グロリアデカンペオン

和名:グロリアデカンペオン

英名:Gloria de Campeao

2003年生

黒鹿

父:インプレッション

母:オーダシティ

母父:クラックソン

ドバイワールドCに3年連続出走、最初の2回は勝ち馬から大きく離されて敗れたが最後の1回において大接戦を制して優勝者の栄光をつかんだ伯国産馬

競走成績:3~7歳時に伯仏首星米で走り通算成績25戦9勝2着6回3着3回

誕生からデビュー前まで

南米はブラジルにあるサンタレン牧場の生産・所有馬で、伯国コスメ・モルガド・ネト調教師に預けられた。

競走生活(伯国時代)

3歳時である06/07シーズンの上半期11月にガヴェア競馬場で行われたダート1200mの未勝利戦で、M・カルドソ騎手を鞍上にデビューして、このレースで勝ち上がった。翌月にガヴェア競馬場で出た芝1400mの条件戦では、I・コレア騎手とコンビを組んだが、4着に敗退。年明け1月にガヴェア競馬場で出たダート1400mの条件戦では、M・マンツィーニ騎手とコンビを組んで2勝目を挙げた。

次走は3月にシダデジャルディン競馬場で行われたダート1600mの条件戦となり、アルティア・ドミンゴス騎手を鞍上に勝利。翌月にはアントニオアスンサォネット賞(伯GⅢ・T1600m)に、ホセ・アパレシド・ダ・シルヴァ騎手を鞍上に出走して勝利した。

次走のサンパウロ共和国大統領賞(伯GⅠ・T1600m)ではシルヴァ騎手を鞍上に、単勝オッズ2.7倍の1番人気に支持された。道中は2番手を進み、直線には3番手で入ってきた。しかし残り500m地点で僅かに進路が狭くなった影響があったのか、残り300m地点で他馬と脚色が同じになってしまい、2着ドンロペスを短頭差抑えて勝ったオルホデティグレから6馬身差の3着に敗れた。

翌月のガヴァシオシーブラ大賞(伯GⅡ・T1600m)ではマンツィーニ騎手とコンビを組み、単勝オッズ3.2倍の2番人気となった。レースではスタートから逃げ馬に圧力をかけながら走り、残り1000m地点で先頭に立つと、そのまま先頭を維持しながらゴールへとひた走った。残り200m地点ではオンリーソリューションという馬が並びかけてきたが、その追撃を3/4馬身差で抑えて勝利した。

06/07シーズンは5戦2勝で終え、07/08シーズンは前走から約2か月半後のリオ共和国大統領賞(伯GⅠ・T1600m)に出走した。ここでもマンツィーニ騎手とコンビを組んだ本馬は、単勝オッズ7.3倍の評価だった。レースでは17頭立ての4~5番手を進み、残り700m地点から徐々に加速。残り400m地点では先頭まで1馬身差の2番手まで上がってきたが、ここから突き抜けることが出来ないうちに着順を1つ落としてそのままゴール。勝ったジェトと2着ケルティックプリンセスの鼻差接戦から1馬身3/4差の3着に終わった。

このレース後に本馬はスウェーデン人のステファン・フリボーグ氏に購入されて母国を離れ、仏国に移籍する事になった。仏国に来た本馬はパスカル・F・バリー調教師の管理馬となった。同馬主同厩にはこの時点で2歳だった後の英1000ギニー馬ナタゴラもいた。

競走生活(移籍後:2007・08年)

移籍初戦は前走から約7週間後のダニエルウィルデンシュタイン賞(仏GⅡ・T1600m)となった。イオリッツ・メンディザバル騎手が騎乗する本馬は単勝オッズ26倍の8番人気と、殆ど評価されていなかった。単勝オッズ2.25倍の1番人気に支持されていたのは前年のダニエルウィルデンシュタイン賞などグループ競走5勝の実績があったエコーオブライトで、前年のジャックルマロワ賞2着の実績があったホロシーンが単勝オッズ5.5倍の2番人気、ソヴリンSを勝ってきたばかりのプライドオブネーションが単勝オッズ6.5倍の3番人気だった。本馬はスタートから加速して先頭に立ち、しばらくは馬群を牽引した。しかし直線手前から次第に遅れ始め、勝ったスピリトデルヴェントから9馬身差の6着に終わった。2007年の出走はこれが最後だった。

翌2008年は1月にドバイのナドアルシバ競馬場で行われたマクトゥームチャレンジR1(首GⅢ・D1600m)から始動した。ここではしばらく主戦を務めることになるクリストフ・ルメール騎手とコンビを組んだが、単勝オッズ15倍の7番人気と、やはりあまり評価されていなかった。単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持されていたのは前年の同競走勝ち馬インペリアリスタで、本馬と同じ伯国産馬だった。単勝オッズ5倍の2番人気に推されていたのはマクトゥームチャレンジR2を2連覇していたジャックサリヴァンだった。レースでは本馬は馬群の中団を追走。直線に入ってからインコースを抜けて伸びていった単勝オッズ21倍の8番人気馬ハッピーボーイを追撃した。しかしハッピーボーイとの差はどんどん開いていき、何とか2着は確保したものの、勝ったハッピーボーイから9馬身差をつけられて敗れた。

次走のザワジS(D2000m)では、ゲイムリーS・イエローリボンSのGⅠ競走2勝を含むグレード競走7勝の名牝トランクイリティーレイクの息子で、チャールズウィッティンガム記念H・エディリードHのGⅠ競走2勝を含むグレード競走6勝のアフターマーケットの全弟に当たる良血馬ジャジルが単勝オッズ1.83倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ13倍の4番人気だった。今回の本馬は先行策を採り、残り500m地点からスパートを開始。しかし後方から来たジャジルに一気にかわされ、2馬身半差をつけられて2着に敗れた。

次走のマクトゥームチャレンジR3(首GⅡ・D2000m)では、マクトゥームチャレンジR2を勝ってきた南アフリカ産馬ラッキーファインドが単勝オッズ2.625倍の1番人気、ジャジルが単勝オッズ3.25倍の2番人気、亜ジョッキークラブ大賞・エストレージャス大賞クラシック・パレルモ大賞・ミゲルAマルティネスデオス大賞・サンマルティン将軍大賞・カルロスペレグリーニ大賞と亜国のGⅠ競走を6勝もしていたレイテンシーが単勝オッズ5倍の3番人気という3強対決で、本馬は単勝オッズ21倍の6番人気だった。今回は馬群の中団を進んで直線で抜け出そうとしたが、残り400m地点で進路が塞がって立ち往生した。残り200m地点で外側に持ち出してようやく追い上げてきたが、先に抜け出していたジャジルの1馬身半差2着に敗れた。

次走はドバイワールドC(首GⅠ・D2000m)となった。ジャジルや、前走で本馬から1馬身半差の3着だったラッキーファインドに加えて、プリークネスS・ジョッキークラブ金杯・BCクラシックなどを勝っていた前年のエクリプス賞年度代表馬カーリン、クラークHの勝ち馬エーピーアロー、ブリーダーズフューチュリティ・ロバートBルイスSの勝ち馬グレートハンター、サンアントニオHを勝ってきたウェルアームドといった米国ダート路線の実力馬、それに前年のUAE2000ギニー・UAEダービーを勝っていた亜国産馬アジアティックボーイ、前年のドバイワールドCで2着していたウッドワードS・クラークH勝ち馬プレミアムタップ、川崎記念・JBCクラシック・ジャパンCダート・東京大賞典・フェブラリーSなど重賞9勝の日本調教馬ヴァーミリアンなどが参戦。カーリンが単勝オッズ1.36倍の1番人気、ジャジルが単勝オッズ6倍の2番人気、アジアティックボーイとヴァーミリアンが並んで単勝オッズ11倍の3番人気で、本馬は単勝オッズ51倍の8番人気だった。過去3戦ではいずれも人気を上回る着順に入っていた本馬だが、ここではカーリンの圧倒的な強さの前に何もする事が出来ず、勝ったカーリンから16馬身半差の8着に沈んだ。

帰国した本馬は4月にドーヴィル競馬場で行われたエルメスC第2競走(AW1900m)に出走。ここではメンディザバル騎手とコンビを組み、単勝オッズ3.75倍の1番人気に支持された。レースではスタートから先頭を走り、そのまま逃げ切るかと思われたが、ゴール直前で捕まってロワの半馬身差3着に敗れた。

その後はしばらくレースに出ず、10月のドラール賞(仏GⅡ・T1950m)で復帰した。ウニオンレネンなど独国のグループ競走を3勝していたリアンカイが単勝オッズ3.1倍の1番人気、ギシュ賞・アルクール賞・ゴントービロン賞を勝っていたボリスデドーヴィルが単勝オッズ5倍の2番人気と続く一方で、ルメール騎手騎乗の本馬は単勝オッズ25倍で8頭立ての最低人気だった。レースではスタートから先頭を走ったが、レース中盤辺りから徐々に順位を落とし始め、勝ったトリンコから7馬身3/4差の8着最下位と人気どおりの結果となった。2008年の成績は6戦未勝利だった。

競走生活(2009年)

2009年も前年に続いてマクトゥームチャレンジR1(首GⅢ・T1600m)から始動した。前年のUAE2000ギニーとUAEダービーでいずれも2着していた南アフリカ産馬ロイヤルビンテージが単勝オッズ4倍の1番人気で、亜国のGⅡ競走ミゲルFマルティネス将軍賞を勝っていたマイインディが単勝オッズ5倍の2番人気、チリのGⅠ競走ドスミルギネアス賞を勝っていたドンレナトが単勝オッズ7倍の3番人気、本馬が単勝オッズ8倍の4番人気と、南半球出身馬が上位人気を占めた。今回の本馬は後方からレースを進め、直線の末脚に賭けてみたが、ほぼ不発に終わり、勝ったマイインディから12馬身差をつけられた5着に敗れた。

次走のマクトゥームチャレンジR2(首GⅢ・D1800m)からは、ルメール騎手に代わってJ・レミ騎手が主戦となった。マイインディが単勝オッズ1.83倍の1番人気、前年のドバイワールドCで2着を確保したアジアティックボーイが単勝オッズ2.625倍の2番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ21倍の4番人気だった。今回は先行策に戻し、直線に入ってから仕掛けたが、今ひとつ伸びを欠き、前年のマクトゥームチャレンジR1勝利以降は迷走が続いていた2着ハッピーボーイと3着アジアティックボーイを3/4馬身抑えて勝ったマイインディから6馬身1/4差の4着に敗れた。

次走のメイダンホテルトロフィー(D1800m)では、はっきり書いてしまうとたいした馬は出走していなかった。それでも本馬は単勝オッズ10倍の5番人気止まりだった。しかし先行して残り400m地点で先頭に立ち、2着アートオブウォーに4馬身1/4差をつけて圧勝。これは伯国で走っていた時期に勝ったガヴァシオシーブラ大賞以来1年9か月ぶりの勝ち星となった。

次走は2年連続出走となるドバイワールドC(首GⅠ・D2000m)となった。マクトゥームチャレンジR2の3着後にマクトゥームチャレンジR3を勝ってきたアジアティックボーイ、BCダートマイル・ドンHを連勝してきたアルバータスマキシマス、フェブラリーSで2着してきた日本調教のピーターパンS勝ち馬カジノドライヴ、前年のドバイワールドC3着後にサンディエゴH・グッドウッドSを勝っていたウェルアームド、マイインディ、バージナハールなど3連勝中のスナーフィ、マクトゥームチャレンジR2の2着後にマクトゥームチャレンジR3でも2着していたハッピーボーイなどが出走していたが、前年のカーリンのような中核馬は不在だった。アジアティックボーイが単勝オッズ3倍の1番人気、アルバータスマキシマスが単勝オッズ4.5倍の2番人気、カジノドライヴが単勝オッズ5倍の3番人気、ウェルアームドとマイインディが並んで単勝オッズ11倍の4番人気、スナーフィが単勝オッズ13倍の6番人気と続き、本馬は単勝オッズ26倍でハッピーボーイと並んで7番人気だった。

スタートが切られるとウェルアームドが先頭に立ち、マイインディなどがそれを追って先行。レミ騎手が騎乗する本馬は馬群の中団につけた。そして直線に入ると馬群から抜け出して残り400m地点で2番手に上がったが、その時点で既に先頭のウェルアームドの背中は遥か彼方にあった。結局ウェルアームドが2着となった本馬に14馬身差という同競走史上最大着差をつけて圧勝。それでも本馬は3着パリスパーフェクトには4馬身半差をつけていたから、ここでようやくその実力の一端が開花したと言えるだろう。

その後はシンガポールに転戦し、5月のシンガポール航空国際C(星GⅠ・T2000m)に出走した。主な対戦相手は、前々走ドバイデューティーフリー2着後にクイーンエリザベスⅡ世Cを勝っていた英国調教馬プレスヴィス、前年のクイーンエリザベスⅡ世Cと香港Cで2着していたジェベルハッタ勝ち馬バリオス、ケープギニー・ケープダービーと南アフリカのGⅠ競走を2勝した後に海外遠征を積極的に行い前年のドバイデューティーフリーとシンガポール航空国際Cを勝っていたジェイペグ、オーストラリアンC・クイーンエリザベスSと豪州のGⅠ競走を2勝していた皐月賞馬ジェニュイン産駒のポンペイルーラー、日本から遠征してきた京都新聞杯・中京記念・札幌記念の勝ち馬タスカータソルテ、セレブレーションマイル2着馬バンカブル、クイーンエリザベスS・ドゥーンベンCと豪州GⅠ競走2勝のサレラなどだった。プレスヴィスが単勝オッズ2.6倍の1番人気、バリオスが単勝オッズ4.2倍の2番人気、ジェイペグが単勝オッズ6.8倍の3番人気、ポンペイルーラーが単勝オッズ8.2倍の4番人気、タスカータソルテが単勝オッズ10.2倍の5番人気、バンカブルが単勝オッズ10.8倍の6番人気と続き、本馬は単勝オッズ25倍の7番人気だった。

本馬の鞍上にいたのは当時32歳だったブラジル人のティアゴ・ジョスエ・ペレイラ騎手だった。17歳時にブラジルで騎手デビューしたペレイラ騎手は初年度で96勝を挙げて注目され、その後はブラジルだけでなく北米・仏国・シンガポールなど世界各国を回って勝ち星を積み重ねていた。スタートが切られるとジェイペグが先頭に立ち、本馬が2番手につけ、プレスヴィスは最後方を追走した。残り800m地点でジェイペグが失速すると本馬が入れ代わりに先頭に立った。そして直線に入って残り300m地点から本格的にスパートを開始。後方外側からは直線入り口でも8番手だったプレスヴィスが猛然と追い込んできたが、本馬がその追撃を頭差凌いで勝ち、念願のGⅠ競走初勝利を挙げた。この結果を受けて、ペレイラ騎手が本馬の主戦として固定される事になった。

その後は米国に向かい、8月のアーリントンミリオン(米GⅠ・T10F)に参戦した。フランクEキルローマイルH・マンハッタンH・マンノウォーSとGⅠ競走3連勝中のジオポンティ、サンタアニタH・ガルフストリームパークBCターフS2回・ターフクラシックS2回とGⅠ競走で5勝を挙げていたアインシュタイン、ユナイテッドネーションズSを2連覇してきたプレシャスパッション、メイカーズマークマイルS・ファイアークラッカーHを勝ってきたミスターシドニー、伊ダービー・ブリガディアジェラードSの勝ち馬チマデトリオンフ、アーリントンH勝ち馬ジャストアズウェル、セレクトS・ウインターヒルS・ラクープの勝ち馬ストッツフォールドの計7頭が対戦相手となった。ジオポンティが単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ12.3倍の6番人気止まりだった。スタートが切られるとプレシャスパッションが先頭に立ち、本馬は2番手を進んだ。プレシャスパッションの逃げはいわゆる大逃げであり、本馬との差は最大で10馬身程度まで開いた。そのために本馬が逃げているような形だった。やがてプレシャスパッションは失速したが、本馬も一緒に三角で失速。勝ったジオポンティから9馬身1/4差の7着と完敗した。

2009年はこれが最後のレースで、この年の成績は6戦2勝だった。

競走生活(2010年)

2010年はマクトゥームチャレンジR1(首GⅢ・AW1600m)から始動した。3年連続で同競走からの始動となったわけだが、過去2年と違っていたのは、前年のドバイワールドCを最後にナドアルシバ競馬場が閉鎖され、その代わりにドバイの中心的競馬場となったメイダン競馬場において施行された事だった。競馬場だけでなく馬場も変わっており、前年まではダートだったが、オールウェザーになっていた。このレースで中心視されていたのは、BCジュヴェナイル・デルマーフューチュリティを制して一昨年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬に選ばれていたミッドシップマンで、単勝オッズ2.5倍の1番人気。本馬は単勝オッズ13倍の5番人気だった。本馬はミッドシップマン達と一緒に先行すると、残り400m地点で仕掛けた。先に先頭に立っていたミッドシップマンを抜き去って残り200m地点で先頭に立つと、追い込んできた2着フォーゴットンヴォイスを半馬身抑えて勝利した。

次走はマクトゥームチャレンジR3(首GⅢ・AW2000m)となった。前走ではミッドシップマン以外にこれといった馬はいなかったが、このレースはかなりの好メンバーが揃っていた。前年のパリ大賞・ニエル賞勝ち馬で凱旋門賞3着のカヴァルリーマン、マクトゥームチャレンジR2を勝ってきたアリバー、この年のアーリントンミリオンを勝つ事になるユジェーヌアダム賞勝ち馬ドビュッシー、南アフリカ出身のメシドール賞2着馬ミスターブロックなどに加えて、東京優駿・阪神ジュベナイルフィリーズ・安田記念2回・天皇賞秋・ヴィクトリアマイル・ジャパンCなどを勝っていた日本が世界に誇る名牝ウオッカ、前年の秋華賞を勝っていた桜花賞・優駿牝馬2着、ジャパンC3着のレッドディザイアの2頭も参戦していた。カヴァルリーマンが単勝オッズ3.5倍の1番人気、ウオッカが単勝オッズ5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ7倍の3番人気、アリバーが単勝オッズ7.5倍の4番人気、南アフリカ出身のイーストケープダービー勝ち馬リザーズディザイアが単勝オッズ8倍の5番人気、レッドディザイアが単勝オッズ9倍の6番人気となっていた。スタートが切られると本馬が即座に先頭に立って逃げ、そのまま自分のペースに持ち込んだ。そのままの態勢で直線に入っても先頭を維持し続けたが、外側から追い込んできたレッドディザイアにゴール直前で首差かわされて2着に敗れた。なお、ここで8着に終わったウオッカはそのまま競走馬を引退している。

それから3週間後、本馬は3年連続参戦となるドバイワールドC(首GⅠ・AW2000m)に挑戦した。対戦相手は、レッドディザイア、前走3着のミスターブロック、同4着のアリバー、同5着のリザーズディザイアに加えて、英国リングフィールド競馬場のオールウェザー競走ウインターダービートライアルSを圧勝してきたグッドウッドS勝ち馬ジターノエルナンド、前年のアーリントンミリオン勝利後にターフクラシック招待S・BCクラシックでも2着してエクリプス賞最優秀古馬牡馬及び最優秀芝牡馬に選ばれていたジオポンティ、英チャンピオンS・ユジェーヌアダム賞の勝ち馬で前年のBCクラシック3着のトゥワイスオーヴァー、仏ダービー・ガネー賞・プリンスオブウェールズS・香港C・ニエル賞などの勝ち馬ヴィジョンデタ、レーシングポストトロフィーの勝ち馬クラウデッドハウス、英セントレジャー・伊ダービーの勝ち馬マスタリー、パシフィッククラシックS・サンアントニオHの勝ち馬リチャーズキッド、BCダートマイル・ケンタッキーCクラシックSの勝ち馬ファーゼストランド、チリのGⅠ競走エルダービーの勝ち馬アモールデポーブリの計13頭だった。

ジターノエルナンドが単勝オッズ4.33倍の1番人気、ジオポンティが単勝オッズ6倍の2番人気、トゥワイスオーヴァーが単勝オッズ6.5倍の3番人気、レッドディザイアが単勝オッズ7倍の4番人気、ヴィジョンデタが単勝オッズ7.5倍の5番人気、クラウデッドハウスが単勝オッズ12倍の6番人気で、本馬はアリバー、マスタリー、リチャーズキッドの3頭と並んで単勝オッズ17倍の7番人気だった。

スタートが切られるとペレイラ騎手はすぐに本馬を先頭に立たせた。そしてアリバー、マスタリー、ミスターブロックといった馬達を含む2番手集団に1馬身ほどの差をつけて逃げを打った。有力と目されていた馬達はほぼ全て馬群の中団以降にいた。そのままの態勢で直線に入ると、本馬が二の脚を使って伸び、後続馬を引き離しにかかった。しかし残り100m地点で脚色が衰えたところに、2番手集団にいたアリバーが直後から、馬群の中団後方にいたリザーズディザイアが外側から襲い掛かってきた。そしてゴール前では3頭が横一線となり、ほぼ同時にゴールインした。

アリバーが3着だったのは誰の目にも明らかだったが、本馬とリザーズディザイアの着差は肉眼では判定できないほど僅差だった。体勢はリザーズディザイアが有利であり、リザーズディザイア鞍上のK・シェイ騎手は腕を振り回して喜びを表していた。一方、本馬鞍上のペレイラ騎手はゴールの瞬間に自分が勝ったと思ったそうだが、シェイ騎手が喜んでいるのを見たために、写真判定の結果が出るのを静かに待った。

そして数分後に発表された写真判定の結果は、ペレイラ騎手の予想どおりだった。本馬が2着リザーズディザイアに鼻差、3着アリバーに短頭差をつけて優勝し、3度目の同競走出走で遂に頂点に立った。

南米産馬がドバイワールドCを勝ったのは2007年のインヴァソールに次いで史上2頭目だったが、インヴァソールは亜国産馬であり、伯国産馬が同競走を勝ったのは史上初となった。ペレイラ騎手はレース後に「まるで夢のようです」と語った。

その後は連覇を目指してシンガポール航空国際C(星GⅠ・T2000m)に出走した。対戦相手は、リザーズディザイア、この年のジェベルハッタを勝っていた前年2着馬プレスヴィス、レッドディザイアが勝って本馬が2着したマクトゥームチャレンジR3では6着だったが次走のドバイデューティーフリーを単勝オッズ41倍で勝ってきたアルシェマーリ、シンガポールのGⅡ競走クイーンエリザベスⅡ世Cで2着してきたゴールドシャッツ、日本から遠征してきた中日新聞杯・札幌記念の勝ち馬ヤマニンキングリー、前年にシンガポール三冠馬となっていた日本産馬ジョリーズシンジュなどだった。プレスヴィスが単勝オッズ3.4倍の1番人気、リザーズディザイアが単勝オッズ4倍の2番人気で、ペレイラ騎手の都合がつかなかったためP・バリー騎手に乗り代わっていた本馬は単勝オッズ4.4倍の3番人気だった。

スタートが切られるとジョリーズシンジュが先頭に立ち、ハナを奪えなかった本馬は少し離れた2番手を進んだ。レース中盤から徐々に加速すると直線入り口でジョリーズシンジュに並びかけて、残り300m地点で競り落とした。そのままゴールへと突き進んだ本馬に襲い掛かってきたのはリザーズディザイアだった。前走ではリザーズディザイアの追撃を凌いだ本馬だが、今回は残り50m地点でかわされてしまい、半馬身差の2着に敗れた。

その後は豪州に向かい、コックスプレート参戦を目指していたが、調教中に左前脚腱断裂を発症したために、2010年4戦2勝の成績で競走馬を引退した。ちなみに好敵手リザーズディザイアもシンガポール航空国際Cの直後に蹄葉炎を発症したため競走馬引退となっている(本馬と異なり致命的な症状だったが続報は無い)。

馬名はポルトガル語で「優勝者の栄光」といった意味である。

血統

Impression Rubiano Fappiano Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Killaloe Dr. Fager
Grand Splendor
Ruby Slippers Nijinsky Northern Dancer
Flaming Page
Moon Glitter In Reality
Foggy Note
Improbable Lady Liloy Bold Bidder Bold Ruler
High Bid
Locust Time Spy Song
Snow Goose
Gioconda Good Manners Nashua
Fun House
Pallazzina Aristophanes
La Farnesina
Audacity Clackson I Say Sayajirao Nearco
Rosy Legend
Isetta Morland
Isolda
Quarana Pharas Pharis
Astronomie
Coaran Coaraze
Aldebara Princess
Orient Girl Farnesio Good Manners Nashua
Fun House
La Farnesina Cardanil
La Dogana
Uruguaya Martinet エルセンタウロ
Marimay
Unna Cyrus the Great
Ucrania

父インプレッションは亜国産馬で、競走馬としても亜国で走り12戦5勝。マイプ大賞(亜GⅠ)・コロネルプリングレス(亜GⅡ)を勝っている。種牡馬としては本馬の出身地サンタレン牧場で供用されていた。種牡馬としての成績は並と言ったところである。インプレッションの父ルビアノはファピアノ産駒の米国産馬で、現役成績は28戦13勝。NYRAマイル(米GⅠ)・ヴォスバーグH(米GⅠ)・カーターH(米GⅡ)・トムフールS(米GⅡ)・フォアゴーH(米GⅡ)・ウエストチェスターH(米GⅢ)2回を勝ち、1992年のエクリプス賞最優秀短距離馬を受賞した。競走馬引退後は米国で種牡馬入りしたが、それほど好成績を残すことは出来なかった。

母オーダシティは本馬と同じくサンタレン牧場の生産・所有馬だが、競走馬としては1戦未勝利に終わった。しかし繁殖牝馬としては本馬の1歳上の半兄アルカード【パラナ大賞(伯GⅠ)・GPプロフェッサーノヴァモンテイロ(伯GⅢ)】を産むなど優れた成績を挙げた。母系は1940年代に英国から南米に導入されたもので、南米の活躍馬が複数出ている。→牝系:F3号族②

母父クラックソンは伯国産馬で、競走馬としても伯国で走り23戦15勝。パラナ大賞(伯GⅠ)・サンパウロ大賞(伯GⅠ)・オスワウドアラーニャ大賞(伯GⅠ)2回を勝った名馬だった。種牡馬としても非常に優秀で、伯国における活躍馬を数多く出したが、非常に気性が激しいのが難点だったという。クラックソンの父アイセイは英国産馬で、コロネーションC勝ちなど11戦5勝、英ダービーでシーバードの3着に入っている。競走馬引退後は伯国で種牡馬入りして成功した。アイセイの父は愛ダービー・英セントレジャー優勝馬サヤジラオで、その父はネアルコである。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は母国ブラジルに戻って種牡馬入りした。所有者フリボーグ氏の母国であるスウェーデンにもシャトルされている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2012

Energia Hupp

フランシスコヴィエラデポーラマチャド大賞(伯GⅡ)

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