ティンバーカントリー

和名:ティンバーカントリー

英名:Timber Country

1992年生

栗毛

父:ウッドマン

母:フォールアスペン

母父:プリテンス

BCジュヴェナイルの勝ち馬として史上初の米国三冠競走勝ち馬となったプリークネスSの勝ち馬は日本で種牡馬入りすると様々なタイプの産駒を出して成功

競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績12戦5勝2着1回3着4回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州の馬産団体ロウクエスト社の生産馬。父が名種牡馬ウッドマン、母が名繁殖牝馬フォールアスペンという事で、幼少期から期待馬だった。ロバート・ボブ・ルイス氏と妻ビバリー夫人のゲインズウェイファームと、ウィリアム・T・ヤング氏とグラハム・ベック氏のオーバーブルックファームが50万ドルで購入して共同馬主となり、米国ウェイン・ルーカス調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳6月にハリウッドパーク競馬場で行われたダート5ハロンの未勝利戦で、クリス・マッキャロン騎手を鞍上にデビュー。しかし単勝オッズ10.9倍で、8頭立ての5番人気とあまり評価されていなかった。レースでは単勝オッズ5.2倍の2番人気馬アポヌスオールが、単勝オッズ2倍の1番人気馬シアトルセイントの追撃を1馬身1/4差で抑えて逃げ切り勝ちを収め、本馬は後方2番手から四角で差を詰めるも、2着シアトルセイントから5馬身差の3着に入るのがやっとだった。

その後は東上してケンタッキー州に向かい、7月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたバッシュフォードマナーS(GⅢ・D6F)に、ラフィット・ピンカイ・ジュニア騎手を鞍上に出走した。ここでは後にサプリングSを勝つ同厩馬ブーンズミルとのカップリングながら単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された。しかしレースは単勝オッズ20.2倍の7番人気馬ヒエログリフィックが、2着ブーンズミルに6馬身差をつけて逃げ切ってしまい、本馬は馬群の中団後方から少し位置取りを上げただけで、2着ブーンズミルからさらに2馬身3/4差の6着に敗れた。

その後は地元米国西海岸に戻り、8月にデルマー競馬場で行われたダート6.5ハロンの未勝利戦に、アレックス・ソリス騎手を鞍上に出走。ここでも同厩馬ロイヤルサージとのカップリングではあったが、単勝オッズ2倍の1番人気に支持された。レースでは過去2戦とは異なり、先頭から3馬身ほど離れた4番手の好位を追走。そして逃げていた単勝オッズ6.4倍の3番人気馬デンジャラスシナリオに直線入り口で並びかけると、叩き合いを半馬身差で制して勝ち上がった。

次走はそれから18日後に同じデルマー競馬場で行われたバルボアS(GⅢ・D6.5F)となった。しかし過去3戦の内容から評価されず、単勝オッズ9.4倍で7頭立ての6番人気だった。今回もソリス騎手とコンビを組んだ本馬は馬群の中団やや後方を追走。そして5番手で直線に入ると前を行く馬達を次々に抜き去った。最後は後方から追い上げてきた単勝オッズ7.3倍の5番人気馬デザートミラージュを首差の2着に抑えて勝利した。

次走のデルマーフューチュリティ(GⅡ・D7F)でも、それほど評価が上がらず、単勝オッズ7倍の4番人気止まりだった。単勝オッズ3.1倍の1番人気に支持されたのは未勝利戦を5馬身差で勝ち上がってきたオンターゲットで、前走で本馬に敗れたデザートミラージュが単勝オッズ3.9倍の2番人気、前走でデザートミラージュから首差の3着だったスプレモが同馬主同厩のストロングアライとのカップリングで単勝オッズ6.3倍の3番人気だった。今回はコーリー・ナカタニ騎手とコンビを組んだ本馬は後方2番手を追走。そして三角から四角にかけて、デザートミラージュを置き去りにして上がっていったのだが、先に抜け出していたオンターゲットとスプレモの2頭に僅かに届かず、勝ったオンターゲットから1馬身差の3着に敗れた。

その後は再び東上してベルモントパーク競馬場に向かい、シャンペンS(GⅠ・D8.5F)に出走した。ベルモントフューチュリティS・サラトガスペシャルS・サンフォードSの勝ち馬でホープフルS2着のモントリオールレッドが単勝オッズ2.8倍の1番人気に支持され、オンターゲットが単勝オッズ3.8倍の2番人気、本馬も単勝オッズ4.7倍で3番人気の評価を受けた。過去5戦と異なり、ここで初めて本馬に騎乗したパット・デイ騎手はスタートから本馬を押して逃げを打たせた。単勝オッズ28.8倍の8番人気馬ミスターグリーリー(後のBCスプリント2着馬で種牡馬としても活躍)に絡まれながらも先頭を守り続けた本馬は、失速したミスターグリーリーに代わって中団から2番手に上がってきた単勝オッズ19.5倍の7番人気馬シエラディアブロの猛追を半馬身抑えて勝利した。人気を集めていたモントリオールレッドとオンターゲットの2頭は共にシエラディアブロから6馬身半差の4着と3着だった。このレース以降、デイ騎手が本馬の主戦を務めることになった。

次走はチャーチルダウンズ競馬場で行われたBCジュヴェナイル(GⅠ・D8.5F)となった。アーリントンワシントンフューチュリティなど5戦全勝のエヴィアンズヴィルスルー、ブリーダーズフューチュリティ・ケンタッキーCジュヴェナイルSの勝ち馬テハノラン、スウィンフォードS・グレイS・コロネーションフューチュリティを勝ってきた加国調教馬トーキンマン、シエラディアブロ、オンターゲット、英国の名伯楽ヘンリー・セシル調教師が送り込んできたヴィンテージS・ロイヤルロッジSの勝ち馬でデューハーストS3着のエルティシュ、デルマーフューチュリティ2着後にノーフォークSを勝ってきたスプレモ、デルマーフューチュリティ4着後にノーフォークSで3着してきたストロングアライ、ハリウッドジュヴェナイルCSSの勝ち馬でアーリントンワシントンフューチュリティ3着のミスターパープル、ローレルフューチュリティを勝ってきたウエスタンエコー、ブリーダーズフューチュリティ2着馬シンチ、ドクターファーガーS・インリアリティSを勝ってきたシーエンペラーの計12頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ3.4倍の1番人気に支持され、エヴィアンズヴィルスルーが単勝オッズ4.6倍の2番人気、テハノランが単勝オッズ5.6倍の3番人気、オンターゲットが単勝オッズ7.3倍の4番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ18.4倍の8番人気馬スプレモが逃げを打ち、トーキンマンなどがそれを追撃。一方の本馬に目をやると、前走とは打って変わって馬群の中団後方に控えていた。しかし三角に入ったところで仕掛けると、内側を通って一気に上がっていった。そして直線に入ってすぐに先頭に立つと、2着に粘った単勝オッズ17.9倍の7番人気馬エルティシュに2馬身差をつけて優勝した。

2歳時は7戦4勝の成績で、この年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬に選出された。

競走生活(3歳初期)

3歳時は3月にサンタアニタパーク競馬場で行われたサンラファエルS(GⅡ・D8F)から始動した。前走サンタカタリナSを5馬身差で圧勝してきたラリーザレジェンド、BCジュヴェナイルでは8着に終わるも前走サンヴィンセントBCSで2着してきたミスターパープルの2頭が強敵だった。他馬勢より3ポンド重い121ポンドの本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気、ラリーザレジェンドが単勝オッズ3.6倍の2番人気、ミスターパープルが単勝オッズ4.2倍の3番人気となった。出走頭数が5頭と少なく、全馬が一団となって進んだが、その中でも本馬は最後方につけた。そして三角で仕掛けて上がっていこうとしたのだが、手応えがあまり良くなく、直線で伸び切れなかった。勝ったラリーザレジェンドはおろか、逃げ粘った単勝オッズ22.2倍の最低人気馬ファンダレルダンサーを捕らえる事にも失敗して、勝ったラリーザレジェンドから2馬身差の3着に敗れた。

15日後のサンフェリペS(GⅡ・D8.5F)では、ハリウッドフューチュリティ・ハリウッドプレビューBCS・サンヴィセントBCSなど4戦無敗のアフタヌーンディーライツが単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持されており、本馬は単勝オッズ3.2倍の2番人気だった。他の出走馬2頭は、未勝利戦を半馬身差で勝ち上がってきたばかりのレイクジョージ、エルカミノリアルダービー5着馬スコアクイックと、いずれもたいした実績が無い馬であり、完全な2強ムードとなった。レースは人気薄の2頭が逃げて、アフタヌーンディーライツが3番手、本馬が最後方4番手を走る展開となった。アフタヌーンディーライツは三角手前で仕掛けて早々に先頭に立ち、本馬もそれを追って上がっていった。しかし最後まで追いつけずに、勝ったアフタヌーンディーライツから1馬身差の2着に敗れた。

続くサンタアニタダービー(GⅠ・D9F)では、アフタヌーンディーライツ、サンラファエルSから直行してきたラリーザレジェンド、サンタカタリナS・ルイジアナダービーで連続2着してきたインキャラクター、エルカミノリアルダービー・ゴールデンステートダービーの勝ち馬でカリフォルニアジュヴェナイルS2着のジャムロン、4連勝でルイジアナダービーを勝ってきたペションヴィル、前走で本馬から2馬身差の3着だったレイクジョージなどが対戦相手となった。アフタヌーンディーライツが単勝オッズ2.4倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.8倍の2番人気、ラリーザレジェンドが単勝オッズ6.8倍の3番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ58.5倍の最低人気馬ファンダレルダンサーが逃げを打ち、ラリーザレジェンドやアフタヌーンディーライツがそれを追って2~3番手を追走。本馬はライバル馬2頭から少し離れた6番手につけた。やがてラリーザレジェンドとアフタヌーンディーライツの2頭が抜きつ抜かれつの争いを演じながら上がっていったが、本馬は反応が悪く、この2頭に置いていかれてしまった。それでもようやく直線入り口で4番手まで押し上げてくると、単勝オッズ14.3倍の5番人気馬ジャムロンと叩き合いながら前2頭を追撃した。しかしライバル馬2頭を抜くどころか、ゴール前でジャムロンにも差し返されてしまい、勝ったラリーザレジェンドから1馬身半差の4着に敗退してしまった。

競走生活(米国三冠競走)

これで3連敗となり、不安を抱えたまま東上してケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)に出走することになった。ルーカス師はこのケンタッキーダービーに本馬に加えて、オークリーフS・ハリウッドスターレットS・ラスヴァージネスS・サンタアニタオークス・ランダルースS・サンタイネスBCS・ジムビームSの勝ち馬でBCジュヴェナイルフィリーズ2着のセレナズソング、フロリダダービー・レムセンS・ファウンテンオブユースSの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ2着のサンダーガルチの2頭も送り込んでいた。それ以外の出走馬は、BCジュヴェナイルこそ10着に終わるもゴーサムS・ウッドメモリアルSを連続圧勝してきたトーキンマン、サンタアニタダービー2着馬アフタヌーンディーライツ、同3着馬ジャムロン、BCジュヴェナイル3着後にジムビームS2着・ブルーグラスS3着だったテハノラン、BCジュヴェナイル2着後にいったん英国に戻って再遠征してきたエルティシュ、ワットアプレジャーS・プレヴューSの勝ち馬でファウンテンオブユースS・フロリダダービー・ブルーグラスS3戦連続2着のスワーヴプロスペクト、トロピカルパークダービーの勝ち馬でフロリダダービー・ジムビームS3着の後のアーリントンミリオン勝ち馬メッキー、日本から参戦してきたきさらぎ賞の勝ち馬で朝日杯三歳S2着のスキーキャプテンなどだった(ラリーザレジェンドは故障のため不参戦)。

連敗中の本馬だったが、それでも前年の2歳王者の肩書きと、カップリングされていた同馬主馬セレナズソングの人気により、単勝オッズ4.4倍の1番人気に支持された(サンダーガルチは同厩でも馬主が違うのでカップリングの対象外)。トーキンマンが単勝オッズ5倍の2番人気、ジャムロンが単勝オッズ6.6倍の3番人気、テハノランが単勝オッズ9.6倍の4番人気、アフタヌーンディーライツが単勝オッズ9.7倍の5番人気と続いていた。

スタートが切られるとセレナズソングが果敢に先頭に立ち、外枠発走だった本馬は無理に進出せずに後方3~5番手につけた。後続馬に競りかけられたセレナズソングのペースは非常に速く、最初の2ハロンが22秒57というハイペースとなった。後方でじっと我慢していた本馬が仕掛けたのは三角に入るところで、直線入り口では10番手だった。前方には他馬が壁になっており、一瞬だけ進路が塞がる場面があった。それでも馬群の中に突っ込んで追い上げてきたのだが、先に抜け出したサンダーガルチとテハノランの2頭に届かず、単勝オッズ25.5倍の11番人気という低評価を覆して勝ったサンダーガルチから2馬身半差、2着テハノランから頭差の3着に敗退した(セレナズソングは16着だった)。「ケンタッキーダービーは1番人気馬が勝てない」と「BCジュヴェナイルの勝ち馬は米国三冠競走を勝てない」というダブルジンクスを打破する事は出来ず、鞍上のデイ騎手は「消極的な騎乗をした」として非難を受けた。

しかし本馬は2歳時も、デビュー当初の今ひとつの成績だった状態から2歳王者に上り詰めたように、使い込まれて良くなるタイプだったらしく、ケンタッキーダービー後にようやく調子が上昇した。

そして迎えたプリークネスS(GⅠ・D9.5F)では、サンダーガルチ、テハノラン、ケンタッキーダービーで5着だったメッキー、同12着だったトーキンマン、ダービートライアルS2着馬アワーギャツビー、サウスウエストS・レベルSの勝ち馬ミステリーストーム、フェデリコテシオSを勝ってきたオリヴァーズトゥイスト、レキシントンSを勝ってきたスタースタンダードなどが対戦相手となった。調教で抜群の動きを披露した本馬が単独で単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持され、トーキンマンが単勝オッズ4.2倍の2番人気、サンダーガルチが単勝オッズ4.8倍の3番人気、テハノランが単勝オッズ5.7倍の4番人気、アワーギャツビーが単勝オッズ11.9倍の5番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ26倍の6番人気馬ミステリーストームが単騎で逃げを打ち、スタースタンダードやトーキンマンなどがそれを追走。4~5番手に単勝オッズ26.2倍の7番人気馬オリヴァーズトゥイストとサンダーガルチがつけ、デイ騎手鞍上の本馬はサンダーガルチを見るように6番手の好位を追走した。そして三角でサンダーガルチが仕掛けるのを見計らってからスパート。直線入り口でサンダーガルチに外側から並びかけると、そのまま大外を通って末脚を伸ばした。直線半ばで5頭横一線の勝負から本馬、サンダーガルチ、オリヴァーズトゥイストの3頭が抜け出したが、本馬の脚色が最も良かった。サンダーガルチとオリヴァーズトゥイストの2頭も粘りを見せたが、最後は本馬が2着オリヴァーズトゥイストに半馬身差、3着サンダーガルチにはさらに首差をつけて優勝した。

BCジュヴェナイルの勝ち馬が米国三冠競走を制したのは史上初の事だった。また、ルーカス師は前年のプリークネスS・ベルモントSをタバスコキャットで制しており、これで米国三冠競走4連勝となった(史上初の快挙)。レース後にルーカス師はニューヨーク・タイムズ紙のインタビューに対して「私の厩舎にはティンバーカントリー、サンダーガルチという凄い馬が2頭もいます。この2頭をベルモントSに連れて行って、マッチレースをさせてみたいです」と語った。

続くベルモントSでも前売り1番人気に支持されていたのだが、レース前日にウイルス性疾患のため摂氏40度の高熱を出してしまい、回避となった(本馬不在のベルモントSはサンダーガルチが勝利して、ルーカス師は米国三冠競走を5連勝した)。

その後はジェロームHを叩いてBCクラシックへ向かう計画だったが、秋シーズンに向けた8月の調教中に左前脚屈腱炎を発症してしまった。本馬の脚を診察したのは、かつて名牝スーザンズガールの脚の故障を見事に完治させてスーザンズガールが米国競馬史上初の100万ドル牝馬となる立役者となった名獣医ロバート・コープラン博士だった。しかしコープラン博士は首を横に振った。そのためにプリークネスS以降はレースに出ることなく、3歳時5戦1勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Woodman Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
プレイメイト Buckpasser Tom Fool Menow
Gaga
Busanda War Admiral
Businesslike
Intriguing Swaps Khaled
Iron Reward
Glamour Nasrullah
Striking
Fall Aspen Pretense Endeavour British Empire Colombo
Rose of England
Himalaya Hunter's Moon
Partenope
Imitation Hyperion Gainsborough
Selene
Flattery Winalot
Fickle
Change Water Swaps Khaled Hyperion
Eclair
Iron Reward Beau Pere
Iron Maiden
Portage War Admiral Man o'War
Brushup
Carillon Case Ace
Sunfeathers

ウッドマンは当馬の項を参照。

母フォールアスペンは現役時代もメイトロンS(米GⅠ)・アスタリタS(米GⅢ)・プライオレスS勝ちなど20戦8勝の成績を挙げた活躍馬だったが、繁殖入りしてからは稀代の名繁殖牝馬として大成功。合計で14頭の子を産み、そのうち13頭が競走馬となり、12頭が勝ち上がり、9頭がステークスウイナー(うち8頭がグレード又はグループ競走勝ち馬)となり、4頭がGⅠ競走を勝利した。1994年には本馬の活躍によりケンタッキー州最優秀繁殖牝馬に選ばれている。1998年2月に14番子マルティネリを産んだ後の合併症により22歳で他界してアッシュフォードファームに埋葬された。

良い機会なので、フォールアスペンが産んだ子の名前と父名、競走成績と主な戦績を下に列挙しておく。6歳時に産んだ初子が牝駒ノーザンアスペン(父ノーザンダンサー)で、ゲイムリーH(米GⅠ)・アスタルテ賞(仏GⅢ)に勝ち、サンタバーバラH(米GⅠ)・サンタアナH(米GⅠ)で2着するなど16戦5勝。7歳時に産んだ2番子が牝駒エレソウレ(父エクスクルシヴネイティヴ)で、アスタリテ賞(仏GⅡ)に勝利するなど16戦3勝。8歳時に産んだ3番子が牡駒ネイティヴアスペン(父レイズアネイティヴ)で、24戦4勝。9歳時に産んだ4番子が牡駒マッツカノ(父アレッジド)で、グッドウッドC(英GⅢ)に勝ち、アスコット金杯(英GⅠ)で2着するなど9戦3勝。10歳時に産んだ5番子が牝駒コロラドダンサー(父シャリーフダンサー)で、ポモーヌ賞(仏GⅡ)・ミネルヴ賞(仏GⅢ)に勝ち、ヴェルメイユ賞(仏GⅠ)・イエローリボン招待S(米GⅠ)で3着するなど10戦3勝。11歳時に産んだ6番子が牝駒ダンスオブリーヴス(父サドラーズウェルズ)で、唯一の不出走馬。12歳時に産んだ7番子が牝駒シェルーグ(父シャリーフダンサー)で、8戦1勝。13歳時に産んだ8番子が牡駒ハマス(父ダンチヒ)で、ジュライC(英GⅠ)・デュークオブヨークS(英GⅢ)に勝利するなど18戦5勝。14歳時に産んだ9番子が牡駒フォートウッド(父サドラーズウェルズ)で、パリ大賞(仏GⅠ)・ノアイユ賞(仏GⅡ)に勝利するなど5戦3勝。16歳時に産んだ10番子が本馬。17歳時に産んだ11番子が牡駒プリンスオブシーヴズ(父ハンセル)で、サンタカタリナSに勝ち、ケンタッキーダービー(米GⅠ)で3着するなど12戦2勝。19歳時に産んだ12番子が牡駒ビアンコニ(父ダンチヒ)で、ダイアデムS(英GⅡ)に勝利するなど12戦3勝。20歳時に産んだ13番子が牝駒アスペンリーヴズ(父ウッドマン)で、3戦1勝。22歳時に産んだ14番子が牡駒マルティネリ(父サンダーガルチ)で、1戦未勝利だった。

フォールアスペンの子は競走成績が悪くても繁殖牝馬や種牡馬になれる場合が多く、未勝利馬だった最後の子マルティネリも南アフリカで種牡馬入りしている。フォールアスペンの牝系子孫も発展しており、活躍馬のオンパレード状態となっている。ノーザンアスペンの曾孫には日本で走ったレジネッタ【桜花賞(GⅠ)】がいる。エレソウレの子にはメサーフ【愛1000ギニー(愛GⅠ)・セレブレーションマイル(英GⅡ)・ネルグウィンS(英GⅢ)】、エルナディム【ジュライC(英GⅠ)・ダイアデムS(英GⅡ)】、クルード【ネルグウィンS(英GⅢ)】が、孫にはオキュパンディステ【モーリスドギース賞(仏GⅠ)・フォレ賞(仏GⅠ)】が、玄孫にはインテロ【仏ダービー(仏GⅠ)】がいる。コロラドダンサーの子には言わずと知れた20世紀最後の世界最強馬ドバイミレニアム【ドバイワールドC(首GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ)・プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・ユジェーヌアダム賞(仏GⅡ)】がいる。ダンスオブリーヴスの子にはチャーンウッドフォレスト【クイーンアンS(英GⅡ)・チャレンジS(英GⅡ)】、メダレー【レーシングポストトロフィー(英GⅠ)】がいる。シェルーグの子にはカブール【ギョームドルナノ賞(仏GⅡ)・ ロンポワン賞(仏GⅡ)・ダフニ賞(仏GⅢ)】が、孫にはヨーロッパポイント【エンプレスクラブS(南GⅠ)・チャンピオンズチャレンジ(南GⅠ)】、ハーバーウォッチ【リッチモンドS(英GⅡ)】がいる、といった具合である。

フォールアスペンの半妹ペイントブラシ(父ボールドアワー)の曾孫にはディキシーユニオン【ハスケル招待H(米GⅠ)・マリブS(米GⅠ)】が、半妹リヴァークロッシング(父アファームド)の孫にはアイリッシュライツ【MRC1000ギニー(豪GⅠ)】、玄孫には日本で走ったアジアエクスプレス【朝日杯フューチュリティS(GⅠ)・レパードS(GⅢ)】が、日本に繁殖牝馬として輸入された半妹スィートシエロ(父コンキスタドールシエロ)の子にはツルマルツヨシ【京都大賞典(GⅡ)・朝日チャレンジC(GⅢ)】がいる。→牝系:F4号族③

母父プリテンスはシャムの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は4歳時の1996年に社台グループにより購入されて来日し、同年から社台スタリオンステーションで種牡馬生活を開始した。当初から期待されており、初年度は112頭の繁殖牝馬を集めた。2年目は122頭、3年目は119頭と交配。この1998年からは豪州アローフィールドスタッドにもシャトルされている。日本でも4年目には147頭、5年目には126頭の繁殖牝馬を集めるなど相変わらず人気種牡馬だった。6年目の2001年にはシェイク・モハメド殿下の希望によりドバイのエミレーツスタッドファームにリースされたため、日本では種牡馬活動を行わなかった。

デビュー直後の産駒成績は振るわなかったが、この2001年には2年目産駒のムガムチュウがダービーグランプリを、3年目産駒のアドマイヤドンが朝日杯フューチュリティSを制して、全日本種牡馬ランキングでは16位に入った。ドバイから帰国後は社台グループ所有のままレックススタッドで種牡馬生活を続行。7年目に当たる2002年の交配数は86頭に留まったが、同年にはアドマイヤドンがJBCクラシックを、初年度産駒のギルデッドエージが中山大障害を勝つなど活躍して全日本種牡馬ランキングでは12位に入ったため、翌8年目の2003年には237件という年間最多交配記録を樹立した。この2003年には全日本種牡馬ランキングで10位に入っている。その後も9年目は192頭、10年目は158頭、11年目は113頭と高水準の交配数を維持。2006年には豪州イライザパークスタッドにシャトルされた。帰国後も12年目の2007年には126頭の繁殖牝馬を集めた。全日本種牡馬ランキングでは2004年が11位、2005年は20位、2006年は26位、2007年は29位と高位置を維持していたが、その後は寄る年波には勝てないのか産駒成績は右肩下がりとなった。交配数も、13年目の2008年は69頭、14年目は75頭、15年目は52頭、16年目は15頭、17年目は14頭、18年目は10頭、19年目の2014年は3頭まで下がった。この2014年に交配した3頭がいずれも不受胎だったため、2015年に種牡馬を引退。その後はレックススタッドで余生を送っている。※追記:2016年2月23日に心不全のため24歳で他界した。

産駒はパワフルなダート馬から芝向きのスピード馬・障害向きのスタミナ馬などバラエティに富んでいる。2015年現在のところ、中央競馬の芝・ダート・障害の3カテゴリー全てでGⅠ競走勝ち馬を出している唯一の種牡馬である(オペラハウスやグラスワンダーが芝・障害・地方競馬のダートでGⅠ競走勝ち馬を出しているが、共に中央競馬のダートGⅠ競走勝ち馬はいない。サンデーサイレンスも障害GⅠ競走勝ち馬は出していない)。芝で走る産駒もいるが、全体的にダート競走における活躍が目立ち、地方競馬の種牡馬ランキングでも2004年の4位を筆頭に、合計7度のベストテン入りを果たしている。また、豪州産馬やドバイ産馬からもGⅠ競走勝ち馬が登場している。母父としてはコパノリッキーなどを出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1997

アドマイヤタッチ

兵庫ジュニアグランプリ(GⅢ)

1997

ギルデッドエージ

中山大障害(JGⅠ)

1998

チカテツ

MRO金賞(金沢)

1998

マジックスクエア

ほくてつニューイヤーC(金沢)

1998

ムガムチュウ

ダービーグランプリ(GⅠ)・北海道三歳優駿(GⅢ)

1999

アドマイヤドン

朝日杯フューチュリティS(GⅠ)・JBCクラシック(GⅠ)3回・マイルCS南部杯(GⅠ)・フェブラリーS(GⅠ)・帝王賞(GⅠ)・エルムS(GⅢ)

1999

キウィダンス

ゴールドウィング賞(SPⅠ)・スプリングC(SPⅡ)・秋の鞍(SPⅡ)・マイル争覇(SPⅡ)・新春ジュニア(中京)・園田フレンドリーC(園田)2回・読売レディス杯(金沢)・スプリント(SPⅢ)

2000

Timbourina

ウェイクフルS(豪GⅡ)

2000

エリモカントリー

東京ハイジャンプ(JGⅡ)・京都ジャンプS(JGⅢ)

2000

スズノマーチ

エプソムC(GⅢ)

2000

スターチス

北関東クイーンC(北関GⅠ)

2000

タイキアヴェニュー

新春賞(園田)

2000

ヒシアトラス

平安S(GⅢ)・マーチS(GⅢ)・エルムS(GⅢ)

2000

ヤマカツリリー

フィリーズレビュー(GⅡ)

2001

Eremein

ローズヒルギニー(豪GⅠ)・AJCダービー(豪GⅠ)・ランヴェットS(豪GⅠ)・ザBMW(豪GⅠ)・AJCクイーンエリザベスS(豪GⅠ)・チェルムスフォードS(豪GⅡ)

2001

クィーンロマンス

新春盃(SPⅡ)・スプリント(SPⅢ)

2001

トウショウナイト

アルゼンチン共和国杯(GⅡ)

2001

トーセンジョウオー

エンプレス杯(GⅡ)・関東オークス(GⅢ)・マリーンC(GⅢ)2回・スパーキングレディーC(GⅢ)2回・埼玉新聞杯(SⅢ)

2001

パッションマリー

サラブレッドC(北関GⅠ)

2002

Balletto

フリゼットS(米GⅠ)

2003

チャームアスリープ

関東オークス(GⅡ)・浦和桜花賞(南関GⅠ)・東京プリンセス賞(南関GⅠ)

2003

テンショウボス

トウケイニセイ記念(水沢)2回・みちのく大賞(盛岡)・北上川大賞(水沢)・桐花賞(水沢)

2004

ティンバーランド

フロイラインC(H3)

2004

パラダイスフラワー

エーデルワイス賞(GⅢ)・南部駒賞(水沢)・日高賞(水沢)

2004

フジノアサハタ

くろゆり賞(SPⅠ)

2004

ボランタス

浦和記念(GⅡ)・金杯(SⅢ)・報知オールスターC(SⅢ)・埼玉栄冠賞(SⅢ)

2005

ゲンキチホマレ

ニューイヤーC(SⅢ)

2005

パッショネートキス

高知優駿(高知)

2005

パラダイスセント

花吹雪賞(KJ3)・飛燕賞(KJ3)

2008

ミサキティンバー

ゴールドウィング賞(SPⅠ)・駿蹄賞(SPⅠ)

2009

アスペクト

若駒賞(盛岡)・知床賞(盛岡)・南部駒賞(水沢)・岩手ダービーダイヤモンドC(盛岡)

2010

カイカヨソウ

ブリーダーズゴールドジュニアC(H1)・東京2歳優駿牝馬(SⅠ)・東京プリンセス賞(SⅠ)・ロジータ記念(SⅠ)・ユングフラウ賞(SⅡ)・フローラルC(H3)

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