ヴァルロワイヤル

和名:ヴァルロワイヤル

英名:Val Royal

1996年生

鹿毛

父:ロイヤルアカデミー

母:ヴァドラヴァ

母父:ビカラ

屈腱炎との長い闘いを克服して爆発的な末脚でBCマイルを制覇した頑張り屋で種牡馬としての能力もあったが惜しくも早世する

競走成績:2~5歳時に仏英米首で走り通算成績12戦7勝2着1回

誕生からデビュー前まで

自動車技師から身を立てて事業家として成功した仏国の大馬主ジャン・リュック・ラガルデール氏により生産・所有され、仏国アンドレ・ファーブル調教師に預けられた。

競走生活(2~4歳時)

2歳10月にロンシャン競馬場で行われたフェイアント賞(T1850m)で、主戦となるオリビエ・ペリエ騎手を鞍上にデビュー。後のドラール賞・プランスドランジュ賞勝ち馬ステートシントウ、後のリューテス賞勝ち馬でさらに障害競走に転向して活躍するノーザンタウンなどを抑えて、単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持された。そして先行して残り200m地点で先頭に立ち、2着ステートシントウに1馬身差で勝ち上がった。2歳時の出走はこの1戦のみだった。

3歳時は5月にシャンティ競馬場で行われたリステッド競走マッチェム賞(T1800m)から始動して、単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。ここでも逃げ馬を見るように先行すると、残り400m地点で先頭に立ち、そのまま2着エイティトゥーに5馬身差をつけて圧勝した。

それから17日後に出走したギシュ賞(仏GⅢ・T1850m)でも、単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。発走前に脚を滑らせて、鞍上のペリエ騎手が落馬する場面があった。しかしレースではスタートから先頭に立ち、そのまま2着フィルデヴィアヌに半馬身差で逃げ切り勝利した。

次走は英ダービー(英GⅠ・T12F10Y)となった。対戦相手は、プレドミネートSなど3戦無敗のドバイミレニアム、ディーSを5馬身差で圧勝してきたオース、リングフィールドダービートライアルSを勝ってきたルシード、ニューマーケットSを勝ってきたベストオール、愛2000ギニー馬サフロンウォルデン、リングフィールドダービートライアルS2着馬ダリアプール、チェスターヴァーズで1位入線したが4着に降着となっていたハウスマスター、ダンテSを勝ってきたソルフォードエクスプレス、クレイヴンS勝ち馬で後にエクリプスSを勝つコンプトンアドミラルといった面々だった。3戦無敗の本馬だったが、距離不安が囁かれており単勝オッズ15倍で16頭立ての9番人気という低評価だった。もっとも、単勝オッズ6倍の1番人気だったドバイミレニアムもやはり距離不安が囁かれており、全体的に混戦模様だった。本馬鞍上のペリエ騎手は距離を意識したのか、スタートから抑え気味にレースを進めた。しかしスタートから2ハロンほど走ったところで行きたがってしまい、結局は先行して4番手で直線を向くことになった。そして残り1ハロン地点から大失速して、12馬身半差の11着と惨敗した。ドバイミレニアムも似たようなレース内容で9着に惨敗しており、勝ったのは単勝オッズ7.5倍の2番人気馬オースだった。

仏国に戻った本馬はダフニ賞(仏GⅢ・T1800m)に出走した。英ダービーの惨敗はあまり気にされなかったようで、単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持された。ここでは3番手を追走し、直線に入ると逃げるアルラサームを追撃した。しかし絶好のスタートからマイペースで逃げていたアルラサームを捕らえるのに失敗し、3/4馬身差の2着に敗れた。

次走のギョームドルナノ賞(仏GⅡ・T2000m)でもアルラサームとの対戦となったが、本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持された。前走と同じくアルラサームが先行して、本馬は好位でアルラサームを追撃した。そして直線に入ると逃げるアルラサームに並びかけ、今度は叩き合いを頭差で制して勝利した。

この直後に本馬は、米国の有名な刑事ドラマ「NYPDブルー」などを手掛けたテレビプロデューサーであるデビッド・ミルチ氏に売却され、米国カリフォルニア州のフリオ・C・カナニ調教師の管理馬となり、米国を拠点として走る事になった。

移籍初戦のデルマーダービー(米GⅡ・T9F)では、シネマH勝ち馬ファイティングファルコン、前走ラホヤH2着のインフランクスオナー、ウィルロジャーズH・ラホヤH勝ち馬イーグルトンなどを抑えて、単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持された。本馬に騎乗したコーリー・ナカタニ騎手はスタートから徹底して本馬を抑えた。10頭立ての9番手でレースを進めると、直線入り口でもまだ6番手。ところがここから一気に末脚を伸ばし、2着ファイティングファルコンに半馬身差をつけて勝利を収め、観衆を痺れさせた。

しかしこの後に屈腱炎を発症してしまった。症状は比較的軽度ではあったが、加療に要した時間は1年半にも及んだ。3歳時の成績は6戦4勝で、4歳時は不出走だった。

競走生活(5歳時)

復帰したのは5歳3月のフランクEキルローマイルH(米GⅡ・T8F)で、主戦となるホセ・ヴァルディヴィア・ジュニア騎手と初コンビを組んだ。アーケイディアH・エルリンコンH・サンフランシスコマイルHなどの勝ち馬で、BCマイルでダホスの2着した実績もあった8歳馬ホークスリーヒル、ハリウッドジュヴェナイルCSSとベストパルSで2着のエクスチェンジレート、オークツリーBCマイルS2着馬ロードトゥスルーなどのほうが評価は高く、長期休養明けの本馬は単勝オッズ10.5倍の6番人気に留まった。ここでもスタートから徹底した後方待機策を採り、直線入り口でもまだ後方3番手という位置取りだった。しかしここから猛然と追い込み、逃げたロードトゥスルーの1馬身差2着まで突っ込んできた。

相変わらずの素晴らしい追い込みぶりではあったが、直後に負傷のため再度7か月間の休養を余儀なくされた。

復帰戦は10月のオークツリーBCマイルS(米GⅡ・T8F)だった。ブラジルから移籍してきてサンフランシスコBCマイルH・エディリードHを勝っていたリダットーレ、3連勝中の上がり馬サディクイル、本馬の3頭に人気が集中。リダットーレが単勝オッズ2.8倍の1番人気、サディクイルが単勝オッズ3.4倍の2番人気、本馬が単勝オッズ4.1倍の3番人気となった。今回も本馬はスタートから最後方に陣取った。前を走る馬からは3馬身ほど離されていたから、かなり極端な追い込み戦法だった。そのままの位置取りで三角に入ってきたが、四角で瞬く間に位置取りを上げると、直線では完璧な差し切りを決めて、2着サディクイルに2馬身差をつけて1分33秒21のコースレコードを樹立して快勝した。

続いて米国東海岸に移動して、ベルモントパーク競馬場で行われたBCマイル(米GⅠ・T8F)に参戦した。サセックスS・英シャンペンSなどの勝ち馬で、デューハーストS・セントジェームズパレスS・クイーンエリザベスⅡ世Sで2着、他にも仏2000ギニー1位入線失格などがあったノヴェル、サンガブリエルH・シューメーカーマイルS・ファイアクラッカーBCHの勝ち馬アイリッシュプライズ、ヴォスバーグS・シガーマイルH・フォアゴーH・ジェネラルジョージHなどの勝ち馬で前走アットマイルS2着のアファームドサクセス、アーカンソーダービー・レーンズエンドスパイラルSの勝ち馬バルトスター、マンハッタンH・ベルモントBCH・ケルソH2回の勝ち馬フォービドンアップル、ハリウッドダービーの勝ち馬ブラームス、ジャマイカHを勝ってきたネイヴシンク、UAEダービー・ジェロームHの勝ち馬エクスプレスツアー、ケルソHで2着してきた後のジャパンC2着馬サラファン、ホープフルS・サンフォードS・サラトガスペシャルS・アムステルダムSなどの勝ち馬シティジップ、ロイヤルホイップS勝ち馬でエクリプスS・愛チャンピオンS3着のバッハの計11頭が対戦相手となった。9年前のBCマイルで1番人気に応えられず惨敗したアラジの半弟ノヴェルが単勝オッズ5.1倍の1番人気、アイリッシュプライズが単勝オッズ6倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.1倍の3番人気、アファームドサクセスが単勝オッズ6.4倍の4番人気、バルトスターが単勝オッズ9.1倍の5番人気、フォービドンアップルが単勝オッズ9.2倍の6番人気という混戦模様だった。

スタートが切られるとシティジップが先頭に立ち、バルトスター、エクスプレスツアーなども先行。ノヴェルは馬群の中団につけ、アイリッシュプライズがその少し後方につけた。ヴァルディヴィア・ジュニア騎手が手綱を取る本馬は大外12番枠からの発走だったが、追い込み馬であるためにあまり関係なく、スタート直後から後方2番手の位置取りとなった。そのままの状態で最終コーナーに入り、直線入り口でもまだ馬群の外側後方。しかしここから上がり2ハロン22秒という爆発的な末脚を繰り出して他馬をごぼう抜きにすると、道中4番手から直線で抜け出していた2着フォービドンアップルに2馬身差をつけて優勝。念願のGⅠ競走初制覇を果たすとともに、11年前に同じベルモントパーク競馬場で勝利を収めていた父ロイヤルアカデミーとのBCマイル親子制覇も達成した。勝ちタイム1分32秒05はBCマイル史上当時最速だった(現在でも2012年にワイズダンが計時した1分31秒78に次ぐ史上2位)。

その後は香港に遠征して香港マイルに出走する予定(香港Cに出走予定だったとする資料もある)だったが、裂蹄を発症したために回避した。5歳時の成績は3戦2勝だった。

競走生活(6歳時)

6歳時も現役を続け、前年と同じく3月のフランクEキルローマイルH(米GⅡ・T8F)から始動した。前年のBCマイル4着馬アイリッシュプライズ、同8着だったサラファン、サディクイル、タンフォランHを勝ってきたデカーチー、一般競走2連勝中のデザインドフォーラックなどが対戦相手となったが、本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持された。ここでもスタートから後方2番手を走り、直線入り口7番手から追い込んできた。しかし123ポンドのトップハンデが響いたのか、上位3頭の大接戦にもう一歩届かずに、デカーチーの半馬身差4着に惜敗した。

その3週間後にはドバイに遠征してドバイデューティーフリー(首GⅠ・T1777m)に参戦した。BCマイル7着からの巻き返しを図るノヴェル、前年の覇者でもある香港C勝ち馬ジムアンドトニック、セレブレーションマイル勝ち馬ノーエクスキューズニーデッド、オペラ賞勝ち馬テルアテル、クイーンエリザベスⅡ世S勝ち馬サモナーなどが対戦相手となったが、英国ブックメーカーのオッズでは本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気となった。レースではやはり後方を進み、直線に入ると残り400m地点で仕掛けたが、ここから伸びを欠いてテルアテルの3馬身差5着に敗退した。

その後、屈腱炎が再発したために6歳時2戦未勝利で現役引退となった。

血統

ロイヤルアカデミー Nijinsky Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Flaming Page Bull Page Bull Lea
Our Page
Flaring Top Menow
Flaming Top
Crimson Saint Crimson Satan Spy Song Balladier
Mata Hari
Papila Requiebro
Papalona
Bolero Rose Bolero Eight Thirty
Stepwisely
First Rose Menow
Rare Bloom
Vadlava Bikala Kalamoun ゼダーン Grey Sovereign
Vareta
Khairunissa Prince Bio
Palariva
Irish Bird Sea-Bird Dan Cupid
Sicalade
Irish Lass Sayajirao
Scollata
Vadsa Halo Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
Rainbow's Edge Creme dela Creme Olympia
Judy Rullah
Lost Horizon Court Harwell
Quimera

ロイヤルアカデミーは当馬の項を参照。

母ヴァドラヴァは仏で走り13戦1勝。繁殖牝馬としては本馬の半兄ヴァドラウィス(父オールウェイズフェアー)【オカール賞(仏GⅡ)】も産んでいる。また、本馬の半姉ヴァドラミクサ(父リナミックス)の子にはヴァリクシール【イスパーン賞(仏GⅠ)・クイーンアンS(英GⅠ)・ユジェーヌアダム賞(仏GⅡ)・ニエル賞(仏GⅡ)・メシドール賞(仏GⅢ)】が、孫にはヴァダウィナ【サンタラリ賞(仏GⅠ)・クレオパトル賞(仏GⅢ)】、ヴァダポリーナ【クレオパトル賞(仏GⅢ)・プシシェ賞(仏GⅢ)】、ヴァジラ【サンタラリ賞(仏GⅠ)・ヴァントー賞(仏GⅢ)】が、曾孫にはヴァダマー【コンセイユドパリ賞(仏GⅡ)】がいる。また、本馬の半姉ヴァドラウィサ(父オールウェイズフェアー)の孫にも、ヴァラシラ【フロール賞(仏GⅢ)】、ヴァリラ【仏オークス(仏GⅠ)】、ヴァリラン【ショードネイ賞(仏GⅡ)・リューテス賞(仏GⅢ)】がいる。ヴァドラヴァの半妹ヴァスダオナー(父ハイエストオナー)の子には、ヴァホリミックス【仏2000ギニー(仏GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)】が、孫にはヴォルーズドクール【愛セントレジャー(愛GⅠ)】がいる。母系は1912年の英1000ギニーと英ダービーを勝った女傑タガリーの祖母ジアザーアイからの流れで、英国から仏国を経て亜国で発展し、後に米国を経て仏国に戻ってきたものである。→牝系:F20号族①

母父ビカラは現役成績こそ12戦3勝だが、仏ダービー(仏GⅠ)・ガネー賞(仏GⅠ)を勝っている。ビカラの父カラムーンはカラグロウの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、当初は南アフリカで種牡馬する予定だったが、結局は豪州イライザパークスタッドと愛国オークロッジスタッドを往復するシャトル種牡馬となった。2006・07年には亜国ラミッション牧場でも供用された。2007年からは英国ナショナルスタッドで供用され、2008年にはブラジルにもシャトルされた。しかしこの年、ブラジルのバサノ牧場において放牧中に突然倒れてそのまま息を引き取った。死因は内出血で、享年12歳だった。当初の種牡馬成績は英愛の2000ギニーを制したコックニーレベルを出した程度で不振だったが、2006年以降に南米でも供用されるようになってからは活躍馬を多く輩出しており、早世が惜しまれる。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2004

Aaim to Prosper

シザレウィッチH2回

2004

Cockney Rebel

英2000ギニー(英GⅠ)・愛2000ギニー(愛GⅠ)

2004

Valbenny

ハネムーンBCH(米GⅡ)・ミエスクS(米GⅢ)・セニョリータS(米GⅢ)

2007

Busy Guy

ホアキンVゴンザレス大賞(亜GⅠ)

2007

Dona Letra

イグナシオEFコラレス賞(亜GⅡ)・ロスクリアドレス賞(亜GⅡ)

2007

Quick Val

ポトランカス大賞(亜GⅠ)

2007

Soy Carambolo

サンマルティン将軍大賞(亜GⅠ)・カルロスペレグリーニ大賞(亜GⅠ)・チャカブコ賞(亜GⅡ)・ヴィンセントLカサレス賞(亜GⅢ)・ポルテノ賞(亜GⅢ)

2007

Taifas

エストレージャス大賞クラシック(亜GⅠ)

2008

Belle Royale

ゲイムリーS(米GⅠ)

2008

Fantastic Royale

コンパラシオン賞(亜GⅡ)

2008

Lloyd

ブエノスアイレス州賞(亜GⅡ)

2008

Maipo Royale

サンイシドロ大賞(亜GⅠ)・ペドロチャパル賞(亜GⅢ)

2008

Post Atomic

ペドロチャパル賞(亜GⅢ)

2008

Slim Shadey

サンマルコスS(米GⅡ)・ジョンヘンリーターフCSS(米GⅡ)・サンマルコスS(米GⅡ)

2008

Val Champ

エドゥアルドキャセイ賞(亜GⅡ)

2009

Bela Bisca

イメンシティ大賞(伯GⅠ)・ギレェルミエリス会長大賞(伯GⅡ)・エドムンドピレスデオリベイラディアス大賞(伯GⅢ)・マリアノプロコピオ賞(伯GⅢ)

2009

Beto Boss

サンパウロABCPCC大賞(伯GⅠ)2回

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