スワーヴダンサー

和名:スワーヴダンサー

英名:Suave Dancer

1988年生

鹿毛

父:グリーンダンサー

母:スワーヴァイト

母父:アレッジド

爆発的な末脚を武器に仏ダービー・凱旋門賞を制覇して同世代の名馬ジェネラスと互角の評価を得るも、種牡馬入り6年目に落雷により若くして命を落とす

競走成績:2~4歳時に仏愛で走り通算成績9戦5勝2着2回3着2回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州ハラパファームにおいて、同牧場の所有者リリー・F・ウェブ女史により生産された。1歳9月のキーンランドセールに出品され、当時仏国のトップ騎手として活躍していた米国産まれの名手キャッシュ・アスムッセン騎手の薦めを受けた仏国の事業家アンリ・シャルー氏に購入されたが、取引価格は僅か4万5千ドルだった。

仏国で開業していた英国産まれのジョン・E・ハモンド調教師に預けられた。後にモンジューなどを管理する事になるハモンド師も、当時はまだ30歳という駆け出しの新鋭調教師であり、本馬より1歳年上のポーラーファルコンなどで名を馳せるのはもう少し先の話だった。主戦は本馬を見出したアスムッセン騎手が務めた。安馬ではあったが、加減速自在な馬で、特にギアチェンジした後の爆発的な加速力は、ハモンド師を瞠目させるものがあったという。

競走生活(3歳前半まで)

2歳11月にサンクルー競馬場で行われたダゴア賞(T1600m)でデビューしたが、ポリーズカロスの2馬身1/4差3着に敗れ、2歳時の成績は1戦未勝利に終わった。

3歳時は4月のフェリエール賞(T2000m)から始動して、2着トゥルーブレーヴに8馬身差をつける圧勝で勝ち上がった。2週間後のグレフュール賞(仏GⅡ・T2100m)では、英ダービーの有力候補と目されていたトゥーロン、ロシェット賞の勝ち馬で仏グランクリテリウム3着のボーサルタン、デビュー戦で本馬を破ったポリーズカロス、トゥルーブレーヴなどが対戦相手となった。本馬は馬群の後方を慎重に進み、9頭立ての6番手で直線に入ってきた。そして馬群の間を突いて伸びると、残り200m地点で先頭に立ち、2着ボーサルタンに4馬身差、3着トゥーロンにはさらに3/4馬身差をつけて楽勝した。

それから3週間後のリュパン賞(仏GⅠ・T2100m)では、仏グランクリテリムの勝ち馬スティーマーダック、リステッド競走モンテニカ賞を勝ってきたナインカラット、リステッド競走シュレンヌ賞を勝ってきたクダス、グレフュール賞で4着だったブライトグロウなどが対戦相手となったが、本馬が単勝オッズ1.1倍という断然の1番人気に支持された。2番人気のナインカラットが単勝オッズ15倍、3番人気のクダスが単勝オッズ15.4倍、4番人気のスティーマーダックが単勝オッズ34倍だったから、まさしく一本かぶりの人気だった。スタートが切られると本馬と同厩のペースメーカー役アルメンダレスが先頭に立ち、クダスが2番手を追走し、本馬は7頭立ての5番手につけた。そのままの態勢で直線に入ると、残り400m地点で満を持してスパートをかけ、猛然と追い込んできた。ところが直線で早めに抜け出していたクダスに届かず、3/4馬身差の2着に敗れた。

次走は仏ダービー(仏GⅠ・T2400m)となった。このレースで事前に本命視されていたのは、クリテリウムドサンクルー・ノアイユ賞・オカール賞など5戦全勝の成績を誇っていたピストレブルーだった。しかしピストレブルーは飛節の打撲によりレース前日に回避が決定した。そのために対戦相手は、クダス、リュパン賞で本馬から5馬身差の3着だったブライトグロウ、リュパン賞で5着に終わっていたスティーマーダック、リステッド競走アイソノミー賞の勝ち馬でノアイユ賞・オカール賞2着のスボティカ、チェスターヴァーズ・プレドミネートS2着のルシロヴェルト、スボティカ陣営が用意したペースメーカー役のジャスティスの計6頭となった。本馬が単勝オッズ1.6倍の1番人気、クダスが単勝オッズ3.7倍の2番人気、スボティカが単勝オッズ7.2倍の3番人気となった。

スタートが切られるとジャスティスが先頭に立ったが、ペースは緩かった。それでも本馬は馬群の中団後方でじっと我慢していた。そして直線を5番手で向くと、外側から進出して残り400m地点で先行馬群を射程内に捉えた。そして残り200m地点から瞬く間に他馬をちぎり捨てて、2着スボティカに4馬身差をつけて圧勝した。

続いて出走した愛ダービー(愛GⅠ・T12F)では、英ダービー・デューハーストSの勝ち馬ジェネラス、ガリニュールSなど3戦無敗のスポーツワールド、テトラークSの勝ち馬で愛2000ギニー2着・英ダービー3着のスターオブグダニスクなど5頭との対戦となった。アスムッセン騎手が負傷のためこのレースに参加できなかったため、本馬にはウォルター・スウィンバーン騎手が騎乗した。英ダービーを5馬身差で圧勝していたジェネラスが単勝オッズ2倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.25倍の2番人気、スポーツワールドが単勝オッズ4.33倍の3番人気、スターオブグダニスクが単勝オッズ13倍の4番人気で、3強対決といった雰囲気だった。

スタートが切られると単勝オッズ301倍の最低人気馬バリーズランと単勝オッズ151倍の5番人気馬ノルディックアドマイヤラーが先頭に立った。ジェネラスは先行して、本馬はそれを見るように好位につけた。そして直線入り口で先頭に立ったジェネラスにすぐに並びかけた。2頭の叩き合いはしばらく続いたが、ゴール前で本馬は突き放されてしまい、3馬身差をつけられた2着と完敗を喫した。それでも3着スターオブグダニスクには8馬身差をつけており、同世代の中では実力が抜けていることを示した。

競走生活(3歳後半)

夏場は休養に充て、秋は愛チャンピオンS(愛GⅠ・T10F)から始動した。プリンスオブウェールズS・ブリガディアジェラードSの勝ち馬でエクリプスS2着・英国際S3着のステージクラフト、愛国際S・タタソールズ金杯・ロンポワン賞・スコティッシュクラシックの勝ち馬で仏2000ギニー・サンダウンマイル・プリンスオブウェールズS2着のゾーマン、エクリプスS・ダンテSの勝ち馬エンヴァイロンメントフレンド、タタソールズ金杯・ハードウィックS・モーリスドニュイユ賞と3戦連続2着中(正確にはハードウィックSは1位入線の2着降着)のトパヌーラ、愛国際S2着馬プルーデントマナー、トパヌーラ陣営が用意したペースメーカー役のゴガーティの計6頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.67倍の1番人気、ステージクラフトが単勝オッズ6倍の2番人気、ゾーマンが単勝オッズ8倍の3番人気、エンヴァイロンメントフレンドとトパヌーラが並んで単勝オッズ9倍の4番人気となった。

スタートが切られるとゴガーティが先頭に立ち、ゾーマンが2番手、本馬を含む他馬勢はその後方に固まった。しかし本馬はまだレースが残り半分以上残っている段階から徐々に加速を開始して、2番手で直線に入ってきた。それでも本馬の抜群の切れ味はいつもと何ら変わることはなく、残り2ハロン地点で先頭に立つと、追いすがるステージクラフトを一瞬にして置き去りにしてしまった。ゴール前ではアスムッセン騎手が手綱を緩める余裕ぶりで、追い込んできた2着エンヴァイロンメントフレンドに4馬身差をつけて完勝した。

次走は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)となった。対戦相手は、愛ダービー勝利後に出走したキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSを史上最大の7馬身差で圧勝していたジェネラス、故障休養明けのニエル賞でスボティカの2着してきたピストレブルー、英セントレジャー・ミラノ大賞・ドーヴィル大賞の勝ち馬で前年の凱旋門賞3着のスナージ、グレフュール賞で本馬の3着に敗れた後に英セントレジャー・モーリスドニュイユ賞・チェスターヴァーズを勝っていたトゥーロン、前年の英ダービー馬で英国際S2着のクエストフォーフェイム、ヴェルメイユ賞・マルレ賞・オマール賞の勝ち馬で仏オークス2着のマジックナイト、イタリア大賞・サンロマン賞の勝ち馬でクリテリウムドサンクルー2着のピジョンヴォワヤジュール、愛1000ギニー・英国際S・英チャンピオンS・コロネーションC・トラストハウスフォルテマイル・ムシドラSの勝ち馬インザグルーヴ、英オークスを10馬身差で圧勝していた愛オークス・ヨークシャーオークス2着馬ジェットスキーレディ、マルレ賞・ロワイヨモン賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞・プランスドランジュ賞2着のミスアレッジド、ハイアリアターフカップH・ボーリンググリーンH・ソードダンサーH2回と米国のGⅠ競走を4勝して遠征してきた米国調教馬エルセニョール、フィリーズマイルの勝ち馬で英オークス・ナッソーS2着・ヨークシャーオークス3着のシャムシール、ラクープの勝ち馬アートブルーの計13頭だった。

ジェネラスが単勝オッズ1.9倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.7倍の2番人気、ピストレブルーが単勝オッズ7.8倍の3番人気、スナージが単勝オッズ9倍の4番人気、トゥーロンとクエストフォーフェイムが並んで単勝オッズ10.5倍の5番人気、マジックナイトが単勝オッズ11.2倍の7番人気と続いていた。

スタートが切られるとアートブルーが先頭に立ち、ジェネラスは先行策、本馬は後方待機策を採った。アートブルーが作り出すペースはかなり速く、本馬鞍上のアスムッセン騎手はそのペースを見切って冷静にレースを進めた。そして直線に入る手前で大外に持ち出し、14頭立ての10番手で直線を向いた。そして電光石火の末脚を爆発させ、残り200m地点でピストレブルーをかわして先頭に立つと、最後は2着マジックナイトに2馬身差をつけて快勝。直線で伸びを欠いたジェネラスは馬群に沈み、本馬から9馬身差の8着に終わった。

3歳時はこれが最後のレースで、この年の成績は7戦5勝だった。この年から創設された欧州の年度表彰カルティエ賞において、最優秀3歳牡馬の部門は本馬とジェネラスの一騎打ちとなったが、凱旋門賞での差が重視されたのか、本馬が受賞した。しかし初代のカルティエ賞年度代表馬の座は2歳馬のアラジに奪われてしまった。国際クラシフィケーションの評価は、本馬が136ポンドだったのに対してジェネラスは137ポンド、英タイムフォーム社のレーティングにおいても、本馬が136ポンドだったのに対してジェネラスは139ポンドと、いずれもジェネラスが上位にランクされたが、ジェネラスの評価は本馬不在のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSにおける圧勝ぶりによるものであり、実際には2頭の実力は伯仲していたと言える。

競走生活(4歳時)

4歳時も現役を続け、5月のガネー賞(仏GⅠ・T2100m)から始動した。対戦相手は、凱旋門賞で3着だったピストレブルー、同12着だったアートブルー、仏ダービー2着後にパリ大賞・ニエル賞を勝つも体調不良で凱旋門賞を回避したスボティカ、伊ジョッキークラブ大賞・コンセイユドパリ賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬で前年のガネー賞2着のパッシングセール、エクスビュリ賞・アルクール賞を連勝してきたフォーチュンズホイール、ギョームドルナノ賞の勝ち馬グリティの計6頭だった。本馬は、例によって馬群の後方からレースを進めて、6番手で直線を向いた。しかしここから伸びずに、スボティカとピストレブルーの2頭に届かず、勝ったスボティカから3馬身差の3着に敗れた。

レース後に球節を痛めている事が判明したため、休養入りした。その後も凱旋門賞2連覇を目指して現役登録がされていたが、9月になっても回復しなかった事から、そのまま4歳時1戦未勝利で競走馬を引退した。

血統

Green Dancer Nijinsky Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Flaming Page Bull Page Bull Lea
Our Page
Flaring Top Menow
Flaming Top
Green Valley Val de Loir Vieux Manoir Brantome
Vieille Maison
Vali Sunny Boy
Her Slipper
Sly Pola Spy Song Balladier
Mata Hari
Ampola Pavot
Blue Denim
Suavite Alleged Hoist the Flag Tom Rolfe Ribot
Pocahontas
Wavy Navy War Admiral
Triomphe
Princess Pout Prince John Princequillo
Not Afraid
Determined Lady Determine
Tumbling
Guinevere's Folly Round Table Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Knight's Daughter Sir Cosmo
Feola
Lodge ボールドラッド Bold Ruler
Misty Morn
Little Hut Occupy
Savage Beauty

グリーンダンサーは当馬の項を参照。

母スワーヴァイトは現役成績15戦4勝、カムリーS(米GⅢ)で2着している。本馬の半妹ウルトラフィネス(父ラーイ)の孫にハートネル【ザBMW(豪GⅠ)】がいる。また、本馬の半妹セニョラージェ(父ヌレイエフ)は日本に繁殖牝馬として輸入され、ダイワワイルドボア【セントライト記念(GⅡ)】などを産んでいる。スワーヴァイトの半妹マジックラス(父ダマスカス)の子にはアカデミックエンジェル【ウインスターディスタフH(米GⅢ)】が、スワーヴァイトの半妹トリッドタンゴ(父グリーンダンサー)の子にはダンシング【サンタイネスS(米GⅡ)】、孫にはザヴィート【オークランドC(新GⅠ)・ランヴェットS(豪GⅠ)】がいる。スワーヴァイトの母グィネヴィアズフォリーの半妹レジスターの孫にはクライアンドキャッチミー【オークリーフS(米GⅠ)】と2012年のカルティエ賞最優秀2歳牝馬サーティファイ【フィリーズマイル(英GⅠ)】の姉妹がいる。グィネヴィアズフォリーの母ロッジの半兄には名種牡馬ハビタット【ロッキンジS・ムーランドロンシャン賞】がいる。→牝系:F4号族⑤

母父アレッジドは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、英国ナショナルスタッドによって権利の半分を購入されて種牡馬入りした。また、豪州にもシャトルされた。しかし1998年12月、日本に輸入されることが決定した数日後のクリスマスイブの日に、シャトル先の豪州イライザパークスタッドにおける放牧中に、落雷に打たれて10歳の若さで落命。当時日本にいたジェネラスとの種牡馬リターンマッチは夢と消えた。残された産駒は僅か4世代だったが、11頭のステークスウイナーを輩出した。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1994

Dust Dancer

ノネット賞(仏GⅢ)

1995

Craigsteel

プリンセスオブウェールズS(英GⅡ)

1996

Bernardon

オイロパマイレ(独GⅡ)・エッティンゲンレネン(独GⅢ)

1996

Compton Admiral

エクリプスS(英GⅠ)・クレイヴンS(英GⅢ)

1997

Execute

ガネー賞(仏GⅠ)・アルクール賞(仏GⅡ)

1997

Volvoreta

ヴェルメイユ賞(仏GⅠ)・レゼルヴォワ賞(仏GⅢ)・ペネロープ賞(仏GⅢ)

1999

Mahtoum

AJCシドニーC(豪GⅠ)・PJオシアS(豪GⅡ)・NEマニオンC(豪GⅢ)

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