和名:シャーミット |
英名:Shaamit |
1993年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:ムトト |
母:シュームーズ |
母父:ハビタット |
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名馬ムトトの代表産駒として英ダービーを制覇するも、早世したため後継種牡馬に恵まれず父の直系を後世に伸ばす役割は果たせなかった |
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競走成績:2・3歳時に英愛仏で走り通算成績6戦2勝3着1回 |
誕生からデビュー前まで
カリファ・ダスマル氏により生産・所有された愛国産馬で、英国ニューマーケットに厩舎を構えていたウィリアム・ハッガス調教師に預けられた。
競走生活(2歳時)
2歳9月にニューマーケット競馬場で行われた芝8ハロンの未勝利ステークスで、マイケル・ヒルズ騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ21倍で20頭立ての12番人気という低評価だった。レースでは掛かり気味に先行して、残り1ハロン地点からそれなりに粘り、追い込んで勝った単勝オッズ8倍の3番人気馬ヘリコンから3馬身3/4差の4着という結果だった。
次走は11月にドンカスター競馬場で行われた芝8ハロンの未勝利ステークスだった。前走で青さを見せながらも健闘した内容と、本馬自身の成長ぶりが買われて、ここでは単勝オッズ2.625倍で23頭立ての1番人気に支持された。このレースは直線コースだったため、馬群がスタンド側と反対側の2つに分かれたが、ヒルズ騎手が手綱を取る本馬は反対側馬群を先行していた。そして残り2ハロン地点でスパートして、残り1ハロン地点で先頭に立った。同じ馬群からもスタンド側馬群からも本馬を脅かすような馬は現れず、スタンド側馬群を先頭で引っ張った単勝オッズ11倍の4番人気馬クラッシーチーフを3馬身半差の2着に下して完勝した。2歳時の成績は2戦1勝だった。
英ダービー
3歳時は、5月のダンテSを叩いてから6月の英ダービーに向かう計画だった。ところが脚の負傷のためダンテSには出走できず、結局ぶっつけ本番で英ダービー(英GⅠ・T12F10Y)に出走する羽目になった。対戦相手は、3年前の英ダービー馬コマンダーインチーフの半弟であるサドラーズウェルズ産駒のダンテS2着馬ダシヤンター、タタソールSの勝ち馬で英2000ギニー・レーシングポストトロフィー2着のイーヴントップ、伊グランクリテリウム・ダンテSの勝ち馬でサンダウンクラシックトライアルS2着のグローリーオブダンサー、デューハーストS・英シャンペンS・ヴィンテージS・ソラリオSなど2歳時5戦全勝の成績でカルティエ賞最優秀2歳牡馬に選ばれていたアルハース、名種牡馬ストームバードの甥に当たるフェイルデンSの勝ち馬ストームトルーパー、リングフィールドダービートライアルSを勝ってきたミスティックナイト、未勝利ステークスと条件ステークスを連続圧勝してきた名馬エルグランセニョールの従兄弟に当たるチーフコンテンダー、チェスターヴァーズ2着馬セントモーズ、英国牝馬三冠馬オーソーシャープの孫に当たるシャントゥ、ロイヤルロッジS・ダンテS3着のジャックジェニングス、ホーリスヒルS2着馬ビジーフライト、チェスターヴァーズ3着馬プリンスオブマイハート、リングフィールドダービートライアルS3着馬ザフォーラムなど19頭だった。
その血統背景が評価されたダシヤンターが単勝オッズ5.5倍の1番人気、イーヴントップが単勝オッズ6.5倍の2番人気、グローリーオブダンサーが単勝オッズ7倍の3番人気、ストームトルーパーとクレイヴンS2着・英2000ギニー4着と調子下降気味のアルハースの2頭が並んで単勝オッズ8.5倍の4番人気で、ヒルズ騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ13倍の6番人気だった。
本馬は過去の実績やあまり英ダービー向きとも思えない血統の割には人気を集めたが、それには同競走を9勝していたレスター・ピゴット元騎手の発言が影響しているようである。この一昨年に完全に騎手を引退していたピゴット元騎手だったが、競馬界から完全に離れたわけではなく、自身の義理の息子であるハッガス師の管理馬の調教を手伝っていた。そして4月の調教で本馬に跨ったピゴット元騎手は、「素晴らしい馬です。ダービーでも勝負になるでしょう」と語ったのだった。元々ハッガス師は本馬を英ダービーに出走させる予定は無かったのだが、義父の勧めを受けて、ダンテSを叩いて英ダービーに参戦させる計画を立てたのだった。ピゴット元騎手はレース前に行われたテレビインタビューでも、本馬を推していたという。
この英ダービー当日は、この年に初めてイングランドで開催された欧州サッカー連盟(UEFA)主催の欧州選手権(EURO)の開幕日と重なっており、レースと開幕戦が同じ時間帯にならないように、英ダービーは通常よりかなり早い時間帯で行われた。そのために例年の英ダービーとはどことなく雰囲気が違っていたという。そんな中でスタートが切られると単勝オッズ26倍の11番人気馬ジャックジェニングスが先頭に立って馬群を牽引し、本馬は馬群の中団好位につけた。そのままの態勢で直線に入ると、すぐにグローリーオブダンサーが先頭に立って押し切ろうとした。しかしそこへ6番手で直線に入ってきた本馬が外側から追い上げてきて、残り1ハロン半地点でグローリーオブダンサーを抜き去っていった。最後はゴール前で追い上げてきた2着ダシヤンターに1馬身1/4差、3着シャントゥにもさらに1馬身1/4差をつけて優勝。前年のラムタラに続くシーズン初戦の馬による英ダービー制覇となった。
競走生活(3歳後半)
その後は愛ダービーに参戦する計画で、追加登録料も支払ったが、またも脚を負傷したために結局回避する羽目になってしまった。
その代わりにキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)に出走した。対戦相手は、愛チャンピオンS・キングエドワードⅦ世S・グレートヴォルティジュールS・サンダウンクラシックトライアルSの勝ち馬で前年の同競走ではラムタラの首差2着・前走のエクリプスSではホーリングの3着だったペンタイア、英セントレジャー・アスコット金杯・ダンテS・ヨークシャーCを勝っていた目下3連勝中のクラシッククリシェ、愛セントレジャー・ミラノ大賞・ジョンポーターSの勝ち馬で前年の同競走とミラノ大賞で3着していたストラテジックチョイス、オーモンドS・ハードウィックSを連勝してきた愛セントレジャー3着馬オスカーシンドラー、前走のパリ大賞で4位入線6着降着となっていたファラサン、伊ダービー・エリントン賞・チェスターヴァーズ・アールオブセフトンSの勝ち馬でサンクルー大賞・ガネー賞・ミラノ大賞2着のルソー、レーシングポストトロフィー・ジャンプラ賞2着・愛ダービー・英国際S3着のアヌスミラビリスの計7頭だった。
ヒルズ騎手はペンタイアの主戦でもあり、彼は本馬とペンタイアのどちらに乗るか決断を迫られたが、最終的にはペンタイアを選択。そのために本馬にはパット・エデリー騎手が騎乗することになった。父ムトトとの父子制覇が懸かる本馬が騎手の乗り代わりにも関わらず単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、ペンタイアが単勝オッズ4.33倍の2番人気、クラシッククリシェが単勝オッズ6倍の3番人気、ストラテジックチョイスが単勝オッズ8倍の4番人気、オスカーシンドラーが単勝オッズ11倍の5番人気となった。
スタートが切られるとクラシッククリシェと同厩のアヌスミラビリスがペースメーカー役として逃げを打ち、クラシッククリシェが先行、本馬は好位、スタートで出負けしたペンタイアは後方からレースを進めた。直線に入ると残り2ハロン地点でクラシッククリシェが先頭に立ち、それを本馬が追撃した。しかしクラシッククリシェに追いつく前に、後方からやってきたペンタイアに残り1ハロン地点で2頭まとめてかわされた。結局クラシッククリシェにも首差及ばなかった本馬は、勝ったペンタイアから2馬身差の3着に敗れた(4着オスカーシンドラーには10馬身差をつけていた)。
その後は9月の愛チャンピオンS(愛GⅠ・T10F)に向かった。対戦相手は、ダルマイヤー大賞・ビヴァリーDS・オペラ賞・EPテイラーS・愛メイトロンSの勝ち馬ティマリダ、愛オークス・プリティポリーSの勝ち馬で愛1000ギニー2着・コロネーションS3着のダンスデザイン、ローズオブランカスターSの勝ち馬タマヤズ、英ダービー4着後に出走したパリ大賞で2着だったグローリーオブダンサー、グラッドネスS・バリーコーラスS・メルドS・デスモンドSとこの年だけで愛国のGⅢ競走を4勝していたイドリスの計5頭だった。ヒルズ騎手が鞍上に戻ってきた本馬が単勝オッズ2.25倍の1番人気、ティマリダが単勝オッズ4倍の2番人気、ダンスデザインが単勝オッズ5.5倍の3番人気、タマヤズが単勝オッズ7倍の4番人気となった。
スタートが切られるとダンスデザインが先頭に立ち、タマヤズが2番手、本馬は馬群の中団、ティマリダはさらに後方につけた。ダンスデザインが刻んだペースはかなり遅く、各馬が団子状態で直線に入ると、ここからの瞬発力勝負になった。3番手で直線に入った本馬は内埒沿いに脚を伸ばしたが、本馬の後方から来たティマリダやグローリーオブダンサーの末脚のほうが勝っていた上に、二の脚を使ったダンスデザインにも追いつけず、勝ったティマリダから3馬身1/4差の4着に敗れた。
その後は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)へと向かった。対戦相手は、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS勝利後に出走したフォワ賞で2着だったペンタイア、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS2着から直行してきたクラシッククリシェ、同4着後に愛セントレジャーを勝っていたオスカーシンドラー、リュパン賞・サンクルー大賞・ノアイユ賞・ニエル賞の勝ち馬エリシオ、コロネーションC・ドーヴィル大賞・リス賞・フォワ賞の勝ち馬でサンクルー大賞2着・前年の凱旋門賞・ガネー賞3着のスウェイン、前年の英ダービーでラムタラの1馬身差2着していたプランスドランジュ賞の勝ち馬タムレ、本馬不在の愛ダービーを勝っていたザグレブ、モーリスドニュイユ賞の勝ち馬ダラザリ、バーデン大賞・ブリガディアジェラードS・ロイヤルホイップSの勝ち馬ピルサドスキー、クリテリウムドサンクルー・リッチモンドSの勝ち馬で愛ナショナルS・仏ダービー・愛ダービー2着のポラリスフライト、サンタラリ賞・ノネット賞・ヴァントー賞の勝ち馬ルナウェルズなど15頭だった。
エリシオが単勝オッズ2.8倍の1番人気、スウェイン、タムレ、クラシッククリシェの3頭カップリングが単勝オッズ3.5倍の2番人気、ザグレブが単勝オッズ7.6倍の3番人気、ペンタイアが単勝オッズ8.3倍の4番人気、ダラザリが単勝オッズ9倍の5番人気、オスカーシンドラーが単勝オッズ15.8倍の6番人気で、ここでもヒルズ騎手をペンタイアに取られたためにエデリー騎手が騎乗した本馬は単勝オッズ23倍の7番人気という低評価だった。
スタートが切られると1番人気のエリシオが果敢に先頭に立ち、2番手のピルサドスキー以下を引き連れて馬群を牽引。本馬は馬群の中団やや後方につけた。そして9番手で直線に入ってきたが、レースはエリシオが二の脚を使って後続をぐんぐん引き離し、ピルサドスキーが2番手で粘り続けるという前残りの展開となってしまい、末脚不発に終わった本馬は、勝ったエリシオから9馬身差の7着に敗退。このレース後に脚の負傷が判明したため、3歳時4戦1勝の成績で競走馬を引退した。
血統
Mtoto | Busted | Crepello | Donatello | Blenheim |
Delleana | ||||
Crepuscule | Mieuxce | |||
Red Sunset | ||||
Sans le Sou | ヴィミー | Wild Risk | ||
Mimi | ||||
Martial Loan | Court Martial | |||
Loan | ||||
Amazer | ミンシオ | Relic | War Relic | |
Bridal Colors | ||||
Merise | Le Pacha | |||
Miraflore | ||||
Alzara | Alycidon | Donatello | ||
Aurora | ||||
Zabara | Persian Gulf | |||
Samovar | ||||
シュームーズ | Habitat | Sir Gaylord | Turn-to | Royal Charger |
Source Sucree | ||||
Somethingroyal | Princequillo | |||
Imperatrice | ||||
Little Hut | Occupy | Bull Dog | ||
Miss Bunting | ||||
Savage Beauty | Challenger | |||
Khara | ||||
Epithet | Mill Reef | Never Bend | Nasrullah | |
Lalun | ||||
Milan Mill | Princequillo | |||
Virginia Water | ||||
Namecaller | Malicious | Helioscope | ||
Blackball | ||||
Fool's Folly | Tom Fool | |||
Folie Douce |
父ムトトは当馬の項を参照。
母シュームーズは愛国産の不出走馬。本馬が英ダービーを勝った直後に日本に繁殖牝馬として輸入された。しかし結局本馬以外に活躍馬を産むことは出来なかった。牝系は日本で続いているが、活躍馬は出ていない。シュームーズの近親にも活躍馬は乏しく、ある程度離れないと活躍馬の名前は出てこない。シュームーズの曾祖母フールズフォリーの半姉にミカリーナ【ヴェルメイユ賞】、全妹にスウィートフォリー【ガゼルH・レディーズH】が、フールズフォリーの半姉オールドイングランドの曾孫にヴィジョンデタ【仏ダービー(仏GⅠ)・ガネー賞(仏GⅠ)・プリンスオブウェールズS(英GⅠ)・香港C(香GⅠ)】が、フールズフォリーの半姉ペルオキシドブロンドの子にステージドアジョニー【ベルモントS・ドワイヤーH】が、フールズフォリーの母フォリードゥースの半妹マンドリナの曾孫にベタートークナウ【BCターフ(米GⅠ)・ソードダンサー招待H(米GⅠ)・ユナイテッドネーションズS(米GⅠ)・マンノウォーS(米GⅠ)・マンハッタンH(米GⅠ)】がいる。→牝系:F1号族④
母父ハビタットは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は英国ニューマーケットのナショナルスタッドで種牡馬入りした。本馬より前5世代の英ダービー馬、ジェネラス、ドクターデヴィアス、コマンダーインチーフ、エルハーブ、ラムタラは悉く日本に輸出されており、さすがにそろそろ輸出は控えるべきだとの判断があったとも言われる。種牡馬入り2年目の1998年には南アフリカにシャトルされた。欧州で供用されている種牡馬が南アフリカにシャトルされたのは本馬が初めての例だという。2000年には北アイルランドのダウン州にあるスカーヴァハウススタッド(後にはジェネラスやエリシオも日本を放逐されて最終的にはこの牧場にやってくる)に移動して、平地兼障害用種牡馬として供用された。しかし翌2001年4月に胃破裂及び腸内出血のため8歳で早世した。代表産駒のボーエンエリックは障害用種牡馬として供用されており、他に後継種牡馬もいないため、本馬や父ムトトの直系が途絶えることはほぼ確実な情勢となってしまっている。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1999 |
Bollin Eric |
英セントレジャー(英GⅠ)・ロンズデールS(英GⅢ) |