プレザントタップ

和名:プレザントタップ

英名:Pleasant Tap

1987年生

鹿毛

父:プレザントコロニー

母:ネヴァーノック

母父:ステージドアジョニー

プレザントコロニー最良の後継種牡馬は4年連続で異なる種類のブリーダーズカップの競走に出た珍記録保持馬でもある

競走成績:2~5歳時に米で走り通算成績32戦9勝2着9回3着5回

誕生からデビュー前まで

プレザントコロニーと同じくトーマス・メロン・エヴァンズ氏により米国ヴァージニア州バックランドファームにおいて生産・所有され、ロス・R・ピアース調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳8月にデルマー競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦で、主戦となるエディ・デラフーセイ騎手を鞍上にデビューしたが、ソーシャルジョークスの9馬身3/4差6着に敗退。3週間後に出走した同コースの未勝利戦も、グランドキャニオンの4馬身1/4差3着に敗れた。3戦目は、10月にサンタアニタパーク競馬場で行われたサニースロープS(D7F)だった。前走で敗れた相手のグランドキャニオンが出走してきたのだが、ここでは本馬が2着グランドキャニオンに3/4馬身差をつけて勝ち、ステークス競走で勝ち上がった。

続いてフロリダ州に遠征し、ガルフストリームパーク競馬場で行われたBCジュヴェナイル(GⅠ・D8.5F)に参戦した。ここでは、ブリーダーズフューチュリティの勝ち馬でカウディンS2着のスラヴィック、カウディンS・シャンペンSを連勝してきたベルモントフューチュリティS2着馬アジュディケーティング、シャンペンSで2着してきたリズム、サニースロープSで本馬に敗れた直後にノーフォークSを制してGⅠ競走勝ち馬となっていたグランドキャニオン、ノーフォークS2着・デルマーフューチュリティ3着のシングルドーン、ローレルフューチュリティで2着してきたロビンダンサーに加えて、英国の主要2歳競走ミドルパークSを勝ってきた英国調教馬バラコーヴ、前哨戦のローレルフューチュリティを勝ってきた愛国調教馬ゴーアンドゴーという2頭の欧州調教馬の姿もあった。スラヴィックが単勝オッズ3.2倍の1番人気、アジュディケーティングとリズムのカップリングが単勝オッズ3.6倍の2番人気、グランドキャニオンが単勝オッズ5.4倍の3番人気、シングルドーンが単勝オッズ8.4倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ12.3倍の5番人気とそれなりの評価を受けていた。スタートが切られるとバラコーヴが逃げを打ち、本馬は最後方からレースを進めた。四角に入ってもまだ最後方であり、直線でそれなりに追い込んではきたが、勝ったリズムから6馬身半差の6着と完敗した。

次走のホイストザフラッグS(GⅡ・T8F)では、BCジュヴェナイルで本馬に首差先着する5着だったシングルドーンに鼻差で敗れて2着に終わり、2歳時は5戦1勝の成績だった。

競走生活(3歳前半)

3歳時は2月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走から始動。ここでは2着ティーヴィーレベルに1馬身1/4差で順当に勝利した。サンフェリペH(GⅡ・D8.5F)では、ハリウッドフューチュリティ2着馬ファーマウェイ、エルカミノリアルダービーの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ3着のシルヴァーエンディング、BCジュヴェナイルで8着に終わっていたロビンダンサー、ホイストザフラッグSでは7着に終わっていたがサンラファエルSで3着してきたランドラッシュ、前走サンタカタリナSを勝ってきたミュージックプロスペクター、前走の一般競走を勝ってきたウォークラフト、ブラッドベリーS2着馬ビデオレンジャーなどを抑えて1番人気に支持された。ところが、2着ウォークラフトに5馬身半差をつけて勝ったリアルキャッシュから15馬身差の6着と大きく期待を裏切ってしまった。

それでも陣営はケンタッキーダービーを目指してケンタッキー州に本馬を遠征させた。遠征初戦のレキシントンS(GⅡ・D8.5F)では、ケント・デザーモ騎手とコンビを組んだ。ここでは、プレビューSを勝ってきたホームアットラストの2馬身差2着だったが、2連勝で臨んできた後のBCスプリントの勝ち馬サーティスルーズには先着した。

続いてケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)に参戦。プエルトリコからやって来た16戦無敗のサンタアニタダービー馬ミスターフリスキー、ホープフルS・サラトガスペシャルS・ジムビームS・ブルーグラスS・ケンタッキーBCS・バッシュフォードマナーSに勝っていた8戦7勝馬サマースコール、ゴーサムS・ウッドメモリアル招待Sを連勝してきたサーティシックスレッド、サンフェリペS9着後にアーカンソーダービーを勝って立て直してきたシルヴァーエンディング、フロリダダービー・ワットアプレジャーSの勝ち馬アンブライドルド、サンフェリペS5着後にブルーグラスSで2着していたランドラッシュ、サンフェリペS勝利後にサンタアニタダービー4着・アーカンソーダービー2着だったリアルキャッシュ、ウッドメモリアルSで2着してきたバーントヒルズ、ガーデンステートSを勝ってきたキラーディラー、サンフェリペS7着後にサンタアニタダービーで2着していたビデオレンジャー、アリシーバS・トーマスDナッシュ記念Hの勝ち馬ファイティングファンタジーなどが対戦相手となり、デザーモ騎手騎乗の本馬は15頭立て9番人気の低評価だった。

スタートが切られると本馬はすぐに後方馬群につけた。ミスターフリスキーなど5頭が激しく先頭を争ったためにかなり馬群が縦長となった。スタミナが切れた先行馬が三角手前から次々と脱落していくと、本馬は脱落していく先行馬群の間を縫って進出を開始。直線入り口では4番手まで押し上げてきた。しかし好位から抜け出したサマースコールと、後方から大外を通って駆け上がっていたアンブライドルドの2頭が、既にかなり前方で叩き合いを開始していた。本馬もそれなりに頑張ったが、サマースコールを競り落としてゴールへと一直線のアンブライドルドとの差はどんどん開いていった。結局はアンブライドルドが2着サマースコールに3馬身半差をつけて完勝し、本馬はサマースコールからさらに6馬身差の3着だった。

事前の低評価を考えると健闘したとも言えるが、前2頭との着差が大きすぎて、好走と言うにはやや問題があった。そのためか、米国三冠競走の残り2戦には参戦せず、休養入りした。

競走生活(3歳後半)

秋はベルモントパーク競馬場で行われるブリーダーズカップを目指して、ニュージャージー州メドウランズ競馬場で行われるペガサスH(GⅠ・D9F)から始動した。ここでは、ケンタッキーダービー5着後にスワップスSで2着するなど堅実に走っていたシルヴァーエンディング、サンフェリペS3着後にカリフォルニアダービー・ベンアリH2着・プリークネスS4着などやはり堅実に走っていたミュージックプロスペクター、一般競走など3連勝後に出走したペンシルヴァニアダービーでは5着だったラナウェイストリームなどとの顔合わせとなった。しかしレースはシルヴァーエンディングが勝利を収め、本馬は10馬身差の7着に沈んだ。

それから13日後に出走したベルモントパーク競馬場ダート8.5ハロンの一般競走では、アンヘル・コルデロ・ジュニア騎手とコンビを組み、2着アウトオブプレイスに3馬身1/4差をつけて完勝した。

そしてブリーダーズカップに向かったが、BCクラシックではなくBCターフ(GⅠ・T12F)に参戦。おそらく芝のホイストザフラッグSで鼻差2着の実績があった事が影響していたのだろう。しかし対戦相手は、コロネーションC・サンクルー大賞・プランスドランジュ賞・フォワ賞の勝ち馬でガネー賞2着のインザウイングス、凱旋門賞・パリ大賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬ソーマレズ、ターフクラシックS・キングエドワードⅦ世S・リングフィールドダービートライアルSの勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・英国際S2着・英ダービー3着のカコイーシーズ、ロスマンズ国際S・モーリスドニュイユ賞・ラクープの勝ち馬フレンチグローリー、伊共和国大統領賞・ミラノ大賞・カールトンFバークHの勝ち馬でアラルポカル・ターフクラシックS2着・マンノウォーS3着のアルワウーシュ、米国でもボーリンググリーンH・タイダルHに勝ちアーリントンミリオン・ソードダンサーH2着・ターフクラシック招待S3着の実績があった前年の加国三冠馬ウィズアプルーヴァル、ハイアリアターフカップH・ボーリンググリーンH・ソードダンサーH2回の勝ち馬でロスマンズ国際S・ターフクラシックS2着のエルセニョール、マンノウォーS2着馬シャイトムといった芝路線の一流馬ばかりだった。インザウイングスとフレンチグローリーのカップリングが単勝オッズ2.9倍の1番人気、ソーマレズが単勝オッズ3.7倍の2番人気、カコイーシーズが単勝オッズ6.8倍の3番人気、ウィズアプルーヴァルが単勝オッズ7.2倍の4番人気と続き、ジェリー・ベイリー騎手騎乗の本馬は単勝オッズ11.4倍で11頭立ての5番人気と、穴馬としての評価を受けた。

好スタートを切った本馬は、しばらく先頭を伺うように走っていたが、徐々に下げて最初のコーナーでは馬群の中団に落ち着いた。そのまま中団を走っていたが、三角の仕掛けどころでいま一つ反応が悪く、直線入り口でもまだ後方。そしてそのまま伸びずに、勝ったインザウイングスから9馬身1/4差の8着と完敗した。この時点における本馬はグレード競走未勝利馬であり、正直BCクラシックに参戦しても勝ち負けになったかは怪しいが、まだBCターフよりはBCクラシックの方がましな結果だったように思われる(なお、この年のBCクラシックはアンブライドルドが勝っている)。

さすがに陣営も芝は諦めたのか、地元に戻った本馬を12月のネイティヴダイヴァーH(GⅢ・D9F)に向かわせた。ここでは、BCジュヴェナイルで8着に終わりながらも諦めずに翌年のベルモントSで2度目の米国遠征を決行し、見事に勝利を収めていたゴーアンドゴーとの顔合わせとなった。しかし勝ったのは、本馬が大敗したサンフェリペSの2着馬で、その後のサンタアニタダービーで3着するも米国三冠競走には出ずに裏街道を進んでいたウォークラフトであり、アレックス・ソリス騎手騎乗の本馬は鼻差2着、ゴーアンドゴーはさらに首差の3着に敗れた。

年末のマリブS(GⅡ・D7F)ではソリス騎手を鞍上に、2着ビーデヴィルドに1馬身1/4差で勝利を収め、グレード競走初勝利を挙げた。3歳時の成績は9戦3勝だった。なお、このマリブSの前の時期にピアース厩舎から、クリストファー・スペッカート厩舎に転厩している。

競走生活(4歳前半)

翌4歳時は休み無く1月のサンフェルナンドS(GⅡ・D9F)から始動した。ウォークラフト、ゴーアンドゴー、ペガサスH勝利後は2戦していずれも惨敗していたシルヴァーエンディング、ビーデヴィルド、マンノウォーS・サンダウンクラシックトライアル・ローズオブランカスターSの勝ち馬ディフェシヴプレイ、ヴォランテH・サンガブリエルHの勝ち馬インエクセスなどが対戦相手となった。ウォークラフトが単勝オッズ3.4倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.1倍の2番人気、ディフェシヴプレイが単勝オッズ5.5倍の3番人気、ゴーアンドゴーが単勝オッズ6.4倍の4番人気となった。しかしレースは先行した単勝オッズ12.1倍の6番人気馬インエクセスが2着ウォークラフトに4馬身差で圧勝し、追い込み不発に終わった本馬はウォークラフトからさらに6馬身差の5着に沈んだ。

次走のチャールズHストラブS(GⅠ・D10F)では、インエクセス、ウォークラフト、前走4着のマイボーイアダム、同9着最下位のディフェンシヴプレイなど、前走で対戦した馬ばかりと顔を合わせた。前走では伏兵扱いだったインエクセスが今回は単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、ウォークラフトが単勝オッズ4.5倍の2番人気、久々にデラフーセイ騎手とコンビを組んだ本馬は単勝オッズ6.3倍の3番人気だった。しかしここでは前走で最下位だったディフェンシヴプレイが鮮やかな変わり身を見せて勝利を収め、またしても末脚不発に終わった本馬はディフェンシヴプレイから6馬身1/4差をつけられた5着に敗れた。

次走は米国西海岸最大の競走サンタアニタH(GⅠ・D10F)となった。前年のサンフェリペS4着後に裏街道で地道に実力を磨き4歳になって突如開花してサンカルロスH・サンパスカルH・サンアントニオHと3連勝していたファーマウェイ、チャールズHストラブS・ジョッキークラブ金杯・サンフェルナンドSの勝ち馬フライングコンチネンタル、ディフェシヴプレイ、前走2着だったマイボーイアダム、同3着だったインエクセス、サンアントニオH2着・英2000ギニー・ハリウッドダービー3着の実績があったアンシャン、亜国から移籍してきてネイティヴダイヴァーH4着・サンアントニオH3着同着していたフェスティン、クリテリウムドサンクルー2着馬でサンアントニオH3着同着のルイシプルなどが出走してきた。勢いが買われたファーマウェイが120ポンドのトップハンデでも単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持される一方で、ソリス騎手騎乗の本馬は単勝オッズ37.2倍の8番人気と評価がた落ちであった。レースではファーマウェイが果敢に先頭に立ち、本馬は後方2番手につけた。そして三角から四角にかけて一気に位置取りを上げて、直線入り口では2番手まで押し上げてきた。ここから、最後方から上がってきたフェスティンと叩き合いながら先頭のファーマウェイを追撃したが、最後まで届かなかった上にフェスティンにも競り負けて、勝ったファーマウェイから3馬身半差の3着に敗れた。それでも前評判以上の走りではあった。

次走のサンバーナーディノH(GⅡ・D9F)では、前走で落馬競走中止となっていたマイボーイアダム、前走5着のルイシプル、同8着のアンシャン、サンフェルナンドSで7着だったシルヴァーエンディングなどの既対戦組が主な相手だった。前走が消化不良だったマイボーイアダムが単勝オッズ2.7倍の1番人気、ルイシプルとアンシャンが並んで単勝オッズ5.8倍の2番人気で、本馬は単勝オッズ6.8倍の4番人気だった。ここでも最後方を追走した本馬は直線の末脚に賭けたが、アンシャンとルイシプルの鼻差接戦に届かず、勝ったアンシャンから4馬身差の3着に敗退。その後は休養入りした。

本馬とこれらのレースで戦った馬のうち、フェスティンはオークローンH・ジョッキークラブ金杯を、ルイシプルはマーヴィンルロイHをそれぞれこの年に勝ってGⅠ競走勝ち馬となっている。

競走生活(4歳後半)

9月にデルマー競馬場で行われたダート6.5ハロンの一般競走で復帰した。当時はグレード競走未出走の無名馬だったサービューフォート(後にサンタアニタH・サンカルロスH・ネイティヴダイヴァーHに勝利)が単勝オッズ2.9倍の1番人気、ゴールデンベアSの勝ち馬メディアプランが単勝オッズ3.5倍の2番人気で、この2頭より4~5ポンド重い121ポンドを課せられていた本馬は単勝オッズ3.8倍で5頭立ての3番人気だった。しかしソレス騎手を鞍上に、後方2番手からの追い込みを決めて、2位入線のメディアプラン(進路妨害で4着に降着)に1馬身3/4差をつけて勝利した。

次走のグッドウッドH(GⅡ・D9F)では、ハリウッド金杯の勝ち馬マーケトリーが119ポンドのトップハンデでも単勝オッズ2倍の1番人気に支持されており、一般競走3勝のザプライムミニスターが115ポンドの軽量を評価されて単勝オッズ4.3倍の2番人気、ラフィット・ピンカイ・ジュニア騎手が騎乗する117ポンドの本馬は単勝オッズ4.7倍の3番人気だった。レースでは逃げたザプライムミニスターが、先行したマーケトリーの追撃を鼻差抑えて勝ち、本馬は追い込み不発で4馬身半差の3着に敗れた。

グレード競走で通用しない状態が続いていたにも関わらず、陣営は再度本馬を東上させ、ブリーダーズカップが行われるチャーチルダウンズ競馬場に向かわせた。さすがにBCクラシックは荷が重く、BCターフは前年の結果から駄目という事で、出走したのはBCスプリント(GⅠ・D6F)だった。当時のBCスプリントは有態に言ってBCクラシックでは勝てそうに無い一流半の馬が集うレースであり、本馬の実績でさえ単勝オッズ9.8倍の2番人気になるほどだった。単勝オッズ1.4倍という圧倒的な1番人気に支持されていたのは、ジェロームH・カーターH・ヴォスバーグS・ウィザーズS・フォアゴーH・ハッチソンS・スウェイルS・ラファイエットS・ダービートライアルS・シェリダンS・キングズビショップSとグレード競走11勝を挙げ、既に2年連続エクリプス賞最優秀短距離馬が確実視されていたハウスバスターだった。一般競走を2連勝してきたがステークス競走勝ち無しのポリッシュナンバーズが名牝ナンバードアカウントの息子という血統が買われて単勝オッズ12.7倍の3番人気となり、以下、アーリントンクラシックS・セントポールダービーの勝ち馬でトラヴァーズS2着のクレヴァートレヴァー、ホープフルS・ハリウッドジュヴェナイルCSS・サプリングSの勝ち馬デポジットチケット、フォールハイウェイトH・スポートページH2回・ブージャムHの勝ち馬セイノースピーディー、本馬とはBCジュヴェナイルやサンフェリペHで顔を合わせたこともあるトリプルベンドHの勝ち馬ロビンダンサー、キングズビショップSの勝ち馬でBCジュヴェナイル2着のテイクミーアウト、ナンソープSの勝ち馬でスプリントC・アベイドロンシャン賞2着の欧州からの遠征馬シェイクアルバドゥと人気が続いていた。

スタートが切られると単勝オッズ65.5倍の最低人気馬メディアプランがハナを奪い、ハウスバスターが2番手、デラフーセイ騎手騎乗の本馬はやはり最後方からの競馬となった。そのまま直線に入ってきたが、最初の2ハロンを21秒18、半マイルを44秒44というハイペースで逃げたメディアプラン以下の先行馬勢には余力が残っておらず次々と失速。それはハウスバスターも例外ではなく、レース中に脚を痛めていた事もあって大失速した。最後方のまま直線に入ってきた本馬だったが、失速する他馬を次々にかわして上がってきた。しかし好位から抜け出していた単勝オッズ27.3倍の9番人気馬シェイクアルバドゥだけには届かず、3馬身差の2着に敗れた。シェイクアルバドゥは確かに欧州のトップ短距離馬だったが、ダート競走は初めてであり、この時期のBCスプリントのレベルを如実に物語っている(もっとも現在でもBCスプリント勝ち馬がエクリプス賞年度代表馬になった例は一度も無く、あまり評価は変わっていないかもしれない)。

それでもGⅠ競走で2着と好走した本馬は、地元に戻ってすぐに出走したレースが何と芝の9ハロン戦サイテーションH(GⅡ・T9F)。筆者には全く陣営の意図を理解できない。ファンも理解できなかったようで、単勝オッズ21.4倍で8頭立ての6番人気。アルベルトビアルインファンテ賞・ナシオナルリカルドリヨン賞・エルエンサーヨ賞・チリセントレジャー・コロネーション大賞・エルダービーとチリでGⅠ競走6勝を挙げた後に満を持して米国に移籍してきたウルフが単勝オッズ2.2倍の1番人気、欧州から移籍してきたダイオメドSの勝ち馬イートンラッドが単勝オッズ5倍の2番人気、ノーフォークS・ハリウッドフューチュリティ・デルマーフューチュリティ・スワップスS・バルボアSの勝ち馬でケンタッキーダービー・サンタアニタダービー2着のベストパルが単勝オッズ5.8倍の3番人気と続いていた。レースは、エディリードH・ワシントンDC国際S・サンマルコスHの勝ち馬ながら長期休養明けだったために単勝オッズ10.5倍の5番人気止まりだったフライティルドーンが逃げ切って勝利を収めた一方で、本馬は馬群の中団後方から全く伸びず、勝ったフライティルドーンから5馬身半差の8着最下位に敗れ去った。4歳時の成績は8戦1勝で、グレード競走は未勝利に終わり、グレード競走勝ちがあるだけ前年の方がまだましだったかもしれない。

競走生活(5歳前半)

5歳時は1月のサンカルロスH(GⅡ・D7F)から始動。さすがにBCスプリント2着の実績が評価された本馬が単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持され、フェニックス金杯Sの勝ち馬アンサードゥーが単勝オッズ3.5倍の2番人気、前年のBCスプリントで5着だったメディアプランが単勝オッズ4.6倍の3番人気となった。ところがレースは120ポンドのトップハンデを背負っていたアンサードゥーが好位から抜け出して快勝し、追い込み不発に終わった119ポンドの本馬は、6馬身1/4差の6着に敗れた。

翌2月に出走したサンタアニタパーク競馬場ダート6ハロンの一般競走では、単勝オッズ2.8倍の1番人気で必勝を期したが、やはり追い込み不発に終わり、勝った単勝オッズ3倍の3番人気馬ラッシュモアから1馬身3/4差の3着に敗れた。

ここまで本馬は米国西海岸を主戦場としてきたが、たまにケンタッキー州に遠征した時の方がむしろ好走している(レキシントンS2着、ケンタッキーダービー3着、BCスプリント2着)事に気付いただろうか。陣営も本馬にはケンタッキー州の水が合っていると思ったのか、4月に本馬をケンタッキー州に向かわせ、コモンウェルスBCS(GⅢ・D7F)に出走させた。ここでは、ポトレログランデHを勝ってきたカードマニア、前年のBCスプリントで7着に終わっていたテイクミーアウト、サラトガスペシャルS・ラファイエットSの勝ち馬トゥフリーダムなどが対戦相手となった。116ポンドの本馬が単勝オッズ1.9倍の1番人気、121ポンドのカードマニアが単勝オッズ3.9倍の2番人気、121ポンドのテイクミーアウトが単勝オッズ5.6倍の3番人気、115ポンドのトゥフリーダムが単勝オッズ7倍の4番人気となった。スタートが切られるとトゥフリーダムが先頭に立ち、本馬は例によって最後方を追走していた。しかし四角で一気にまくって2番手で直線に入ると、逃げていたトゥフリーダムを鮮やかに差し切り、2馬身半差で完勝した。どうやらケンタッキー州遠征は吉と出たようである。なお、このレースで本馬から3馬身差の4着だったカードマニアは翌年のBCスプリントを勝っている。

引き続き5月のチャーチルダウンズH(GⅢ・D7F)に出走した。目立つ対戦相手は、前走5着のテイクミーアウトくらいだった。前走ではテイクミーアウトから5ポンドのハンデを貰っていた本馬だったが、今回は120ポンドのトップハンデで並んだ。しかし本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された一方で、テイクミーアウトは単勝オッズ13.8倍の5番人気止まりだった。スタートが切られると、単勝オッズ10.7倍の3番人気馬ファイティングファンタジーが先頭に立ち、本馬は9頭立ての8番手を追走した。直線入り口でもまだその位置取りのままだったが、ここから豪脚一閃。他馬をごぼう抜きにして、最後は計ったように2着テイクミーアウトを鼻差かわして勝利した。

競走生活(5歳後半)

その後は西海岸には戻らず、東海岸のニューヨーク州に向かった。本馬がニューヨーク州で走るのは、3歳時にBCターフに出走するために出向いて以来久々だった。そのBCターフでは芝競走ということもあって大敗していたが、その前に出走したダートの一般競走は完勝しており、ニューヨーク州でも対応できるのではないかと思われたようである。

そして出走したのはメトロポリタンH(GⅠ・D8F)だった。ここには、本馬と戦った前年のサンタアニタHで4着に敗れた直後にニューヨーク州に遠征してメトロポリタンH・サバーバンH・ホイットニーH・ウッドワードSとGⅠ競走を4連勝していたインエクセスと久々の対戦となった。ニューヨーク州を離れると凡走が続いたインエクセスは、再度ニューヨーク州の競馬に参戦してきていた。他にも、メドウランズCH・ベルエアH・デルマーBCH・サンパスカルHなどの勝ち馬でBCクラシック・サンタアニタH2着のトワイライトアジェンダ、NYRAマイルH・ウエストチェスターH・カーターHなど5連勝中のルビアノ、前走ウィザーズSを勝ってきた3歳馬ディキシーブラスなどが出走していた。トワイライトアジェンダが単勝オッズ3.2倍の1番人気、ルビアノが単勝オッズ5.1倍の2番人気、インエクセスが単勝オッズ5.3倍の3番人気、ディキシーブラスが単勝オッズ5.5倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ7.7倍の5番人気だった。

スタートが切られると出走馬中最軽量の107ポンドだったディキシーブラスが逃げて、他の有力馬勢は馬群の中団に密集。そして本馬はやはり最後方に陣取っていた。そして三角から徐々に位置取りを上げると、直線入り口5番手から末脚を伸ばした。インエクセスやトワイライトアジェンダといった実績上位の馬達を次々にかわしていったが、逃げたディキシーブラスだけに届かず、2馬身1/4差の2着に敗れた。しかし119ポンドを背負っていた本馬とディキシーブラスの斤量差は12ポンドあり、逆に本馬と他の有力馬勢との斤量差は僅か(本馬から1馬身3/4差の3着だったインエクセスと4着トワイライトアジェンダの2頭が121ポンドのトップハンデ)だったため、内容的には本馬が一番強かったとも言える。なお、このレースで8着に終わったルビアノは、その後にトムフールH・フォアゴーH・ヴォスバーグSに勝利してこの年のエクリプス賞最優秀短距離馬に選ばれている。

次走のナッソーカウンティH(GⅡ・D9F)では、インエクセス、トワイライトアジェンダの2頭に加えて、前走ピムリコスペシャルHを勝ってきた前年のケンタッキーダービー・ブルーグラスSの勝ち馬でベルモントS・フロリダダービー・ガルフストリームパークH2着のストライクザゴールド、BCジュヴェナイル・シャンペンS・フロリダダービー・ハッチソンS・ファウンテンオブユースS・ジムダンディS・リヴァリッジSの勝ち馬で前走ピムリコスペシャルH2着だった一昨年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬フライソーフリー、ブリーダーズフューチュリティS・ファウンテンオブユースS・ケンタッキージョッキークラブSの勝ち馬でハリウッドフューチュリティ・フロリダダービー2着・ケンタッキーダービー3着のダンスフロア、ジャマイカHの勝ち馬でNYRAマイルH2着のサルトリーソングなどが出走してきた。116ポンドのフライソーフリーが単勝オッズ3.3倍の1番人気、120ポンドのトワイライトアジェンダと109ポンドのダンスフロアのカップリングが単勝オッズ4.5倍の2番人気、120ポンドのインエクセスが単勝オッズ5.1倍の3番人気、116ポンドのストライクザゴールドが単勝オッズ5.8倍の4番人気で、119ポンドの本馬は単勝オッズ6.3倍の5番人気だった。

レースでは、トワイライトアジェンダ、インエクセス、フライソーフリーに加えて、トワイライトアジェンダとダンスフロアも絡んで激しい先頭争いを展開。最初の2ハロン通過が22秒58、半マイル通過が44秒86というハイペースになり、上記の馬達は悉く馬群に沈んだ。そのため後方2番手を進んでいた本馬の競馬になるかと思われたが、本馬からさらに4馬身も離れた最後方を走っていたストライクザゴールドが本馬より先に上がっていき、そのまま直線を押し切って勝利。仕掛けがワンテンポ遅かった本馬は直線で差を詰めるも、3ポンドのハンデを与えたストライクザゴールドに首差届かず2着に敗れた。

次走のサバーバンH(GⅠ・D10F)では、ストライクザゴールド、ナッソーカウンティH3着後に西海岸に遠征して出走したハリウッド金杯でマーケトリーやトワイライトアジェンダ以下に圧勝して戻ってきたサルトリーソングとの対戦となった。一応、本馬の古き好敵手でエクセルシオールHを勝っていたディフェシヴプレイやシルヴァーエンディングの姿もあったが、既に本馬の敵ではなかった。119ポンドのストライクザゴールドとペースメーカー役のベンアリHの勝ち馬ローチのカップリングが単勝オッズ2.5倍の1番人気、116ポンドのサルトリーソングが単勝オッズ2.7倍の2番人気、119ポンドの本馬が単勝オッズ3倍の3番人気、115ポンドのディフェシヴプレイが単勝オッズ19.7倍の4番人気という、3強対決となった。

スタートが切られると、ストライクザゴールド陣営が用意したペースメーカー役のローチが大逃げを打ち、本馬が7頭立ての後方3番手、サルトリーソングが後方2番手、ストライクザゴールドが大きく離れた最後方につけた。ローチが刻んだペースは最初の2ハロンが22秒91というハイペースだったが、向こう正面では少しペースが落ち着いたため、ここで本馬が進出して3番手まで押し上げてきた。サルトリーソングとストライクザゴールドの2頭も、上がっていく本馬を追いかけるように進出してきた。しかしサルトリーソングの手応えは悪く、四角で先頭に立っていたディフェシヴプレイに詰め寄っていったのは本馬とストライクザゴールドの2頭だった。そして直線に入ると、まずはディフェシヴプレイに本馬が並びかけて競り落とし、単独先頭に立った。そこへ後方からストライクザゴールドが襲い掛かってきた。しかしその追撃を1馬身半差で完封した本馬がGⅠ競走初勝利を遂げた。

続いて出走したのはウッドワードS(GⅠ・D9F)だった。この年に今まで走ってきたレースと異なり定量戦だったが、既に前走サバーバンHにおいてストライクザゴールドと共にトップハンデを背負っていた本馬には関係なかった。むしろやっかいなのは対戦相手の層の厚さであり、ストライクザゴールド、サバーバンH6着後にホイットニーHを勝ってきたサルトリーソング、ジムダンディS・トラヴァーズSを連勝してきたサンダーランブル、ウッドメモリアル招待S・ゴーサムSの勝ち馬でトラヴァーズS2着のデヴィルヒズデュー、ハスケル招待H・ピーターパンS・ドワイヤーSの勝ち馬でウッドメモリアルS2着・BCジュヴェナイル3着のロストマウンテン、フィリップHアイズリンH・ホイットニーHで連続2着してきたクラークHの勝ち馬アウトオブプレイス(本馬が一昨年のBCターフに出走する直前に出走して勝利した一般競走で2着だった)、ジムダンディS・エクセルシオールHの勝ち馬で前年にサバーバンH・ホイットニーH・ジョッキークラブ金杯・ブルックリンHとGⅠ競走2着が4回あったチーフホンチョの7頭が相手となった。全てがGⅠ競走勝ち馬又はGⅠ競走2着が複数回ある馬であり、レベルが高い争いとなった。サンダーランブルが単勝オッズ2.7倍の1番人気、本馬が単勝オッズ2.9倍の2番人気、ストライクザゴールドが単勝オッズ7.4倍の3番人気、サルトリーソングが単勝オッズ9.6倍の4番人気となった。

スタートが切られるとまずはサンダーランブルが先頭に立ち、サルトリーソングやアウトオブプレイスも先行。ストライクザゴールドは相変わらずの最後方待機策だったが、意外にも本馬の位置取りは好位集団の中であり、いつもより明らかに前目で競馬をしていた。そして後方からストライクザゴールドが迫ってきたのを見計らってからスパート。直線半ばで2番手のアウトオブプレイスに並びかけて叩き合いながら、道中で失速したサンダーランブルに代わって先頭に立っていたサルトリーソングを追撃した。しかし最後まで捕らえきれず、1馬身3/4差の2着に敗れた(本馬から頭差の3着がアウトオブプレイスで、さらに鼻差の4着がストライクザゴールド)。

次走のジョッキークラブ金杯(GⅠ・D10F)では、サルトリーソング、ストライクザゴールド、前走5着のサンダーランブル、同8着最下位のデヴィルヒズデューの4頭に加えて、欧州でガリニュールS・セレクトSを勝った後に米国に移籍してオークツリー招待S2着など地道に走っていたミッショナリーリッジ、そしてベルモントS・ハリウッドフューチュリティ・サンタアニタダービー・サンラファエルS・ピーターパンSを勝っていた3歳世代最強の誉れ高き大物エーピーインディも参戦してきた。サルトリーソングが単勝オッズ3.8倍の1番人気、前走モルソンエクスポートミリオンで5着に敗れて連勝が7で止まっていたエーピーインディが単勝オッズ3.9倍の2番人気、本馬が単勝オッズ4.4倍の3番人気、ストライクザゴールドが単勝オッズ5.7倍の4番人気、サンダーランブルが単勝オッズ6.1倍の5番人気となった。

長い間本馬の主戦を務めていたデラフーセイ騎手が、デビュー戦以来一貫して乗ってきたエーピーインディを選択したため、本馬の鞍上は初コンビとなるゲイリー・スティーヴンス騎手だった。スタートが切られると、前走では後方待機策を採って最下位に沈んだデヴィルヒズデューが思い切って逃げを打ち、ミッショナリーリッジ、サンダーランブル、サルトリーソングが先行。前4頭からかなり離れた5番手に本馬がつけ、その後方6番手にストライクザゴールド、さらに離れた最後方にスタートで出遅れたエーピーインディがつけた。向こう正面まではその態勢のまま変わらなかったが、三角手前で本馬が仕掛けると、四角では一気に先頭を奪った。本馬より少し遅れてストライクザゴールドとエーピーインディの2頭が上がってきたが、直線における脚色はその2頭よりも本馬のほうが上であり、その差は縮まるどころか広がっていった。最後は本馬が2着ストライクザゴールドに4馬身半差、3着エーピーインディにはさらに2馬身1/4差をつけて完勝。テン乗りとは思えないスティーヴンス騎手の完璧な騎乗ぶりが光る内容だった。

本馬は続いてガルフストリームパーク競馬場に向かい、4年連続ブリーダーズカップに挑戦。今度はさすがにBCクラシック(GⅠ・D10F)に参戦した。それにしてもブリーダーズカップに4回参戦して出走レースが全て異なるというのは珍しい。ブリーダーズカップに5回以上参戦した馬はいる(筆者が思いつく中では、5年連続でBCスプリントに出走したコナゴールド、5年連続でBCスティープルチェイスに出走して全て勝利したマックダイナモの例がある)けれども、おそらく4種類のブリーダーズカップに出走したのは本馬くらいのものではないだろうか。

対戦相手の層の厚さは過去に本馬が出走してきたレースの中で最高級(BCターフやケンタッキーダービーより今回のほうが上)と言えるものであり、ストライクザゴールド、エーピーインディ、前走4着のサルトリーソング、同7着のサンダーランブル、前走カーネルFWケスターHで久々の勝利を挙げていた前年2着馬トワイライトアジェンダ、前年のグッドウッドH以来の対戦となるハリウッド金杯2着馬マーケトリー(この1年間は芝路線も走りエディリードHを勝っていた)、サバーバンH3着後にパシフィッククラシックS・オークツリー招待Sで連続2着してきたディフェシヴプレイ、デルマーBCH・グッドウッドHを連勝してきたレインロード、フロリダダービー・ハスケル招待Hの勝ち馬テクノロジー、ドンH・ガルフストリームパークH・フィリップHアイズリンHの勝ち馬ジョリーズヘイロー、そして欧州からも英2000ギニー・愛2000ギニー・ミドルパークS・英国際S・英チャンピオンSを勝っていたこの年のカルティエ賞最優秀3歳牡馬ロドリゴデトリアーノ、仏オークス・ヴェルメイユ賞を勝っていた3歳牝馬ジョリファ、イスパーン賞・愛国際S・タタソールズ金杯などの勝ち馬で前走ワシントンDC国際Sを勝ってきたゾーマンが参戦してきた。前走が消化不良の内容だったエーピーインディが単勝オッズ3.1倍の1番人気で、スティーヴンス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気、サルトリーソングが単勝オッズ6.7倍の3番人気、ロドリゴデトリアーノが単勝オッズ7.2倍の4番人気、ストライクザゴールドが単勝オッズ8.7倍の5番人気となった。

スタートが切られると、単勝オッズ41.8倍の12番人気まで評価を落としていたサンダーランブルが先手を取り、ジョリーズヘイロー、テクノロジー、サルトリーソングなども先行。今回は普通にスタートを切ったエーピーインディが好位集団につけ、本馬がその後方につけた。三角手前で本馬が上がっていくと、本馬の事を一番よく知っているデラフーセイ騎手騎乗のエーピーインディも仕掛けた。2頭の仕掛けはほぼ同時だったが、エーピーインディのほうが馬群をスムーズにすり抜け、本馬は外側から内側に進路変更するロスがあったため、エーピーインディが先に3番手で直線に入ってきて、本馬が4番手でそれに続いた。直線では逃げるエーピーインディを本馬が追いかける展開となったのだが、最後まで届かずに、エーピーインディの2馬身差2着に敗れた。

本馬はこのレースを最後に現役引退となったため、悲願のブリーダーズカップ制覇は成らなかったが、5歳時10戦4勝2着5回(うちGⅠ競走2勝)の安定した成績が評価され、8戦3勝(うちGⅠ競走3勝)のサルトリーソングを抑えて、この年のエクリプス賞最優秀古馬牡馬に選出された。

血統

Pleasant Colony His Majesty Ribot Tenerani Bellini
Tofanella
Romanella El Greco
Barbara Burrini
Flower Bowl Alibhai Hyperion
Teresina
Flower Bed Beau Pere
Boudoir
Sun Colony Sunrise Flight Double Jay Balladier
Broomshot
Misty Morn Princequillo
Grey Flight
Colonia URU Cockrullah Nasrullah
Summerleaze
Nalga Guatan
Nagoya
Never Knock Stage Door Johnny Prince John Princequillo Prince Rose
Cosquilla
Not Afraid Count Fleet
Banish Fear
Peroxide Blonde Ballymoss Mossborough
Indian Call
Folie Douce Caldarium
Folle Nuit
Never Hula Never Bend Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Lalun Djeddah
Be Faithful
Hula Hula Polynesian Unbreakable
Black Polly
Black Helen Black Toney
La Troienne

プレザントコロニーは当馬の項を参照。

母ネヴァーノックは現役成績16戦2勝。その産駒には本馬の半弟ゴーフォージン(父コーモラント)【ケンタッキーダービー(米GⅠ)・レムセンS(米GⅡ)】がいる。コーモラントは本馬の父プレザントコロニーと同じヒズマジェスティ産駒なので、本馬とゴーフォージンの血統構成は3/4同じである。ネヴァーノックの半姉ネヴァーバブル(父アドヴォケイター)の子には豪州で種牡馬として活躍したドントセイヘイロー【シネマH(米GⅡ)】、曾孫にはサイレントアチーバー【新ダービー(新GⅠ)・ニュージーランドS(新GⅠ)・ランヴェットS(豪GⅠ)・ザBMW(豪GⅠ)】が、ネヴァーノックの半妹シーマイトフラ(父コーカサス)の子にはフーラストライク【新2000ギニー(新GⅠ)】がいる。

ネヴァーノックの曾祖母ブラックヘレンは、フロリダダービー・CCAオークス・アメリカンダービーなどに勝ち、米国顕彰馬にも選ばれた名牝で、その母ラトロワンヌは言わずと知れた20世紀米国最高の名牝系の祖である。本馬の牝系はラトロワンヌ系の中でもオセアニアにおける活躍馬が多い血筋なのだが、日本で御馴染みの馬もいる。ネヴァーノックの従姉妹で日本に繁殖牝馬として輸入されたデリケートアイス【ブラックアイドスーザンS(米GⅡ)】の孫であるエムアイブラン【アンタレスS(GⅢ)・平安S(GⅢ)・武蔵野S(GⅢ)2回・2着フェブラリーS(GⅠ)】と、曾孫であるテイエムプリキュア【阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)・日経新春杯(GⅡ)・2着エリザベス女王杯(GⅠ)】、テイエムハリアー【京都ハイジャンプ(JGⅡ)・京都ジャンプS(JGⅢ)・阪神ジャンプS(JGⅢ)】の姉弟などがそうである。→牝系:F1号族②

母父ステージドアジョニーはオープンマインドの項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、ヴァージニア州で繋養されていた父プレザントコロニーと異なり、バックランドファームのケンタッキー州支場で種牡馬入りした。初年度の種付け料は1万2500ドルに設定された。1997年にエヴァンズ氏が死去すると、プレザントコロニー共々ケンタッキー州レーンズエンドファームに移動した。本馬の当初の種牡馬成績はいま一つであり、タップトゥミュージックを出した程度であまり活躍できなかった。そんな本馬の転機となったのは日本で外国産馬として走った超大物タップダンスシチーの活躍が大きい(タップダンスシチーが最も活躍した2004年の日本におけるアーニングインデックスはなんと57.51)。

その後は安定して活躍馬を出すようになり、最終的には53頭以上のステークスウイナーを出して、父プレザントコロニーの最良の後継種牡馬となった。北米種牡馬ランキングでは2006年の4位が最高。産駒の傾向として、仕上がりは遅いが高齢になっても力は衰えにくいという点では本馬の現役成績どおりだが、芝とダートが不問という点では異なっている。2010年10月に蹄葉炎を発症したために23歳で安楽死の措置が執られた。

後継種牡馬には恵まれておらず、タップダンスシチーは全く成功できず既に種牡馬を引退。デビッドジュニアは不幸にも日本に輸入されてしまい現在のところ活躍していない。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1994

Lager

エクセルシオールBCH(米GⅢ)・スタイヴァサントH(米GⅢ)

1995

Pleasant Breeze

メドウランズCH(米GⅡ)・サラトガBCH(米GⅡ)

1995

Tap to Music

ガゼルH(米GⅠ)・バーバラフリッチーH(米GⅡ)・デラウェアH(米GⅢ)

1996

Sapphire n' Silk

プライオレスS(米GⅡ)・ラトロワンヌS(米GⅢ)

1997

タップダンスシチー

ジャパンC(GⅠ)・宝塚記念(GⅠ)・金鯱賞(GⅡ)3回・京都大賞典(GⅡ)・朝日チャレンジC(GⅢ)

1998

I Believe In You

ハリウッドスターレットS(米GⅠ)

1998

Palmeiro

オールアメリカンH(米GⅢ)

1998

Tap Dance

ボニーミスS(米GⅡ)

1998

Tap the Admiral

ファイアクラッカーBCH(米GⅡ)

2000

ヤマニンエグザルト

早池峰賞(水沢)・岩鷲賞(盛岡)

2001

Pt's Grey Eagle

エインシェントタイトルBCH(米GⅠ)

2001

Tap Day

メドウランズCS(米GⅡ)

2002

Premium Tap

ウッドワードS(米GⅠ)・クラークH(米GⅠ)

2002

David Junior

英チャンピオンS(英GⅠ)・ドバイデューティーフリー(首GⅠ)・エクリプスS(英GⅠ)・セレクトS(英GⅢ)

2002

Solo Survivor

アーリントンメイトロンH(米GⅢ)

2003

Pleasant Hill

ガーデニアH(米GⅢ)

2004

Indescribable

アーリントンメイトロンH(米GⅢ)・カーディナルH(米GⅢ)・ダブルドッグデアS(米GⅢ)・ケンタッキーCディスタフS(米GⅢ)

2004

Tiago

サンタアニタダービー(米GⅠ)・グッドウッドS(米GⅠ)・スワップスBCS(米GⅡ)・オークローンH(米GⅡ)

2008

Sahara Sky

メトロポリタンH(米GⅠ)・パロスヴェルデスS(米GⅡ)・サンカルロスS(米GⅡ)・サンカルロスS(米GⅡ)

2009

Glorious View

ヴェイグランシーH(米GⅡ)・オンタリオコリーンS(加GⅢ)

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