ハリケーンラン

和名:ハリケーンラン

英名:Hurricane Run

2002年生

鹿毛

父:モンジュー

母:ホールドオン

母父:ズルムー

父モンジューの初年度産駒として全て父子2代の凱旋門賞・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・愛ダービー・タタソールズ金杯の制覇を達成

競走成績:2~4歳時に仏愛英米で走り通算成績14戦8勝2着3回3着2回

誕生からデビュー前まで

独国の共同馬主ゲスツットアメルランドにより生産・所有された愛国産馬で、仏国アンドレ・ファーブル調教師に預けられた。父モンジューにとっては初年度産駒に当たる。

競走生活(2・3歳時)

2歳10月にロンシャン競馬場で行われたベルヴィユ賞(T1800m)で、当面の主戦となるクリストフ・スミヨン騎手を鞍上にデビューして、単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持された。レースは不良馬場となったが、4番手の好位を追走すると、ゴール前で悠々と抜け出して、2着パラマウントに2馬身半差で快勝。2歳時はこの1戦のみで休養入りした。

3歳時は仏ダービーを目標として、4月にロンシャン競馬場で行われたフェリエーレ賞(T2200m)から始動した。ここでも単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持された。レースは今回も不良馬場となったが、先行して残り200m地点で先頭に立ち、ここから大きく左側によれながらも、2着ウォーニングサインに3馬身差で勝利した。父と同じく、本馬も重馬場巧者であるようだった。

次走のオカール賞(仏GⅡ・T2200m)では、前走ノアイユ賞を3馬身差で完勝してきた4戦無敗のルウィと顔を合わせた。ルウィが単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ4.2倍の2番人気となった。しかもレースは過去2戦とは異なり良馬場となった。しかしレースでは3~4番手の好位を追走すると、直線に入って残り300m地点から堂々と突き抜けて、2着となった単勝オッズ17倍の最低人気馬シルヴァークロスに5馬身差をつけて圧勝。ルウィは本馬から6馬身半差の4着に敗れた。

そして迎えた仏ダービー(仏GⅠ・T2100m)では、仏2000ギニー・デューハーストS・ヴィンテージSを勝っていた前年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬シャマルダル、仏2000ギニー3着馬ジャリア、ガリニュールSで2着してきた同父馬スコーピオン、ルウィ、デュモンパノット賞を勝ってきたアルカンジュドール、グレフュール賞・トーマブリョン賞の勝ち馬ヴァトリ、コンデ賞の勝ち馬ムスケティア、フェルデンS・ニューマーケットSを連勝してきたロカマドール、ギシュ賞で2着してきたドクターディーノ、フォンテーヌブロー賞の勝ち馬でクリテリウムドサンクルー3着のレイヴロックなどが対戦相手となった。父子制覇が期待された本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持され、シャマルダルが単勝オッズ5倍の2番人気、ジャリアが単勝オッズ8.5倍の3番人気、ルウィが単勝オッズ15倍の4番人気となった。

スタートが切られるとシャマルダルが先手を取り、ロカマドールやジャリアなども先行。一方の本馬は馬群の中団を追走した。そして7番手で直線に入ると、レイヴロックと共に先行馬勢を追撃した。ゴール前では鋭く伸びてきたが、シャマルダルを首差捕らえられずに2着に惜敗した。なお、本馬から3/4馬身差の3位にレイヴロックが入線したが、最後方から追い上げてきたルウィ(6位入線)の進路を妨害したとして降着になっている。

仏ダービーの後、本馬は父モンジューの馬主でもあったマイケル・テイバー氏にトレードされ、クールモアグループの傘下に入ることになった(正式に名義が変わったのは愛ダービーの後)。管理調教師はファーブル師のままだったが、主戦はスミヨン騎手からキーレン・ファロン騎手に交代となった。

そして愛ダービー(愛GⅠ・T12F)に向かった。英ダービーを5馬身差で圧勝していた同父馬モティヴェイターはエクリプスSに向かったため不在であり、英ダービー2着のウォークインザパーク、英ダービーで4着だったサンダウンクラシックトライアルS・デリンズタウンスタッドダービートライアルSの勝ち馬フラカス、英ダービーで5着だったディーSの勝ち馬ジプシーキング、プライスウォーターハウスクーパーズクラシックトライアルを勝ってきたシャラプア、仏ダービーで16着だったスコーピオン、キングエドワードⅦ世Sで2着してきたブラミニーカイトなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、ウォークインザパークが単勝オッズ4.33倍の2番人気、フラカスが単勝オッズ9倍の3番人気、ジプシーキングが単勝オッズ10倍の4番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ34倍の8番人気馬ブラミニーカイトが先頭に立ち、単勝オッズ26倍の7番人気馬スコーピオンも仏ダービーで控えて惨敗した反省からか、今回は積極的に先行。一方の本馬は最後方待機策を採った。直線に入るとスコーピオンが先頭に立って逃げ込みを図り、そこへ本馬が猛然と追い込んできた。そして最後は計ったようにスコーピオンを半馬身かわして勝利を収め、モンジューとの父子制覇を果たした。

夏場は休養に充て、秋は凱旋門賞を目指してニエル賞(仏GⅡ・T2400m)から始動した。他に目立つ出走馬がいなかったため、このレースは単勝オッズ1.18倍の1番人気に支持された本馬の公開調教の場と化した。まずは単勝オッズ15倍の3番人気馬パーフェクトヘッジが逃げを打ち、本馬は2番手を追走した。そして直線入り口で先頭に立つと、ゴールまで悠々と走り抜け、2着となった単勝オッズ6倍の2番人気馬ランナウェイに3馬身差をつけて楽勝した。

そして凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)に向かった。エクリプスSと愛チャンピオンSで2着してきた英ダービー・レーシングポストトロフィー・ダンテSの勝ち馬モティヴェイター、愛オークス・ヴェルメイユ賞・ロワイヨモン賞など5連勝中のシャワンダ、前年の凱旋門賞を筆頭にクリテリウム国際・ジャンプラ賞・パリ大賞・ガネー賞・シェーヌ賞を勝ちタタソールズ金杯2着・英国際S・サンクルー大賞・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS3着のバゴ、愛ダービー2着後にパリ大賞・英セントレジャーを連勝してきたスコーピオン、カドラン賞2回・ロワイヤルオーク賞2回・アスコット金杯・ヴィコンテスヴィジェ賞・バルブヴィル賞2回・グラディアトゥール賞を勝ちアスコット金杯2着・バーデン大賞3着の名長距離馬ウェスターナー、コンセイユドパリ賞・ジャンロマネ賞・フォワ賞・アレフランス賞の勝ち馬でヴェルメイユ賞3着のプライド、前年の独ダービー・バーデン大賞を勝ちバーデン大賞で3着していた同厩馬シロッコ、前年の凱旋門賞で2着していたドーヴィル大賞の勝ち馬チェリーミックス、ジェフリーフリアS3回・セプテンバーS・カンバーランドロッジSの勝ち馬で一昨年の凱旋門賞3着のムブタケル、コロネーションC2回・バーデン大賞2回・ジョッキークラブS・ジョンポーターSの勝ち馬でミラノ大賞・エクリプスS2着のウォーサン、ソヴリンS・アールオブセフトンSの勝ち馬で英国際S・愛チャンピオンS・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスS2着のノーズダンサー、ロワイヤリュー賞・エクスビュリ賞の勝ち馬サマンドなどが対戦相手となった。モティヴェイターが単勝オッズ3.5倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.75倍の2番人気、シャワンダが単勝オッズ4倍の3番人気、バゴが単勝オッズ9倍の4番人気、スコーピオンが単勝オッズ11倍の5番人気となった。

レースは父が勝った時ほどではないが、やはり湿った馬場で行われた。スタートが切られると本馬陣営が用意したペースメーカー役のウインディアと、ウェスターナー陣営が用意したペースメーカー役のヴォルトメーターが逃げを打ち、ウェスターナーやスコーピオンがそれを追撃。モティヴェイターが好位を追走し、本馬やシャワンダは馬群の中団後方、バゴは最後方につけた。そのままの態勢で直線に入ると、まずはモティヴェイターが内側から抜け出し、それをウェスターナーが外側からかわした。しかしここで本馬が内埒沿いに一気に末脚を伸ばし、残り200m地点でウェスターナーをかわすと、そのまま2馬身差をつけて快勝。ウェスターナーから1馬身半差の3着には追い込んだバゴ、さらに3/4馬身差の4着に中団から差してきたシロッコが入り、モティヴェイターは5着、シャワンダは6着、スコーピオンは10着に敗れた。

その後はベルモントパーク競馬場で行われるBCターフへ向かう予定だったが、体調を崩して回避した。それでも3歳時は6戦5勝の成績を残し、この年のカルティエ賞年度代表馬・最優秀3歳牡馬に選出された。また、国際クラシフィケーションでは130ポンド、英タイムフォーム社のレーティングでも134ポンドを獲得し、いずれでもこの年世界第1位の評価を得た。

競走生活(4歳時)

翌4歳時は5月のタタソールズ金杯(愛GⅠ・T10F110Y)から始動した。本馬との対戦と重馬場を嫌って回避馬が続出したため、出走馬は、本馬、オペラ賞・香港C・プリティポリーS・ナッソーS・レパーズタウン1000ギニートライアルSの勝ち馬で愛1000ギニー・プリティポリーS・ファルマスS2着のアレクサンダーゴールドラン、ジェベルハッタ2着馬ロードアドミラルの僅か3頭となった。本馬が単勝オッズ1.25倍の1番人気、アレクサンダーゴールドランが単勝オッズ4.5倍の2番人気、ロードアドミラルが単勝オッズ26倍の最低人気となった。逃げ馬が不在だったため、スタートから本馬が先頭に押し出され、ロードアドミラルが2番手、アレクサンダーゴールドランが最後方となった。そしてそのまま本馬が直線で他2頭を突き放し、2着アレクサンダーゴールドランに7馬身差をつけて圧勝した。

次走のサンクルー大賞(仏GⅠ・T2400m)では、ドーヴィル大賞・シャンティ大賞2回・フォワ賞の勝ち馬で前年のサンクルー大賞2着のポリシーメイカー、前年の凱旋門賞で7着だった後に英チャンピオンS・香港Cで2着してコリーダ賞を勝利するなどめきめきと頭角を現していたプライド、仏ダービー降着後はしばらく振るわなかったが前走イスパーン賞で人気薄を覆してGⅠ競走初勝利を挙げたレイヴロックなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.22倍の1番人気、ポリシーメイカーが単勝オッズ7倍の2番人気、プライドが単勝オッズ8倍の3番人気、レイヴロックが単勝オッズ15倍の4番人気となった。スタートが切られると、ポリシーメイカー陣営が用意したペースメーカー役のペトログラードと、本馬陣営が用意したペースメーカー役のニアオナーが逃げを打ち、本馬は3番手を追走。そして直線に入るところで先頭に立ち、そのまま押し切ろうとしたが、追い込んできたプライドにゴール直前で差されて、鼻差2着に敗れた。

次走のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)では、一昨年の京都新聞杯の勝利後は東京優駿・宝塚記念・ジャパンC2着と勝ち運に恵まれなかったが、前年の有馬記念で三冠馬ディープインパクトを2着に破って勝ち、前走のドバイシーマクラシックでは4馬身差で圧勝してきた日本調教馬ハーツクライ、ドバイワールドC・ミラノ大賞・英国際・カルロダレッシオ賞・マクトゥームチャレンジR3の勝ち馬で伊ジョッキークラブ大賞・プリンスオブウェールズS2着のエレクトロキューショニスト、ハードウィックS・ゴードンS・ハクスレイS2回の勝ち馬で英国際S・英チャンピオンS・香港C3着のマラーヘル、前年の凱旋門賞12着後に伊ジョッキークラブ大賞を勝っていたチェリーミックス、ニューマーケットダーレーSの勝ち馬でコロネーションC3着のエンフォーサーの計5頭が対戦相手となった。直前に詐欺容疑で警察に逮捕(後に証拠不十分で無罪)されたために英国内で騎乗停止処分を受けていたファロン騎手の代わりに、久々にスミヨン騎手が騎乗した本馬が単勝オッズ1.83倍の1番人気、ハーツクライが単勝オッズ4倍の2番人気、エレクトロキューショニストが単勝オッズ5倍の3番人気、マラーヘルが単勝オッズ15倍の4番人気となった。

スタートが切られると、チェリーミックスが僚馬エレクトロキューショニストのペースメーカー役として逃げを打ち、本馬が離れた2番手、ハーツクライとエレクトロキューショニストが本馬の後方を追走してきた。四角でエレクトロキューショニストが仕掛けて本馬をかわして前に出ると、ハーツクライも本馬の外側から並びかけてきた。直線に入ってしばらく本馬の手応えは良くなかったが、残り2ハロン地点でスミヨン騎手が鞭を使うと内側を突いて鋭く伸び、前方で叩き合うエレクトロキューショニストとハーツクライの2頭に並びかけて、三つ巴の勝負に持ち込んだ。最後は本馬が2着エレクトロキューショニストに半馬身差で勝利を収め、ハーツクライはさらに半馬身差の3着だった。ハンデ差なしに3頭全てが全力を出し切ったこのレースはかなりの名勝負であり、筆者の中ではドバイシーマクラシックと並んでこれがハーツクライのベストレースである。

その後は凱旋門賞連覇を目指して、前哨戦のフォワ賞(仏GⅡ・T2400m)に向かった。前年の凱旋門賞4着以降にBCターフ・ジョッキークラブS・コロネーションCと3連勝中のシロッコ、サンクルー大賞勝利以来の実戦となるプライドの2頭が強敵だった。本馬が単勝オッズ1.91倍の1番人気、シロッコが単勝オッズ2.625倍の2番人気、プライドが単勝オッズ4.33倍の3番人気となった。レースではペースメーカー役のニアオナーが先頭を引っ張り、シロッコが2番手、本馬が3番手、プライドが4番手を追走。そして直線に入ると上位人気3頭による三つ巴の勝負となった。最後はシロッコが勝利を収め、本馬が首差2着、プライドがさらに首差の3着となり、本馬はロンシャン競馬場6度目の出走にして初めて敗戦を喫した。

そして迎えた本番の凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)では、シロッコ、プライドに加えて、パリ大賞・ニエル賞・リス賞など4連勝中のレイルリンク、ゴードンS・英セントレジャーを連勝してきたシックスティーズアイコン、プランスドランジュ賞を勝ってきた仏ダービー2着馬ベストネーム、ドーヴィル大賞を勝ってきたアイリッシュウェルズ、そして皐月賞・東京優駿・菊花賞・天皇賞春・宝塚記念・弥生賞・神戸新聞杯・阪神大賞典を勝って日本から遠征してきた史上6頭目の中央競馬牡馬三冠馬ディープインパクトの7頭が対戦相手となった。ディープインパクトが単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気、シロッコが単勝オッズ3.75倍の3番人気、レイルリンクが単勝オッズ9倍の4番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ126倍の最低人気馬アイリッシュウェルズが先頭に立ち、2番手にシロッコ、3番手にディープインパクトがつけ、本馬はディープインパクトの内側につけた。そのままの態勢で直線に入ると、アイリッシュウェルズとシロッコが後退し、ディープインパクトが外側から先頭に立った。一方の本馬は、失速するシロッコに進路を塞がれてしまい、ファロン騎手が立ち上がる場面も見られた。ようやくゴール前では伸びてきたが時既に遅かった。レースは好位から差してきたレイルリンクが、プライドの追い込みを首差凌いで勝利を収め、直線で競り負けたディープインパクトはプライドから半馬身差の3位入線、それから2馬身半差の4位入線が本馬で、シロッコは本馬から7馬身3/4差の8位最下位入線と振るわなかった。なお、後日ディープインパクトが薬物検査に引っ掛かって失格となり、本馬が3着に繰り上がっている。

雪辱を期す本馬の次走は英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)となった。ここでは、英ダービー・デューハーストS・ヴィンテージSので英2000ギニー2着の勝ち馬サーパーシー、プライド、英国際S・アールオブセフトンS・ブリガディアジェラードSの勝ち馬でエクリプスS2着のノットナウケイト、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS5着後に英国際Sで2着していたマラーヘル、仏オークス・カルヴァドス賞の勝ち馬で英1000ギニー2着のコンフィディシャルレディ、ベットフレッドコムマイル・ジョエルSの勝ち馬でサセックスS3着のロブロイ、英2000ギニー3着馬オリンピアンオデッセイが対戦相手となった。まだ騎乗停止処分が続いていたファロン騎手の代わりにマイケル・キネーン騎手が騎乗した本馬が単勝オッズ3.25倍の1番人気、サーパーシーが単勝オッズ3.75倍の2番人気、プライドが単勝オッズ4.5倍の3番人気、ノットナウケイトが単勝オッズ8倍の4番人気となった。

前走で前が塞がって敗れた反省からか、今回の本馬はスタートから積極的に先行し、ノットナウケイトと共に馬群を先導した。やがてノットナウケイトは後退していき、本馬が単独で先頭に立ったのだが、それも束の間、後方から追い込んできたプライドに一気に差されてしまった。さらにゴール直前でロブロイにもかわされ、勝ったプライドから3馬身差の3着に敗れた。

その後は米国遠征して、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に、スミヨン騎手と共に参戦した。ターフクラシックS・ユナイテッドネーションズS・ターフクラシック招待S・ヴァージニアダービーの勝ち馬でセクレタリアトS・ターフクラシック招待S2着のイングリッシュチャンネル、欧州でダニエルウィルデンシュタイン賞・ダフニ賞などを勝ちジャンプラ賞・パリ大賞2着などの実績を残した後に米国に移籍してマンハッタンH・マンノウォーSを勝ちターフクラシックS・ユナイテッドネーションズS・アーリントンミリオンで2着していたカシーク、前年の凱旋門賞大敗後に長期休養に入っていたスコーピオン、ソードダンサー招待S・ボーリンググリーンHの勝ち馬でガルフストリームパークBCS・マンノウォーS・加国際S2着のゴーデピュティ、キングエドワードⅦ世S・パリ大賞・グレートヴォルティジュールSと3戦連続2着後に出走した英セントレジャーで3着してきたレッドロックス、サンフアンカピストラーノ招待H2回・サンセットBCH・デルマーHの勝ち馬でクレメントLハーシュ記念ターフCSS2着のティーエイチアプルーヴァル、一昨年のBCターフを筆頭にソードダンサー招待H・ユナイテッドネーションズS・マンノウォーS・ニッカーボッカーH・ディキシーS・スカイクラシックS・フォートマーシーHを勝っていたベタートークナウ、ジャージーダービーの勝ち馬アイシーアトランティックなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ3.9倍の1番人気、イングリッシュチャンネルが単勝オッズ4.7倍の2番人気、カシークが単勝オッズ4.9倍の3番人気、スコーピオンが単勝オッズ6.9倍の4番人気、ゴーデピュティが単勝オッズ10.8倍の5番人気となった。

スタートが切られると単勝オッズ78.3倍の最低人気馬アイシーアトランティックが先頭に立ち、本馬は4番手を追走した。そのまま向こう正面に入ってきたが、本馬の反応は非常に悪く、位置取りが徐々に下がっていった。直線では大外に持ち出したがやはり伸びずに、勝ったレッドロックスから5馬身半差の6着と完敗。このレースを最後に4歳時7戦2勝の成績で競走馬引退となった。

競走馬としての特徴

本馬の競走実績を振り返ると、父モンジューと非常に良く似ている。本馬のGⅠ競走4勝は全て父子制覇である。仏ダービー以降の出走歴は、父がジャパンCに参戦した以外は全く同じである。重馬場巧者であった点も、4歳後半は急激に精彩を欠いた点も父と同様であった。

なお、本馬は直線で外を通ると伸びない事が多く(BCターフはその典型)、内側を突くのが勝利時における常套手段だったが、当然不利を受けやすいデメリットもあった(2度目の凱旋門賞はその典型)。

血統

Montjeu Sadler's Wells Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason
Lalun
Special Forli
Thong
Floripedes Top Ville High Top Derring-Do
Camenae
Sega Ville Charlottesville
La Sega
Toute Cy Tennyson Val de Loir
Tidra
Adele Toumignon ゼダーン
Alvorada
Hold On Surumu Literat Birkhahn Alchimist
Bramouse
Lis Masetto
Liebeslied
Surama Reliance Tantieme
Relance
Suncourt Hyperion
Inquisition
Hone Sharpen Up エタン Native Dancer
Mixed Marriage
Rocchetta Rockefella
Chambiges
Lucy Sheshoon Precipitation
Noorani
Laverock Chanteur
Laurel

モンジューは当馬の項を参照。本馬を筆頭に、モティヴェイター、スコーピオンなどの初年度産駒が大活躍し、本馬の3歳時には仏首位種牡馬を獲得、英愛種牡馬ランキングでもサドラーズウェルズを抑えて2位に入った(1位はデインヒル)。

母ホールドオンは独国産馬で、現役時代は独国で走り8戦2勝の成績だった。繁殖牝馬としては、本馬の半兄ハイビスカス(父ロウソサイエティ)【フュルシュテンベルクレネン(独GⅢ)】も産んでいる。ホールドオンの半兄にはホンドモンド(父カーリアン)【メルセデスベンツ大賞(独GⅡ)】、ホンデロ(父ダミスター)【シュプレティレネン(独GⅢ)】がいる。ホールドオンは独国産馬だが、牝系は独国の土着血統ではなく、ホールドオンの母である英国産馬ホーンが独国に輸入されたものであり、牝系は完全な英国血統である。ホーンの4代母リボンはミドルパークSの勝ち馬で、第二次世界大戦下の1943年に施行された英1000ギニー・英オークス・英セントレジャーの英国牝馬三冠競走で全て2着した馬だった。1989年のエクリプス賞最優秀古馬牡馬ブラッシングジョン、日本で活躍したスーパークリークやエイシンワシントンなども同じ牝系。→牝系:F1号族④

母父ズルムーはアカテナンゴの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は愛国クールモアスタッドで種牡馬入りした。父モンジューの後継種牡馬筆頭格として期待されたが、競走成績では父に似ていても種牡馬成績では似ておらず、当初の種牡馬成績は甚だしく不振だった。2012年に父が他界した後になって少しずつ産駒成績が伸びており、複数のGⅠ競走の勝ち馬が登場しているが、まだまだ父の領域には遠く及ばない。2015年現在の種付け料は1万5千ユーロとなっている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2008

Ballybacka Lady

デリンズタウンスタッド1000ギニートライアルS(愛GⅢ)

2008

Don't Hurry Me

ペネロープ賞(仏GⅢ)

2008

Freedom

ダイアモンドS(愛GⅢ)

2008

Future Generation

デズモンドS(愛GⅢ)

2008

Kreem

リス賞(仏GⅢ)

2008

Memphis Tennessee

オーモンドS(英GⅢ)

2010

First Cornerstone

愛フューチュリティS(愛GⅡ)

2010

Hurricane Red

ストックホルムストラ賞(蘇GⅢ)

2010

Magic Hurricane

ザメトロポリタン(豪GⅠ)

2011

Ectot

クリテリウム国際(仏GⅠ)・ニエル賞(仏GⅡ)・シェーヌ賞(仏GⅢ)・フォンテーヌブロー賞(仏GⅢ)

2011

Vent de Force

ヘンリーⅡ世S(英GⅢ)

2012

Wekeela

クロエ賞(仏GⅢ)

TOP