ゴーストザッパー

和名:ゴーストザッパー

英名:Ghostzapper

2000年生

鹿毛

父:オーサムアゲイン

母:ベビージップ

母父:リローンチ

短距離路線のトップホースだったが10ハロン路線へ転進しBCクラシックをレースレコードで圧勝した21世紀初頭の米国最強馬

競走成績:2~5歳時に米で走り通算成績11戦9勝3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州アデナスプリングスファームの生産馬で、同牧場の所有者フランク・ストロナック氏のストロナックステーブルス名義で競走馬となり、米国ロバート・J・フランケル調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳11月にハリウッドパーク競馬場で行われたダート6.5ハロンの未勝利戦で、ホセ・ヴァルディヴィア・ジュニア騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ12.5倍で10頭立ての6番人気という低評価だった。レースでは先行馬群の4番手につけると、直線入り口で先頭に立った。そして直線だけで後続馬をちぎり捨てて、2着となった単勝オッズ2.4倍の1番人気馬ビニーズトリックに9馬身差をつける圧勝劇を収め、鮮烈なデビューを飾った。

翌月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート6ハロンの一般競走では、単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気に支持された。しかしここではスタートで他馬によられて後手を踏んでしまい、馬群の中団を走ることになった。そして最後まで伸びずに、勝った単勝オッズ5.4倍の2番人気馬スクリムショーから7馬身半差の4着に敗退。2歳時は2戦1勝の成績となった。

競走生活(3歳時)

3歳時は6月にベルモントパーク競馬場で行われたダート6ハロンの一般競走で復帰して、単勝オッズ1.95倍の1番人気に支持された。ここで初めて本馬に騎乗したハビエル・カステリャーノ騎手は、本馬を他馬勢から大きく離れた最後方に位置取らせた。しかし三角から前との差を詰めると、直線では鮮やかな差し切りを決めて、2着アズウィックドに3馬身1/4差をつけて勝利した。このレースから本馬の主戦はカステリャーノ騎手が務める事になった。

翌月に出たサラトガ競馬場ダート7ハロンの一般競走では、単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持された。ここでは馬群の中団3番手を進み、直線に入ってから先頭に立った。そこへ後のフォアゴーH2着馬クロックストッパーが後方からやってきて、本馬との叩き合いに持ち込んできた。しかし本馬が粘り切り、半馬身差で勝利した。

続いて出走したのは米国の重要な短距離戦の1つであるキングズビショップS(GⅠ・D7F)だった。さすがに対戦相手の層は厚く、トレモントS・サラトガスペシャルS・アムステルダムSの勝ち馬ザヴァタ、ケンタッキーBCS・ラファイエットS・リヴァリッジBCSの勝ち馬ポッセ、アファームドHの勝ち馬アイオブザタイガー、サプリングS・キャリーバックSの勝ち馬ヴァリッドビデオ、一般競走で本馬を破った後にレキシントンSを勝っていたスクリムショー、スワップスSの勝ち馬デュアリング、ベイショアSの勝ち馬ヘイローホームレッカー、レナードリチャーズSの勝ち馬オーサムタイム、サウスウエストSの勝ち馬グレートノーションなどが参戦してきた。ザヴァタが単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ7.3倍の2番人気となった。レースでは単勝オッズ17.7倍の6番人気馬グレートノーションがかなりのハイペースで逃げを打ち、短距離戦の割には馬群が縦長となった。後方につけていた本馬は、直線入り口8番手から猛然と追い込んできたが、好位から抜け出した単勝オッズ8.8倍の5番人気馬ヴァリッドビデオと、逃げ粘ったグレートノーションの2頭に僅かに届かず、勝ったヴァリッドビデオから半馬身差の3着と惜敗した。

次走は、キングズビショップSの創設前から既にGⅠ競走となっていた、キングズビショップS以上に重要な短距離競走ヴォスバーグS(GⅠ・D6.5F)となった。当然出走馬のレベルは高く、前年のキングズビショップS・リヴァリッジBCS・ドワイヤーSを勝っていたガイジスター、カーターHの勝ち馬ピーピングトム、カーターH2着馬ヴードゥー、前走5着のポッセ、亜国から移籍してきて目下3連勝中のアヘドレスなどが参戦してきた。ガイジスターが単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ4.1倍の2番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ8.9倍の4番人気馬ヴードゥーがハイペースで先頭を引っ張り、やはり馬群が縦長となった。そして本馬は前走以上に行き脚がつかず、最後方の位置取りとなってしまった。直線入り口でもまだ後方だったが、ここからとんでもない豪脚を披露。瞬く間に他馬をごぼう抜きにして先頭に躍り出た後も勢いは衰えず、最後は2着に粘った単勝オッズ64.25倍の最低人気馬アガダンに6馬身半差をつける圧勝劇を演じた。

しかしその後に裂蹄を発症したため、この年はそのまま4戦3勝の成績で休養入りした。

競走生活(4歳時)

4歳時は脚部不安がなかなか改善しなかったため、復帰戦は約9か月ぶりとなる7月のトムフールH(GⅡ・D7F)となった。対戦相手は、ディスカヴァリーH・ジェネラルジョージHで2着のアンフォゲッタブルマックス、ハッチソンS・リヒタースケイルBCスプリントCS・コモンウェルスBCSの勝ち馬ライオンテイマー、アガダンの3頭だけであり、本馬が単勝オッズ2.35倍の1番人気に支持された。出走頭数が少ないだけに今回は縦長にはならず、全馬が一団となってレースが進行した。直線に入る前に馬群の中から飛び出してきたのは、馬群の真ん中で様子を見ていた本馬だった。そして直線では後続馬を寄せ付けず、2着アガダンに4馬身半差をつけて完勝。それほど前半が速いペースでなかったにも関わらず、勝ちタイム1分20秒42はコースレコードに0秒46届かないだけという優秀なものだった。

この時点における関係者大半の本馬に対する評価は短距離馬というものであったが、それでもフランケル師だけは距離延長可能であるとして、この年の最大目標をBCクラシックに据えていた。

しかし過去に7ハロンより長い距離のレースに出たことが無かったので、フランケル師は本馬の次走を翌8月のフィリップHアイズリンBCH(GⅢ・D9F)とした。対戦相手は、サルヴェイターマイルHを勝ってきたプレジデンシャルアフェアーなど3頭だけだった。本馬は120ポンドのトップハンデであり、しかも過去に短距離路線のトップを走ってきただけに距離を不安視する向きもあった。それでも本馬は単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持されたが、2番人気のプレジデンシャルアフェアーも単勝オッズ2.7倍であり、抜けた人気というわけにはいかなかった。

スタミナを要する泥んこ不良馬場で行われたレースでは、プレジデンシャルアフェアーが先頭に立ち、本馬が2番手、単勝オッズ8.3倍の3番人気馬プライヴェートラップが3番手で、大きく離れた最後方を単勝オッズ24.7倍の最低人気馬ゾフィンガーが走る展開となった。四角ではプライヴェートラップとゾフィンガーの2頭は完全に圏外に去り、本馬とプレジデンシャルアフェアーが並んで直線に入ってきた。しかしここから本馬がプレジデンシャルアフェアーとの差を広げ始めた。そして最後は完全な独走状態となり、2着プレジデンシャルアフェアーに10馬身3/4差をつける圧倒的な勝利を収めた。プレジデンシャルアフェアーも別に凡走したわけではなく3着ゾフィンガーには21馬身1/4差をつけていたから、ただただ本馬の強さだけが目立つ結果となった。このレースにおける本馬に走りに対して、米国の競馬評論家アンドリュー・ベイヤー氏が考案したスピード指数(ベイヤー指数)においては128の数値が与えられ、これは短距離戦以外では史上最高値だった。

次走は翌9月のウッドワードS(GⅠ・D9F)となった。カナディアンターフH・スキップアウェイHの勝ち馬でサバーバンH2着のニューファンドランド、ベンアリSの勝ち馬でプリークネスS2着のミッドウェイロード、メドウランズカップBCSの勝ち馬でオークローンH・メトロポリタンH2着のボウマンズバンド、ニューオーリンズH2着・オークローンH3着のセイントリアム、プレジデンシャルアフェアーなどが対戦相手となったが、既に同距離の前走でスタミナ面の不安を払拭していた本馬が単勝オッズ1.4倍という圧倒的な1番人気に支持された。

スタートが切られると、単勝オッズ12.7倍の5番人気馬セイントリアムが先手を奪い、本馬はそれを見るように追走。向こう正面まではプレジデンシャルアフェアーなどの他馬もこの2頭に絡んでいたが、三角からはこの2頭が後続を引き離して完全な一騎打ちとなった。四角で2頭揃って大外に大きく膨らんだために後続にやや差を縮められたが、直線に入ると再び後続を引き離して結局この2頭の勝負となった。直線では後続を10馬身近くも引き離す一騎打ちとなり、最後は本馬がセイントリアムを競り落として首差で勝利。前走フィリップHアイズリンBCHとは異なり良馬場だったとはいえ、勝ちタイム1分46秒38は、前走の1分47秒66より1秒28も早いもので、さらなる距離延長可能という目算が立った。なお、このレースで惜しくも敗れたセイントリアムはここから急上昇して、翌年にはエクリプス賞年度代表馬に選ばれるまでになる。

BCクラシック

そして本馬はローンスターパーク競馬場で行われたBCクラシック(GⅠ・D10F)に出走した。前年のBCクラシックと半年前のドバイワールドCに加えてパシフィッククラシックS・グッドウッドBCH2回・サンアントニオHを勝っていた当時世界最強ダート馬のプレザントリーパーフェクトスマーティジョーンズの無敗の米国三冠達成を阻止したこの年のベルモントS以外にもシャンペンS・トラヴァーズSを勝っていたバードストーン、前年のケンタッキーダービー・プリークネスSと前走のジョッキークラブ金杯を勝っていたファニーサイド、ホイットニーH・ケンタッキーCクラシックH・コーンハスカーBCHなど5連勝で臨んできたロージズインメイ、スティーヴンフォスターH・レーンズエンドS・ワシントンパークH・ケンタッキーCクラシックH・ホーソーン金杯の勝ち馬でホイットニーH・パシフィッククラシックSなど4戦連続2着中のパーフェクトドリフト、BCディスタフ・サンタマルガリータ招待H・アップルブロッサムH3回・ミレイディBCH2回・ヴァニティH2回・ゴーフォーワンドH・スピンスターSとGⅠ競走11勝を挙げていた一昨年のエクリプス賞年度代表馬アゼリ、ローンスターダービー・サンバーナーディノHの勝ち馬で前年のBCクラシック3着のダイネヴァー、ウッドワードS5着後に出走したジョッキークラブ金杯では2着だったニューファンドランド、ケルソBCH・ホーソーン金杯Hの勝ち馬フリーフォーインターネット、スーパーダービーを勝ってきたファンタスティキャット、ウッドワードS3着後に出走したジョッキークラブ金杯では5着だったボウマンズバンド、それに日本からもダービーグランプリを9馬身差で圧勝してきたパーソナルラッシュが参戦してきて、本馬を含めて合計13頭による戦いとなった。

本馬とプレザントリーパーフェクトの2頭が並んで単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、バードストーンが単勝オッズ7.5倍の3番人気、ファニーサイドが単勝オッズ8.7倍の4番人気、ロージズインメイが単勝オッズ9.7倍の5番人気と続いた。

本馬鞍上のカステリャーノ騎手はブリーダーズカップで未勝利の身だったが、レースはまさに本馬とカステリャーノ騎手の独壇場となった。絶好のスタートからすぐに先頭に立ち、アゼリやロージズインメイを引き連れてハイラップの逃げを打った。道中は馬群を引き付けて逃げていたが、そのまま先頭で直線に入ると二の脚を使って後続を引き離した。最後は、2着ロージズインメイに3馬身差、3着プレザントリーパーフェクトにはさらに4馬身差をつけ、1分59秒02という、現在でもBCクラシック史上最速という好タイムで圧勝した(パーソナルラッシュは本馬から11馬身3/4差の6着だった)。

管理するフランケル師はブリーダーズカップにおける成績が悪く、過去に管理馬を61回出走させて勝ったのは2001年BCスプリントのスクワートルスクワート、2002年BCフィリー&メアターフのスタリーンの2回だけ(この年のブリーダーズカップでも前日に管理馬が4回出走して全敗していた)であり、本馬はフランケル師の悪いジンクスをも打ち破って見せた。

これが4歳時最後のレースで、この年の成績は4戦全勝となった。僅か4戦ではあったが、その圧倒的な内容が評価されて、エクリプス賞最優秀古馬牡馬だけでなく、スマーティジョーンズを抑えてエクリプス賞年度代表馬も受賞した。また、ワールド・サラブレッド・レースホース・ランキングでは130ポンド、英タイムフォーム社のレーティングでは137ポンドという、共にこの年の世界最高値となる評価を得た。

競走生活(5歳時)

BCクラシックを最後に引退するという噂もあったが、馬主ストロナック氏が本馬はまだ底を見せていないと判断したために翌年も現役を続行した(種牡馬入りしていればストロナック氏は1年間で優に1000万ドルの利益が得られたが、現役続行したために彼は財政難に陥ったという)。

5歳時はドバイワールドCには参戦せず、5月末のメトロポリタンH(GⅠ・D8F)から始動した。その理由は、距離が保つとは言っても本馬はやはり短距離馬であると陣営は考えていたため、復帰戦の距離としてはマイルくらいがちょうど良いと思われたからだという。カーターH勝ちなど5戦4勝の新星フォレストデンジャー、ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬ラヴオブマネー、前年のキングズビショップSを勝っていたポメロイ、リヒタースケイルBCスプリントCSなどの勝ち馬サーシャクルトン、ホープフルSの勝ち馬シルヴァーワゴンの5頭が対戦相手となった。123ポンドのトップハンデだった本馬が単勝オッズ1.65倍の1番人気に支持され、118ポンドのフォレストデンジャーが単勝オッズ3倍の2番人気、116ポンドのラヴオブマネーが単勝オッズ11.6倍の3番人気となった。

本馬はスタート前に焦れ込んでゲート入りを嫌がる素振りを見せていた。スタートが切られると、ラヴオブマネーとフォレストデンジャーの2頭が先頭に立ち、本馬は3番手につけた。4番手以下を大きく引き離してこの3頭が先行していたが、三角でラヴオブマネーとフォレストデンジャーが遅れ始めると、ここで仕掛けた本馬の独走となった。直線入り口では既に勝負はついており、2着に突っ込んできた単勝オッズ36倍の最低人気馬シルヴァーワゴンに6馬身1/4差をつけ、1分33秒29という快タイムで圧勝した。

しかしこの2週間後に左前脚種子骨の骨折が判明。骨折自体は軽度だったが、治療に長期間を要することから現役引退が決定した。

競走馬としての評価

本馬は短距離戦を圧勝できるスピードに加えて、10ハロンを逃げ切れるほどのスタミナを併せ持った名馬で、21世紀における米国最強馬に挙げる人も多い。米ブラッドホース誌の編集長スティーヴ・ハスキン氏は「これほど幅広い距離で様々な戦法を用いて、あんなに速いタイムで他馬を蹴散らした馬は滅多にいません」と評している。米国競馬名誉の殿堂博物館のウェブサイトにも、21世紀初めの10年間において最高の競走馬の1頭だったと記載されている。

血統

Awesome Again Deputy Minister Vice Regent Northern Dancer Nearctic
Natalma
Victoria Regina Menetrier
Victoriana
Mint Copy Bunty's Flight Bunty Lawless
Broomflight
Shakney Jabneh
Grass Shack
Primal Force Blushing Groom Red God Nasrullah
Spring Run
Runaway Bride Wild Risk
Aimee
Prime Prospect Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Square Generation Olden Times
Chavalon
Baby Zip Relaunch In Reality Intentionally Intent
My Recipe
My Dear Girl Rough'n Tumble
Iltis
Foggy Note The Axe Mahmoud
Blackball
Silver Song Royal Note
Beadah
Thirty Zip Tri Jet Jester Tom Fool
Golden Apple
Haze Olympia
Blue Castle
Sailaway Hawaii Utrillo
Ethane
Quick Wit Shannon
Witty

オーサムアゲインは当馬の項を参照。

母ベビージップは米国で走りカテガットプライドS勝ちなど16戦4勝の成績を挙げた。かなり優秀な繁殖成績を収めており、本馬の半兄シティジップ(父カーソンシティ)【ホープフルS(米GⅠ)・サンフォードS(米GⅡ)・サラトガスペシャルS(米GⅡ)・アムステルダムS(米GⅡ)・トレモントS(米GⅢ)・ジャージーショアBCS(米GⅢ)】、半弟シティウルフ(父ジャイアンツコーズウェイ)【ダーラムカップS(加GⅢ)】などを産み、2005年のケンタッキー州最優秀繁殖牝馬に選ばれている。本馬の半姉ゲッタウェイガール(父シルヴァーデピュティ)の子にはノーザンコーズウェイ【ブリティッシュコロンビアダービー(加GⅢ)】がいる。ベビージップの半妹マティーケイト(父メジャーインパクト)の孫にはタッチングプロミス【バレリーナS(加GⅢ)】、リアリーミスターグリーリー【ハリウッドプレビューS(米GⅢ)】が、ベビージップの半妹リュセット(父デイジュール)の子にはエヴリデイヒーローズ【ハーシュジェイコブズS(米GⅢ)】がいる。

ベビージップの母サーティジップの半姉エイリーンズモーメントの子にはリルイーティー【ケンタッキーダービー(米GⅠ)・ジムビームS(米GⅡ)・レイザーバックH(米GⅡ)】がいる。母系は米国三冠馬アファームドと同じだが、本馬の近親と言うにはやや遠い(本馬の5代母とアファームドの曾祖母が半姉妹)。→牝系:F23号族②

母父リローンチは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はアデナスプリングスファームで種牡馬入りした(種牡馬権利の3分の1はストーンストリートステーブルスのジェス・ストーンストリート・ジャクソン・ジュニア氏がストロナック氏から購入)。同じアデナスプリングスファームに繋養されている父オーサムアゲインの後継種牡馬として大きく期待され、初年度の種付け料は(子馬が無事に産まれた場合という条件下で)20万ドルに設定され、これは種牡馬入り初年度の種付け料としては米国競馬史上最高価格だった。それでも初年度は111頭の繁殖牝馬を集めたという事は、如何に本馬の評価が高かったかを示している。さすがに翌年の種付け料は減額されたが、それでも同条件で15万ドルという高額だった。

初年度産駒は2009年にデビューした。しかし初年度産駒の2歳時における成績が今ひとつだった(ステークスウイナーが1頭のみ)ため、2010年の種付け料は同条件で3万ドルまで減額された。しかし当初は不振だった産駒成績は徐々に上昇傾向にあり、複数のGⅠ競走勝ち馬を含む多くのステークスウイナーを輩出している。それに伴い種付け料も回復傾向にあり、2012年は4万ドル、2014年は5万ドル、2015年は6万ドルまで上昇している。本馬自身が古馬になって大成した馬であり、産駒もそれほど仕上がりは早くないようである。あと、牡馬よりも牝馬の活躍のほうが目立っている。

2012年に米国競馬の殿堂入りを果たした。ただし、米国の競馬作家で殿堂入り投票者の1人だったビル・フィンリー氏のように、本馬はフランケル師から大切に扱われすぎて競走馬としての経歴が少なすぎるから顕彰馬には相応しくないとする人もいる。フィンリー氏は、殿堂入りするために何回走らなければいけないかの答えを私は知らないが、(本馬の経歴である)11戦より多いのは確かだとして、最近の競走馬は一瞬の輝きを見せた馬ばかりで、35戦も40戦もした過去の歴戦の名馬達と比較できる馬はいないと主張している。筆者も10戦程度して早々に引退する馬よりも長年に渡ってファンの前で走り続ける馬のほうが好みであるため、フィンリー氏の考えも分からなくは無いが、世の中には時代の流れというものが存在する以上、昔の馬と今の馬を同じ基準で比較することはやはり間違っていると考える。短い経歴でも十分に内容が濃い競走馬は、それはそれで評価されるべきであり、本馬が顕彰馬に相応しくないとは特に思わない。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2007

Arena Elvira

フォールズシティH(米GⅡ)・ターンバックジアラームS(米GⅢ)

2007

Hunters Bay

エクリプスS(加GⅢ)・ドミニオンデイS(加GⅢ)

2007

La Cloche

アシーニアS(米GⅢ)

2007

Pacific Ocean

ヴァーノンOアンダーウッドS(米GⅢ)・ジェームズマーヴィンS(米GⅢ)

2007

Stately Victor

ブルーグラスS(米GⅠ)

2008

Matthewsburg

ケンタッキーCスプリントS(米GⅢ)

2008

Mystical Star

ニューヨークS(米GⅡ)

2008

Schiaparelli

ロイヤルヒロインマイル(米GⅡ)

2008

Za Approval

アップルトンS(米GⅢ)・レッドバンクS(米GⅢ)・ニッカボッカーS(米GⅢ)

2009

Angel Terrace

ヴァリービューS(米GⅢ)

2009

Better Lucky

メイトリアークS(米GⅠ)・ファーストレディS(米GⅠ)・サンズポイントS(米GⅡ)

2009

Contested

エイコーンS(米GⅠ)・テストS(米GⅠ)・エイトベルズS(米GⅢ)

2009

Judy the Beauty

BCフィリー&メアスプリント(米GⅠ)・マディソンS(米GⅠ)・サラブレッドクラブオブアメリカS(米GⅡ)・ラスフローレスS(米GⅢ)・ランチョベルナルドH(米GⅢ)

2009

Molly Morgan

ラトロワンヌS(米GⅠ)・チルッキS(米GⅡ)・フルールドリスH(米GⅢ)・ガーデニアS(米GⅢ)

2009

Starship Truffles

プリンセスルーニーH(米GⅠ)

2009

United Color

テュディニ賞(伊GⅢ)

2009

Wine Princess

フォールズシティH(米GⅡ)・モンマスオークス(米GⅢ)

2009

ワイルドフラッパー

エンプレス杯(GⅡ)・レディスプレリュード(GⅡ)・マリーンC(GⅢ)

2010

Hear the Ghost

サンフェリペS(米GⅡ)

2010

Moreno

ホイットニーH(米GⅠ)・ドワイヤーS(米GⅡ)・チャールズタウンクラシックS(米GⅡ)

2011

Mr Maybe

レッドスミスH(米GⅢ)

2012

Paulassilverlining

メイトロンS(米GⅡ)

2012

Shaman Ghost

クイーンズプレート・マリーンS(加GⅢ)

2012

Whiskey Ticket

イリノイダービー(米GⅢ)

2013

Gamble's Ghost

マザリーンS(加GⅢ)

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