和名:アゼリ |
英名:Azeri |
1998年生 |
牝 |
栗毛 |
父:ジェイドハンター |
母:ゾディアックミス |
母父:アホヌーラ |
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史上初めて3年連続でエクリプス賞最優秀古馬牝馬に選ばれ、エクリプス賞年度代表馬にも選ばれた21世紀初頭の米国競馬界の女王 |
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競走成績:3~6歳時に米で走り通算成績24戦17勝2着4回 |
誕生からデビュー前まで
アラジやシガーの馬主として知られるアラン・E・ポールソン氏が所有する米国ケンタッキー州ブルックサイドファームで誕生した。航空機メーカーであるガルフストリーム・エアロスペース社のオーナーで自身パイロットでもあったポールソン氏は、航空チェックポイントにちなんで所有馬の名前をつける事が多く(アラジやシガーも同じ)、本馬にもアゼルバイジャン共和国の首都バクーにある航空チェックポイントにちなんでアゼリと命名した。
1歳時のキーンランドセールに出品されたが買い手が付かず、11万ドルでポールソン氏に買い戻された(記録上はポールソン氏の代理人だった仲介業者ヘザーウェイ社が購入した事になっている)。
翌年にポールソン氏が死去したため、本馬は息子のマイケル・ポールソン氏が所有することとなった。最初はサイモン・ブレイ調教師の管理馬だったが、ブレイ師の元では競走馬として出走することなく、3歳8月に女性調教師ローラ・デ・セルー厩舎に転厩した。セルー師が本馬を最初に見た時の感想は「美しい馬でもなく、あまり印象に残らなかった」という程度のものだった。
競走生活(3・4歳時)
結局デビューはかなり遅れて3歳11月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦となった。ここではオフィシエイトという馬が単勝オッズ1.8倍という断然の1番人気に推されており、主戦となるマイク・スミス騎手鞍上の本馬は単勝オッズ18.3倍の6番人気と、殆ど評価されていなかった。しかし逃げる2番人気馬ブラッシングラーイを2番手で追走すると、三角で先頭に立ってそのまま後続を引き離し、1分08秒8の好タイムで、2着サザンオアシスに6馬身差をつける完勝を収めた。
次走のハリウッドパーク競馬場ダート6.5ハロンの一般競走では、前走の勝ち方が評価されて単勝オッズ1.5倍の断然人気に支持された。ここではスタートしてしばらくは馬群の中団を追走していたが、三角で先頭に立ってそのまま押し切り、2着バーニングブリーズに3馬身差をつける余裕の勝利を収めた。
4歳初戦は1月にサンタアニタパーク競馬場で行われたダート8ハロンのオプショナルクレーミング競走(本馬は売却の対象外)となり、単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。ここでも序盤は馬群の中団に位置していたが、三角で仕掛けて直線入り口で先頭に立ち、そのまま2着イレーヌズエンジェルに3馬身差で勝利した。
翌月にはラカナダS(GⅡ・D9F)に出走。さすがに過去3戦とは対戦相手のレベルが違っており、ハリウッドオークス・クイーンエリザベスⅡ世CCS・ラブレアS・エルエンシノSなどに勝っていたアフルーエント、ラブレアSとエルエンシノSで連続2着だったロイヤリーチューズン、レディーズH勝ち馬サマーコロニーなどが出走していた。アフルーエントが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持され、本馬は対抗馬として単勝オッズ3.9倍の2番人気となった。レースはロイヤリーチューズンが逃げて、サマーコロニーが3番手、アフルーエントが4番手で、本馬はアフルーエントを見るように5番手につけた。そして四角で位置取りを上げると、先に抜け出したサマーコロニーを追撃。しかし1馬身届かずに2着に敗れた。
次走のサンタマルガリータ招待H(GⅠ・D9F)では、2年前のBCディスタフ勝ち馬で、前年のBCディスタフでも2着していたスペイン、ホーソーンH勝ち馬でスピンスターS・サンタマリアHで共に3着だったプランタン、サンタマリアHを勝ってきたフェイヴァリットファンタイムなどが対戦相手となった。ハンデ競走ではあったが、各馬の斤量差はそれほど大きくなく、一番重いスペイン(118ポンド)と最軽量馬(本馬もその1頭)の差は3ポンドだった。それでもスペインは単勝オッズ4.5倍の3番人気止まりであり、本馬とプランタンが並んで単勝オッズ3.2倍の1番人気となった。レースではフェイヴァリットファンタイムが逃げを打ち、スペインが2番手、本馬が3番手、プランタンが最後方を追走した。そしてスペインが先に仕掛けて直線入り口で先頭に立ったが、スペインを追いかけて上がってきた本馬が一気に差し切り、2着スペインに3馬身差をつけてGⅠ競走初勝利を挙げた。
次走のアップルブロッサムH(GⅠ・D8.5F)では、スペイン、アフルーエントに加えて、亜国から移籍してきてスピンスターSを勝っていたミスリンダが対戦相手となった、本馬を含むこの4頭の斤量差は1ポンドであり、ハンデ競走と言ってもほぼ完全な実力勝負になった。その中で単勝オッズ2倍の1番人気に支持されたのは本馬だった。レースはミスリンダが逃げて、スペインが2番手、本馬が後方2番手、アフルーエントが最後方を走る展開となった。先行した馬はいずれも直線で伸びず、直線入り口で先頭に立った本馬と後方から差してきたアフルーエントの対決となった。しかし本馬がアフルーエントを1馬身3/4差の2着に完封して勝利した。
次走のミレイディBCH(GⅠ・D8.5F)では、アフルーエント、オークローンBCSを勝ってきたアスクミーノーシークレッツが対戦相手となった。他の出走馬はそれほどの実績馬ではなく、ハンデ差を大きくするために、本馬には前走より5ポンド重い122ポンドが課せられた。それを気にしたのか、それとも逃げ先行勢に有力馬がいなかった事を考慮したのかは定かではないが、スミス騎手はこのレースで本馬をスタートから押して逃げさせた。そして順調に先頭をひた走ると、直線でもしっかりと伸びて、2着アフルーエントに3馬身半差をつけて完勝し、単勝オッズ1.6倍の1番人気に見事応えた。
ヴァニティH(GⅠ・D9F)では、3戦連続対戦となるアフルーエント、バヤコアH2連覇のスターラー(翌年にサンタマリアH・サンタマルガリータ招待Hを勝っている)などが出走してきた。本馬の斤量は前走よりさらに3ポンド増えて125ポンドとなり、アフルーエントとは6ポンド差になった(前走では3ポンド差)。しかし単勝オッズ1.3倍の断然人気に推されると、今回もスタートからゴールまで先頭を走り続け、2着アフルーエントに3馬身差をつけて勝利した。
クレメントLハーシュH(GⅡ・D8.5F)では、斤量がさらに1ポンド増えて126ポンドとなった。ここではアフルーエントなどの有力馬は不在であり、本馬を脅かすものは他馬との10~12ポンドという斤量差のみだった。それでも単勝オッズ1.1倍という圧倒的な1番人気に支持されると、スタートから快調に先頭を走り、そのまま2着エンジェルギフトに2馬身差で勝利した。
続くレディーズシークレットBCH(GⅡ・D8.5F)では、スターラー、ファンタジーS・ジャージーダービー・コティリオンHなどの勝ち馬ミスティックレディ、前走クレメントLハーシュHで2着に突っ込んできたエンジェルギフトなどが対戦相手となった。本馬の斤量はさらに1ポンド増えて127ポンドとなった。しかし単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持されると、ここでもスタートから順調に先頭を走り、直線で二の脚を使って、2着スターラーに3馬身差をつけて完勝した。
その後は初めて米国西海岸を離れてアーリントンパーク競馬場に向かい、BCディスタフ(GⅠ・D9F)に出走した。過去に本馬と対戦してきた有力牝馬勢はパーソナルエンスンHを勝ってきたサマーコロニーやスターラーを除いて不在であり、ガゼルH・ベルデイムSを連勝してきたインペリアルジェスチャー、ラフィアンHを勝ってきたマンディーズゴールド、ケンタッキーオークス・アラバマSの勝ち馬でこの年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選ばれるファーダアミーガ、アッシュランドS・スピンスターSの勝ち馬テイクチャージレディーなどが主な対戦相手となった。本馬が単勝オッズ2.8倍の1番人気に支持され、テイクチャージレディーが単勝オッズ4.2倍の2番人気、インペリアルジェスチャーが単勝オッズ5.1倍の3番人気、ファーダアミーガが単勝オッズ5.9倍の4番人気となった。
今回も本馬はスタートから先頭に立ち、インペリアルジェスチャーやテイクチャージレディーを引き連れて逃げ続けた。そして脚色を衰えさせることなく直線に突入。道中は4番手を走っていたファーダアミーガが直線で2番手に上がってきたが、本馬との差はまったく縮まらなかった。最後は2着ファーダアミーガに5馬身差をつけて圧勝した。
この年に9戦8勝の成績を残した本馬は、エクリプス賞最優秀古馬牝馬だけでなくエクリプス賞年度代表馬にも選出された。牝馬がエクリプス賞年度代表馬に選ばれたのは1983年のオールアロング、1986年のレディーズシークレットに次いで16年ぶり史上3頭目だったが、前の2頭が牡馬相手にGⅠ競走を勝って選出されていたのに対し、本馬は牡馬相手のレースに出た事さえもなく、この選出結果に異議を唱える人もいたという。
競走生活(5歳時)
5歳時は4月のアップルブロッサムH(GⅠ・D9F)から始動。テイクチャージレディー、アフルーエントなどが対戦相手となったが、2連覇がかかる本馬が単勝オッズ1.4倍の断然人気に支持された。スタートからテイクチャージレディーが先頭を奪い、本馬はテイクチャージレディーから2馬身ほど離れた3番手を追走した。そして四角で先頭に迫っていったが、テイクチャージレディーの逃げ脚は衰えず、直線でも粘りに粘った。しかし本馬が最後にテイクチャージレディーを頭差かわして勝利した。
次走はやはり2連覇がかかるミレイディBCH(GⅠ・D8.5F)となった。ここにもアフルーエントが出走していたが、既に本馬とアフルーエントでは実力差が大きすぎて、8ポンドの斤量差となった。それでも単勝オッズ1.2倍の断然人気に支持された本馬は、2番手追走から向こう正面で単独先頭に立ち、そのまま押し切って2着エンジョイに3馬身差で勝利した。
次走はこれまた2連覇がかかるヴァニティH(GⅠ・D9F)となった。ここで目立つ対戦相手はシックスティセイルズH勝ち馬ベアネセシティーズくらいであり、本馬がベアネセシティーズより9ポンド重い127ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ1.3倍の1番人気に支持された。レースでは本馬より16ポンドも斤量が軽いシスターガールブルースという馬が本馬に絡んで先頭争いを展開。2頭の争いは直線に入るまで続いたが、最後に本馬がシスターガールブルースを突き放して2馬身差で勝利した。
次走はこれも2連覇がかかるクレメントLハーシュH(GⅡ・D8.5F)となった。ここでは前走で本馬に食い下がったシスターガールブルースの他に、ラブレアS・エルエンシノS・ラカナダS勝ち馬ゴットココも出走してきた。斤量は本馬が127ポンド、ゴットココが118ポンド、シスターガールブルースは前走より軽い109ポンドだったが、やはり本馬が単勝オッズ1.3倍の断然人気に支持された。スタートから本馬が逃げを打ち、ゴットココとシスターガールブルースがその直後を追ってくる展開となった。しかし直線に入ると後続を突き放し、2着ゴットココに3馬身1/4差で勝利した。
次走はこれまた2連覇がかかるレディーズシークレットBCH(GⅡ・D8.5F)となった。対戦相手はゴットココ、ハリウッドスターレットS・サンタイネスS・アッシュランドS勝ち馬エローラヴ、ハリウッドBCオークス勝ち馬アドレーションなどであり、本馬が128ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ1.2倍の断然人気に支持された。しかし今回はスタートがあまり良くなく、後方2番手を走る展開となった。三角から四角にかけて位置取りを上げていき、3番手で直線を向いた。そして前を走るエローラヴとアドレーションを追撃したのだが、アドレーション共々エローラヴの斜行の煽りを受けてしまい、後方から来たゴットココに差されて2馬身1/4差の3着(エローラヴが4着に降着となったために2着に繰り上がり)となり、連勝は11でストップしてしまった。
その後に屈腱炎を発症したためBCディスタフは回避(レディーズシークレットBCHで3着に繰り上がったアドレーションが最低人気を覆して、1番人気のサイトシークやテイクチャージレディー、ゴットココ、エローラヴ以下に勝利している)となり、5歳時の成績は5戦4勝となったが、ヒューマナディスタフH・オグデンフィップスH・ゴーフォーワンドH・ベルデイムSとGⅠ競走を4連勝したサイトシークを抑えて、2年連続でエクリプス賞最優秀古馬牝馬に選ばれた。
競走生活(6歳時)
屈腱炎の症状を重く見たセルー師は引退を勧めたが、マイケル・ポールソン氏は諦めず、本馬をダレル・ウェイン・ルーカス厩舎に移籍させ、半年後の6歳4月に復帰することになった。
復帰初戦は3連覇がかかるアップルブロッサムH(GⅠ・D9F)となった。本馬が休んでいる間に米国牝馬路線は世代交代が進んでおり、ここで対戦相手となったのは、チリから移籍してきてシュヴィーH・デラウェアH・ラフィアンHなどを勝っていたワイルドスピリット、デラウェアオークス・アラバマS・ラブレアS・サンタモニカHなどを勝っていたアイランドファッション、亜国から移籍してきてバヤコアH・サンタマリアHを勝っていたスターパレードといった新興勢力勢だった。斤量は本馬が123ポンドのトップハンデだったが、斤量2位のワイルドスピリットとは4ポンド差であり、長期休養明けということもあって、他馬との実力差は接近しているとハンデキャッパーから判断された。それはファンも同感だったようで、単勝オッズ2.5倍の1番人気に推されたのはワイルドスピリットであり、単勝オッズ2.8倍の2番人気にアイランドファッション。単勝オッズ3倍の3番人気だった本馬は4歳3戦目のサンタマルガリータ招待H以来久々に1番人気の座を他馬に明け渡した。しかしいざレースが始まると、以前と変わらない逃げっぷりを見せた本馬が、そのまま2位入線のワイルドスピリット(スターパレードに対する進路妨害により降着)に1馬身半差、3位入線(2着に繰り上がり)のスターパレードにはさらに1馬身3/4差をつけて勝利を収め、同競走史上初の3連覇を達成して見事に復活した。
次走のヒューマナディスタフH(GⅠ・D7F)では、ファーストフライトH・トップフライトH・ディスタフBCHなどを勝っていたランダルーなど3頭のみが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持される一方で、本馬から4ポンドのハンデを貰ったランダルーも単勝オッズ2.5倍の2番人気となっていた。レースではランダルーが逃げて本馬がそれを追いかける展開となった。そして四角でランダルーをかわして先頭に立ったのだが、そこへ後方から来たマヨオンザサイドという馬に並びかけられた。そして11ポンドという斤量差が最後に効いて、マヨオンザサイドが頭差で勝利し、本馬は3着ランダルーに7馬身1/4差をつけたが2着に敗れた。
次走は初めての牡馬相手の競走となるメトロポリタンH(GⅠ・D8F)となった。主戦場が米国東海岸に変わったため、本馬の主戦はスミス騎手からパット・デイ騎手に交替となった。対戦相手は全て牡馬と騙馬であり、ドワイヤーS・ジムダンディS勝ち馬で前走カーターHでは2着していたストロングホープ、伯国から移籍してきてサンカルロスH・カーターHなど3連勝中のピコセントラル、前年のケンタッキーダービー・プリークネスS勝ち馬ファニーサイドなどが参戦してきた。斤量はストロングホープとピコセントラルの2頭が119ポンド、ファニーサイドが118ポンドだったが、本馬には117ポンドが課せられ、性差を考慮すると事実上のトップハンデだった。そのために本馬は単勝オッズ6.8倍の4番人気に留まった。スタートからストロングホープとピコセントラルの2頭が先頭を争い、本馬は少し離れた3番手を追走した。しかし三角から四角にかけて後続馬が押し寄せてくると馬群に飲み込まれてしまい、そのままピコセントラルの6馬身3/4差8着に敗れてしまった。
次走のオグデンフィップスH(GⅠ・D8.5F)における対戦相手は全て初顔合わせとなる3頭のみだったが、サイトシーク、2年前のエクリプス賞最優秀2歳牝馬で前走シュヴィーHを勝ってきたストームフラッグフライング、前年のパーソナルエンスンH勝ち馬パッシングショットと強敵揃いだった。本馬には123ポンドのトップハンデが課せられたが、それでも単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。しかしスタートから先頭に立ったのだが、四角でサイトシークにかわされると一気に失速してしまい、勝ったサイトシークから12馬身差をつけられた4着最下位に終わった。
続くゴーフォーワンドH(GⅠ・D9F)でも、サイトシーク、ストームフラッグフライングの2頭が本馬の前に立ち塞がってきた。ここではサイトシークが122ポンドのトップハンデながら単勝オッズ1.75倍の1番人気に支持され、120ポンドの本馬が単勝オッズ3.95倍の2番人気、117ポンドのストームフラッグフライングが単勝オッズ4.05倍の3番人気となった。前走の敗戦にも関わらず、今回も本馬はスタートから先頭に立った。そして四角で後方から来たサイトシークに詰め寄られた。しかし前走とは異なり失速はせず、直線に入ると本馬とサイトシークの一騎打ちとなった。実況アナウンサーは「直線で先頭にいるのはアメリカで最も優れた牝馬2頭です!」と絶叫した。最後はゴール前で一伸びした本馬が2着サイトシークに1馬身3/4差で勝利を収め、GⅠ競走10勝目を挙げるとともに、スペインの持っていた北米牝馬賞金記録を更新した。
次走はパーソナルエンスンH(GⅠ・D10F)となった。ここにはサイトシークは不在であり、ストームフラッグフライング、デモワゼルS・ブラックアイドスーザンS勝ち馬ロアーエモーションの2頭が強敵だった。本馬が122ポンドのトップハンデながら単勝オッズ1.6倍の1番人気となり、6ポンドのハンデを貰ったストームフラッグフライングが単勝オッズ3.15倍の2番人気、それから1ポンド斤量が軽いロアーエモーションが単勝オッズ8.1倍の3番人気となった。今回はロアーエモーションが本馬のハナを叩いて逃げを打ち、2頭が競り合って後続を大きく引き離す展開となった。やがてスタミナ切れを起こしたロアーエモーションは後退していったが、本馬にも余力は残っておらず、直線入り口でストームフラッグフライングに差されると、そのまま1馬身1/4差の2着に敗れた。
次走のスピンスターS(GⅠ・D9F)における対戦相手は、ファンタジーS・ハリウッドオークス勝ち馬ハウスオブフォーチュン、メイプルリーフSを勝っていた加国調教馬ワンフォーローズ、前走アーリントンメイトロンHで2着してきたタムウィール、マヨオンザサイドなど比較的おとなしめであり、定量戦という事もあって、単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持された。レースではタムウィールが単騎の逃げに持ち込み、本馬は2番手を追走した。そして直線に入ってすぐに先頭に立つと、そのまま2着タムウィールに3馬身差で勝利した。
その後はローンスターパーク競馬場に向かい、ブリーダーズカップに参戦。BCディスタフに出走すると思われていたが、陣営は牡馬相手のBCクラシック(GⅠ・D10F)を選択した。しかしこの年のBCクラシックは生憎と例年以上にメンバーが揃っており、ヴォスバーグS・トムフールH・ウッドワードSなど4連勝中のゴーストザッパー、前年の覇者でドバイワールドCも勝っていたプレザントリーパーフェクト、ベルモントSでスマーティジョーンズの無敗の米国三冠達成を阻止したトラヴァーズS勝ち馬バードストーン、ホイットニーHなど5連勝中のロージズインメイ、前走ジョッキークラブ金杯を勝ってきたファニーサイド、スティーヴンフォスターH勝ち馬パーフェクトドリフト、日本から参戦してきたダービーグランプリ勝ち馬パーソナルラッシュなどが出走していた。ゴーストザッパーとプレザントリーパーフェクトが並んで単勝オッズ3.5倍の1番人気に推される一方で、本馬は単勝オッズ16.2倍の7番人気止まりだった。レースではゴーストザッパーがロージズインメイを引き連れて先頭を飛ばし、本馬は3番手を追走した。しかしやがて前の2頭についていけなくなって後退。それでも直線ではそれなりに粘ったが勝ち負けには至らず、ゴーストザッパーの9馬身3/4差5着に敗退。
このレースを最後に6歳時8戦3勝の成績で引退したが、オグデンフィップスH・ラフィアンH・ベルデイムSとGⅠ競走3勝を挙げたサイトシークを抑えて、3年連続でエクリプス賞最優秀古馬牝馬に選ばれた。3年連続で最優秀古馬牝馬に選ばれたのは、エクリプス賞創設以前の最優秀ハンデ牝馬時代を含めても本馬が史上初である(2頭目がゼニヤッタ)。獲得賞金総額は407万9820ドルで、ゼニヤッタに更新されるまで北米賞金女王だった。
血統
ジェイドハンター | Mr. Prospector | Raise a Native | Native Dancer | Polynesian |
Geisha | ||||
Raise You | Case Ace | |||
Lady Glory | ||||
Gold Digger | Nashua | Nasrullah | ||
Segula | ||||
Sequence | Count Fleet | |||
Miss Dogwood | ||||
Jadana | Pharly | Lyphard | Northern Dancer | |
Goofed | ||||
Comely | Boran | |||
Princesse Comnene | ||||
Janina | Match | Tantieme | ||
Relance | ||||
Jennifer | Hyperion | |||
Avena | ||||
Zodiac Miss | Ahonoora | Lorenzaccio | Klairon | Clarion |
Kalmia | ||||
Phoenissa | The Phoenix | |||
Erica Fragrans | ||||
Helen Nichols | Martial | Hill Gail | ||
Discipliner | ||||
Quaker Girl | Whistler | |||
Mayflower | ||||
Capricornia | トライマイベスト | Northern Dancer | Nearctic | |
Natalma | ||||
Sex Appeal | Buckpasser | |||
Best in Show | ||||
Franconia | ラインゴールド | ファバージ | ||
Athene | ||||
Miss Glasso | ラティフィケイション | |||
Tulip |
父ジェイドハンターはミスタープロスペクターの直子で、現役成績は14戦6勝。ポールソン氏の所有馬であり、最初は英国で走ったが芽が出ず、後に米国に移籍してドンH(米GⅠ)・ガルフストリームH(米GⅠ)とGⅠ競走を2勝した。種牡馬として北米だけでなく南米や日本でも供用された後、2011年に功労馬保護団体オールドフレンズが所有するケンタッキー州のサラブレッド引退馬牧場において他界した。
母ゾディアックミスは豪州産馬で、コカコーラクラシック(豪GⅢ)に勝つなど9戦3勝の成績を残した。現役中にポールソン氏に購入されており、競走馬引退後は米国で繁殖入りしていたが、本馬を産んだ翌年に落雷により命を落としており、競走馬としてデビューした産駒は本馬のみである。ゾディアックミスの母カプリコーニアの半妹バレットマーヌの子にはシリック【BCマイル(米GⅠ)・シューメーカーマイルS(米GⅠ)】が、カプリコーニアの従兄弟にはノーリュート【リュパン賞(仏GⅠ)】やリヴァーレディ【仏1000ギニー(仏GⅠ)】がいる。カプリコーニアの曾祖母チューリップは、英1000ギニー馬ハッピーラフターの半妹。→牝系:F1号族④
母父アホヌーラは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ヒルンデールファームで繁殖入りし、ストームキャット、エーピーインディ、ジャイアンツコーズウェイ、ゴーストザッパーなどと交配された。2009年秋に日本のノーザンファーム代表者である吉田勝巳氏により購入されてノーザンファームで繫殖生活を開始し、ディストーテッドユーモア、ゼンノロブロイ、ディープインパクト産駒を出産している。
エーピーインディやゴーストザッパーとの間の子は、エクリプス賞年度代表馬を両親に持つ数少ない馬のうちの2頭(他にはレディーズシークレットが産んだシアトルスルー産駒3頭とスキップアウェイ産駒2頭、それにレイチェルアレクサンドラが産んだカーリン産駒などがいる)であり、そのうちゴーストザッパー産駒の牝馬ワインプリンセスがフォールズシティH(米GⅡ)・モンマスオークス(米GⅢ)を勝っている。
2010年に米国競馬の殿堂入りを果たした。また2006年には、本馬が3連覇したアップルブロッサムHが施行されるオークローンパーク競馬場において、本馬の名を冠したアゼリBCHが創設された。