和名:ハビブティ |
英名:Habibti |
1980年生 |
牝 |
黒鹿 |
父:ハビタット |
母:クレアッサ |
母父:クレイロン |
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英国主要短距離グループ競走を総なめにし、短距離馬及び3歳牝馬として英国競馬史上有数の評価を得た快速牝馬 |
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競走成績:2~4歳時に英愛仏で走り通算成績17戦9勝2着2回3着4回 |
誕生からデビュー前まで
愛国の馬産家ジョン・コステロ氏により生産された愛国産馬で、1歳時のセリでモハメド・ムタワ氏により14万ギニーで購入された。英国の名伯楽ジョン・L・ダンロップ調教師に預けられ、主戦はウィリー・カーソン騎手が務めた。あまり気性が良い馬では無かったようで、調教は困難だったとされる。
競走生活(2歳時)
2歳7月にアスコット競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスでデビューして勝利。次走のロウザーS(英GⅡ・T6F)では、プリンセスマーガレットSを勝ってきた後の第1回BCマイル勝ち馬ロイヤルヒロインと激突した。しかし単勝オッズ3.75倍の1番人気(単勝オッズ5倍とする資料もある)に支持された本馬が、ロイヤルヒロインを1馬身半差の2着に下して人気に応えた。次走のモイグレアスタッドS(愛GⅡ・T6F)では、カーソン騎手ではなくデクラン・ガレスピー騎手とコンビを組み、2着ミネリに1馬身半差、3着となった後の好敵手コミッティドにもさらに1馬身半差をつけて勝利。2歳時の成績は3戦全勝となった。
競走生活(3歳時)
3歳時は英1000ギニーの前哨戦フレッドダーリンS(英GⅢ・T7F)から始動したが、ゴール前で失速して、マルセルブサック賞の勝ち馬グッバイシェリーの3着に敗退した。単勝オッズ11倍の3番人気で迎えた本番の英1000ギニー(英GⅠ・T8F)では、ロベールパパン賞・チェヴァリーパークSの勝ち馬でモルニ賞3着のマビッシュが勝利を収め、ロイヤルヒロインが2馬身半差の2位入線、ネルグウィンSの勝ち馬でチェヴァリーパークS2着のフェイヴォリッジがさらに1馬身半差の3位入線で、本馬はさらに頭差の4位入線だった。しかし2位入線のロイヤルヒロインが薬物検査で失格となったために、本馬は3着に繰り上がった。
次走は再度マイル戦への出走となる愛1000ギニー(愛GⅠ・T8F)となった。しかしここでは重馬場にも泣いて、勝った仏1000ギニー馬ラトレイアントから14馬身以上離された9着に惨敗。ロウザーSで本馬から3馬身半差の3着だったネルグウィンS2着馬アニーエッジなどにも先着されてしまい、本馬は以降マイル以上の距離で走る事は無かった。
次走は英国短距離界の頂点ジュライC(英GⅠ・T6F)となった。単勝オッズ9倍で出走した本馬は、逃げ馬を見るように先行。残り1ハロン地点で抜け出すと、キングズスタンドSで2着してきたスチュワーズCの勝ち馬ソーバを2馬身半差の2着に、パレスハウスSの勝ち馬でモルニ賞2着・キングズスタンドS3着のオンステージをさらに1馬身差の3着に破って勝利した。
次走のスプリントCS(英GⅡ・T5F)では、ソーバと人気を分け合ったが、本馬が単勝オッズ2.625倍の1番人気に支持された。レースでも人気の2頭の勝負となったが、インコースを無理なく進んだ本馬が残り1ハロン地点から鋭く伸びるとゴール前では流して、2位入線のソーバ(レース序盤の進路妨害で失格)に1馬身半差をつけて勝利した。
次走のスプリントC(英GⅡ・T6F)ではソーバと3度目の対決となったが、本馬が単勝オッズ1.62倍の1番人気に支持された。そして結果は呆気ないものだった。残り2ハロン地点で鞍上のカーソン騎手が仕掛けると、一気に加速した本馬がソーバを7馬身差の2着に下して勝利したのである。このレースぶりについて英タイムフォーム社は「(スプリントCが施行される)ヘイドックパーク競馬場史上最高のパフォーマンスの一つであり、他の場所でもなかなか見られない」と評価した。
英国短距離界の頂点に立った本馬の次走は仏国のアベイドロンシャン賞(仏GⅠ・T1000m)となった。このレースにもソーバが出走してきたが、残り200m地点で先頭に立った本馬が、2着ソーバに1馬身差、3着となったアランベール賞の勝ち馬シシオスにはさらに3馬身差をつけて優勝。勝ちタイム54秒3はコースレコードを1秒2も更新する素晴らしいものだった。3歳時の成績は7戦4勝だった。
この年の本馬に対して、国際クラシフィケーションは131ポンドの評価を与え、これは(性別と年齢が異なるため単純比較は出来ないけれども)、愛ダービー馬シャリーフダンサーの133ポンド、凱旋門賞馬オールアロングの132ポンドに次ぐこの年第3位の順位だった。しかし英タイムフォーム社はこの評価を滑稽であるとし、本馬に対して全世代を通じてこの年の単独最高評価となる136ポンドのレーティングを与えた。この数字は短距離馬としては、1950年のアバーナントの142ポンド、1955年のパッパフォーウェイの139ポンド、1959年のライトボーイと1990年のデイジュールの137ポンドに次ぐもので、2011・13年にいずれも136ポンドの評価を受けたブラックキャビアと並んで第5位タイである。また、3歳牝馬としては1959年に134ポンドの評価を受けたプティトエトワールを上回り、2015年現在でも史上最高値となっている。全世代の牝馬を通じても、アレフランス、ブラックキャビアと並んで第2位(ちなみに第1位は1955年に138ポンドの評価を受けた2歳馬スターオブインディアだが、英タイムフォーム社の2歳馬に対する評価は当てにできないのはアラジやケルティックスウィングの項に書いたとおりである)となっている。また、26票中23票を獲得して、この年の英年度代表馬にも選出された。
競走生活(4歳時)
4歳時は6月にリングフィールド競馬場で行われた新設競走レジャーS(T6F)から始動して、前年のキングズスタンドSの勝ち馬セイフエルアラブを1馬身差の2着に抑えて勝利した。
次走のキングズスタンドS(英GⅠ・T5F)では、セイフエルアラブと3歳牡馬アニタズプリンスが先頭を激しく争い、単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持されていた本馬はその2頭から6馬身ほど後方を追走していた。やがてアニタズプリンスがセイフエルアラブを競り落として先頭に立ったが、それも束の間、ゴール前で鋭く伸びた本馬が、2着アニタズプリンスをかわして短頭差で優勝し、英国主要短距離グループ競走を完全制覇した。
続いて2連覇を目指してジュライC(英GⅠ・T6F)に出走。英2000ギニーでエルグランセニョールの2着だったセントジェームズパレスS・コヴェントリーSの勝ち馬チーフシンガー、ポルトマイヨ賞を勝ってきたネヴァーソーボールド、一昨年のモイグレアスタッドSで本馬の3着に敗れていたコーク&オラリーSの勝ち馬コミッティドなどを抑えて圧倒的な1番人気に支持されたが、結果は上記に挙げた3頭全てに敗れて、勝ったチーフシンガーから9馬身3/4差をつけられた6着に終わり、連勝は6で止まった。
その後、この年からGⅠ競走に昇格したスプリントCS(英GⅠ・T5F)でやはり2連覇を狙った。しかし、ジュライCで3着だったコミッティドが2着ジョナクリスに4馬身差をつけて圧勝してしまい、本馬はジョナクリスからさらに2馬身差の3着に敗れた。
次走のスプリントC(英GⅡ・T6F)では、ジュライC2着後にモーリスドギース賞を勝っていた3着ネヴァーソーボールドには半馬身先着したが、単勝オッズ12倍の伏兵ペトンに短頭差敗れて2着となり、このレースも連覇は成らなかった。
次走のダイアデムS(英GⅢ・T6F)では、勝ったネヴァーソーボールドから2馬身半差、2着フォーティセカンドストリートから1馬身差の3着に敗退。アベイドロンシャン賞(仏GⅠ・T1000m)では、3着アニタズプリンスを首差抑えるのが精一杯で、勝ったコミッティドから2馬身半差の2着に敗退。このレースを最後に、4歳時7戦2勝の成績で競走馬を引退した。
この年に本馬を打ち負かした馬は、後にサセックスSを勝利したチーフシンガー、翌年のキングズスタンドS・ジュライC・スプリントCSを勝利したネヴァーソーボールド、アベイドロンシャン賞の2連覇を達成したコミッティドなど実力馬揃いだった。
馬名はアラビア語で「私の最愛の人」という意味である。
血統
Habitat | Sir Gaylord | Turn-to | Royal Charger | Nearco |
Sun Princess | ||||
Source Sucree | Admiral Drake | |||
Lavendula | ||||
Somethingroyal | Princequillo | Prince Rose | ||
Cosquilla | ||||
Imperatrice | Caruso | |||
Cinquepace | ||||
Little Hut | Occupy | Bull Dog | Teddy | |
Plucky Liege | ||||
Miss Bunting | Bunting | |||
Mirthful | ||||
Savage Beauty | Challenger | Swynford | ||
Sword Play | ||||
Khara | Kai-Sang | |||
Decree | ||||
Klairessa | Klairon | Clarion | Djebel | Tourbillon |
Loika | ||||
Columba | Colorado | |||
Gay Bird | ||||
Kalmia | Kantar | Alcantara | ||
Karabe | ||||
Sweet Lavender | Swynford | |||
Marchetta | ||||
Courtessa | Supreme Court | Precipitation | Hurry On | |
Double Life | ||||
Forecourt | Fair Trial | |||
Overture | ||||
Tessa Gillian | Nearco | Pharos | ||
Nogara | ||||
Sun Princess | Solario | |||
Mumtaz Begum |
父ハビタットは当馬の項を参照。
母クレアッサは現役成績5戦1勝。本馬の半弟にはクネセト(父ジェネラルアセンブリー)【バリーオーガンS(愛GⅢ)】がいる他、本馬の半姉エイトカラット(父ピースイズオブエイト)の子にはダイアモンドラヴァー【レイルウェイH(新GⅠ)】、カープスタッド【VRCサイアーズプロデュースS(豪GⅠ)】、マルキース【キャプテンクックS(新GⅠ)】、オクタゴナル【AJCサイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・コックスプレート(豪GⅠ)・カンタベリーギニー(豪GⅠ)・ローズヒルギニー(豪GⅠ)・メルセデスクラシック(豪GⅠ)2回・AJCダービー(豪GⅠ)・アンダーウッドS(豪GⅠ)・チッピングノートンS(豪GⅠ)・オーストラリアンC(豪GⅠ)】、ムーアワッド【豪フューチュリティS(豪GⅠ)・ジョージライダーS(豪GⅠ)・オーストラリアンギニー(豪GⅠ)】、孫にはデーンウィン【スプリングチャンピオンS(豪GⅠ)・ローズヒルギニー(豪GⅠ)・ドゥーンベンC(豪GⅠ)・コーフィールドS(豪GⅠ)・マッキノンS(豪GⅠ)】、トリスタラヴ【AJCサイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・オーストラレイシアンオークス(豪GⅠ)】、ドンエデュアルド【AJCダービー(豪GⅠ)】、シャワーオブロージズ【アローフィールドスタッドS(豪GⅠ)】、曾孫にはエメラルドドリーム【新国際S(新GⅠ)】、ヴォイカウント【AJCサイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・シャンペンS(豪GⅠ)・ジョージメインS(豪GⅠ)】、バイキングルーラー【AJCスプリングチャンピオンS(豪GⅠ)】、玄孫にはシューティングトゥウィン【コーフィールドギニー(豪GⅠ)】、デビアス【ローズヒルギニー(豪GⅠ)】が、本馬の半姉グレートクレア(父グレートネフュー)の孫には、テレスト【チッピングノートンS(豪GⅠ)・ジョージライダーS(豪GⅠ)】、フラタニティ【スプリングチャンピオンS(豪GⅠ)】、ボナノヴァ【エミレーツS(豪GⅠ)】がいる。
クレアッサの全兄にはダーバヴィル【キングズスタンドS】がいる他、クレアッサの半妹ローラ(父ロレンザッチオ)の子にはオンザハウス【英1000ギニー(英GⅠ)・サセックスS(英GⅠ)】、曾孫にはレベッカシャープ【コロネーションS(英GⅠ)】、玄孫にはキッドナップド【サウスオーストラリアンダービー(豪GⅠ)】、ゴールデンホーン【英ダービー(英GⅠ)・凱旋門賞(仏GⅠ)・エクリプスS(英GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)】がいる。クレアッサの祖母テッサギリアンはモールコームSの勝ち馬で、ロイヤルチャージャーの全妹に当たる。テッサギリアンの祖母ムムタズビガムは世界的名門牝系の祖ムムタズマハルの6番子である。→牝系:F9号族③
母父クレイロンはリュティエの項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、最初英国で繁殖入りし、後に米国に移動した。しかし本馬は繁殖牝馬としては殆ど成功できなかった。10頭の子を産んでいるが、1勝馬が2頭、未勝利馬が6頭、不出走馬が2頭という結果だった。没年については資料に記載が無く不明であるが、最後の子が2000年産まれなので、この年までは生存していたはずである。現役時代は6戦未勝利に終わった初子の牝駒リームアルバラーリ(父サドラーズウェルズ)が母としてモルシュディ【伊ダービー(伊GⅠ)・バーデン大賞(独GⅠ)】を産んだが、モルシュディは授精能力が低く種牡馬になる事は出来なかった。本馬の牝系子孫は現在新国などに残っているようである。