和名:ムーンマッドネス |
英名:Moon Madness |
1983年生 |
牡 |
黒鹿 |
父:ヴィティージ |
母:カースルムーン |
母父:カラムーン |
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英セントレジャー・サンクルー大賞制覇など欧州長距離路線で活躍するも日本では運に恵まれず競走馬としても種牡馬としても能力を発揮できなかった |
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競走成績:3~5歳時に英仏独日で走り通算成績24戦10勝2着1回3着5回 |
誕生からデビュー前まで
英国貴族のラヴィニア・メアリー・フィッツアラン・ハワード・ノーフォーク公爵夫人により生産・所有された。彼女の夫だった第16代ノーフォーク公爵バーナード・マーマデューク・フィッツアラン・ハワード卿(1975年に死去)は、英国サセックス州にある有名なアランデル城の主で、英国王ジョージⅥ世やエリザベスⅡ世女王陛下の戴冠式の式次第を定めたこともあり、英国貴族としてはおそらく最高ランクにあった人物である。生前にハワード卿はエリザベスⅡ世女王陛下からアスコット競馬場の管理運営を委ねられていた。
また、ノーフォーク公爵夫人は障がいがある人のリハビリを兼ねた乗馬を推進する目的で創設された英国の慈善団体である障がい者乗馬協会(日本にも支部がある)の代表者を務めた(現在はエリザベスⅡ世女王陛下の娘アン王女が代表者となっている)ほどの乗馬好きであり、夫の仕事との関連もあって馬産も行っていた。本馬は英国ジョン・ダンロップ調教師に預けられ、主戦はパット・エデリー騎手が務めた。
競走生活(2・3歳時)
2歳時にグッドウッド競馬場で行われた未勝利ステークスでデビューするも、翌年の英ダービー4着馬ファラウェイダンサー(クレイヴンSでダンシングブレーヴの2着という実績もある)の4馬身半差4着に敗退。2歳時の出走はこれだけだったが、英タイムフォーム社は「いずれはもっと強くなるでしょう」と将来性に太鼓判を押した。
3歳当初はハンデ競走路線を進み、ニューマーケット競馬場のホルステンエクスポートレジャーH(T10F)と、ヘイドックパーク競馬場のストーンベストビターH(T10F131Y)など3戦に勝利した。そしてアスコット競馬場で行われる重要なハンデ競走であるキングジョージⅤ世H(T12F)に出走して、2着ウェシャームに5馬身差で圧勝。
そしてグループ競走路線にステップアップし、エアー競馬場でスコティッシュダービー(T11F)に出走。2着カディアルに1馬身半差をつけて勝利した。さらにグレートヴォルティジュールS(英GⅡ・T12F)に出走した。英ダービーでシャーラスタニの3馬身差3着だったホワイトローズS・リングフィールドダービートライアルSの勝ち馬マシュクール、ゴードンSを勝ってきたアレミロードが強敵と思われた。レースではマシュクールが2位入線のキングエドワードⅦ世S3着馬ニスナスに頭差をつけてトップゴールし、本馬はニスナスからさらに頭差の3位入線だった。マシュクールはニスナスに対する進路妨害を咎められて2着に降着となったが、本馬の着順には変更が無く、3着のままだった。
それでも英セントレジャーの重要な前哨戦で好走したため、次走は英セントレジャー(英GⅠ・T14F127Y)となった。対戦相手は、ヨークシャーオークス・フィリーズマイルの勝ち馬で英オークス2着のアントールド、パリ大賞の勝ち馬スウィンク、前走で繰り上がって勝者となったニスナス、前走で5着に終わっていたアレミロード、上がり馬セレスティアルストームなど7頭だった。アントールドが単勝オッズ3.5倍の1番人気、アレミロードが単勝オッズ5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ5.5倍の3番人気となった。スタートが切られると最低人気馬ファミリーフレンドが先頭に立ち、アレミロードが2番手、スウィンクが3番手で、本馬は馬群の最後方につけた。そのままの態勢で直線に入ると、本馬鞍上のエデリー騎手は内埒沿いの隙間を突いた。残り4ハロン地点で各馬の騎手が一斉に仕掛ける中で、エデリー騎手の手はまだ動かなかった。そして残り3ハロン地点でエデリー騎手が満を持して仕掛けると瞬く間に先頭に踊り出た。残り2ハロン地点からは外側から伸びてきたセレスティアルストームとの一騎打ちとなったが、本馬が着実に差を広げていき、最後は2着セレスティアルストームに4馬身差をつけて完勝した。
次走は独国のオイロパ賞(独GⅠ・T2400m)となった。しかしここでは英セントレジャーで8着最下位に沈んでいたアレミロードが、2着となったドーヴィル大賞・エドヴィル賞の勝ち馬ベイビータークに半馬身差で勝ち、本馬はさらに3/4馬身差の3着に敗れた。3歳時の成績は8戦6勝だった。
競走生活(4歳時)
4歳時は5月のブリガディアジェラードS(英GⅢ・T10F)から始動した。ここには前年のオイロパ賞勝利後にジャパンCに参戦してジュピターアイランドの頭差2着と惜敗していたアレミロードが、前走ゴードンリチャーズSを勝って参戦してきて、本馬との2強対決になるはずだった。ところが結果はアレミロードが2馬身半差の2着、本馬はアレミロードからさらに3馬身差の4着と、いずれも敗退。勝ったのはこの時点では無名に近かったムトトだった。
次走のハードウィックS(英GⅡ・T12F)ではこれといった対戦相手がいなかったのだが、後にローマ賞を勝ってGⅠ競走勝ち馬となるオーバン、前走のブリガディアジェラードSで本馬に先着する3着だったオールヘイストの2頭に後れを取り、オーバンの3着に敗れた。
次走は仏国のサンクルー大賞(仏GⅠ・T2400m)となった。このレースでは、地元伊国で伊共和国大統領賞・ミラノ大賞・エリントン賞など4連勝して遠征してきたトニービン、アルクール賞の勝ち馬でイスパーン賞2着のグランパヴォワという強敵が現れた。しかし結果は本馬が2着トニービンに1馬身半差、3着グランパヴォワにもさらに1馬身半差をつけて勝利した。
そして英国に戻ってキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)に出走した。同競走が施行されるアスコット競馬場はノーフォーク公爵夫人の亡夫が管理していた競馬場であるし、ノーフォーク公爵夫人はかつてジョージⅥ世の戴冠式に出席していたから、その名を冠したこの競走には思い入れがあったと推察される。トニービンに加えて、英ダービー・ウィリアムヒルフューチュリティS・ダンテSの勝ち馬でエクリプスS2着のリファレンスポイント、マルセルブサック賞・愛2000ギニー・英チャンピオンS・ガネー賞・コロネーションC・ラクープなどを勝っていたトリプティク、独ダービー・アラルポカル2回・サンクルー大賞・ベルリン大賞・バーデン大賞・ヘルティー国際大賞・ウニオンレネン・メルセデスベンツ大賞・ハンザ賞・ゲルリング賞2回などを勝っていた独国の歴史的名馬アカテナンゴ、プリンセスオブウェールズSを勝ってきた前年の英セントレジャー2着馬セレスティアルストームなどが主な対戦相手となった。しかしレースでは、リファレンスポイントやトリプティクだけでなく、英セントレジャーで一蹴したセレスティアルストームにも後れを取り、勝ったリファレンスポイントから8馬身1/4差の4着と完敗した。
続いてジェフリーフリアS(英GⅡ・T13F60Y)に出走した。ここでは単勝オッズ2.375倍の1番人気に応えて、リングフィールドダービートライアルSの勝ち馬でキングエドワードⅦ世S2着のリーガルビッド、次走のイタリア大賞でGⅠ競走初勝利を飾るイブンベイなどを撃破。2着リーガルビッドとの着差は首差ながらも2分47秒16のコースレコードで勝利した。
続いて独国に移動して、バーデン大賞(独GⅠ・T2400m)に参戦した。ここではキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSで6着に終わっていたアカテナンゴが巻き返して勝ち、本馬は独ダービー・アラルポカル2着のウィンウッド(3着)、ベルリン大賞・ヘルティー国際大賞などの勝ち馬ルグロリュー(4着)には先着したものの、1馬身半差の2着に敗れた。
その後は英国に戻って、カンバーランドロッジS(英GⅢ・T12F)に出走した。セプテンバーSの勝ち馬ノッカンドゥや、かつて本馬が3着に敗れたグレートヴォルティジュールSで1位入線2着降着だったマシュクールなどが対戦相手となったが、本馬が単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持された。そしてエデリー騎手の「完璧な騎乗(ただし具体的な騎乗内容は不明)」に助けられた本馬が、2着ノッカンドゥに3/4馬身差、3着マシュクールにはさらに4馬身差で勝利した。
次走の愛セントレジャー(愛GⅠ・T14F)では、後続を8馬身ちぎって圧勝した牝馬ユーロバードの7着と惨敗し、イブンベイ(6着)にも先着された。
その後は招待を受けて来日し、ジャパンC(日GⅠ・T2400m)に参戦した。対戦相手は、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS3着後に英国際S・愛チャンピオンS・英チャンピオンSを勝っていたトリプティク、バーデン大賞4着後にオイロパ賞・マンノウォーSで2着して前走ワシントンDC国際Sを勝ってきたルグロリュー、この年の英セントレジャーでリファレンスポイントの2着だったマウンテンキングダム、ロジャーズ金杯(現タタソールズ金杯)の勝ち馬で愛チャンピオンS3着のコックニーラス、ドラール賞・リス賞・ルイジアナダウンズHの勝ち馬イアデス、豪州のGⅠ競走チッピングノートンSを勝っていた前年のジャパンC5着馬アワウェイバリースター、セクレタリアトS・ロスマンズ国際S・ナイアガラHの勝ち馬サウスジェットといった海外馬が中心であり、日本馬は、セントライト記念の勝ち馬で前走天皇賞秋2着のレジェンドテイオー、毎日王冠・函館三歳S・京王杯オータムHの勝ち馬ダイナアクトレス、東京優駿2着馬サニースワローといったGⅠ競走未勝利馬が実績最上位という状況だった。前哨戦の富士Sで驚異的な勝ち方をしていたトリプティクが単勝オッズ1.8倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.6倍の2番人気、ルグロリューが単勝オッズ8.6倍の3番人気で、人気的にはトリプティクと本馬の2強対決だった。
スタートが切られるとレジェンドテイオーがまずは先頭に立ったが、向こう正面に入る手前で本馬がそれをかわして先頭に立ち、そのまま後続を引き離して大逃げを打った。トリプティクの末脚に対抗するためにスタミナを活かして差を広げる作戦だったのか、単に引っ掛かってしまっただけなのかは定かではないが、さすがに直線に入ると伸びを欠いた。本馬から大きく離れた2番手を追走していたルグロリューが残り400m地点で本馬をかわすとそのまま押し切って勝ち、サウスジェット、ダイナアクトレス、トリプティクの3頭にも差された本馬は、ルグロリューから3馬身半差の5着に敗れた。4歳時の成績は9戦3勝だった。
競走生活(5歳時)
5歳時は5月のヨークシャーC(英GⅡ・T14F)から始動した。そして単勝オッズ2.2倍の1番人気に応えて、直線一気の追い込みで、2着となったセントサイモンSの勝ち馬レイクエリーに1馬身半差で勝利した。
次走のコロネーションC(英GⅠ・T12F)では、3度目の対戦となるトリプティク、サンチャリオットS・ゴードンリチャーズSの勝ち馬で後のロスマンズ国際S勝ち馬インファミー、ヨークシャーオークス・ヴェルメイユ賞・プリティポリーSの勝ち馬ビントパシャの3頭の牝馬だけが対戦相手となった。トリプティクが単勝オッズ2.375倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.875倍の2番人気と、ジャパンCに続いて2強対決となった。今回もトリプティクとの末脚合戦では分が悪いと踏んだのか、レース序盤で早々に先頭に立って逃げを打った。しかし直線に入るとトリプティクだけでなくインファミーにも差されて、勝ったトリプティクから2馬身3/4差の3着に敗れた。
次走のハードウィックS(英GⅡ・T12F)では、単勝オッズ3倍のインファミーに1番人気の座を奪われて、単勝オッズ4.33倍の2番人気での出走となった。レースでは、ケルゴルレイ賞・ドーヴィル大賞・ジョッキークラブSの勝ち馬アルマーラドが、本馬、インファミーとの直線末脚勝負を制して勝ち、本馬はアルマーラドから1馬身半差の3着に敗れた(本馬から2馬身差の4着はイブンベイだった)。
その後は前年の雪辱を期して、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)に参戦した。前走プリンセスオブウェールズSを15馬身差で大圧勝してきたアンフワイン、エクリプスSとプリンスオブウェールズSを共に2連覇するなど着実に欧州最強馬の地位を固めつつあったムトト、前年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSでは5着だったがその後に伊ジョッキークラブ大賞・伊共和国大統領賞・ミラノ大賞を勝ち凱旋門賞で2着するなど伊国だけでなく欧州全体でもトップクラスの地位に近づきつつあったトニービン、英2000ギニー・クレイヴンSの勝ち馬で英ダービー3着のドユーン、前走ハードウィックSで本馬を破ったアルマーラド(後にアラルポカルやコックスプレートなど欧州と豪州でGⅠ競走を4勝)などが出走してきた。このメンバー構成では、全盛期を過ぎつつあった本馬は評価されず、単勝オッズ51倍で9番人気の低評価だった。レースでは一か八かの逃げを打ったのだが、結果的には裏目に出て、勝ったムトトから17馬身差の10着最下位と惨敗した。
次走は前年に勝利したジェフリーフリアS(英GⅡ・T13F60Y)となった。ここではモーリスドニュイユ賞の勝ち馬メルセイカニンガムが単勝オッズ2.375倍の1番人気で、本馬も単勝オッズ3.5倍の2番人気と評価された。しかし直線の末脚が不発に終わり、勝った単勝オッズ21倍の最低人気馬トップクラスから7馬身半差の5着に敗退。本馬とは先着したり先着されたりを交互に繰り返していたイブンベイ(4着)には順番どおり先着された。
その後はしばらくレースに出ず、ジャパンC(日GⅠ・T2400m)に直行した。前年と比べると日本馬のレベルは著しく上昇していた。天皇賞春・宝塚記念・天皇賞秋・鳴尾記念・京都金杯・阪神大賞典など破竹の8連勝中だったタマモクロス、そのタマモクロスに前走の天皇賞秋で敗れるまではペガサスS・毎日杯・京都四歳特別・ニュージーランドトロフィー四歳S・高松宮杯・毎日王冠など破竹の14連勝中だったオグリキャップの両巨頭が出走してきたのである。他にも菊花賞・有馬記念の勝ち馬メジロデュレン、前年の宝塚記念を筆頭に中山記念・ラジオたんぱ賞・福島記念・中山金杯・ダービー卿チャレンジトロフィー2回・オールカマーと重賞8勝のスズパレード、阪神三歳Sの勝ち馬で皐月賞・菊花賞2着のゴールドシチー、福島記念の勝ち馬で天皇賞春2着のランニングフリーの姿もあった。海外馬勢も、前々走の凱旋門賞でムトトを破って欧州競馬の頂点に立ったトニービンを筆頭に、バーナードバルークHの勝ち馬でマンハッタンH・ターフクラシックS2着・マンノウォーS3着のマイビッグボーイ、AJCダービー・コックスプレート・新ダービー・ニュージーランドS2回・タンクレッドS・アンダーウッドS・コーフィールドS・オーストラリアンCと新国と豪州でGⅠ競走合計9勝を挙げていた新国の歴史的名馬ボーンクラッシャー、アラルポカル・オイロパ賞・独2000ギニー・ウニオンレネンの勝ち馬コンドル、英国際S・ロジャーズ金杯・ダルマイヤー大賞の勝ち馬でデューハーストS・エクリプスS・愛チャンピオンS2着のシェイディハイツ、ブーゲンヴィリアH・オーシャンポートH・ロイヤルパームHの勝ち馬セーラムドライブ、レッドスミスHの勝ち馬でボーリンググリーンH・マンノウォーS2着のペイザバトラーなど、前年と同レベル以上のメンバーが出走していた。タマモクロスが単勝オッズ3.2倍の1番人気、トニービンが単勝オッズ3.9倍の2番人気、オグリキャップが単勝オッズ6.9倍の3番人気と続く一方で、本馬は単勝オッズ17.9倍の10番人気に留まった。
今回のエデリー騎手は最後方待機策を選択し、直線の末脚に全てを賭けた。直線では出走馬中最速タイの末脚を繰り出したから、エデリー騎手の狙いはそれなりに当たったのだが、馬群の中団から本馬と同等の末脚を繰り出した馬達には届かず、勝った単勝オッズ14.9倍の9番人気馬ペイザバトラーから2馬身半差の6着に敗れた。そしてこのレースを最後に、5歳時6戦1勝の成績で競走馬を引退した。
血統
ヴィティージ | Phaeton | Sicambre | Prince Bio | Prince Rose |
Biologie | ||||
Sif | Rialto | |||
Suavita | ||||
Pasquinade | Vandale | Plassy | ||
Vanille | ||||
Mademoiselle Paganini | Loliondo | |||
Mademoiselle Petitpas | ||||
Vale | Verrieres | Palestine | Fair Trial | |
Una | ||||
Serre Chaude | Pharis | |||
Vanda Teres | ||||
Calliopsis | Prince Chevalier | Prince Rose | ||
Chevalerie | ||||
Calluna | Hyperion | |||
Campanula | ||||
Castle Moon | Kalamoun | ゼダーン | Grey Sovereign | Nasrullah |
Kong | ||||
Vareta | Vilmorin | |||
Veronique | ||||
Khairunissa | Prince Bio | Prince Rose | ||
Biologie | ||||
Palariva | Palestine | |||
Rivaz | ||||
Fotheringay | Right Royal | Owen Tudor | Hyperion | |
Mary Tudor | ||||
Bastia | Victrix | |||
Barberybush | ||||
La Fresnes | Court Martial | Fair Trial | ||
Instantaneous | ||||
Pin Stripe | Hyperion | |||
Herringbone |
父ヴィティージは現役成績18戦6勝、ロベールパパン賞(仏GⅠ)・モルニ賞(仏GⅠ)・英チャンピオンS(英GⅠ)に勝ち、サラマンドル賞(仏GⅠ)・英2000ギニー(英GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)で2着している。本馬の活躍を受けて本馬より一足先に日本に種牡馬として輸入されたが、殆ど成功できなかった。ヴィティージの父フェイトンはシカンブル産駒で、パリ大賞・コンデ賞の2勝を挙げている。
母キャッスルムーンは現役成績9戦3勝。繁殖牝馬としては優れた成績を残し、本馬の半弟シェリフズスター(父ポッセ)【コロネーションC(英GⅠ)・サンクルー大賞(仏GⅠ)・キングエドワードⅦ世S(英GⅡ)・グレートヴォルティジュールS(英GⅡ)】、半弟ラッキームーン(父タッチングウッド)【グッドウッドC(英GⅢ)】を産んでいる。キャッスルムーンの半兄にはラグストーン(父ラグーザ)【アスコット金杯(英GⅠ)・ヘンリーⅡ世S(英GⅢ)】が、キャッスルムーンの半姉フォーセイクン(父ボールドラッドIRE)の牝系子孫にはパヴィヨン【リネアヂパウラマシャド大賞(伯GⅠ)・リオデジャネイロ州大賞(伯GⅠ)】、ヴェロドローム【ブラジル大賞(伯GⅠ)】、バローロ【ブラジル大賞(伯GⅠ)】が、キャッスルムーンの半姉ペンクイックジュエル(父ペティンゴ)の孫には欧州競馬史上最強の2歳馬と言われたケルティックスウィング【レーシングポストトロフィー(英GⅠ)・仏ダービー(仏GⅠ)】、曾孫にはレインボーピーク【伊ジョッキークラブ大賞(伊GⅠ)】がいる。キャッスルムーンの母フォザリンゲイの半姉クリンカーズの孫にはエルキート【イタリア大賞(伊GⅠ)・ロワイヤルオーク賞(仏GⅠ)】、曾孫にはミケロッツォ【英セントレジャー(英GⅠ)】がおり、全体的に長距離色の強い牝系である。→牝系:F8号族②
母父カラムーンはカラグロウの項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は日本で種牡馬入りした。初年度の1989年は50頭、2年目は54頭、3年目は50頭、4年目の1992年は45頭の繁殖牝馬を集めた。初年度産駒は1992年にデビューしたが、欧州の重厚な血統が合わなかったのか、それとも気性が激しい産駒が多かったためなのか、これといった活躍馬は出なかった。そのため5年目の交配数は27頭、6年目の1994年は1頭と種牡馬としての需要が無くなり、この1994年12月に仏国に輸出されていった。その後、ようやく代表産駒のメジロスズマル(1996年にオープン特別のカシオペアSで東京優駿の勝ち馬フサイチコンコルドを2着に破って勝利)が登場したが、他に特筆できる産駒は出ず、全日本種牡馬ランキングで100位以内に入ることは無かった。
繁殖牝馬の父としては、きさらぎ賞の勝ち馬マイネルブルックとアイビスサマーダッシュの勝ち馬ケイティラブの兄妹を出したが、マイネルブルックは2004年の東京優駿で故障して予後不良となってしまった(ケイティラブは引退繁殖入りしている)。本馬の半弟シェリフズスターも種牡馬廃用後に二冠馬セイウンスカイが活躍しており、実力はありながら、あまり運に恵まれない一族である。
仏国に輸出された本馬は障害競走馬用種牡馬として供用されたらしいが、2004年頃に種牡馬を引退したらしく現在の消息は伝わってこない。馬肉を食する文化がある仏国の事であるから、やはり半弟シェリフズスターと同じ運命を辿ったのだろうか。