ソニックレディ

和名:ソニックレディ

英名:Sonic Lady

1983年生

鹿毛

父:ヌレイエフ

母:スタンプド

母父:オーエンアンソニー

同じヌレイエフ牝駒である1歳年下のミエスクと共に牡馬相手の欧州マイル路線を牽引した名マイラー

競走成績:2~4歳時に英仏愛米で走り通算成績13戦8勝3着4回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州の馬産家J・アラン・マクティエール氏により生産された。父ヌレイエフは後に世界的大種牡馬として君臨するが、2年目産駒である本馬の生誕当初は、当然種牡馬実績は皆無だった。そして本馬の牝系は長らく正式なサラブレッドとは認められてこなかった、いわゆる半血系であり、血統的な評価が低かったため、本馬は1歳時にファシグ・ティプトン社が実施したセリに出品された。

しかしそんな本馬の素質を見抜いたのがドバイのシェイク・モハメド殿下であり、50万ドルで購入された。同じセリにはダンシングブレーヴも出品されており、こちらは20万ドルでサウジアラビアのハーリド・ビン・アブドゥッラー王子の代理人だったジェームズ・デラフーク氏により購入されている。デラフーク氏は後に「ダンシングブレーヴよりソニックレディのほうが良い子馬だった」と語っている。

本馬は英国サー・マイケル・スタウト調教師に預けられた。主戦はウォルター・R・スウィンバーン騎手が務めた。血統的な評価は低かった本馬だが、調教が開始されると抜群の動きを見せ、デビュー前の段階で既に英1000ギニーの有力候補に挙げられるほどだった。しかし気性面でかなり問題があり、スウィンバーン騎手は本馬の扱いにかなり苦労することになる。

競走生活(3歳前半まで)

2歳9月にアスコット競馬場で行われたリステッド競走ブルーシールS(T6F)でデビュー。残り2ハロン地点で先頭に立つと、右側によれながらもそのまま後続を引き離して7馬身差で圧勝した。2歳時はこの1戦のみで終えたが、グループ競走未出走にも関わらず、英1000ギニーの前売りオッズでは4倍で1番人気に支持されていた。

3歳時は4月のネルグウィンS(英GⅢ・T7F)から始動した。チェヴァリーパークSの勝ち馬エンブラ(ゼンノエルシドの母)が対戦相手となったが、本馬が2着レディソフィーに3馬身差をつけて完勝した(エンブラは4着だった)。これで完全に英1000ギニーの大本命となった本馬を、レーシングポスト紙は特集を組んで報じた。

本番の英1000ギニー(英GⅠ・T8F)では、マルセルブサック賞・メイヒルSと3連勝中のミッドウェイレディ、フレッドダーリンSを勝ってきた同厩馬メイスーンなどを抑えて、単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持された。しかしレース前から激しく焦れ込む場面が見られた本馬は、残り2ハロン地点で先頭に立つも、ミッドウェイレディとメイスーンの2頭にゴール前で差されて、勝ったミッドウェイレディから3/4馬身差、2着メイスーンから短頭差の3着に敗れた。ミッドウェイレディはこの後に英オークスに向かって勝利を収め、母としても英オークス馬エスワラーを産むことになる。

一方の本馬はマイル路線を進むことになり、次走は愛1000ギニー(愛GⅠ・T8F)となった。陣営は元々このレースに本馬を出走させる予定は無かったらしく、愛国への輸送に必要な書類が整っていなかったのだが、英国から愛国へファクシミリで必要書類を送るという裏技を使って出走に漕ぎ着けていた。陣営は本馬の気性難を抑えるために、ゴム製のノーズバンド(鼻革。鼻を締めることにより口を開いて反抗することを防止する効果がある)を用意していた。対戦相手は、ロベールパパン賞・サラマンドル賞・仏1000ギニーの勝ち馬ベゼヴォレ、プレステージSの勝ち馬でフレッドダーリンS2着のアステロイドフィールド(後に米国のGⅠ競走メイトリアーク招待Sを勝利)などだった。本馬とベゼヴォレが並んで単勝オッズ5倍の1番人気に支持された。本馬はノーズバンド効果が出たのか前走のような焦れ込みも少なく、レースでもスムーズに走り、2着レイクチャンプレインに2馬身差をつけて勝利した。

次走のコロネーションS(英GⅡ・T8F)では、単勝オッズ1.53倍の1番人気に支持された。そして2着エンブラに2馬身差、3着サムワンスペシャル(後に本馬と対戦するミリグラムの半姉)にはさらに半馬身差をつけて勝利した。さらに後にファルマスSと改名されるチャイルドS(英GⅡ・T8F)も、後のサンチャリオットSの勝ち馬ダスティダラーを1馬身半差の2着に抑えて勝利した。

競走生活(3歳後半)

次走は牡馬相手のサセックスS(英GⅠ・T8F)となった。クイーンアンS・ジャージーS・ダイオメドSの勝ち馬ペンニンウォーク、3か月前のケンタッキーダービーで2着と健闘していたソラリオSの勝ち馬で仏グランクリテリウム2着のボールドアレンジメント、ロッキンジS・ダイオメドSの勝ち馬でセントジェームズパレスS2着スコティッシュリールなどを抑えて、単勝オッズ1.83倍の1番人気に支持された。今回はスウィンバーン騎手が意図的に抑えて、5頭立ての最後方からスタートした。そして位置取りを上げていくと、ゴール前では馬なりのまま走り、2着スコティッシュリールに1馬身半差をつけて勝利した。

渡仏して出走したムーランドロンシャン賞(仏GⅠ・T1600m)では、独国で独2000ギニー・ダルマイヤー大賞などを勝った後に国外遠征に出てジャックルマロワ賞を勝ってきた独国調教馬リールンクと並んで、単勝オッズ2.6倍の1番人気に支持された。今回もスウィンバーン騎手は抑え気味にレースを進めようとしたが、本馬は行きたがり、激しく折り合いを欠いてしまった。それでも残り400m地点でリールンクを置き去りにして先頭に立ち、追い上げてきたダフニ賞の勝ち馬スリルショーの追撃を半馬身封じて勝利した(リールンクはさらに2馬身半差の3着だった)。

その後は米国に遠征して、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCマイル(米GⅠ・T8F)に挑戦した。対戦相手は、アメリカンH・エディリードH・イングルウッドHの勝ち馬で前年のBCマイル2着のアルマムーン、英チャンピオンS・ジョンヘンリーH・ダフニ賞・ラクープドメゾンラフィットの勝ち馬で前年のBCマイル2位入線9着降着のパレスミュージック、サラナクSの勝ち馬でアーリントンクラシック・セクレタリアトS2着のグロウ、本馬と同じくムーランドロンシャン賞2着から直行してきたスリルショー、サンアントニオHの勝ち馬でサンタアニタH3着のハティム、ヴォランテHを勝ってきたエアディスプレイ、ベイメドウズダービーの勝ち馬マンガッキー、タンフォランHを勝ってきたトゥルースメーカー、ラトガーズHの勝ち馬フレッドアステア、ヒルプリンスSの勝ち馬ダブルフェイント、次走のワシントンDC国際Sを勝つユナイテッドネーションズH3着馬ルーテナンツラーク、ジャンプラ賞・ジョンシェール賞・ロンポワン賞の勝ち馬マジカルワンダー、キングズスタンドS・スプリントCS・アランベール賞・サンジョルジュ賞・グロシェーヌ賞を勝った名短距離馬だが6ハロン以上の距離では実績皆無のラストタイクーンの計13頭だった。本馬が単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持され、アルマムーンが単勝オッズ3.4倍の2番人気、パレスミュージックとスリルショーのカップリングが単勝オッズ4.5倍の3番人気となった。スタートが切られると本馬は逃げるマンガッキーを見るように2~3番手を追走。そして四角でマンガッキーをかわして先頭に立ったのだが、残り1ハロン地点で単勝オッズ36.9倍の9番人気馬ラストタイクーンにかわされると失速し、勝ったラストタイクーンから3馬身1/4差7着に敗退してしまった。3歳時の成績は8戦6勝だった。

競走生活(4歳時)

4歳時もBCマイル制覇を目指して現役を続行したが、年初に脚を負傷したために復帰はやや遅れ、6月のクイーンアンS(英GⅡ・T8F)がシーズン初戦となった。少し馬体が細いように見受けられた本馬は、勝ったクリスタルマイル・ロッキンジSの勝ち馬ゼンアゲインと、2着となったロイヤルロッジS2着・ウィリアムヒルフューチュリティS3着馬ウォーターケイの頭差接戦から1馬身差の3着に敗れた。それでもシーズン初戦としてはまずまずの結果だった。

次走のチャイルドS(英GⅡ・T8F)では、1歳年下の愛1000ギニー・ミルリーフS・クイーンメアリーS・チェリーヒントンSの勝ち馬フォレストフラワーとの愛1000ギニー馬対戦となった。レースは非常なスローペースとなり、スウィンバーン騎手はスタートしてから2ハロンほど進んだ時点で本馬を先頭に立たせた。そしてそのまま先頭を走り続け、ゴール前で猛追してきたフライングチルダースS・コロネーションS2着・チェヴァリーパークS3着馬シャイキヤを頭差の2着に抑えて勝利した(フォレストフラワーは10馬身半差の4着だった)。

夏場はレースに出ず、秋のクイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ・T8F)に出走した。ここでは、1歳年下の同じヌレイエフ産駒ミエスクと顔を合わせた。ミエスクはマイル戦ではマルセルブサック賞・英1000ギニー・仏1000ギニー・ジャックルマロワ賞・ムーランドロンシャン賞と5戦全勝であり、ヌレイエフ牝駒同士による欧州マイル王決定戦の様相を呈した。しかし意外にも、先行抜け出しの競馬で勝ったのは単勝オッズ6倍の2番人気だったミルリーフ牝駒ミリグラムだった。単勝オッズ1.36倍の1番人気に支持されていたミエスクは直線の追い上げが及ばずにミリグラムから2馬身半差の2着、ミリグラムと並んで単勝オッズ6倍の2番人気だった本馬は直線大外一気の末脚不発でミエスクからさらに5馬身差の3着と完敗した。もっとも、ミリグラムもコロネーションS・クリスタルマイルを勝ち、マルセルブサック賞・英1000ギニー・愛1000ギニーで2着という実績馬ではあった。

その後は米国に遠征して、ハリウッドパーク競馬場で行われたBCマイル(米GⅠ・T8F)に前年の雪辱を果たすべく参戦した。ここにはミエスク、ミリグラムの2頭も出走しており、クイーンエリザベスⅡ世Sのリターンマッチとなった。他の出走馬は、前年のBCマイル4着後にポーカーS・カーネルFWケスターHを勝ち分割競走ハリウッドダービーで2着していたダブルフェイント、ハリウッドフューチュリティ・サンタアニタダービー・スワップスSの勝ち馬テンパレートシル、イングルウッドH・ベイメドウズダービーの勝ち馬ルベルヴェデーレ、デルマーダービーの勝ち馬で英シャンペンS・ロイヤルロッジS2着のデピュティガヴァナー、イスパーン賞・エドモンブラン賞の勝ち馬で仏2000ギニー・ジャンプラ賞2着のハイエストオナー、ベイメドウズHの勝ち馬ショウダンサー、ラモナH・ヒルズボロHの勝ち馬ショートスリーヴス、スターズ&ストライプスH・クリフハンガーH・スウォーンズサンSの勝ち馬エクスプローシヴダーリング、前年の同競走11着後に分割競走ハリウッドダービー2着・ユナイテッドネーションズH3着していたエアディスプレイ、ニッカボッカーHの勝ち馬でマンハッタンH3着のダルースなどだった。スウィンバーン騎手に代わってラフィット・ピンカイ・ジュニア騎手が騎乗した本馬が単勝オッズ3.9倍の1番人気に支持され、ミエスクが単勝オッズ4.6倍の2番人気となった。

しかし本馬は体調があまり良くなかったようで、鼻出血防止剤ラシックスや抗炎症薬ビュートなどの薬物による治療を受けながらの出走だった。スタートしてすぐに本馬は馬群に包まれてしまい、ピンカイ・ジュニア騎手が立ち上がるほどの不利を受けてしまった。それでもそのまま馬群の中団7番手でレースを進めると、四角で内側を通って位置取りを上げ、逃げたショウダンサー、先行したミエスクに次ぐ3番手で直線を向いた。しかしここからミエスクの背中は遠ざかっていき、結局はショウダンサーも半馬身捕らえることが出来ず、勝ったミエスクから4馬身差の3着に敗退。このレースを最後に、4歳時4戦1勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Nureyev Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Special Forli Aristophanes Hyperion
Commotion
Trevisa Advocate
Veneta
Thong Nantallah Nasrullah
Shimmer
Rough Shod Gold Bridge
Dalmary
Stumped Owen Anthony Proud Chieftain Persian Gulf Bahram
Double Life
Bride Elect Big Game
Netherton Maid
Oweninny Arctic Star Nearco
Serena
Trial Story Fair Trial
Serial
Luckhurst Busted Crepello Donatello
Crepuscule
Sans le Sou ヴィミー
Martial Loan
Lucasland Lucero ソロナウェー
Cuguan
Lavant Le Lavandou
Firle

ヌレイエフは当馬の項を参照。

母スタンプトは現役成績9戦4勝、チャイルドS(英GⅢ)の勝ち馬。スタンプトの母ラックハーストの半妹ランドホーの曾孫にはアトラクション【英1000ギニー(英GⅠ)・愛1000ギニー(愛GⅠ)・コロネーションS(英GⅠ)・サンチャリオットS(英GⅠ)・愛メイトロンS(愛GⅠ)】、牝系子孫には日本で走っているメジャーエンブレム【阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)・NHKマイルC(GⅠ)】がいる。ラックハーストの母ルカスランドはジュライCの勝ち馬で、本邦輸入種牡馬ソーブレスド【ジュライC・ナンソープS】の半姉に当たる。ルカスランドの曾祖母ヴァーシックルはリブルスデールSの勝ち馬で、英オークス・アスコット金杯などを勝った名牝クワッシュドの半姉に当たる。しかしヴァーシックルとクワッシュドの母ヴァーディクトの両親であるショーグンとフィナーレが共に以前は正式なサラブレッドではない半血系とみなされており、本馬の牝系が正式なサラブレッドとして英国血統書(ジェネラルスタッドブック)に掲載されたのは1969年になってからの事だった。→牝系:B3号族

母父オーエンアンソニーは現役成績38戦11勝、シティ&サバーバンHの勝ち馬。オーエンアンソニーの父プラウドチーフテンは父パーシャンガルフ、母父ビッグゲームが共にバーラム産駒という血統の持ち主で、現役成績は15戦4勝。マグネットS・ローズベリーS・コラムプロデュースSを勝ち、エクリプスSで2着、コロネーションC・英チャンピオンSで3着している。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ダーレースタッドで繁殖入りした。繁殖としての成績もなかなかであり、6歳時に産んだ初子の牡駒ハザーム(父ブラッシンググルーム)【スプリームS(英GⅢ)】、7歳時に産んだ2番子の牡駒シャーマン(父ブラッシンググルーム)【ジョンシェール賞(仏GⅢ)】、10歳時に産んだ5番子の牡駒ムダレル(父マキャヴェリアン)【ガルフニュースナドアルシバスプリント】といったステークスウイナーを産んだ。しかし1996年2月、7番子の牝駒ソニンク(父マキャヴェリアン)を産んだ直後に、英国ダルハムホールスタッドにおける放牧中の事故で首を骨折してしまい、13歳で他界した。

本馬の6番子である不出走の牝駒レディイカルス(父レインボークエスト)の子にはファーナーズグリーン【レパーズタウン2000ギニートライアルS(愛GⅢ)】がいる。また、本馬の遺児である不出走馬ソニンクは日本に繁殖牝馬として輸入され、ランフォルセ【ダイオライト記念(GⅡ)・浦和記念(GⅡ)・エルムS(GⅢ)・佐賀記念(GⅢ)】とノーザンリバー【さきたま杯(GⅡ)・東京盃(GⅡ)・アーリントンC(GⅢ)・カペラS(GⅢ)・東京スプリント(GⅢ)・さきたま杯(GⅢ)】の母となった他に、ロジユニヴァース【東京優駿(GⅠ)・弥生賞(GⅡ)・札幌2歳S(GⅢ)・ラジオNIKKEI杯2歳S(GⅢ)】の祖母となっており、本馬の子孫は日本でもっとも活躍していると言える。

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