マインシャフト

和名:マインシャフト

英名:Mineshaft

1999年生

鹿毛

父:エーピーインディ

母:プロスペクターズディライト

母父:ミスタープロスペクター

欧州で走っていた時期は振るわなかったが米国移籍後に開花し父子三代に渡るエクリプス賞年度代表馬を受賞する

競走成績:3・4歳時に英仏米で走り通算成績18戦10勝2着3回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州レーンズエンドファームにおいて、同牧場の設立者ウィリアム・スタンプス・ファリッシュⅢ世氏、ジェームズ・エルキンズ氏、W・テンプル・ウェバー・ジュニア氏の3名により共同生産・所有された。

ファリッシュⅢ世氏は米国石油協会の会長を務めたウィリアム・スタンプス・ファリッシュⅡ世氏の孫で、テキサス州ヒューストンを拠点に信託会社を経営していた事業家でもあった。馬主としての経歴は長く、33歳時の1972年にはビービービーでプリークネスSを勝利していた。1979年にレーンズエンドファームを開設し、1992・99年と2度のエクリプス賞最優秀生産者を受賞していた。大種牡馬ダンチヒや本馬の父エーピーインディもファリッシュⅢ世氏の生産馬である。

血統的には明らかにダート向きの本馬だったが、本馬が2歳時の2001年3月にファリッシュⅢ世氏が時の米国大統領ジョージ・W・ブッシュ氏から駐英米国大使に任命されてしばらく英国で暮らす事になったのが影響したのか、本馬が預けられたのは英国のジョン・ゴスデン調教師だった。

競走生活(3歳時)

3歳4月にニューベリー競馬場で行われた芝8ハロンの未勝利ステークスで、フィリップ・ロビンソン騎手を鞍上にデビューした。後に伊国のGⅢ競走セルジオクマニ賞を勝つウェルシュディーヴァ、次走のリステッド競走プリティポリーSで2着するディスコヴォランテなどが出走するというまずまずのメンバー構成となっていた事もあり、本馬は単勝オッズ17倍で14頭立て7番人気の低評価だった。しかもスタートで出遅れて後方からの競馬となってしまい、残り3ハロン地点から追い上げるも届かず、勝った単勝オッズ4.5倍の3番人気馬ディスコヴォランテから5馬身3/4差の4着に敗れた。

翌5月には再びロビンソン騎手と共に、ニューマーケット競馬場芝8ハロンの未勝利ステークスに出走した。このレースでは、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSや愛チャンピオンSに勝利した名馬ペンタイアの半弟という期待馬オンエッジがデビュー戦を迎えており、単勝オッズ2.75倍の1番人気に支持されていた。単勝オッズ4.5倍の2番人気はネルグウィンSの勝ち馬マイセルフの息子シャカランで、本馬は単勝オッズ5.5倍の3番人気だった。今回は普通にスタートを切った本馬は先行策を採り、残り1ハロン地点で先頭に立った。ゴール前ではやはり先行していた単勝オッズ9倍の4番人気馬ヒーローズジャーニーとの接戦となったが、本馬が首差で勝利を収めた。

次走は6月にニューマーケット競馬場で行われたリステッド競走フェアウェイS(T10F)となった。このレースにはデビュー戦の条件ステークスを8馬身差で圧勝してきたアルムラザムという馬が出走してきた。レインボークエスト産駒のアルムラザムは、サドラーズウェルズの従姉妹の子という血統の良さや、鞍上のF・デットーリ騎手効果もあって単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持されたが、ロビンソン騎手鞍上の本馬も単勝オッズ2.625倍の2番人気に推されており、この2頭の勝負とみなされていた。しかし逃げたアルムラザムをゴール寸前で短頭差かわして勝ったのは単勝オッズ6.5倍の3番人気馬バスタンであり、先行して伸びを欠いた本馬はバスタンから2馬身半差の4着に敗れた。

次走は同月にアスコット競馬場で行われたハンデ競走ブリタニアH(T8F)となった。しかしここで本馬に課せられたのは、他馬より5~22ポンドも重い133ポンドのトップハンデ。鞍上にはデットーリ騎手を迎えた本馬だったが、斤量が嫌われて単勝オッズ9倍の3番人気だった(31頭立てだったからそれでも評価された方ではある)。レースでは馬群の最後方辺りを進み、残り2ハロン地点で仕掛けて末脚に賭けるという作戦を採ったが、残り1ハロン地点からの伸びが悪く、勝った単勝オッズ26倍の14番人気馬ペンテコスト(本馬より16ポンド斤量が軽かった)から6馬身1/4差をつけられた10着に敗れた。

重い斤量を背負うと駄目というのではハンデ競走路線を進むことは出来ず、ハンデ競走よりさらに斤量が厳しい障害競走路線はもってのほかであるから、悩んだ陣営は試しに仏国遠征を実行した。そして7月にメゾンラフィット競馬場でダフニ賞(仏GⅢ・T1800m)に出走したのだが、仏グランクリテリウム2着馬ベルヌボー、ロシェット賞の勝ち馬ガイズアンドドールズ、グレフュール賞などで2着していたカエサリオンなどが出走しており、本馬は単勝オッズ15.5倍の5番人気止まりだった。リチャード・ヒューズ騎手が手綱を取った本馬は馬群の最後方につけて、直線大外一気の追い込みを見せた。しかし全馬をごぼう抜きにするほどの豪脚ではなく、単勝オッズ3.4倍の1番人気に応えて勝ったベルヌボーから2馬身差の4位入線(2位入線のガイズアンドドールズが進路妨害で5着降着となったため繰り上がって3着)だった。

仏国における出走はこの1戦のみで切り上げて英国に戻り、8月にソールスベリー競馬場で行われたリステッド競走ソヴリンS(T8F)に出走した。ここには一昨年の愛2000ギニー3着などマイル路線で活躍したケープタウンの姿もあったが、1年以上勝ち星に見放されていたケープタウンの評価は低く、曲がりなりにもGⅢ競走で3着してきた本馬が単勝オッズ4倍の1番人気に押し出された。今回もヒューズ騎手とコンビを組んだ本馬は今回も馬群の最後方を追走。そして残り3ハロン地点で大外から追い込んできた。しかし今回も全馬をごぼう抜きにするほどの豪脚ではなく、先行抜け出しの優等生的な競馬で勝った単勝オッズ5.5倍の2番人気馬プライアーズロッジ(後にセレブレーションマイルを勝っている)から僅か1馬身半差の6着に敗れた(ケープタウンは7着だった)。

次走は9月にドンカスター競馬場で行われたチャレンジトロフィー(T8F)となった。ヒューズ騎手と共に今度こそ勝つという意気込みで臨んできた本馬は単勝オッズ2.375倍の1番人気に支持された。スタートが切られるとヒューズ騎手は前2戦とは一転して本馬をすぐに先頭に立たせた。そしてそのまま逃げ切るかと思われたのだが、前走の未勝利ステークスで先行して7馬身差で圧勝していながらも今回は最後方に陣取っていた単勝オッズ8.5倍の5番人気馬ティックーンの豪脚の前に屈して、2馬身差の2着に敗れた。

さすがの名伯楽ゴスデン師も、もはや本馬に関しては打つ手無しとなってしまい、欧州における本馬の出走はこれで終了。本馬は米国のニール・J・ハワード厩舎へ転厩して、米国ダート路線に活路を見出すことになった。結局欧州では7戦1勝という平凡な成績に終わった。

移籍初戦は11月にチャーチルダウンズ競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走となった。ダート競走初出走の本馬だったが、誰がどう見てもダート向きの血統だった事が買われたようで、単勝オッズ3.7倍の1番人気に支持された。主戦としてこの後の本馬の全競走に騎乗するロビー・アルバラード騎手が手綱を取った本馬だったが、スタートでものの見事に出遅れてしまった。しかしすぐに馬群の中団につけると、四角で一気に位置取りを上げて直線に入ってすぐに先頭を奪った。そして先行して2着に粘った単勝オッズ11倍の7番人気馬リヴァイズドノートに1馬身半差をつけて勝利した。

その後はルイジアナ州フェアグラウンズ競馬場に向かい、12月に行われたダート8ハロン40ヤードのオプショナルクレーミング競走に出走した(本馬は売却の対象外)。単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された本馬は、今回は好スタートを切って2番手を追走。直線入り口で先頭に立つとそのまま直線を一気に走り抜け、2着に追い上げてきた単勝オッズ11倍の4番人気馬ヘイローズタイガーに3馬身半差をつけて完勝した。移籍後の2連勝により、3歳時の成績は9戦3勝となった。

競走生活(4歳時)

年が明けてもそのままフェアグラウンズ競馬場に留まり、まずは1月のディプロマットウェイH(D8.5F)に出走した。このレースにはGⅢ競走ラウンドテーブルSなどを勝っていたディスクリートヒーローが出走しており、本馬と人気を分け合った。本馬が単勝オッズ2倍の1番人気で、本馬から3ポンドのハンデを貰ったディスクリートヒーローが単勝オッズ2.8倍の2番人気だった。スタートが切られるとディスクリートヒーローが2番手につけ、本馬はそれをマークするように3番手につけた。三角で本馬がディスクリートヒーローに並びかけてそのままの態勢で直線に入ってきた。直線半ばでディスクリートヒーローは後れを取り、本馬がそのまま勝つかと思われたが、道中は最後方でじっと我慢していた単勝オッズ7倍の4番人気馬ラーンドが凄い勢いで追い上げてきた。ゴールとほぼ同時にかわされたが、本馬が鼻差だけ粘り切っていた。

続いて翌月のワーラウェイH(米GⅢ・D8.5F)に出走した。本馬が過去に米国で出走してきた3競走における対戦相手の層は薄かったのだが、ここには、レーンズエンドスパイラルS・アーカンソーダービーの勝ち馬でマンノウォーS2着のバルトスター、前年のヴォスバーグSを筆頭にカウントフリートスプリントH・阪神カップHを勝っていたボナポウ、フェイエットSの勝ち馬コネクテッド、ルイジアナダービー・オクラホマダービー・インディアナダービーでいずれも2着のイージーフロムザギットゴー、前走3着のディスクリートヒーローなどが出走してきて、今までのレースとは一味違っていた。118ポンドのバルトスターが単勝オッズ3.5倍の1番人気、116ポンドの本馬が単勝オッズ3.7倍の2番人気、114ポンドのコネクテッドが単勝オッズ4.5倍の3番人気、115ポンドのボナポウが単勝オッズ7倍の4番人気、115ポンドのディスクリートヒーローが単勝オッズ7.2倍の5番人気、116ポンドのイージーフロムザギットゴーが単勝オッズ9.4倍の6番人気となった。

スタートが切られると、ボナポウがその快速を活かして先頭を飛ばしまくり、4~5馬身ほど離れた2番手がバルトスター、本馬はそのまた少し後方につけていた。ボナポウは先頭を維持したまま直線に入ってきたが、既に脚色は衰えており、すぐにバルトスターがそれをかわして先頭に立った。4番手で直線に入ってきた本馬も追撃を開始したが、バルトスターとの差はまったく縮まらず、ボナポウをかわすのがやっとだった。勝ったバルトスターから2馬身半差をつけられて2着に終わった本馬は米国で初黒星を喫してしまった。

翌3月のニューオーリンズH(米GⅡ・D9F)では、バルトスター、前走で本馬から3/4馬身差の3着だったボナポウ、ディプロマットウェイHから直行してきたラーンドに加えて、メモリアルデイH・スキップアウェイHの勝ち馬ベストオブザレスト、ファウンテンオブユースS・ホーリーブルSの勝ち馬でブルーグラスS2着のブックレット、前走のストラブSで2着してきたオルモダヴォル、前年のピーターパンSを勝ちベルモントS・ウッドメモリアルSで3着していた日本産馬サンデーブレイク(ファレノプシスの半弟でキズナの半兄)などが出走してきた。120ポンドのバルトスターが単勝オッズ4.4倍の1番人気、115ポンドの本馬が単勝オッズ6倍の2番人気、118ポンドのベストオブザレストが単勝オッズ6.1倍の3番人気、117ポンドのブックレットが単勝オッズ7.3倍の4番人気、117ポンドのオルモダヴォルが単勝オッズ7.8倍の5番人気、115ポンドのサンデーブレイクが単勝オッズ9.9倍の6番人気となった。

今回もボナポウが先頭を引っ張り、絶好のスタートを切った本馬がボナポウから1~2馬身ほど後方の2番手を追走。スタートがあまり良くなかったバルトスターはそのまま馬群の中団後方につけた。三角手前でボナポウが失速していくと本馬が自動的に先頭に立ち、そのまま後続を引き離しにかかった。直線に入っても本馬の影を踏む馬はおらず、2着オルモダヴォルに3馬身半差をつけて完勝した(バルトスターは9着と惨敗した)。

グレード競走勝ち馬となってフェアグラウンズ競馬場を後にした本馬は、4月にキーンランド競馬場で行われたベンアリS(米GⅢ・D9F)に出走した。本馬以外の出走馬は僅か3頭であり、その中でも目立つ実績馬はせいぜいのところ、前年のドワイヤーS3着馬アメリカンスタイルくらいだった。本馬には他3頭より4ポンド重い120ポンドを課せられたが、それでも単勝オッズ1.3倍という圧倒的な1番人気に支持され、アメリカンスタイルが単勝オッズ4.9倍の2番人気となった。出走頭数が少ないためか、今回の本馬は4頭立ての3番手辺りで様子を伺っていた。そして四角に入ってから満を持して仕掛けると瞬く間に先頭に踊り出た。そして直線では後続との差を広げる一方で、最後は2着アメリカンスタイルに9馬身差をつけて圧勝した。

続いて出走したのはGⅠ競走初登場となるピムリコスペシャルH(米GⅠ・D9.5F)だった。オハイオダービー・コールダーダービー・サンフェルナンドS・サンバーナーディノHの勝ち馬でサンタアニタH2着のウエスタンプライド、ピーターパンS・ガルフストリームパークHの勝ち馬でドンH2着のヒーローズトリビュート、スタイヴァサントH・クイーンズカウンティH・アケダクトHの勝ち馬スネークマウンテン、ドンH・ガルフストリームパークHで3着のパズルメント、ニューオーリンズH惨敗後に出走した前走エクセルシオールHで2着して巻き返してきたバルトスターなどが対戦相手となった。121ポンドのトップハンデを課された本馬が単勝オッズ2.3倍の1番人気に支持され、116ポンドのウエスタンプライドが単勝オッズ4.4倍の2番人気、116ポンドのヒーローズトリビュートが単勝オッズ4.8倍の3番人気、118ポンドのバルトスターが単勝オッズ6.7倍の4番人気、120ポンドのスネークマウンテンが単勝オッズ11.1倍の5番人気となった。

本馬にとっては過去に経験したことが無い泥だらけの不良馬場の中でスタートが切られると、バルトスターが先頭に立ち、本馬は4番手の好位を進んだ。そしてすぐ前を走っていた2番人気のウエスタンプライドが向こう正面で先頭に立つと、本馬もそれを追って進出。直線入り口でウエスタンプライドに並びかけるとすぐに前に出て突き放し、最後は2着ウエスタンプライドに3馬身3/4差をつけて完勝した。ここで9着に惨敗したバルトスターはその後に芝路線に向かい、次々走のユナイテッドネーションズHでGⅠ競走制覇を果たすことになる。

翌月には再度ケンタッキー州に戻り、スティーヴンフォスターH(米GⅠ・D9F)に出走した。メトロポリタンH・フォアゴーH・ヴォスバーグS・シガーマイルHと前年のGⅠ競走2着4回から一転してこの年はサンカルロスH・メトロポリタンH・チャーチルダウンズHを勝っていた良血馬アルデバラン、レーンズエンドS・インディアナダービーの勝ち馬でケンタッキーダービー3着のパーフェクトドリフト、レキシントンSの勝ち馬でケンタッキーダービー2着・プリークネスS3着のプラウドシチズン、レベルS・エセックスH・ターフウェイパークフォールCSSの勝ち馬クラフティーショウ、デビューから5戦4勝で敗北はスキップアウェイS2着のみというコンシステンシーなどが対戦相手となった。123ポンドのトップハンデを課された本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持され、120ポンドのアルデバランが単勝オッズ4.2倍の2番人気、115ポンドのパーフェクトドリフトが単勝オッズ7.8倍の3番人気、115ポンドのプラウドシチズンが単勝オッズ12.5倍の4番人気、114ポンドのコンシステンシーが単勝オッズ14.5倍の5番人気と続いた。

このレースのスタートは各馬がばらばらで、本馬やパーフェクトドリフト、プラウドシチズンなど多くの馬が出遅れを喫した。まずはクラフティーショウが先頭に立ち、出遅れたパーフェクトドリフトが4番手、同じく出遅れた本馬が5番手、アルデバランが6番手と、有力馬勢は揃って好位につけた。向こう正面に入ったところで本馬が進出を開始し、一気に先頭に立った。アルデバランはまだ動かなかったが、パーフェクトドリフトは本馬を追って進出を開始し、2番手まで上がってきた。そして本馬とパーフェクトドリフトが並ぶようにして直線に突入し、2頭の完全な一騎打ちとなった。しかし最後は8ポンド斤量が軽いパーフェクトドリフトが競り勝ち、本馬は頭差の2着に敗れた。しかし3着アルデバランには9馬身半差をつけていたから、斤量差を考慮すると実力は本馬が断然上位である事は疑う余地が無かった。

次走はニューヨーク州初登場となるサバーバンH(米GⅠ・D10F)だった。このレースには前年のBCクラシックで最低人気の評価を覆して6馬身半差の圧勝劇を演じていたペガサスH・ピルグリムS・ポーカーHの勝ち馬で前走ブルックリンH2着のヴォルポニ、前年のBCクラシックで3番人気4着だったジョッキークラブ金杯・サラトガBCH・ディスカヴァリーH・クイーンズカウンティH・アケダクトH・レッドスミスHの勝ち馬イヴニングアタイア、前年のBCクラシックで7番人気6着後の長期休養明けで参戦してきたケンタッキージョッキークラブSの勝ち馬で前年のスティーヴンフォスターH2着・ブルーグラスS・トラヴァーズS・オークローンH3着のダラービル、ピムリコスペシャルHで5着だったパズルメント、同8着だったヒーローズトリビュートなどが主な対戦相手となった。121ポンドの本馬が単勝オッズ1.75倍の1番人気、同じく121ポンドのヴォルポニが単勝オッズ3.4倍の2番人気、120ポンドのイヴニングアタイアが単勝オッズ8.4倍の3番人気、115ポンドのダラービルが単勝オッズ10.8倍の4番人気、115ポンドのヒーローズトリビュートが単勝オッズ23.9倍の5番人気であり、ほぼ本馬とヴォルポニの一騎打ちムードだった。

スタートが切られると、単勝オッズ86.25倍の最低人気馬ジャッジズケースが先頭を引っ張り、今回は好スタートを切った本馬が少し離れた2番手につけた。向こう正面に入ったところでジャッジズケースは早くも失速していき、本馬が先頭に立った。そこへ本馬をマークするように走っていたヴォルポニも上がってきて本馬に並びかけ、戦前の予想どおりにこの2頭の一騎打ちとなった。2頭が並んだまま直線に入ってきて叩き合いとなったが、直線半ばで本馬が抜け出し、最後は2着ヴォルポニに2馬身1/4差をつけて完勝した。

その後は短い夏休みを取り、9月のウッドワードS(米GⅠ・D9F)に向かった。ウッドワードSは1頭だけ強力な馬が出走してきて、残りは今ひとつの馬ばかりという事例が珍しくないが、この年もそんな感じだった。本馬が単勝オッズ1.3倍の1番人気、サバーバンH4着後に夏場も休まず走り前走サラトガBCHでようやくグレード競走初勝利を果たしてきたパズルメントが単勝オッズ7.9倍の2番人気、前年の仏グランクリテリウム・レイルウェイSの勝ち馬でBCジュヴェナイルでも3着してカルティエ賞最優秀2歳牡馬を受賞したがこの年は3戦全敗だった愛国調教馬ホールドザットタイガーが単勝オッズ9.5倍の3番人気と、本馬の一強独裁状態だった。

スタートが切られると、ノーザンテースト産駒の日本産馬で、マクトゥームファミリーに購入されて海外馬として世界中を走り回っていた単勝オッズ10倍の4番人気馬ノーザンロックが先頭に立ち、単勝オッズ14.1倍の最低人気馬トンプソンルージュがそれに競りかけていった。出走馬は5頭しかおらず、逃げた2頭はいずれもこのレースで勝ち負けできそうな馬ではなかったため、他の3頭はいずれも無理に追いかけなかった。3頭の位置取りは、ホールドザットタイガーが一番前で、少し離れて本馬、さらに少し離れた最後方がパズルメントだった。やがて逃げた2頭が失速するとホールドザットタイガーが先頭に立った。それを見計らっていたかのように本馬が進出を開始し、四角で一気にホールドザットタイガーを抜き去って先頭に立った。あとは直線を馬なりのまま走り続け、2着ホールドザットタイガーに4馬身1/4差をつけて完勝した。

次走のジョッキークラブ金杯(米GⅠ・D10F)では、この年のドバイワールドCを筆頭にダンテS・セレクトS・マクトゥームチャレンジR2を勝ち英チャンピオンS2着・英ダービー3着のムーンバラッド、サバーバンH5着後に一般競走を2勝してホイットニーHで3着していたイヴニングアタイア、プランスドランジュ賞・ドラール賞の勝ち馬でダルマイヤー大賞3着のステートシントウ、前走の一般競走を快勝してきたステークス競走未勝利のクエストの4頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.4倍の1番人気、ドバイワールドC勝利後は欧州で3戦全敗だったムーンバラッドが単勝オッズ3.7倍の2番人気、イヴニングアタイアが単勝オッズ8.3倍の3番人気だった。

スタートが切られると単勝オッズ23.1倍の4番人気馬クエストが先頭に立ち、ムーンバラッドがそれに競りかけていった。対抗馬のムーンバラッドが逃げているために本馬も前走とは異なり後方でのんびりしているわけにはいかず、ムーンバラッドから少し離れた3番手を追走。他の2頭は遥か後方に置き去りにされた。逃げた2頭のうち三角で先に失速したのは意外にもムーンバラッドのほうであり、クエストはまだ頑張っていた。しかしこの時点で既に本馬がクエストに外側から並びかけていた。四角を回る時点では勝負は終わったのも同然であり、直線で馬なりのまま独り旅を満喫した本馬が完勝。4馬身1/4差の2着にクエストが粘り、イヴニングアタイアは3着、ムーンバラッドは5着最下位と冴えない結果に終わった。

次の目標は当然BCクラシックになるはずだった。しかしジョッキークラブ金杯の直後に、右前脚の球節に亀裂骨折を発症している事が判明。BCクラシックに出走する事は出来ずに、翌10月に競走馬引退に追い込まれてしまった。しかし4歳時9戦7勝2着2回という非常に安定した成績を残し、この年のエクリプス賞年度代表馬・最優秀古馬牡馬のタイトルを獲得した。

血統

A. P. Indy Seattle Slew Bold Reasoning Boldnesian Bold Ruler
Alanesian
Reason to Earn Hail to Reason
Sailing Home
My Charmer Poker Round Table
Glamour
Fair Charmer Jet Action
Myrtle Charm
Weekend Surprise Secretariat Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
Somethingroyal Princequillo
Imperatrice
Lassie Dear Buckpasser Tom Fool
Busanda
Gay Missile Sir Gaylord
Missy Baba
Prospector's Delite Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Up the Flagpole Hoist the Flag Tom Rolfe Ribot
Pocahontas
Wavy Navy War Admiral
Triomphe
The Garden Club Herbager Vandale
Flagette
Fashion Verdict Court Martial
So Chic

エーピーインディは当馬の項を参照。エーピーインディの父シアトルスルーと本馬の父子三代でエクリプス賞年度代表馬受賞という快挙を達成している。

母プロスペクターズディライトは現役成績9戦6勝。アッシュランドS(米GⅠ)・フェアグラウンズオークス(米GⅢ)など5戦全勝で迎えたケンタッキーオークス(米GⅠ)では単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持されたが、ゴール前の接戦に屈して伏兵ラヴミーラヴミーノットの1馬身差3着に敗れた。しかし人気を落とした次走のエイコーンS(米GⅠ)では直線で抜け出して2馬身差で完勝。その後はマザーグースS(米GⅠ)など2連敗して引退した。競走馬としても一流と言って良い成績を収めたプロスペクターズディライトだったが、繁殖牝馬としては競走馬時代を上回る好成績を残し、本馬の全姉トミシューズディライト【パーソナルエンスンH(米GⅠ)・ラフィアンH(米GⅠ)・フォールズシティH(米GⅢ)】、半兄モナシーマウンテン(父ダンチヒ)【キラヴーランS(愛GⅢ)・テトラークS(愛GⅢ)】、全兄ロックスライド【テナシャスH・シーオエリンBCマイル】など多くのステークスウイナーを産んでいる。2003年には本馬の活躍によりケンタッキー州最優秀繁殖牝馬に選出されたが、その2年前の2001年6月に蹄葉炎のため12歳で既に他界していた。トミシューズディライトが母としてミスターシドニー【メイカーズマークマイルS(米GⅠ)・ファイアクラッカーH(米GⅡ)】を産むなど後継繁殖牝馬として活躍している。

プロスペクターズディライトの母アップザフラッグポールも現役時代にデラウェアオークス(米GⅡ)を勝つなど22戦7勝の成績を残した優秀な競走馬だった。そしてアップザフラッグポールもやはり非常に優秀な繁殖牝馬であり、プロスペクターズディライトの半妹フラッグバード(父ヌレイエフ)【伊共和国大統領賞(伊GⅠ)・プリティポリーS(愛GⅡ)・グロット賞(仏GⅢ)】、半弟トップアカウント(父プライヴェートアカウント)【キングズビショップS(米GⅡ)】、半妹ランナップザカラーズ(父エーピーインディ)【アラバマS(米GⅠ)】など活躍馬を続出させた。フラッグバードの孫にはリトルベル【アッシュランドS(米GⅠ)】が、ランナップザカラーズの子にはレヴォルーショナリー【ルイジアナダービー(米GⅡ)・ウィザーズS(米GⅢ)・ピムリコスペシャルS(米GⅢ)】がいる。

牝系は言わずと知れた米国の超名門ラトロワンヌ系で、アップザフラッグポールの4代母ストライキングが名牝ブッシャーの全妹に当たる。→牝系:F1号族②

母父ミスタープロスペクターは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、生まれ故郷のレーンズエンドファームで種牡馬入りした。初年度の種付け料は10万ドルに設定された。2015年時点で38頭以上のステークスウイナーを出し、GⅠ競走の勝ち馬も散発的に出しているが、種牡馬成績は可とも不可とも言い難い。ただ、少なくともエーピーインディの後継種牡馬としては物足りないらしく、種付け料は年々下がって2015年現在は2万5千ドルとなっている。日本では初年度産駒のカジノドライヴが有名である。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2005

Coal Play

サルヴェイターマイルS(米GⅢ)

2005

Cool Coal Man

ファウンテンオブユースS(米GⅡ)

2005

カジノドライヴ

ピーターパンS(米GⅡ)

2005

ザッハーマイン

TCKディスタフ(SⅢ)・東京シンデレラマイル(SⅢ)・川崎マイラーズ(SⅢ)

2006

Redding Colliery

ホーソーン金杯(米GⅡ)・ローンスターパークH(米GⅢ)

2007

Discreetly Mine

キングズビショップS(米GⅠ)・リズンスターS(米GⅡ)・アムステルダムS(米GⅡ)・ジャージーショアS(米GⅢ)

2007

Fly Down

ドワイヤーS(米GⅡ)

2007

Nates Mineshaft

ニューオーリンズH(米GⅡ)・マインシャフトH(米GⅢ)・ローンスターパークH(米GⅢ)

2008

Dialed In

フロリダダービー(米GⅠ)・ホーリーブルS(米GⅢ)

2008

It's Tricky

エイコーンS(米GⅠ)・CCAオークス(米GⅠ)・オグデンフィップスH(米GⅠ)・トップフライトH(米GⅡ)・ディスタフH(米GⅡ)

2008

Juanita

インディアナオークス(米GⅡ)・ラトロワンヌS(米GⅡ)

2010

Hightail

BCジュヴェナイルスプリント

2010

Nellie Cashman

ヴァージニアオークス(米GⅢ)

2010

Sheriff Pete

グスタボプラドへデベレト賞(秘GⅡ)

2011

Bond Holder

フロントランナーS(米GⅠ)

2011

Effinex

クラークH(米GⅠ)・サバーバンH(米GⅡ)・エクセルシオールS(米GⅢ)

2011

Fortune Pearl

デラウェアオークス(米GⅡ)

TOP