ソーユーシンク

和名:ソーユーシンク

英名:So You Think

2006年生

黒鹿

父:ハイシャパラル

母:トライアシック

母父:タイツ

コックスプレート2連覇など豪州GⅠ競走を5勝した後に欧州に移籍してやはりGⅠ競走を5勝した距離10ハロンのスペシャリスト

競走成績:2~5歳時に豪愛英仏米首で走り通算成績23戦14勝2着4回3着2着1回

誕生からデビュー前まで

新国ケンブリッジ州ウィンザーパークスタッドにおいて、M・J・モラン氏とパイパーファーム社により生産された。1歳時の新国ブラッドストックプレミアセールにおいて、マレーシアの不動産業者にして豪州屈指の馬主だった大富豪ダト・タン・チン・ナム氏とツンク・アハマド・ヤハヤ氏により11万新ドルで購入され、長年に渡ってナム氏と付き合いがあった史上最多のメルボルンC12勝を誇る豪州史上有数の名伯楽ジェームズ・バーソロミュー・“バート”・カミングス調教師に預けられた。

競走生活(08/09・09/10シーズン)

2歳時である2008/09シーズンの5月にローズヒル競馬場で行われた芝1400mのハンデ競走でデビューして、1馬身1/4差で勝ち上がった。

2歳時は1戦のみで終え、2009/10シーズンは9月にランドウィック競馬場で行われたリステッド競走ミンダイナスティクオリティH(T1400m)から始動した。しかしここではモアザングレートの短頭差2着に敗れた。

それでも2週間後のグローミングS(豪GⅢ・T1800m)では単勝オッズ1.53倍の1番人気に支持されると、2着ギャザリング(後にGⅠ競走レイルウェイSを勝っている)に3/4馬身差で勝利した。

次走のコーフィールドギニー(豪GⅠ・T1600m)では単勝オッズ6倍で、GⅠ競走ゴールデンローズSやGⅡ競走スタンフォックスSを勝ってきたデンマン(単勝オッズ3倍)、GⅡ競走ウォーウィックSを勝ちゴールデンローズSで2着してきたトラスティング(単勝オッズ5倍)に次ぐ3番人気に推された(GⅠ競走サイアーズプロデュースSを勝っていたマンハッタンレインが単勝オッズ9倍の4番人気だった)。しかしレースは単勝オッズ13倍の5番人気だったマクニールS勝ち馬スタースパングルドバナーが先行してそのまま押し切って勝ち、本馬は7馬身3/4差をつけられて5着に敗退。デンマンは7着、トラスティングは8着と上位人気馬が総崩れとなる波乱の展開となったが、勝ったスタースパングルドバナーは翌年のオークリープレートでGⅠ競走2勝目を挙げた後に愛国に移籍してゴールデンジュビリーS・ジュライCを勝ち、同年のカルティエ賞最優秀短距離馬に選出されているから、ある意味順当な勝利だったと言えなくも無い。

次走はコックスプレート(豪GⅠ・T2040m)となった。メンバー構成は前走よりさらに強化されており、前年のコックスプレートを筆頭にヤルンバS・アンダーウッドS・CFオーアSなどを勝っていたエルセグンド、コーフィールドギニー・ヤルンバSなどを勝っていた前シーズンの豪最優秀3歳牡馬騙馬フービーゴットユー、オーストラリアンギニー・アンダーウッドSなどを勝っていたハートオブドリームス、ザメトロポリタンの勝ち馬スピードキフテッド、AJCエプソムHを勝っていたロックキングダム、ドゥーンベンC2回・ブリスベンC・マッキノンSなどの勝ち馬シーニックショット、ストラドブロークH2回を勝っていたブラックピラニア、ジョージメインS・AJCクイーンエリザベスSの勝ち馬ロードトゥロック、ジョージライダーS・ドンカスターマイルの勝ち馬ヴィジョンアンドパワー、AJCダービー馬ノムデュジュー、それに前走コーフィールドギニーで3着だったマンハッタンレイン、GⅡ競走サンダウンクラシックを2連覇(後に4連覇)していたジッピングの12頭が対戦相手となった。出走13頭中、本馬とジッピングを除く11頭がGⅠ競走勝ち馬だった(ジッピングも後にGⅠ競走を勝っているから最終的には出走全馬がGⅠ競走勝ち馬となる)。

本馬の実績はコックスプレートに出走するには不十分であり、本馬の出走登録を認めるかどうかでムーニーバレー競馬場の運営局の中では議論がかわされたらしいが、最終的には出走が認められた。フービーゴットユーが単勝オッズ2.75倍の1番人気、ハートオブドリームスが単勝オッズ7.5倍の2番人気、スピードキフテッドが単勝オッズ11倍の3番人気、ジッピングが単勝オッズ12倍の4番人気と続き、実績では一番見劣りがする本馬は単勝オッズ13倍の5番人気と、実績以上の評価を受けた。

スタートが切られると、グレン・ボス騎手が騎乗する本馬はすぐに加速して先頭に立った。そして2番手のマンハッタンレイン以下を引き連れて逃げ続けた。道中で本馬とマンハッタンレインの差は3馬身ほど、マンハッタンレインと3番手集団の差も3馬身ほどに開き、本馬の単騎逃げとなった。残り1000mを切った辺りから後続馬達が差を縮めにかかり、マンハッタンレインと一緒になって本馬に圧力をかけてきた。しかしそれでも本馬は先頭を死守し続け、最終コーナーでは内側の経済コースを利して後続との差を再び広げて直線へと入ってきた。そして直線では後続馬をまったく寄せ付けず、2着に粘ったマンハッタンレインに2馬身半差をつけて優勝。非の打ち所が無い完璧な逃げ切り勝ちだった。

次走のエミレーツS(豪GⅠ・T1600m)では単勝オッズ4倍の1番人気に支持された。しかしここでは本馬が足元を掬われる側となり、単勝オッズ41倍の伏兵オールアメリカンが激走して勝利を収め、本馬は2馬身半差の2着に敗れた。

まだ3歳シーズンは半分以上残っていたが、このシーズンはこれが最後のレースとなり、3歳時5戦2勝の成績で休養入りした。コックスプレートの勝利が評価されて、このシーズンの豪最優秀3歳牡馬を受賞した。

競走生活(10/11シーズン:移籍前)

4歳時の2010/11シーズンは、前走から10か月近くが経過した8月のメムジーS(豪GⅡ・T1400m)から始動した。ここでは、この年のAJCダービーとランドウィックギニーを勝っていたシュートアウトと、クールモアクラシック・マイヤーS・CFオーアS・豪フューチュリティS・クイーンオブザターフSとGⅠ競走5勝を挙げていた前シーズンの豪年度代表馬タイフーントレーシーの2頭が並んで単勝オッズ3倍の1番人気に支持され、主戦となるスティーヴン・アーノルド騎手騎乗の本馬は単勝オッズ6.5倍の3番人気だった。しかし本馬が2着フービーゴットユー(前年のコックスプレートでは6着だった)に半馬身差で勝利を収めた。

次走のアンダーウッドS(豪GⅠ・T1800m)では、前年のコックスプレートで7着だったハートオブドリームス、ランドウィックギニー・ローズヒルギニー・ドゥーンベンCとGⅠ競走3勝のメタルベンダー、前年のメルボルンC優勝馬ショッキングなどを抑えて単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持された。そして期待どおりの走りを見せて、2着ダリアナに2馬身1/4差をつけて快勝した。

次走のヤルンバS(豪GⅠ・T2000m)では、単勝オッズ1.4倍の本馬と、単勝オッズ4倍の2番人気馬フービーゴットユーの完全な一騎打ちムードだった。しかし先行してゴール前で楽々と抜け出した本馬が2着アルコポップに3馬身1/4差をつけて完勝し、フービーゴットユーはさらに1馬身半差の3着に終わった。

そして2連覇を目指してコックスプレート(豪GⅠ・T2040m)に参戦。フライトS・ジョージメインS・トゥーラックHなどを勝っていたモアジョイアス(母はサンデーサイレンス産駒のAJCオークス馬サンデージョイ)、メムジーSで3着だったシュートアウト、フービーゴットユー、前年のコックスプレートでマンハッタンレインから半馬身差の3着に入った後にオーストラリアンC・ターンブルSとGⅠ競走2勝を挙げていたジッピング、ソーンドンマイルH・ウィンザーパークプレート・スプリングクラシックと新国のGⅠ競走で3勝を挙げていたウォールストリート、AJCエプソムHを勝ってきたキャプテンソニャドールなどが対戦相手となったが、前年に比べると出走馬の層は薄く、本馬が単勝オッズ1.5倍という圧倒的な1番人気に支持され、モアジョイアスが単勝オッズ7.5倍の2番人気となった。

スタートが切られるとモアジョイアスが先頭に立ち、本馬は2番手を追走。上位人気2頭が馬群を牽引する展開となった。三角で本馬がモアジョイアスに並びかけると一気にペースが上がり、後続各馬も追撃を開始してきた。しかし最終コーナーで完全に単独先頭に立った本馬が2着ジッピングに1馬身1/4差をつけて勝ち、2002年のノーザリー以来8年ぶり史上10頭目の同競走2連覇を達成した。

次走は7日後のマッキノンS(豪GⅠ・T2000m)となった。本馬が単勝オッズ1.57倍の1番人気に支持され、アンダーウッドSで5着、前走ターンブルSでジッピングの2着だったショッキングが単勝オッズ8倍の2番人気、コックスプレートで4着だったシュートアウトが単勝オッズ11倍の3番人気、コーフィールドCを勝ってきたデスカラードが単勝オッズ13倍の4番人気だった。レースでは3~4番手の好位につけ、残り400m地点で仕掛けて残り300m地点で先頭に立つと、そのまま2着デスカラードに4馬身差をつけて圧勝した。

次走は3日後のメルボルンC(豪GⅠ・T3200m)となった。対戦相手は、ジッピング、デスカラード、前走4着のシュートアウト、同6着のショッキング、それに仏国から遠征してきたヴィコンテスヴィジュール賞勝ち馬アメリケン、ゴドルフィンが参戦させてきたドイツ賞・ラインラントポカル・キングエドワードⅦ世S・ドバイシティオブゴールドなどの勝ち馬キャンパノロジスト、香港チャンピオンズ&チャターCの勝ち馬ミスターメディチ、グッドウッドCの勝ち馬イラストリアスブルー、日本から遠征してきた阪神大賞典・ダイヤモンドS2回の勝ち馬トウカイトリックなど22頭だった。本馬の斤量は56kgで出走馬中第2位(1位は前年の優勝馬ショッキングの57kg)だった上に非常な強行軍だったが、それでもメルボルンC12勝の「カップ・キング」カミングス師が送り出してきただけに単勝オッズ3倍の1番人気に支持された。GⅢ競走レクサスSを勝ってきたマラッキーデイが51kgの軽量を評価されて単勝オッズ9倍の2番人気、ショッキングが単勝オッズ12倍の3番人気、54kgのデスカラードが単勝オッズ13倍の4番人気と続いていた。

本馬にとっては未知の距離だけに、アーノルド騎手は無理に先行する事を避け、6~7番手辺りの好位で様子を伺った。そして残り800m地点から外側を通ってじわじわと進出。直線入り口の残り500m地点辺りで本格的に加速すると、残り300m地点で先頭に立った。しかし残り100m地点で中団から差してきたアメリケンにかわされ、さらにゴール前ではマラッキーデイにも追い抜かれ、勝ったアメリケンから3馬身1/4差の3着に敗れた。

このレース後に本馬は愛国の世界的馬産団体クールモアグループにより推定2500万ドルで購入され、クールモアの専属調教師エイダン・オブライエン厩舎に転厩し、欧州を主戦場とする事になった。本馬が5着に敗れたコーフィールドギニーの勝ち馬スタースパングルドバナーを愛国に移籍させたのもクールモアであり、豪州でも盛んに馬産活動を行っているクールモアは豪州の活躍馬を積極的にスカウトしていたのである。しかし既に地元豪州のアイドルホースとなっていた本馬が欧州に移籍する事に関しては、大きな反発の声が上がった。

競走生活(2011年:移籍後)

翌2011年5月のムーアズブリッジS(愛GⅢ・T10F)が移籍初戦となった。これといった対戦相手はいなかったため、シーミー・ヘファーナン騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.15倍という圧倒的な1番人気に支持された。欧州に来ても本馬のレースぶりは変わらず、同厩のペースメーカー役ウィンザーパレスを先に行かせて道中は3番手を追走すると残り2ハロン地点で先頭に立った。そして瞬く間に後続馬を引き離し、最後は2着ボブルボウに10馬身差をつけて圧勝した。

次走のタタソールズ金杯(愛GⅠ・T10F110Y)では、ライアン・ムーア騎手とコンビを組んだ。対戦相手は4頭いたが比較的骨がありそうな相手は、仏ダービー・タタソールズ金杯・ムーランドロンシャン賞とGⅠ競走2着が3回あった、レパーズタウン2000ギニートライアルS・愛国際S・デスモンドS・アメジストS2回・メルドSと愛国GⅢ競走6勝のフェイマスネーム、メルボルンCで16着に終わっていたキャンパノロジストの2頭のみであり、本馬が単勝オッズ1.14倍という圧倒的な1番人気に支持された。

スタートが切られると前走と同じくペースメーカー役のウィンザーパレスが逃げを打ち、本馬は2番手を追走。残り3ハロン地点で先頭に立ったところで、本馬をマークするように3番手を追走してきたキャンパノロジストに並びかけられそうになった。しかし本馬が徐々にキャンパノロジストを突き放し、最後は4馬身半差をつけて圧勝した。レース後にオブライエン師は「彼は信じられない馬です。今まで私達が見てきたどの馬とも異なる生き物です」と語った。

次走のプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)では、アルクール賞・ガネー賞を連勝してきた前年の仏ダービー・パリ大賞2着馬プラントゥール、ドバイシーマクラシック・グレートヴォルティジュールSの勝ち馬で前年の英ダービー3着馬リワイルディング、英チャンピオンS2回・エクリプスS・ユジェーヌアダム賞・マクトゥームチャレンジR3を勝っていたトゥワイスオーヴァー、クリテリウム国際・ガリニュールS勝ち馬で愛ダービー・パリ大賞3着のヤンフェルメール、ギョームドルナノ賞・アールオブセフトンS勝ち馬でエクリプスS2着のスリプトラ、前年のアーリントンミリオン勝ち馬ドビュッシーの6頭が対戦相手となった。過去2戦と比べると対戦相手の層はかなり上がっていたが、前走に続いてムーア騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.36倍の1番人気に支持され、プラントゥールが単勝オッズ6.5倍の2番人気、リワイルディングが単勝オッズ9.5倍の3番人気となった。

ヤンフェルメールは本馬と同厩でありペースメーカーを務めるはずだったのだが、そのヤンフェルメールが出遅れたために、本馬鞍上のムーア騎手は左右を見ながら出を伺った。2ハロンほど走ったところでようやくヤンフェルメールが先頭に立ち、本馬とドビュッシーの2頭が2~3番手を進む展開になった。直線入り口でヤンフェルメールが失速すると本馬が単独で先頭に立ったが、今ひとつ自分のペースで走れなかったためか、少しもたついていた。それでもそのまま押し切るかと思われたのだが、最後方でじっと我慢していたリワイルディングが猛然と追い上げてきた。そしてゴール前で首差かわされて2着に敗れた(3着スリプトラは6馬身後方だった)。しかしリワイルディング鞍上のランフランコ・デットーリ騎手は本馬を追い抜くために鞭を過度に使用したため、彼は9日間の騎乗停止処分を受けた(リワイルディングは次に出走したキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSで故障を起こして予後不良となっている)。

余談だが、このプリンスオブウェールズS当日の朝に本馬の単勝に9万ポンド(当時の為替レートで約1170万円)を賭けた客がいたらしい。しかし彼は2003年の宝塚記念でヒシミラクルの単勝に1222万円を賭けて2億円近くを手にしたミラクルおじさんにはなれなかった(そもそも単勝オッズ1.36倍では、当たっても劇的な儲けにはならないのだが)。

次走のエクリプスS(英GⅠ・T10F7Y)では、前年の英ダービー・凱旋門賞を制してカルティエ賞最優秀3歳牡馬に選ばれたワークフォース、前年の英オークス・愛オークス・エリザベス女王杯・香港Cを制したカルティエ賞最優秀3歳牝馬スノーフェアリー、スリプトラ、ワークフォース陣営が用意したペースメーカー役コンフロントの4頭だけが対戦相手となった。ムーア騎手が自身に初の英ダービー・凱旋門賞タイトルをもたらしたワークフォースを選択したために、本馬にはヘファーナン騎手が騎乗した。それでも本馬が単勝オッズ1.67倍の1番人気に支持され、シーズン初戦のブリガディアジェラードSを順当に勝ってきたワークフォースが単勝オッズ2.75倍の2番人気、これがシーズン初戦のスノーフェアリーが単勝オッズ11倍の3番人気となった。

スタートが切られるとコンフロントが先頭に立ち、ワークフォースが少し離れた2番手、本馬はワークフォースを見るように3番手につけた。レース中盤でワークフォースが内側を掬って先頭に代わると本馬もそれを追って加速。直線に入ってしばらくはワークフォースの真後ろを走っていたが、残り1ハロン半地点で外側に持ち出すと、残り半ハロン地点でワークフォースに並びかけて叩き合いに持ち込んだ。そして半馬身競り落として勝利した(3着スリプトラはワークフォースからさらに5馬身後方だった)。

なお、このエクリプスSが施行された7月が終了した段階で、オセアニア産馬は年齢が加算されたため、本馬は2010/11シーズンを10戦8勝の成績で終えることになった。当然豪年度代表馬の有力候補に挙がったが、8戦全勝のブラックキャビアに150票対134票で負けてタイトルを逃した。しかし豪最優秀中距離馬は受賞した。

その後は一間隔を空けて愛チャンピオンS(愛GⅠ・T10F)に向かった。対戦相手は、エクリプスS4着後にナッソーSで2着してきたスノーフェアリー、タタソールズ金杯3着後に愛国際S・メルドSを連勝しダルマイヤー大賞で2着してきたフェイマスネーム、クリテリウムドサンクルー・デリンズタウンスタッドダービートライアルSの勝ち馬リサイタル、クリテリウム国際・愛2000ギニーの勝ち馬ロデリックオコナー、アングルシーS・レパーズタウン2000ギニートライアルSの勝ち馬ダンボインイクスプレスの5頭だった。ヘファーナン騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.25倍の1番人気、スノーフェアリーが単勝オッズ7倍の2番人気、フェイマスネームとリサイタルが並んで単勝オッズ15倍の3番人気となった。

スタートが切られると、本馬の同厩馬ロデリックオコナーが先頭に立って後続を引き離し、本馬は2番手を進んだ。そして残り2ハロン地点で先頭に立って押し切ろうとしたところに、本馬をマークするように3番手を進んでいたスノーフェアリーが並びかけようとしてきた。しかしスノーフェアリーの豪脚をもってしても本馬を抜き去ることは出来ず、最後まで粘り切った本馬が2着スノーフェアリーに半馬身差、3着フェイマスネームにはさらに6馬身差をつけて勝利した。

次走は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)となった。エクリプスS2着後にキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSでも2着してきたワークフォース、スノーフェアリーの2頭に加えて、サンタラリ賞・仏オークス・サンクルー大賞・コリーダ賞・フォワ賞の勝ち馬で前年の凱旋門賞では3着だったサラフィナ、ヴェルメイユ賞・ギョームドルナノ賞の勝ち馬で仏オークス2着のガリコヴァ、仏ダービー・ニエル賞を勝ってきたリライアブルマン、愛ダービー・セクレタリアトS勝ち馬で英ダービー2着のトレジャービーチ、コロネーションC・レーシングポストトロフィー・ベレスフォードSの勝ち馬セントニコラスアビー、パリ大賞を勝ちニエル賞で2着してきたメオンドル、英セントレジャーを勝ってきたマスクドマーヴェル、ベルリン大賞・バーデン大賞を連勝してきたデインドリーム、そして日本からも、天皇賞春・産経大阪杯の勝ち馬で皐月賞2着のヒルノダムール、宝塚記念・セントライト記念・東京スポーツ杯2歳Sの勝ち馬で前年の凱旋門賞では2着だったナカヤマフェスタが参戦してきた。メルボルンC3着こそあったが、今まで10ハロン前後の距離を中心に走ってきた本馬にはやや不安な距離であり、単勝オッズ5.5倍の2番人気だった。距離的な不安が無いサラフィナが単勝オッズ5倍の1番人気に支持され、ガリコヴァが単勝オッズ8倍の3番人気、ワークフォースとヒルノダムールが並んで単勝オッズ11倍の4番人気となった。

スタートが切られると本馬と同厩のトレジャービーチが先頭に立ち、ヘファーナン騎手騎乗の本馬はサラフィナ、ガリコヴァ、ワークフォース、スノーフェアリー、ナカヤマフェスタなどと共に馬群に中団につけた。そして直線に入って残り400m地点で満を持して仕掛けたのだが、馬群の好位から飛び出していったデインドリームに瞬く間に置き去りにされた。本馬がゴール前で繰り出した末脚も決して悪いものではなかったのだが、先行して粘ったシャレータや、一足先に仕掛けたスノーフェアリーにも後れを取ってしまい、勝ったデインドリームから5馬身3/4差の4着に敗れた。

その後はすぐに英チャンピオンS(英GⅠ・T10F)に向かった。対戦相手は、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスSを勝ってきた3歳馬ナサニエル、スノーフェアリー、ナッソーS3連覇・BCフィリー&メアターフ・ヨークシャーオークス・ヴェルメイユ賞勝ちのミッデイ、キラヴーランS勝ち馬ドバイプリンス、コンセイユドパリ賞・ドラール賞・ドーヴィル大賞などを勝っていたシリュスデゼーグル、プリンスオブウェールズS5着後にヨークS・英国際Sを連勝していたトゥワイスオーヴァー、ストレンソールS・アークトライアルを連勝してきたグリーンデスティニー、スリプトラなどだった。今回はムーア騎手とコンビを組んだ本馬が単勝オッズ2.75倍の1番人気に支持され、ナサニエルが単勝オッズ6倍の2番人気、スノーフェアリー、ミッデイ、ドバイプリンスの3頭が並んで単勝オッズ9倍の3番人気となった。

スタートが切られるとナサニエルが先頭に立ち、本馬は3番手を追走した。そして残り2ハロン地点で仕掛けると、残り1ハロン地点でナサニエルをかわして先頭に立った。しかしここで本馬をマークするように4番手を追走していたシリュスデゼーグルに並びかけられ、競り落とされた本馬は3/4馬身差の2着に敗れた。

その後は米国チャーチルダウンズ競馬場に飛び、ブリーダーズカップに参戦。クールモアは明らかな芝馬でも種牡馬としての価値向上を目論んでブリーダーズカップのダート競走に参戦させる事が多く、本馬が出走したのもBCクラシック(米GⅠ・D10F)だった。対戦相手は、ジョッキークラブ金杯・サバーバンHの勝ち馬でウッドワードS2着のフラットアウト、古馬牝馬として史上初のウッドワードS制覇を果たし、アップルブロッサムH・ベルデイム招待Sも勝っていたハヴァードグレイス、BCジュヴェナイル・シャンペンSを勝っていた前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬アンクルモー、ナシュアS・レムセンS・ペンシルヴァニアダービーの勝ち馬トゥオナーアンドサーヴ、トラヴァーズS・ジムダンディSの勝ち馬でベルモントS2着のステイサースティ、サンタアニタH・グッドウッドS勝ち馬でハリウッド金杯2着のゲームオンデュード、前年のベルモントS勝ち馬でジョッキークラブ金杯2着のドロッセルマイヤー、この年のベルモントS勝ち馬ルーラーオンアイス、トラヴァーズS2着馬ラトルスネークブリッジ、ホーソーン金杯Hを勝ってきたヘッドエイク、フロリダダービー勝ち馬アイスボックスの11頭だった。フラットアウトが単勝オッズ4.6倍の1番人気に支持され、ハヴァードグレイスが単勝オッズ5.1倍の2番人気、ムーア騎手騎乗の本馬が単勝オッズ6.3倍の3番人気だった。

スタートが切られるとゲームオンデュードが先頭に立ち、本馬はアンクルモーやステイサースティと共に先行集団につけた。そのままの態勢で直線に入ってきたのだが、馬場状態が悪い内埒沿いを走ったのが影響したのか伸びを欠き、勝ったドロッセルマイヤーから3馬身半差の6着に敗れた。

この年の成績は8戦4勝(うちGⅠ競走3勝)だったが、11戦5勝(GⅠ競走は英チャンピオンSのみ)のシリュスデゼーグルにカルティエ賞最優秀古馬の座を取られてしまった。

競走生活(2012年)

2012年はドバイワールドC(首GⅠ・AW2000m)から始動した。対戦相手は、前年のBCクラシックで2着だったゲームオンデュード、BCレディーズクラシック・アラバマSを勝って前年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選ばれたロイヤルデルタ、マクトゥームチャレンジR3を勝ってきたカッポーニ、ローマ賞・ウニオンレネンなどの勝ち馬ザズー、前年のプリンスオブウェールズSで4着だったプラントゥール、前年のドバイワールドCで3着だったキングエドワードⅦ世S・ドバイシティオブゴールド勝ち馬モンテロッソ、コンセイユドパリ賞・プランスドランジュ賞の勝ち馬プリンスビショップ、それに日本から参戦してきたJBCクラシック2回・東京大賞典2回・帝王賞・川崎記念などダート重賞9連勝中のスマートファルコン、一昨年の東京優駿勝ち馬で天皇賞春・有馬記念2着のエイシンフラッシュ、ジャパンCダート2回・フェブラリーS・マイルCS南部杯の勝ち馬で前年のドバイワールドCではヴィクトワールピサと日本馬ワンツーフィニッシュを決めたトランセンドなど12頭だった。オブライエン師の息子ジョセフ・オブライエン騎手(前年のBCターフをセントニコラスアビーで勝利して史上最年少ブリーダーズカップ制覇を達成していた)が騎乗する本馬が単勝オッズ2.25倍の1番人気、スマートファルコンが単勝オッズ7.5倍の2番人気、前走サンアントニオSを勝って臨んできたゲームオンデュードが単勝オッズ9倍の3番人気となった。

スタートが切られると前年と同じくトランセンドが先頭に立ち、好スタートを切った本馬がそのまま2~3番手につけた。そのままの態勢で四角に入ってくると、失速したトランセンドをかわして先頭に立っていたカッポーニの追撃を開始。しかし直線に入ってきた時点では既に馬群の中団から差してきたモンテロッソにかわされていた。カッポーニに追いつくことが出来ず、残り200m地点でプラントゥールにも差された本馬は、勝ったモンテロッソから4馬身差の4着に敗れた。

本国に戻ってきた本馬はタタソールズ金杯(愛GⅠ・T10F110Y)に出走した。前年の愛チャンピオンSで本馬の3着だったフェイマスネーム、ダンスデザインS勝ち馬バイブルベルトなど4頭が対戦相手となったが、本馬に敵いそうな馬はいなかった。そのためオブライエン騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ1.18倍の1番人気に支持され、フェイマスネームが単勝オッズ8倍の2番人気となった。スタートが切られると本馬と同厩のペースメーカー役ロビンフッドが先頭に立ち、本馬は3番手を追走した。そして直線に入るところで先頭に立つと、そのまま後続馬を突き放し、2着フェイマスネームに6馬身差をつけて圧勝した。

次走のプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)では、ダンテS・ブリガディアジェラードSの勝ち馬で前年の英ダービー3着馬カールトンハウス、既に4歳なのに3戦しかしていなかった、遅れてきた無敗の大物ファー、ドバイワールドC3着後にイスパーン賞で2着してきたプラントゥール、前年の凱旋門賞で15着に終わっていたリライアブルマン、ジェベルハッタ2着・ドバイデューティーフリー3着のシティスタイル、ノーザンダンサーターフS・ジェベルハッタの勝ち馬ウィグモアホール、ゴードンリチャーズS勝ち馬コロンビアン、米国から遠征してきた米国競馬名誉の殿堂博物館S勝ち馬ビッグブルーキトゥン、前年の英チャンピオンSで7着だったスリプトラ、ペースメーカー役ロビンフッドの計10頭が対戦相手となった。オブライエン騎手騎乗の本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気、ちょうど即位60年目だった英国女王エリザベスⅡ世殿下の所有馬カールトンハウスが単勝オッズ4.5倍の2番人気、ファーが単勝オッズ7倍の3番人気となった。

スタートが切られるとやはりロビンフッドが先頭に立ち、ビッグブルーキトゥンや本馬がそれを追って先行。残り2ハロン地点で本馬が外側から、カールトンハウスが内側からそれぞれビッグブルーキトゥンをかわして先頭に立った。そして本馬とカールトンハウスの一騎打ちとなったが、本馬がゴール前で突き放して2馬身1/4差で勝利した。

本馬はこの年の豪州繁殖シーズンに合わせて引退する事が表明されており、引退レースにはエクリプスSが予定されていた。しかしレース2日前になって脚部不安を発症。エクリプスSは回避してそのまま2012年3戦2勝の成績で競走馬引退となった。

血統

High Chaparral Sadler's Wells Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason
Lalun
Special Forli
Thong
Kasora Darshaan Shirley Heights Mill Reef
Hardiemma
Delsy Abdos
Kelty
Kozana Kris Sharpen Up
Doubly Sure
Koblenza Hugh Lupus
Kalimara
Triassic Tights Nijinsky Northern Dancer Nearctic
Natalma
Flaming Page Bull Page
Flaring Top
Dancealot Round Table Princequillo
Knight's Daughter
Music Please To Market
Santorin
Astral Row Long Row Linacre Rockefella
True Picture
Front Row Epaulette
Panaview
Pak Bun Bay Matinee Idol Pinza
Method
Philipolo Marco Polo
Philadelphia

ハイシャパラルは当馬の項を参照。

母トライアシックは新国産馬で、競走馬としても新国で走り6戦3勝。サートリストラムフィリーズクラシック(新GⅡ)を勝ち、ロイヤルS(新GⅢ)で2着している。近親にはあまり活躍馬が見当たらない。→牝系:F13号族②

母父タイツはニジンスキー産駒で、現役成績は31戦9勝、シルヴァースクリーンH(米GⅡ)・ラホヤマイルH(米GⅢ)・ヴォランテH(米GⅢ)を勝っている。競走馬引退後は新国で種牡馬入りして成功したが、活躍馬が牝馬ばかりだったので後継種牡馬には恵まれないまま1995年に14歳で他界している。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はその年のうちに豪州に戻り、クールモア・オーストラリアで種牡馬入りした。愛国のクールモアスタッドにもシャトルされている。

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