和名:クエストフォーフェイム |
英名:Quest for Fame |
1987年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:レインボークエスト |
母:アリアンヌ |
母父:グリーンダンサー |
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評価が低い英ダービー馬だが古馬になって米国を主戦場とした後も活躍してGⅠ競走も勝った点では3歳限りで勝ち逃げした英ダービー馬より評価されるべき |
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競走成績:2~5歳時に英愛仏米日で走り通算成績19戦5勝2着4回3着4回 |
誕生からデビュー前まで
英国ジュドモントファームにおいて、同牧場の所有者であるサウジアラビアの王族ハーリド・ビン・アブドゥッラー殿下により生産・所有され、英国ジェレミー・ツリー調教師に預けられた。
競走生活(2・3歳時)
2歳10月にニューベリー競馬場で行われたグラデュエーションS(T8F)でデビュー。主戦となるパット・エデリー騎手を鞍上に、単勝オッズ3倍で23頭立ての1番人気に支持された。しかし好位から早めに抜け出した単勝オッズ7.5倍の3番人気馬タイバーンツリーに追いつけずに、4馬身差の2着に敗退した(本馬から半馬身差の3着はウォーニングの半弟ディプロイだった)。2歳時はこの1戦のみで休養入りした。
本馬が3歳時になるとツリー師が引退したため、本馬は彼の調教助手だったロジャー・チャールトン調教師に引き継がれた。
3歳時は4月にニューベリー競馬場で行われた芝11ハロンの未勝利ステークスから始動した。ここでは単勝オッズ4.5倍の2番人気だったが、5番手追走から残り1ハロン地点で先頭に立ち、2着となった単勝オッズ1.91倍の1番人気馬ドレスパレードに1馬身半差で勝利した。
次走のチェスターヴァーズ(英GⅢ・T12F65Y)では、カールスバーグS・バーグクレールSをいずれも快勝してきたベルメッツ、ホーリスヒルS3着馬ミッショナリーリッジの2頭だけが対戦相手となった。ベルメッツが単勝オッズ1.62倍の1番人気、本馬が単勝オッズ4.33倍の2番人気、ミッショナリーリッジが単勝オッズ5倍の3番人気となった。レースはミッショナリーリッジが逃げて、本馬とベルメッツがそれを追う展開となった。そして残り5ハロン地点で仕掛けた本馬が先頭に立って直線に入ってきたが、残り1ハロン地点でベルメッツにかわされ、1馬身差の2着に敗れた(本馬とミッショナリーリッジの差は10馬身差だった)。
続く英ダービー(英GⅠ・T12F)では、前売りオッズで1番人気に推されていたベルメッツが体調不良のため回避して、プレドミネートSなど3戦全勝のラジーン(アサティスの半弟)、仏2000ギニー・フォンテーヌブロー賞・ロシェット賞の勝ち馬リナミックス、仏2000ギニー2着のゾーマン、ディーSを勝ってきたブルースタッグ、プレドミネートSで2着してきたエルマームル、サンダウンクラシックトライアルS3着・ダンテS2着のカリンガベイ、ケンバトラーワインズSを勝ってきたデュークオブパデューカ、ロイヤルロッジSの勝ち馬ディグレッション、ミッショナリーリッジなどが対戦相手となった。確固たる中心馬はおらず、ラジーンが単勝オッズ5.5倍の1番人気に押し出され、リナミックスが単勝オッズ6.5倍の2番人気、ゾーマンが単勝オッズ7倍の3番人気、本馬が単勝オッズ8倍の4番人気となった。
スタートが切られると、ミスターブルックス(5歳時にジュライC・アベイドロンシャン賞を制してカルティエ賞最優秀古馬及び最優秀短距離馬に選出される)やトレブルエイトが先頭に立ち、本馬やエルマームルが先行した。そのままの位置取りを維持したままタッテナムコーナーを回った本馬は、残り1ハロン地点でエルマームルをかわして先頭に立つと、追い上げてきた2着ブルースタッグに3馬身差、3着エルマームルにはさらに1馬身半差をつけて快勝し、3歳牡馬の頂点に立った。なお、エルマームルはこの後に10ハロン路線に向かい、この年のエクリプスS・愛チャンピオンSを勝つ活躍を見せることになる。
次走の愛ダービー(愛GⅠ・T12F)では、マルセルブサック賞・フレッドダーリンS・英1000ギニー・英オークスと4連勝してきたサルサビル、体調を回復させてきたベルメッツ、ブルースタッグ、前年のグラデュエーションS3着後にレイトナイトエクストラSを勝ってきた同厩馬ディプロイなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.25倍の1番人気、サルサビルが単勝オッズ3.75倍の2番人気、ベルメッツが単勝オッズ5倍の3番人気、ブルースタッグが単勝オッズ6倍の4番人気となった。
スタートが切られると本馬のペースメーカー役としての出走でもあったディプロイが先頭に立ち、本馬は2番手を追走。本馬の後方にサルサビルがつけた。やがて本馬が徐々に上がっていったが、そこへサルサビルが並びかけてきた状態で直線を向いた。ここから英ダービー馬と英オークス馬の一騎打ちが見られるかと思われたが、ディプロイが予想外に粘った上に、サルサビルが直線半ばから本馬を置き去りにしてディプロイを追撃していったために、一騎打ちにはならなかった。最後はサルサビルが2着ディプロイを3/4馬身差で競り落として勝利し、本馬はベルメッツ(3着)やブルースタッグ(4着)にも抜かれて、サルサビルから5馬身1/4差の5着に敗れてしまった。
その後は長期休養に入り、この年の下半期には出走しなかったため、3歳時の成績は4戦2勝となった。
競走生活(4歳時)
4歳時は6月のコロネーションC(英GⅠ・T12F10Y)から始動した。リングフィールドダービートライアルS・ジョンポーターS・ジョッキークラブSと前年から3連勝中のロックホッパー、愛1000ギニー・英国際S・英チャンピオンSを勝っていた名牝インザグルーヴ、アールオブセフトンSを勝ってきた英ダービー・エクリプスS2着馬テリモンなどが対戦相手となった。ロックホッパーが単勝オッズ2.875倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.75倍の2番人気、インザグルーヴが単勝オッズ4.5倍の3番人気となった。レースではスタートから積極的に先頭を飛ばしたが、残り1ハロン地点で失速して、インザグルーヴの5馬身3/4差4着に敗れた。
次走の英国際S(英GⅠ・T10F85Y)では、ブリガディアジェラードS・プリンスオブウェールズSの勝ち馬でエクリプスS2着のステージクラフト、ダンテS・エクリプスSを勝ってきたエンヴァイロンメントフレンド、ハードウィックSで1位入線するも2着降着となっていたトパヌーラ、コロネーションC2着・プリンスオブウェールズS3着だったテリモン、愛国際Sを勝ってきたムカダマーが対戦相手となった。ステージクラフトが単勝オッズ1.83倍の1番人気、エンヴァイロンメントフレンドが単勝オッズ4倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。ここでもスタートから先頭を伺い、その後はテリモンを先に行かせて2番手を追走。そして残り2ハロン地点で仕掛けたが、テリモンに追いつけずに、2馬身差の2着に敗れた。なお、テリモンはこれが唯一のGⅠ競走勝利となるが、この年の欧州古馬勢にはこれといった馬がいなかった事もあり、この年に創設された欧州の年度表彰カルティエ賞において最優秀古馬に選出されることになる。
一方の本馬は、翌9月のセプテンバーS(英GⅢ・T11F30Y)に向かった。リングフィールドダービートライアルSで2着してきたヤングバスター、ローズオブランカスターSを勝ってきたロードオブタスモアなどを抑えて、単勝オッズ1.73倍の1番人気に支持された。レースでは2番手を先行して残り2ハロン地点で先頭に立つ走りを見せたが、ここでヤングバスターに並びかけられると、首差で惜敗した。
次走は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)となった。この年の凱旋門賞には、英ダービー・愛ダービー・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSの勝ち馬ジェネラス、仏ダービー・愛チャンピオンSの勝ち馬スワーヴダンサーという、超大物3歳馬2頭が出走していた。他の出走馬は、クリテリウムドサンクルー・ノアイユ賞・オカール賞の勝ち馬ピストレブルー、英セントレジャー・ミラノ大賞・ドーヴィル大賞の勝ち馬スナージ、英セントレジャー・モーリスドニュイユ賞・チェスターヴァーズを勝ってきたトゥーロン、ヴェルメイユ賞・マルレ賞の勝ち馬マジックナイト、イタリア大賞を勝ってきたピジョンヴォワヤジュール、コロネーションCの勝利後は2戦未勝利だったインザグルーヴ、英オークス馬ジェットスキーレディ、プランスドランジュ賞で2着してきたミスアレッジド、ハイアリアターフカップH・ボーリンググリーンH・ソードダンサーH2連覇と米国GⅠ競走4勝のエルセニョールなどだった。ジェネラスが単勝オッズ1.9倍の1番人気、スワーヴダンサーが単勝オッズ4.7倍の2番人気、ピストレブルーが単勝オッズ7.8倍の3番人気、スナージが単勝オッズ9倍の4番人気で、本馬とトゥーロンが並んで単勝オッズ10.5倍の5番人気だった。デビュー戦から常に手綱を取ってきたエデリー騎手がトゥーロンに騎乗したため、本馬にはウォルター・スウィンバーン騎手が騎乗した。スタートが切られると、アートブルーが逃げを打ち、ジェネラスや本馬が先行、スワーヴダンサーは後方に控えた。しかしレースはかなりのハイペースとなり、先行馬には苦しい展開となった。そして直線に入ると本馬はジェネラス共々失速。直線一気の豪脚を繰り出したスワーヴダンサーが勝利を収め、本馬は8着ジェネラスには3/4馬身先着したものの、スワーヴダンサーから8馬身半差の7着に終わった。
続いて米国遠征して、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に参戦。ロスマンズ国際Sなど6連勝中の加国調教馬スカイクラシック、前年にハリウッドダービー・ハリウッドターフCを勝ちBCマイルで2着してエクリプス賞最優秀芝牡馬に選ばれたイッツオールグリークトゥミー、ガネー賞・メルセデスベンツ大賞を勝ってきたカルタジャナ、マンノウォーS・ターフクラシック招待Sと2戦続けて2着してきたジャンドショードネイ賞の勝ち馬ディアドクター、英セントレジャー2着馬サドラーズホール、凱旋門賞で3着だったピストレブルー、同6着だったインザグルーヴ、同9着だったエルセニョール、同11着だったミスアレッジドなどが対戦相手となった。かなりの混戦模様だったが、凱旋門賞の好走が評価されたピストレブルーが単勝オッズ3.8倍の1番人気、スカイクラシックが単勝オッズ4.3倍の2番人気、イッツオールグリークトゥミーが単勝オッズ5.7倍の3番人気となった。一方の本馬は単勝オッズ58.7倍で、英ダービー馬としては屈辱とも言える13頭立て最低人気の評価だった。
スタートが切られるとスカイクラシックが先頭に立ち、ピストレブルー、本馬、イッツオールグリークトゥミーがそれを見るように先行。それから少し離れた5番手にミスアレッジドがつけた。若干の順位の変動はあったが、概ねこの態勢のまま直線に突入。まずはイッツオールグリークトゥミーが抜け出し、インコースをロス無く走ってきた本馬がそれを追撃。そこへ外側からミスアレッジドが差してきて、この3頭の勝負となった。最後はミスアレッジドが勝ち、半馬身差の2着にイッツオールグリークトゥミー、本馬はさらにそれから2馬身差の3着に敗れたが、前評判の低さを覆す好走ではあった。
その後、ロバート・フランケル厩舎に転厩して正式に米国を主戦場とした本馬は、主戦にゲイリー・スティーヴンス騎手を迎えた。転厩初戦は翌12月のハリウッドターフC(米GⅠ・T12F)となった。ここでも、ミスアレッジド、イッツオールグリークトゥミーとの顔合わせとなった。イッツオールグリークトゥミーが単勝オッズ2.4倍の1番人気、ミスアレッジドが単勝オッズ3.9倍の2番人気、ハリウッドダービー・デルマー招待ダービーの勝ち馬エタニティスターが単勝オッズ4.5倍の3番人気、本馬が単勝オッズ5倍の4番人気となった。スタートからエタニティスターが単騎で逃げ、イッツオールグリークトゥミーが3番手、ミスアレッジドが後方2番手で、本馬は最後方からの競馬となった。やがて本馬も含む有力馬勢が進出してエタニティスターに襲い掛かり、直線では上位人気4頭の勝負となった。最後はミスアレッジドがイッツオールグリークトゥミーを頭差抑えて勝ち、それから1馬身1/4差の3着が本馬、さらに3/4馬身差の4着がエタニティスターだった。
結局4歳時は6戦未勝利だったが、シーズン最後の米国における2戦では英ダービー馬の実力の一端を垣間見せた。
競走生活(5歳前半)
5歳時は1月にサンタアニタパーク競馬場で行われた芝10ハロンの一般競走から始動した。単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持されると、最後方追走から四角で位置取りを上げて、直線入り口で先頭に立ち、そのまま粘り切って2着ミリタリーショットに首差で勝利。英ダービー以来1年7か月ぶりの勝利を挙げた。
翌月のサンルイオビスポH(米GⅢ・T12F)では、前年のエクリプス賞最優秀芝牝馬に選ばれたミスアレッジド、本馬が勝った英ダービーで10着に終わった後にガリニュールS・セレクトSを勝利してから米国に移籍してオークツリー招待Hで2着していたミッショナリーリッジ、ベイメドウズHの勝ち馬フレンチセブンティファイブなどとの対戦となった。ミスアレッジドが単勝オッズ2.3倍の1番人気、ミスアレッジドと同じ121ポンドのトップハンデ(牡牝の差を考慮すると実質2位)となった本馬が単勝オッズ3.7倍の2番人気、116ポンドのミッショナリーリッジが単勝オッズ5.8倍の3番人気となった。レースではミッショナリーリッジが逃げて、本馬は4番手の好位、ミスアレッジドは中団後方につけた。四角に入ると本馬が仕掛けてミッショナリーリッジに並びかけ、直線半ばで突き放した。最後は追い込んで2着に入ったクールゴールドムードに1馬身3/4差をつけて完勝。ミスアレッジドはクールゴールドムードから1馬身1/4差の3着だった。
3月のサンルイレイS(米GⅠ・T12F)では、定量戦ということもあって、エディリードH・バドワイザー国際H・サンマルコスH・サイテーションH・アーケイディアHの勝ち馬フライティルドーン、クールゴールドムードなどを抑えて、単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持された。レースでは馬群の中団4番手を追走したが、ここでは直線で伸びが無く、逃げ切って勝ったフライティルドーンから3馬身差の3着に敗れた。
5月のハリウッドターフH(米GⅠ・T10F)では、愛ナショナルS・ベレスフォードS・アメリカンH・サンガブリエルH・サンマルコスHの勝ち馬クラシックフェイム、セレブレーションマイルの勝ち馬ボールドルシアン、サンフランシスコマイルH・オールアメリカンH・ゴールデンゲートHの勝ち馬フォーティナイナーデイズ、サンルイオビスポHで4着だったミッショナリーリッジなどが対戦相手となった。本馬は122ポンドのトップハンデだったが単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、120ポンドのクラシックフェイムが単勝オッズ3.3倍の2番人気、117ポンドのボールドルシアンが単勝オッズ4倍の3番人気となった。スタートが切られるとフォーティナイナーデイズが逃げを打ち、本馬は馬群の中団後方を追走。向こう正面で早くも仕掛けて上がっていき、直線入り口でフォーティナイナーデイズをかわして先頭に立った。そこへ後方からクラシックフェイムが追ってきたが、最後まで抜かさせずに、1馬身差をつけて勝利。英ダービー以来のGⅠ競走タイトルを手に入れた。
競走生活(5歳後半)
その後は短期休養を経て、8月のソードダンサーH(米GⅠ・T12F)で復帰。本馬には他馬勢より7~17ポンド重い123ポンドのトップハンデが課されたが、ボーリンググリーンHで2着してきたフレイズ、パンアメリカンH・ボーリンググリーンHの勝ち馬ウォールストリートダンサー、ガルフストリームパークBCH・フォートマーシーHで2着のコルキスアイランドなどを抑えて、単勝オッズ1.7倍という断然の1番人気に支持された。しかし今回は斤量の影響が大きかったようで、4番手の好位を進むも直線に入ると失速。勝ったフレイズ(本馬より10ポンド軽い113ポンドだった)から9馬身1/4差の6着と大敗した。
次走のアーリントンミリオン(米GⅠ・T10F)では、前年のBCターフでは4着だったが今年になってETディキシーH・ETマンハッタンH・シーザーズ国際H・アーリントンHと4連勝して目下絶好調のスカイクラシック、前年のハリウッド金杯と前走エディリードHを勝ってきたマーケトリー、2年前の同競走と前年のジャパンCを勝っていたゴールデンフェザント、香港招待Cの勝ち馬で後の香港三冠馬リヴァーヴァードン、ジャックルマロワ賞を勝ってきたイグジットトゥノーウェア、前年のBCターフ11着後にゲルセンキルヘン経済大賞・ゴードンリチャーズS・ジャンドショードネイ賞と3連勝して巻き返してきたディアドクター、前年のサセックスSの勝ち馬セカンドセット、前年のBCマイル3着馬スターオブコジーンなどが対戦相手となった。スカイクラシックが単勝オッズ2.2倍の1番人気で、本馬とマーケトリーの同厩馬2頭がカップリングで単勝オッズ4.7倍の2番人気、ゴールデンフェザントが単勝オッズ7.7倍の3番人気となった。しかしスティーヴンス騎手がゴールデンフェザントに騎乗したため、本馬にはクリス・マッキャロン騎手が騎乗した。レースでは馬群の中団後方を追走したが、直線で伸びきれずに、勝ったディアドクターから5馬身1/4差の6着に敗れた。
次走はガルフストリームパーク競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)となった。アーリントンミリオン2着後にターフクラシック招待Sを勝ってきたスカイクラシック、デルマー招待H・オークツリー招待Hを勝ってきたナヴァロン、パリ大賞・ガネー賞に加えて前走の凱旋門賞までも勝ってきたスボティカ、英ダービー・愛チャンピオンS・デューハーストSの勝ち馬ドクターデヴィアス、マンノウォーS2回・ターフクラシック招待Sの勝ち馬ソーラースプレンダー、ソードダンサー招待Hで本馬を破った後にターフクラシック招待Sで2着してきたフレイズなどが出走してきた。スカイクラシックが単勝オッズ1.9倍の1番人気、ナヴァロンが単勝オッズ4.3倍の2番人気と、地元米国馬が欧州の大競走勝ち馬よりも人気を集める一方で、本馬は2戦続けての凡走が影響して単勝オッズ17.5倍の7番人気まで評価を下げていた。
このレースで本馬に騎乗したのは、英ダービーを共に勝ったかつての相棒エデリー騎手だった。前年のBCターフでも本馬に騎乗したエデリー騎手だったが、前年とは正反対に後方2番手につける追い込み戦法を選択した。直線入り口でもまだ後方だったが、ここから末脚を伸ばし、勝ったフレイズとスカイクラシックの鼻差接戦から2馬身差の3着と好走し、本馬から1馬身差の4着だったドクターデヴィアスとの英ダービー馬対決を制した(英語版ウィキペディアには、これは1970年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSでブレイクニーとニジンスキーが対戦して以来となる英ダービー馬対決だったと記載されているが、前年の凱旋門賞で本馬とジェネラスが対戦しているため明らかに誤りである)。
その後は来日してジャパンC(日GⅠ・T2400m)に参戦。対戦相手は、英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークス・英セントレジャーとGⅠ競走を4連勝した後の凱旋門賞で2着してこの年のカルティエ賞年度代表馬に選ばれたユーザーフレンドリー、ローズヒルギニー・AJCダービーと豪州GⅠ競走2勝のナチュラリズム、コーフィールドC・マッキノンS・メルボルンC・オーストラリアンCと豪州GⅠ競走4勝のレッツイロープ、アーリントンミリオン制覇後はマンノウォーS2着・凱旋門賞10着だったディアドクター、ドクターデヴィアスなどの海外馬勢と、前年の皐月賞・東京優駿の勝ち馬トウカイテイオー、きさらぎ賞・毎日杯・京都4歳特別と重賞3連勝していたヒシマサル、セントライト記念の勝ち馬レガシーワールド、天皇賞秋を勝ってきたレッツゴーターキンなどの日本馬勢だった。この年のジャパンCには欧州・米国・豪州など世界中の一流馬が終結して史上最高のメンバーが揃ったと評価されたが、本馬もその一翼を担った。また、本馬とドクターデヴィアスの参戦は、日本競馬史上初めて英ダービー馬の実戦が日本国内で生観戦できる機会ともなった。しかしユーザーフレンドリーが単勝オッズ3.2倍の1番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ10.4倍の6番人気、ドクターデヴィアスは単勝オッズ11.9倍の7番人気止まりだった。
レースではレガシーワールドとドクターデヴィアスが先頭争いを演じ、エデリー騎手騎乗の本馬は前走のBCターフと同様に後方2番手からレースを進めた。しかし直線で伸びずに、勝ったトウカイテイオーから12馬身差の11着(10着ドクターデヴィアスとは首差)に終わり、これを最後に5歳時8戦3勝で引退した。
競走馬としての評価
本馬は第二次世界大戦以降における最弱の英ダービー馬の1頭に数えられてしまっているようである。3歳時における国際クラシフィケーションでは同世代の最強短距離馬デイジュールが133ポンド、凱旋門賞馬ソーマレズが132ポンド、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSを勝ったベルメッツが131ポンドだったのに対して、本馬は3歳馬の中では16位タイの123ポンド(2013年に行われた国際クラシフィケーションの見直しにより1ポンド下がって122ポンドになっている)に過ぎず、これは英ダービー馬としては当時最も低い数値だった(現在は2006年の勝ち馬サーパーシーの121が最も低い数値)。4歳時の国際クラシフィケーションも123ポンド(現在は122ポンド)止まりだった(5歳時は欧州における出走が無かったので当時は国際クラシフィケーションの対象外)。“A Century of Champions”でも本馬は最弱クラスの英ダービー馬であると記載されている(もっとも筆者は“A Century of Champions”をあまり信用していないが)。
本馬の評価が低いのはベルメッツやサルサビルに勝てなかった他に、3歳秋に出走しなかった事が大きく影響しているようだが、斤量が重くなる古馬になっても活躍したという点においては、3歳時は強かったが4歳以降は振るわなかった馬達や、3歳で逃げるように引退した馬達よりも、筆者的には競走能力に対する評価は高い。本馬のハリウッドターフH勝利は、1886年のジョッキークラブCを制したセントガティエン以来106年ぶりとなる英ダービー馬の5歳時における大競走勝利であるらしく、もっと評価されて然るべきであろう。かつて米国に存在した最優秀ハンデ牡馬及び牝馬のように、3歳馬と古馬の斤量差も考慮したレーティング作成になれば、有力3歳馬がさっさと引退して競馬が面白くなくなる事を少しでも避けられると思うのだが。
血統
Rainbow Quest | Blushing Groom | Red God | Nasrullah | Nearco |
Mumtaz Begum | ||||
Spring Run | Menow | |||
Boola Brook | ||||
Runaway Bride | Wild Risk | Rialto | ||
Wild Violet | ||||
Aimee | Tudor Minstrel | |||
Emali | ||||
I Will Follow | Herbager | Vandale | Plassy | |
Vanille | ||||
Flagette | Escamillo | |||
Fidgette | ||||
Where You Lead | Raise a Native | Native Dancer | ||
Raise You | ||||
Noblesse | Mossborough | |||
Duke's Delight | ||||
Aryenne | Green Dancer | Nijinsky | Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | ||||
Flaming Page | Bull Page | |||
Flaring Top | ||||
Green Valley | Val de Loir | Vieux Manoir | ||
Vali | ||||
Sly Pola | Spy Song | |||
Ampola | ||||
Americaine | Cambremont | Sicambre | Prince Bio | |
Sif | ||||
Djebellica | Djebel | |||
Nica | ||||
Alora | Ballyogan | Fair Trial | ||
Serial | ||||
Agnes | Biribi | |||
Anne de Bretagne |
父レインボークエストは当馬の項を参照。
母アリアンヌは現役成績11戦5勝。仏1000ギニー(仏GⅠ)・クリテリウムデプーリッシュ(仏GⅠ・現マルセルブサック賞)・グロット賞(仏GⅢ)を勝ち、仏オークス(仏GⅠ)でも2着した名牝。本馬の半妹にはエンダ(父ダンシングブレーヴ)【ロングアイランドH(米GⅡ)】がおり、エンダの子にはノータブルゲスト【ローズオブランカスターS(英GⅢ)】がいる。アリアンヌの半姉アパッチー(父サーゲイロード)の子にはアレクサンドリー【クレオパトル賞(仏GⅢ)】、アンテウス【伊ジョッキークラブ大賞(伊GⅠ)・ラクープ(仏GⅢ)】、孫にはアニマトリス【マルレ賞(仏GⅡ)・ノネット賞(仏GⅢ)】、2012年の仏首位種牡馬ポリグロート【クリテリウムドサンクルー(仏GⅠ)・エヴリ大賞(仏GⅡ)・コンデ賞(仏GⅢ)】、キングアレックス【ロイヤルホイップS(愛GⅢ)】、アレキシウス【ゴードンS(英GⅢ)】、インディアンジョーンズ【ロシェット賞(仏GⅢ)】、インディアンデインヒル【ガネー賞(仏GⅠ)・アルクール賞(仏GⅡ)・フォンテーヌブロー賞(仏GⅢ)】、クリコ【エルカミノリアルダービー(米GⅢ)】、スーパーピスタチオ【英シャンペンS(英GⅡ)】、日本で走ったアドマイヤカイザー【エプソムC(GⅢ)】、曾孫にはスペシャルリング【エディリードH(米GⅠ)2回】が、アリアンヌの半妹アメリディエンヌ(父ターゴワイス)の子にはレディウイナー【アスタルテ賞(仏GⅡ)・クリサンセマムH(米GⅢ)】がいるなど、母系からは多くの活躍馬が出ている。→牝系:F4号族②
母父グリーンダンサーは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、米国ケンタッキー州ゲインズウェイファームと豪州ウッドランズスタッドを行き来するシャトルサイヤーとなった。北半球においてはあまり成功しなかったが、豪州ではかなり成功しており多くの活躍馬を出した。産駒のステークスウイナーは44頭以上である。2010年に種牡馬を引退した。2015年現在他界したという話は聞かないため、今も米国か豪州のいずれかで余生を送っているようである。後継種牡馬としてはヴォイカウントが活躍中である。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1994 |
Famous Digger |
デルマーオークス(米GⅠ)・サンクレメンテH(米GⅡ)・ハネムーンH(米GⅢ) |
1994 |
Sagasious |
リーヴシュライジュニアS(米GⅡ) |
1995 |
Dracula |
AJCシャンペンS(豪GⅠ)・QTCサイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・ジョージメインS(豪GⅠ)・フェンリルH(豪GⅢ) |
1996 |
Tributes |
VRCクラウンオークス(豪GⅠ) |
1997 |
Millie's Quest |
レイクジョージS(米GⅢ) |
1997 |
Unworldly |
フライトS(豪GⅠ) |
1998 |
Perfect Sunday |
リングフィールドダービートライアルS(英GⅢ) |
1998 |
Viscount |
サイアーズプロデュースS(豪GⅠ)・AJCシャンペンS(豪GⅠ)・ジョージメインS(豪GⅠ) |
1999 |
Perfect Partner |
香港金杯 |
1999 |
Shot to Fame |
シルバートロフィーS(英GⅢ) |
2000 |
High Praise |
マルレ賞(仏GⅡ)・レゼルヴォワ賞(仏GⅢ) |
2000 |
Sarrera |
AJCクイーンエリザベスS(豪GⅠ)・ドゥーンベンC(豪GⅠ) |
2002 |
De Beers |
ローズヒルギニー(豪GⅠ) |
2002 |
Sonic Quest |
豪クリスタルマイル(豪GⅡ) |
2003 |
Sea Battle |
豪クリスタルマイル(豪GⅡ) |