キャットシーフ

和名:キャットシーフ

英名:Cat Thief

1996年生

栗毛

父:ストームキャット

母:トレインロバリー

母父:アリダー

とにかく勝ち切れないレースぶりが目立っていたが大一番BCクラシックで激走を見せて見事に優勝を果たした馬主孝行の馬

競走成績:2~4歳時に米で走り通算成績30戦4勝2着9回3着8回

誕生からデビュー前まで

ピーナッツバター製造会社から身を起こして事業家として成功したウィリアム・T・ヤング氏が代表を務める米国ケンタッキー州オーバーブルックファームの生産・所有馬で、米国の名伯楽ダレル・ウェイン・ルーカス調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳4月にキーンランド競馬場で行われたダート4.5ハロンの未勝利戦で、ジェリー・ベイリー騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ2.7倍で12頭立ての1番人気に支持された。馬群の中団後方からレースを進めたが、ばてた馬を直線でかわしただけで、勝った単勝オッズ29.2倍の9番人気馬ディスクリミネーションから6馬身差の6着に敗退した。

その後はしばらくレースに出ず、7月にエリスパーク競馬場で行われたダート5ハロンの未勝利戦に出走。ここではチャールズ・ウッズ・ジュニア騎手を鞍上に、単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。今回は好位6番手でレースを進め、直線で追い上げたが、逃げた単勝オッズ3.1倍の2番人気馬カラーオブスモークを捕らえられずに、1馬身1/4差の2着に敗れた。

続いて出走したサラトガ競馬場ダート6ハロンの未勝利戦では、単勝オッズ5.4倍の3番人気に評価が落ちた。しかし初装着したブリンカーの効果が出たのか、ベイリー騎手を鞍上に鮮やかな逃げ切りを決めて、2着コンサーヴ(後にメイカーズマークマイルS・ファイアクラッカーBCHとGⅡ競走を2勝する)に6馬身差をつけて圧勝した。

同じサラトガ開催で出走したダート7ハロンの一般競走では、ノットイージービーイングリーン、レモンドロップキッド、メニフィーなど4頭が対戦相手となった。サンフォードSで4着してきたノットイージービーイングリーンが単勝オッズ2.45倍の1番人気、レモンドロップキッドが単勝オッズ3.75倍の2番人気、ベイリー騎手騎乗の本馬が単勝オッズ4.15倍の3番人気、メニフィーが単勝オッズ4.7倍の4番人気だった。本馬がスタートから単騎逃げに持ち込み、他の出走馬4頭は団子状態で追走してきた。四角で本馬が仕掛けて逃げ込みを図ったが、後方から来たメニフィーに一気に差されてしまい、3馬身差の2着に敗れた(それでも、3着レモンドロップキッドには10馬身半差をつけていた)。

ベルモントパーク競馬場に移動して出走したダート6ハロンの一般競走では、後にカウディンS・ウィザーズS・ケンタッキーカップスプリントS・アルフレッドGヴァンダービルトHとGⅡ競走を4勝するサクセスフルアピールとの対戦となった。シェーン・セラーズ騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.75倍の1番人気、サクセスフルアピールが単勝オッズ2.7倍の2番人気となった。今回もスタートから逃げを打ったが、直線でサクセスフルアピールに差されて、2馬身差の2着に敗れた。

次走はブリーダーズフューチュリティ(GⅡ・D8.5F)となった。このレースには、ハリウッドジュヴェナイルCSS・サプリングSをいずれも圧勝し、前走ベルモントフューチュリティSではレモンドロップキッドの半馬身差2着だったイェスイッツトゥルー、一般競走とスポーツオブキングスフューチュリティを連続して大圧勝してきたアンサーライヴリーの2頭が出走してきて、2強対決と目されていた。イェスイッツトゥルーが単勝オッズ1.9倍の1番人気、アンサーライヴリーが単勝オッズ3.4倍の2番人気で、メニフィーの主戦でもあったパット・デイ騎手と初コンビを組んだ本馬は単勝オッズ7.8倍の3番人気だった。レースではアンサーライヴリーと単勝オッズ9.5倍の4番人気だったサプリングS2着馬アールトンの2頭が逃げて、イェスイッツトゥルーが3番手、本馬はそれから少し離れた5番手につけた。直線入り口ではアンサーライヴリー、イェスイッツトゥルー、本馬の3頭が横一線となった。イェスイッツトゥルーが最初に後れを取り、本馬とアンサーライヴリーの一騎打ちとなったが、本馬が首差で勝利を収めた。

続いてチャーチルダウンズ競馬場で行われたBCジュヴェナイル(GⅠ・D8.5F)に参戦。シャンペンSの勝ち馬ザグルームイズレッド、トレモントSの勝ち馬タクティカルキャット、ベルモントフューチュリティSを勝ってきたレモンドロップキッド、アンサーライヴリー、前走3着のイェスイッツトゥルーなどが対戦相手となった。アンサーライヴリーが単勝オッズ3.7倍の1番人気、本馬とタクティカルキャット、マウンテンレンジの同厩馬3頭カップリングと、ザグルームイズレッドが並んで単勝オッズ4.2倍の2番人気、レモンドロップキッドが単勝オッズ4.7倍の4番人気と続いていた。スタートからアンサーライヴリー、イェスイッツトゥルー、バックトラウトなど複数の馬が激しく先頭争いを演じ、デイ騎手が騎乗する本馬はそれらを見る形で6番手の好位を進んだ。直線に入るとアンサーライヴリーが抜け出し、外側から本馬、内側から単勝オッズ77.5倍の最低人気だったケンタッキーカップジュヴェナイルSの勝ち馬アリーズアレイがそれを追撃。しかしアンサーライヴリーがアリーズアレイの猛追を頭差凌いで勝利し、本馬はアリーズアレイから3/4馬身差の3着に敗れた。2歳時の成績は7戦2勝だった。

競走生活(3歳前半)

3歳時は1月にガルフストリームパーク競馬場で行われたハッチソンS(GⅡ・D7F)から始動した。ここでは、スペクタキュラービッドSを勝ってきたテキサスグリッター、ルイジアナチャンピオンズデイジュヴェナイルSなど5戦無敗のベットミーベストとの対戦となった。テキサスグリッターが単勝オッズ2.3倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.1倍の2番人気、ベットミーベストが単勝オッズ3.5倍の3番人気だった。スタートからテキサスグリッターとベットミーベストが先頭争いを演じ、本馬は最後方を追走。そして直線で追い上げたが、ベットミーベストとテキサスグリッターの頭差接戦に届かず、ベットミーベストの3馬身半差3着に敗れた。

次走のファウンテンオブユースS(GⅠ・D8.5F)では、ケンタッキージョッキークラブS2着馬ヴィカー、ナシュアSの勝ち馬ドネライルコート、カウディンSを勝ちナシュアSで2着していたサクセスフルアピール、後のアーカンソーダービー勝ち馬サーテン、ホーリーブルSを勝ってきたグリッツンハードトースト、BCジュヴェナイル2着以来の実戦となるアリーズアレイ、BCジュヴェナイルで6着だったザグルームイズレッドなどを抑えて、単勝オッズ4.1倍の1番人気に支持された。ここでは逃げるヴィカーを直後の2番手で追いかけたのだが、最後まで追いつくことが出来ずに、ヴィカーの首差2着に惜敗した。

続くフロリダダービー(GⅠ・D9F)でも、ヴィカー、前走3着のサーテン、同4着のグリッツンハードトースト、同9着のアリーズアレイ、レムセンS3着馬ワンダートロス、後のウッドメモリアルS勝ち馬アドニスなどを抑えて、単勝オッズ2.8倍の1番人気に支持された。今回はスタートからヴィカーの前を走り、直線に先頭で入ってきたのだが、ヴィカーとワンダートロスの2頭に差されて、ヴィカーの半馬身差3着と、またも惜敗した。

次走のブルーグラスS(GⅠ・D9F)では、ワンダートロス、ヴィカー、BCジュヴェナイルで5着だったレモンドロップキッド、タンパベイダービーで2着してきたメニフィー、ルイジアナダービーの勝ち馬キンバーライトパイプなどが対戦相手となった。さすがに本馬の評価は落ちており、単勝オッズ6.9倍の4番人気だった。過去5戦で本馬に騎乗したデイ騎手がメニフィーに騎乗したため、本馬にはマイク・スミス騎手が騎乗した。レースではヴィカーとキンバーライトパイプの2頭が逃げて、本馬は3番手を追走した。そして直線ではヴィカーに並びかけて叩き合いに持ち込んだが、後方から来たメニフィーに2頭まとめて差されてしまった。3着ヴィカーには半馬身差をつけたが、メニフィーからは1馬身1/4差をつけられて2着に敗れた。

こうして迎えたケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)だったが、勝ち切れないにしても堅実に走ってきた本馬の評価はまずまず高く、単勝オッズ8.4倍で19頭立ての5番人気と穴人気だった。主な出走馬を上位人気から順に記すと、史上初の同競走3連覇を目指すボブ・バファート調教師が送り込んできた、ハリウッドスターレットS・ラスヴァージネスS・サンタアニタオークス・ファンタジーSと4連勝中の牝馬エクセレントミーティングとサンタアニタダービー馬ジェネラルチャレンジの2頭カップリングが単勝オッズ5.8倍の1番人気、ギャラリーファーニチャードットコムSの勝ち馬スティーヴンガットイーヴンが単勝オッズ6.1倍の2番人気、やはりバファート師の管理馬だったサンフェリペS勝ち馬でサンタアニタダービー・ハリウッドフューチュリティ2着のプライムティンバーが単勝オッズ7.3倍の3番人気、メニフィーが単勝オッズ8倍の4番人気と続き、本馬を挟んで、ヴィカーが単勝オッズ9.2倍の6番人気、レモンドロップキッドなど5頭のカップリングが単勝オッズ12.6倍の7番人気だった。

今回もデイ騎手がメニフィーに騎乗したため、本馬には前走に続いてスミス騎手が騎乗した。スタートが切られると、不調のため単勝オッズ38倍の最低人気まで落ちていた前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬アンサーライヴリーが逃げを打ち、本馬とヴァルホルがそれを追走。アンサーライヴリーが失速すると代わってこの2頭が先頭に立ち、そのまま直線に雪崩れ込んだ。直線ではいったん先頭に立った本馬だが、中団待機策から外側をまくって位置取りを上げていた、単勝オッズ32.3倍の12番人気だったレキシントンSの勝ち馬カリズマティック(本馬とは同厩だった)にかわされ、さらにメニフィーにも差されて、勝ったカリズマティックから1馬身差、2着メニフィーから3/4馬身差の3着に敗れた。

次走のプリークネスS(GⅠ・D9.5F)における出走馬は、カリズマティック、メニフィー、本馬のケンタッキーダービー上位3頭に加えて、前走5着のエクセレントミーティング、同6着のキンバーライトパイプ、同7着のワールドリーマナー、同14着のスティーヴンガットイーヴン、同15着のヴァルホル、同17着のアドニス、同18着のヴィカーなど、ケンタッキーダービー出走組が中心だった。メニフィーが単勝オッズ3倍の1番人気、スミス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ6.3倍の2番人気で、前走がフロック視されていたカリズマティックは単勝オッズ9.4倍の5番人気に留まった。スタートから本馬、ヴィカー、キンバーライトパイプの3頭が後続を引き離して積極的に先頭の奪い合いを演じた。そのまま三角に入ってきたが、ここで後方から来たカリズマティックにかわされると3頭とも力尽きて失速。本馬は、勝ったカリズマティックから11馬身差の7着と大敗した。

その後は古馬相手となるメトロポリタンH(GⅠ・D8F)に向かった。フォアゴーH・ヴォスバーグSの勝ち馬アファームドサクセス、シガーマイルHなどの勝ち馬サーベア、チャーチルダウンズHを勝ってきたロックアンドロール、前年のファウンテンオブユースSの勝ち馬リルズラッド、チャーチルダウンズHで2着してきたリバティーゴールドなどが対戦相手となったが、ベイリー騎手とコンビを組んだ本馬は出走8頭中最軽量の112ポンドだったこともあり、118ポンドのトップハンデだったアファームドサクセス(単勝オッズ2.45倍)に次ぐ2番人気(単勝オッズ3.85倍)となった。しかしスタートで出遅れた本馬は、逃げるリルズラッドに競りかけて先頭争いを演じるも、直線では完全に手応えが無くなり、サーベアの15馬身差6着と惨敗した。

競走生活(3歳後半)

翌週のベルモントSには出走せず、一息入れて7月のスワップスS(GⅠ・D9F)に向かった。ここでは、ケンタッキーダービー11着惨敗後にアファームドHを勝って仕切り直してきたジェネラルチャレンジ、サンラファエルSの勝ち馬でサンタアニタダービー3着のデザートヒーローなど3頭だけが対戦相手となった。ジェネラルチャレンジが単勝オッズ1.5倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.8倍の2番人気、デザートヒーローが単勝オッズ4.2倍の3番人気となった。久々にコンビを組んだデイ騎手鞍上の本馬は、スタートからデザートヒーローと共に先頭を引っ張った。三角でデザートヒーローが失速し、代わりにジェネラルチャレンジが本馬に並びかけてきた。ここから本馬とジェネラルチャレンジの一騎打ちが延々と展開された。後続を11馬身も引き離した2頭の叩き合いは、最後に本馬が頭差で制し、ようやくGⅠ競走初勝利を挙げた。

次走のハスケル招待H(GⅠ・D9F)では、プリークネスS2着・ベルモントS8着だったメニフィー、ドワイヤーSなど5連勝中のフォレストリーとの対戦となった。メニフィーが単勝オッズ2.5倍の1番人気、フォレストリーが単勝オッズ2.7倍の2番人気、スミス騎手騎乗の本馬が単勝オッズ3.6倍の3番人気となった。レースではフォレストリーが逃げて、本馬は3番手、メニフィーは4番手を追走。直線入り口で本馬とメニフィーがフォレストリーに並びかけて、人気馬3頭による叩き合いとなった。最後はメニフィーが勝ち、本馬が半馬身差の2着、フォレストリーがさらに半馬身差の3着だった。

次走のトラヴァーズS(GⅠ・D10F)では、メニフィー、ベルモントSでカリズマティックを3着に破って勝利していたレモンドロップキッド、ハスケル招待Hで4着だったアンブライドルドジェット、ケンタッキーダービーでは12着だったが前走ジムダンディSでレモンドロップキッドを2着に破って勝ってきたエクトンパーク、ベルモントS2着馬ヴィジョンアンドヴァースなどとの対戦となった。メニフィーが単勝オッズ2.6倍の1番人気、レモンドロップキッドが単勝オッズ4.65倍の2番人気、本馬が単勝オッズ5.6倍の3番人気となった。スミス騎手が騎乗する本馬はスタートからヴィジョンアンドヴァースと先頭争いを演じたが、先にスタミナが切れて失速。レースは好位から差したレモンドロップキッドがヴィジョンアンドヴァースとの叩き合いを制して勝利。3着にメニフィーが入り、本馬はレモンドロップキッドから12馬身差の7着と大敗した。これが本馬とメニフィーの最後の対戦で、本馬は結局メニフィーとは6回戦って1度も先着できなかった。

続くケンタッキーCクラシックH(GⅡ・D9F)では、サバーバンH3着馬ソーシャルチャーター、サルヴェイターマイルHなどの勝ち馬トゥルラック、レキシントンS・オハイオダービー・サンバーナーディノHの勝ち馬クラシックキャット、スティーヴンフォスターH2着馬ナイトドリーマーなどを抑えて、単勝オッズ2.8倍の1番人気に支持された。鞍上にも再度デイ騎手を迎えて必勝を期したが、スタートから逃げを打つも、好位を追走してきた単勝オッズ3倍の2番人気馬ソーシャルチャーターと、最後方から追い込んできた単勝オッズ66.4倍の最低人気馬ダデヴィルの2頭に直線で競り負け、ダデヴィルの半馬身差3着に終わった。

その後はガルフストリームパーク競馬場で行われたBCクラシック(GⅠ・D10F)に直行した。対戦相手は、ガルフストリームパークH・オークローンH・ドワイヤーS・ペガサスH・マサチューセッツH・サバーバンHの勝ち馬でホイットニーH・ジョッキークラブ金杯を連続2着してきた5歳馬ベーレンズ、スワップスSで本馬の2着に敗れた後にパシフィッククラシックSを勝ちグッドウッドBCHで2着していたジェネラルチャレンジ、トラヴァーズS勝利後に出走したジョッキークラブ金杯では5着に終わっていたレモンドロップキッド、7歳にして本格化してウッドワードS・ジョッキークラブ金杯を連勝してきたリヴァーキーン、ドバイワールドC・ジャンプラ賞の勝ち馬でウッドワードS2着・ジョッキークラブ金杯3着のアルムタワケル、トラヴァーズS4着後にスーパーダービーを勝ってきたエクトンパーク、トラヴァーズS2着後に出走したメドウランズCHでは3着だったヴィジョンアンドヴァース、サンバーナーディノH・マーヴィンルロイH・ロングエイカーズマイルH・グッドウッドBCHを勝っていたバドロワイヤル、スワップスS・デルマーBCH・カリフォルニアンSなどを勝っていたオールドトリエステ、ミスタープロスペクターと名牝トゥソードの間に産まれた良血馬で英国際S3着のチェスターハウス(後のアーリントンミリオン勝ち馬)、ホーソーン金杯で2着してきたゴールデンミサイル、サバーバンH・サラトガBCH2着、ホイットニーH3着のカティーナス、ホーソーン金杯Hを勝ってきたユナーテッドネーションズH2着馬シュプリームサウンドの計13頭だった。

この年8戦4勝2着4回と抜群の安定感を誇っていたベーレンズが単勝オッズ3.3倍の1番人気に支持され、ジェネラルチャレンジが単勝オッズ6.3倍の2番人気、レモンドロップキッドが単勝オッズ7.3倍の3番人気、リヴァーキーンが単勝オッズ7.5倍の4番人気、アルムタワケルが単勝オッズ7.6倍の5番人気、エクトンパークが単勝オッズ10.6倍の6番人気、ヴィジョンアンドヴァースが単勝オッズ18.1倍の7番人気と続き、本馬は5頭の3歳馬の中では最低の8番人気(単勝オッズ20.6倍)だった。

デイ騎手鞍上の本馬は好スタートから先頭を伺ったが、外側から単勝オッズ28.3倍の10番人気馬オールドトリエステが強引に先頭を奪ったために2番手を追走した。向こう正面では先頭のオールドトリエステに並びかけ、さらに後方から進出してきたバドロワイヤルやゴールデンミサイルなどを従えて先頭で直線に入ってきた。直線ではバドロワイヤル、ゴールデンミサイルとの叩き合いとなったが、残り1ハロン地点で単独先頭に立ち、そのまま2着バドロワイヤルに1馬身1/4差をつけて見事に優勝。上位4頭は人気薄の馬ばかり(バドロワイヤルは単勝オッズ27.5倍の9番人気、3着ゴールデンミサイルは単勝オッズ76.3倍の12番人気、4着チェスターハウスは単勝オッズ64.6倍の11番人気)であり、人気馬勢がことごとく凡走したため、かなりの大番狂わせといわれた。鞍上のデイ騎手はこれで単独最多記録となるブリーダーズカップ11勝目を挙げた。

これで休養入りかと思われたが、陣営は本馬を米国西海岸に向かわせ、年末のマリブS(GⅠ・D7F)に出走させた。人気薄の勝利であってもさすがにBCクラシック優勝馬だけに、カリフォルニアカップスプリントHの勝ち馬ラヴザットレッド、亜国のGⅠ競走サンティアゴルーロ大賞・モンテビデオ大賞・エストレージャス大賞ジュヴェナイルを勝っていたペインター、スワップスSで4着だったデザートヒーロー、ヴァーノンOアンダーウッドSを勝ってきたファイヴスターデイ、ケンタッキーダービーで4着だったプライムティンバーなどを抑えて単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持された。しかし他馬より4ポンド以上重い123ポンドのトップハンデも影響したのか、4番手から直線でもう一歩伸びず、ラヴザットレッドの首差3着と、善戦馬に戻ってしまった。

3歳時の成績は13戦2勝で、いかにBCクラシック勝ち馬といえども、エクリプス賞年度代表馬や最優秀3歳牡馬に選ばれるほどの印象は無く、両タイトルともにベルモントSのレース中に故障してそのまま引退していたカリズマティックに譲ることになった。

競走生活(4歳前半)

4歳時は引き続き西海岸に留まり、1月のサンフェルナンドBCS(GⅡ・D8.5F)から始動した。前年のBCクラシックで10着に終わるもネイティヴダイヴァーHを勝って巻き返していたジェネラルチャレンジ、エルカミノリアルダービーの勝ち馬クリケット、マリブSで2着だったストレートマンなどを抑えて単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持されたが、直線で単勝オッズ25.3倍の5番人気馬セインツオナーを捕まえることが出来ずに、1馬身半差の2着に敗れた。

次走のサンアントニオH(GⅡ・D9F)では、サンフェルナンドS・サンパスカルHの勝ち馬ディキシードットコム、サンパスカルHで2着してきたバドロワイヤルなどとの対戦となった。120ポンドの本馬と119ポンドのディキシードットコムが並んで単勝オッズ2.7倍の1番人気で、121ポンドのトップハンデだったバドロワイヤルが単勝オッズ3倍の3番人気だった。レースでは最後方からの競馬を試みたが、直線で先に抜け出したバドロワイヤルを捕らえきれず、1馬身1/4差の2着に敗れた。

続くサンタアニタH(GⅠ・D10F)では、サンフェルナンドBCS4着後にストラブSを9馬身半差で圧勝してきたジェネラルチャレンジ、バドロワイヤル、前年のドバイワールドCでアルムタワケルの2着だった一昨年の同競走の覇者マレク、前走で5着最下位だったディキシードットコムなどとの対戦となった。121ポンドのジェネラルチャレンジが単勝オッズ3倍の1番人気、120ポンドの本馬が単勝オッズ3.2倍の2番人気、122ポンドのトップハンデだったバドロワイヤルが単勝オッズ3.9倍の3番人気、118ポンドのマレクが単勝オッズ8.7倍の4番人気だった。本馬はスタートからバドロワイヤルを引き連れて先頭を走ったのだが、直線に入ると失速。バドロワイヤルを2着に破って勝利したジェネラルチャレンジから8馬身3/4差の6着と凡走してしまった。

その後は西海岸を後にして東に向かい、オークローンH(GⅠ・D9F)に出走。過去5戦でコンビを組んだデイ騎手からビクター・エスピノーザ騎手に乗り代わっていた。バドロワイヤル、BCクラシックで5着だったアルムタワケル、ニューオーリンズHを勝ってきたアランズウープ、ケンタッキーダービー8着後に長期休養明けの一般競走を快勝してきたケイワンキングなどが対戦相手となった。既に本馬よりバドロワイヤルのほうが明らかに実力上位と判断されたようで、バドロワイヤルが122ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持され、118ポンドで斤量2位の本馬が単勝オッズ4.4倍の2番人気だった。しかしレースでは113ポンドの軽量を活かして最後方から怒涛の追い込みを見せた単勝オッズ7.3倍の5番人気馬ケイワンキングが2着アルムタワケル以下に勝利を収め、本馬はケイワンキングから2馬身差の3着、バドロワイヤルは本馬から11馬身3/4差の5着に終わった。

次走のピムリコスペシャルH(GⅠ・D9.5F)では、ケイワンキング、BCクラシックで6着だったレモンドロップキッド、BCクラシック3着後にドンHで2着していたゴールデンミサイル、アルムタワケル、バドロワイヤルなどとの対戦となった。斤量の重い順からレモンドロップキッド(120ポンド)、バドロワイヤル(119ポンド)、本馬(118ポンド)、アルムタワケル(117ポンド)、ゴールデンミサイル(116ポンド)、ケイワンキング(115ポンド)というハンデキャッパーの評価だった。ケイワンキングが単勝オッズ2.9倍の1番人気で、レモンドロップキッドが単勝オッズ5.1倍の2番人気、デイ騎手が鞍上に戻った本馬が単勝オッズ5.5倍の3番人気というファンの評価だった。結果は好位から差し切ったゴールデンミサイルが勝ち、2着に単勝オッズ36.4倍の7番人気だったメドウランズCHの勝ち馬プレザントブリーズが入り、レモンドロップキッドが3着、アルムタワケルが4着で、逃げて直線で失速した本馬はゴールデンミサイルから11馬身差の5着だった。

続くスティーヴンフォスターH(GⅡ・D9F)では、BCクラシック12着・ドバイワールドC5着だったエクトンパーク、ゴールデンミサイル、前走6着のケイワンキング、BCクラシック4着後は2戦していずれも3着だったチェスターハウスなどとの顔合わせとなった。114ポンドのエクトンパークが単勝オッズ2.5倍の1番人気、118ポンドのゴールデンミサイルが単勝オッズ3.5倍の2番人気などと続き、117ポンドの本馬は単勝オッズ7.1倍の5番人気まで評価を下げていた。レースではゴールデンミサイルが果敢に逃げ、2歳時以来となるセラーズ騎手とコンビを組んだ本馬は1馬身ほど離れた2番手を追走。しかし直線半ばでエクトンパークに差されて、逃げ切ったゴールデンミサイルから4馬身3/4差の3着に終わった。

競走生活(4歳後半)

その後はいったん西海岸に戻り、ハリウッド金杯(GⅠ・D10F)に出走。サンタアニタH勝利後にサンバーナーディノHで3着してきたジェネラルチャレンジ、マーヴィンルロイHを勝ってきたアウトオブマインド、スティーヴンフォスターHで4着だったチェスターハウスなどとの対戦となった。ジェネラルチャレンジが単勝オッズ2.4倍の1番人気、アウトオブマインドが単勝オッズ5.5倍の2番人気、デイ騎手騎乗の本馬とチェスターハウスが並んで単勝オッズ6.4倍の3番人気となった。このレースは定量戦であり全馬同斤量だったため、波乱の要素は少ないように思えたが、結果は意外なものとなった。単勝オッズ25.5倍の最低人気馬アーリーパイオニア(ただしジェネラルチャレンジが敗れたサンバーナーディノHの勝ち馬だった)が直線でジェネラルチャレンジを差し切って勝ってしまったのである。4~5番手の好位を進んだ本馬は、直線で伸びを欠き、アーリーパイオニアの3馬身3/4差5着に終わった。

その後は再度東海岸に向かい、ホイットニーH(GⅠ・D9F)に出走。ここでは、ピムリコスペシャルH3着後にブルックリンH・サバーバンHを連勝してきたレモンドロップキッド、BCクラシック7着後にガルフストリームパークHを勝ちドバイワールドC・サバーバンHで連続2着してきたベーレンズ、スティーヴンフォスターHから直行してきたゴールデンミサイル、ブルックリンH・サラトガBCH・マサチューセッツHなどの勝ち馬ランニングスタッグなどが対戦相手となった。レモンドロップキッドが123ポンドのトップハンデながらも単勝オッズ3.05倍の1番人気に支持され、122ポンドのベーレンズが単勝オッズ3.2倍の2番人気、121ポンドのゴールデンミサイルが単勝オッズ3.3倍の3番人気で、ホルヘ・シャヴェス騎手と初コンビを組んだ本馬はランニングスタッグより3ポンド軽い117ポンドで出走馬中2番目の軽量だったにも関わらず、単勝オッズ10.4倍の4番人気だった。レースでは単勝オッズ17.5倍の最低人気馬デヴィッドと共に先頭を引っ張り、四角でデヴィッドを置き去りにして逃げ込みを図ったが、後方から追い込んだレモンドロップキッドに差されて2馬身差の2着に敗れた。2着とはいえ、本馬より6ポンド斤量が重いレモンドロップキッドに敗れた事実は、既に本馬の実力はBCクラシックで打ち負かした馬達より下になってしまっている事を如実に物語るものとなった。

続いて前年同様にケンタッキーCクラシックH(GⅡ・D9F)にデイ騎手を鞍上に出走。ホイットニーHで5着だったゴールデンミサイル、ハリウッドフューチュリティ・スワップスS・ブリーダーズフューチュリティ・ケンタッキージョッキークラブSの勝ち馬でハスケル招待H2着の3歳馬キャプテンスティーヴ、ハリウッド金杯から直行してきたアーリーパイオニアなどとの対戦となった。ゴールデンミサイルが単勝オッズ2.4倍の1番人気で、前走の2着が評価された本馬が単勝オッズ3.9倍の2番人気、キャプテンスティーヴが単勝オッズ4.3倍の3番人気となった。しかしキャプテンスティーヴとゴールデンミサイルの争いに絡むこともできず、好位から直線で後退して、勝ったキャプテンスティーヴから17馬身3/4差の6着最下位に沈んだ。

それでも連覇を目指して、チャーチルダウンズ競馬場で行われたBCクラシック(GⅠ・D10F)に、デイ騎手と共に出走。出走馬は前年とはかなり様変わりしており、2年連続出走馬は本馬、ホイットニーHの次走ウッドワードSも勝っていたレモンドロップキッド、ゴールデンミサイル、ヴィジョンアンドヴァースのみで、上位人気勢は単勝オッズ7.2倍の2番人気だったレモンドロップキッドを除けば、単勝オッズ2.2倍の1番人気だったケンタッキーダービー・サンフェリペS・ウッドメモリアルS・ジェロームHの勝ち馬フサイチペガサス、セントジェームスパレスS・エクリプスS・サセックスS・英国際S・愛チャンピオンSとGⅠ競走を5連勝していたこの年のカルティエ賞年度代表馬ジャイアンツコーズウェイ、ジョッキークラブ金杯を6馬身差で圧勝してきたアルバートザグレート、スーパーダービーとグッドウッドBCHを連勝してきたティズナウ(バドロワイヤルの全兄)、アメリカンダービーの勝ち馬パインダンスといった3歳馬ばかりで、この年未勝利の本馬は単勝オッズ12.5倍の7番人気ながら古馬勢では上から2番目の人気だった。本馬はスタート直後に先頭だったが、ティズナウやジャイアンツコーズウェイなどの他馬にどんどん抜かれて馬群の中団に下がった。しかも道中でレモンドロップキッドに割り込まれて進路を失いバランスを崩す場面まであった。結局そのままの位置取りで直線に入り、後方のままティズナウの9馬身半差7着に敗退。これが現役最後のレースとなり、結局4歳時は10戦未勝利に終わった。

本馬は1着が4回なのに対して、2着は9回、3着は8回。もどかしいレースぶりが多かったが、ここ一番では実力を大いに発揮してBCクラシックというビッグタイトルをものにした。獲得賞金総額395万1012ドルは名馬を多く送り出したストームキャット産駒中2番目(1位は日本で走ったシーキングザダイヤ)であり、2年半に渡って故障や長期休養もなく走り続けた馬主孝行な馬でもあった。

血統

Storm Cat Storm Bird Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
South Ocean New Providence Bull Page
Fair Colleen
Shining Sun Chop Chop
Solar Display
Terlingua Secretariat Bold Ruler Nasrullah
Miss Disco
Somethingroyal Princequillo
Imperatrice
Crimson Saint Crimson Satan Spy Song
Papila
Bolero Rose Bolero
First Rose
Train Robbery Alydar Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Sweet Tooth On-and-On Nasrullah
Two Lea
Plum Cake Ponder
Real Delight
Track Robbery No Robbery Swaps Khaled
Iron Reward
Bimlette Bimelech
Bloodroot
Left at Home Run for Nurse Hasty Road
Juliets Nurse
Scoreless Shut Out
Legend Bearer

ストームキャットは当馬の項を参照。

母トレインロバリーはモンマスパークBCH(米GⅢ)に勝ち、ジョンAモリスH(米GⅠ)・ゴーフォーワンドS(米GⅠ)で各2着など、通算44戦8勝の成績を残した。トレインロバリーの母トラックロバリーはヴァニティ招待H(米GⅠ)・アップルブロッサムH(米GⅠ)・スピンスターS(米GⅠ)・サンタアナH(米GⅡ)・ウィルシャーH(米GⅢ)・ビヴァリーヒルズH(米GⅢ)勝ちなど59戦22勝の成績を残し、1982年のエクリプス賞最優秀古馬牝馬に選ばれている。トレインロバリーの全妹トレイルロバリーの子にはポハヴ【トリプルベンドBC招待H(米GⅠ)・ロサンゼルスH(米GⅢ)】がいる。→牝系:F13号族①

母父アリダーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、父ストームキャットも供用されていた生まれ故郷のオーバーブルックファームで種牡馬入りした。2004年に心臓発作で死去したヤング氏の跡を継いだ息子は競馬事業に興味を抱かなかったため、2008年にストームキャットが種牡馬を引退(ただし翌年から人工授精が認められているクォーターホース繁殖用種牡馬として復帰している)したのを契機に、オーバーブルックファームはその所有馬全てを売却。本馬はペンシルヴァニア州ペンリッジファームに購入されて、リアルクワイエット(2010年に他界)などと共に種牡馬生活を続けている。産駒からGⅠ競走勝ち馬は出ていないが、オーバーブルックファーム供用時代には29頭、ペンリッジファーム移動後には18頭のステークスウイナーを出している。

米国の競馬ファンからの人気は高いようで、多くの訪問者がペンリッジファームにいる本馬のもとを訪れ、好物のニンジンやキャンディーなどの甘い物を与えているという。2013年の種付け料は4000ドルとなっている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2002

Great Intentions

ファーストフライトH(米GⅡ)・ギャラントブルームH(米GⅡ)

2002

エイシンボストン

東京ジャンプS(JGⅢ)・小倉サマージャンプ(JGⅢ)

2003

Regal Engagement

ブラックアイドスーザンS(米GⅡ)

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