、まずは米国ケンタッキー州デルリッジファームで繁殖入りした。初年度はスマートストライクと交配されて2013年に牝駒を出産。同年はフランケルと交配されて受胎し、その状態で来日。翌年に牝駒を出産している。※追記:この2番子はソウルスターリングと命名され、2016年の阪神ジュベナイルフィリーズを勝利し、フランケル産駒として国内外を通じて初のGⅠ競走勝利を挙げた。

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