グランデラ

和名:グランデラ

英名:Grandera

1998年生

栗毛

父:グランドロッジ

母:ボルディゲラ

母父:アリシーバ

世界中を走り回る日程で素質を開花させワールドシリーズレーシングチャンピオンとカルティエ賞最優秀古馬に輝いたが酷い気性難のため関係者からは敬遠される

競走成績:2~5歳時に英仏首香星愛豪で走り通算成績22戦6勝2着5回3着2回

誕生からデビュー前まで

愛国キルデア州においてモイグレアスタッドの経営者J・スタン・コスグローヴ氏により生産された。1歳時にロジャー・シェルトン氏により3万ポンドで購入され、英国ジェームズ・R・ファンショー調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳7月にドンカスター競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスで、主戦となるD・ハリソン騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ4.5倍の1番人気に支持されたが、スタートで大きく出遅れてしまい、ゴール前で伸びずに、勝った単勝オッズ8.5倍の6番人気馬コースティックウイットから6馬身半差の5着に敗れた。

9月にウォーウィック競馬場で行われた芝7ハロン26ヤードの未勝利ステークスでは、単勝オッズ4倍の2番人気となった。ここでは普通にスタートを切って先行し、残り1ハロン地点で先頭に立って、2着ブルセフィアに4馬身差で快勝した。

初勝利から18日後にはタタソールS(英GⅢ・T7F)に出走。ここでは単勝オッズ6.5倍の2番人気だった。やはり先行した本馬は残り2ハロン地点で先頭に立ったが、ゴール直前で同じく2番人気だったキングシャルルマーニュに差されて首差2着に敗れた。しかし勝ったキングシャルルマーニュは後のモーリスドギース賞勝ち馬であり、また、後のローマ賞勝ち馬インペリアルダンサー(5着)、後に英チャンピオンS・チャールズウィッテンガムH・クレメントLハーシュ記念ターフCSとGⅠ競走で3勝を挙げるストーミングホーム(9着)には先着しており、後から見ればGⅠ級の能力の持ち主である事を示したレースだった。

次走のレーシングポストトロフィー(英GⅠ・T8F)では、この年のカルティエ賞年度代表馬ジャイアンツコーズウェイの1歳年下の全弟フロイト、未勝利ステークスを6馬身差で勝ち上がってきたタンバレイン、コヴェントリーSの勝ち馬で英シャンペンS2着のシーディーヨーロッパなどが対戦相手となった。フロイトが単勝オッズ3倍の1番人気、タンバレインが単勝オッズ3.75倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6倍の3番人気だった。ここでも先行したのだが、残り3ハロン地点から脚色が怪しくなり、残り1ハロン地点から大きく失速して、後方から追い込んで勝った単勝オッズ15倍の6番人気馬ディルシャーンから11馬身半差をつけられた7着と大敗。2歳時の成績は4戦1勝となった。

競走生活(3歳時)

2歳シーズンが終了してしばらく立った頃にファンショー師は、2歳時の本馬は体質が弱かった事を明らかにし、身体がしっかりして順調に調整できるようになれば優れた馬になると予想した。

3歳時は英ダービーの前哨戦である5月のリステッド競走ディーS(T10F75Y)から始動した。このレースからはマイケル・ヒルズ騎手を新たな主戦に迎えた。単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持された本馬は、今回は馬群の中団好位を追走。そして残り3ハロン地点で仕掛けて追い上げてきたが、単勝オッズ3.75倍の2番人気馬ドクターグリーンフィールドに届かずに半馬身差の2着に敗れた。

その後は英ダービーではなく仏ダービー(仏GⅠ・T2400m)に向かった。グレフュール賞を6馬身差、オカール賞を8馬身差で勝ってきたマイユピストル、リュパン賞を勝ってきたチチカステナンゴ、リュパン賞で2着してきたノアイユ賞の勝ち馬アナバーブルー、リュパン賞で3着してきた後の英セントレジャー馬ミラン、シュレンヌ賞を5馬身差で勝ってきたセンシブル、クリテリウムドサンクルーの勝ち馬サガシティ、仏グランクリテリウム・ロシェット賞の勝ち馬オカワンゴなどが出走しており、本馬は単勝オッズ32倍で13番人気の低評価だった。しかし馬群の中団から直線で追い上げ、ゴール前では逃げたアナバーブルー、中団から差してきたチチカステナンゴとの接戦となった。最後はアナバーブルーが2着チチカステナンゴを半馬身抑えて勝ち、本馬はチチカステナンゴから短頭差の3着だったが、低評価を覆す健闘だった。

続くエクリプスS(英GⅠ・T10F)では、前年のサラマンドル賞・デューハーストSを制してカルティエ賞最優秀2歳牡馬に選ばれていた英ダービー3着馬トゥブーグ、愛2000ギニー・セントジェームズパレスSを連勝してきたブラックミナルーシュ、ロッキンジS・クイーンアンSを連勝してきたメディシアン、ミラノ大賞・シンガポール航空国際Cの勝ち馬エンドレスホール、ジャンプラ賞2着馬バッハなどが出走してきた。トゥブーグが単勝オッズ3.25倍の1番人気、ブラックミナルーシュが単勝オッズ3.5倍の2番人気、メディシアンが単勝オッズ4.5倍の3番人気と、この3頭が人気を集め、本馬はエンドレスホールと並んで単勝オッズ9倍の4番人気だった。ここでは4番手の好位を進み、残り3ハロン地点で仕掛けて、残り2ハロン地点ではメディシアンと共に先頭のバッハに並びかけた。さらにトゥブーグ、ブラックミナルーシュの2頭もやってきて、残り1ハロン地点では5頭による大接戦となった。いったんは本馬が先頭に立つ場面もあったが、あと少しのところでメディシアンに捕まり半馬身差の2着となった。

次走の英国際S(英GⅠ・T10F85Y)では、前年の英ダービー2着馬で後の凱旋門賞馬サキー、メディシアン、エクリプスS5着後のサセックスSで3着だったブラックミナルーシュ、デューハーストS・愛国際Sの勝ち馬ディスタントミュージック、仏オークスとナッソーSで3着だったムシドラS勝ち馬タイムアウェイなどが対戦相手となった。サキーが単勝オッズ3.25倍の1番人気、メディシアンが単勝オッズ4倍の2番人気、ブラックミナルーシュが単勝オッズ4.5倍の3番人気で、本馬は単勝オッズ8倍で前走と同じ4番人気だった。レースではブラックミナルーシュ陣営が用意したペースメーカー役のダーウィンが逃げて、サキーや本馬がそれを追走。やがてダーウィンが失速するとサキーが残り3ハロン地点で先頭に立ち、そのまま逃げ込みを図った。本馬はサキーを追撃しようとしたが、左側によれるなどぐずぐずしている間に、サキーに差をどんどん広げられ、7馬身差をつけられて2着に敗れた(1馬身差の3着がメディシアンだった)。

その後はリステッド競走アークトライアル(T11F)に出走。フレッドアーチャーSを勝ってきたムブタケルとの2強ムードとなった。本馬が単勝オッズ1.83倍の1番人気で、ムブタケルが単勝オッズ3.75倍の2番人気だった。ここでは好位につけて残り3ハロン地点で仕掛けて、残り1ハロン地点で先頭に立ち、2着ムブタケルに1馬身半差で勝利した。

いかにも快勝したかのような書き方をしたが、頭を持ち上げるような不器用な走り方であり、先頭に立ったところで左側に大きくよれるなど、実際のレースぶりは快い勝利とは言い難いものだった。それでもムブタケルは、本馬が引退した後の話ではあるが、ジェフリーフリアSを3連覇して、凱旋門賞でダラカニの2着に入るほどの馬であり、内容はともかく結果的には本馬の競走能力の高さを示すものともなった。

その後は凱旋門賞に出走する予定だったが、レース直前にゴドルフィンにトレードされてドバイのサイード・ビン・スルール厩舎に転厩したため、出走回避して3歳時を5戦1勝で終えた。

競走生活(4歳時)

翌4歳時はゴドルフィンの専属騎手である名手ランフランコ・デットーリ騎手を主戦に迎えた。まずは2月に地元ドバイでドバイシティオブゴールド(首GⅢ・T2400m)に出走。4番手から直線で粘り、ナラティヴの3馬身1/4差2着となった。

その後は香港に移動して、クイーンエリザベスⅡ世C(香GⅠ・T2000m)に出走した。ここには、香港ダービーを勝ってきたオリンピックエクスプレス、スプリングチャンピオンS・カンタベリーギニー・AJCダービー・ランヴェットSと豪州GⅠ競走4勝のユニバーサルプリンス、前年の仏ダービーで本馬から3/4馬身差の4着だったオカワンゴ、新ダービー馬ヘレンバイタリティ、香港ダービー2着馬プレシジョン、3年前のジャパンC2着馬インディジェナスなどの他に、前年の香港マイルを制した朝日杯三歳Sの勝ち馬エイシンプレストン、前年の香港Cを制したマイルCS・マイルCS南部杯・天皇賞秋・フェブラリーSの勝ち馬アグネスデジタルの日本調教馬2頭も参戦してきた。本馬が単勝オッズ2.1倍の1番人気に支持され、エイシンプレストンが単勝オッズ4.6倍の2番人気、アグネスデジタルが単勝オッズ5.9倍の3番人気となった。本馬はスタートで出遅れてしまったが、すぐに立て直して徐々に進出し4番手まで押し上げてきた。そして直線に入ると残り300m地点で先頭に立った。しかしここからエイシンプレストン、アグネスデジタル、インディジェナス、ユニバーサルプリンスの4頭に差されて、2馬身半差の5着に敗退。勝ったのはエイシンプレストンで、2着がアグネスデジタルと、日本調教馬のワンツーフィニッシュとなった。

次走のシンガポール航空国際C(星GⅠ・T2000m)では、前走3着のインディジェナス、同4着のユニバーサルプリンス、同8着のオリンピックエクスプレスなどに加えて、伊共和国大統領賞・ミラノ大賞とGⅠ競走を2勝していたパオリニも出走してきた。本馬は馬群の中団後方を進み、7番手で直線に入ってきた。そして残り1ハロン地点で内側を突いて先頭に立ち、2着パオリニに2馬身差、3着インディジェナスにはさらに2馬身半差をつけて勝利。ここでようやくGⅠ競走勝ち馬となった。

このGⅠタイトルを引っ提げて欧州に凱旋し、プリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)に出走。前年にBCフィリー&メアターフ・コロネーションSを勝ち仏1000ギニー・ジャックルマロワ賞・ムーランドロンシャン賞でも2着してカルティエ賞最優秀3歳牝馬及びエクリプス賞最優秀芝牝馬に選ばれていたバンクスヒル、英チャンピオンS・ドバイシーマクラシックなどを勝っていたネイエフ、前走のアットザレーシーズ社条件Sの9馬身差圧勝など4連勝中のデザートディール、ロイヤルホイップSを勝っていたバッハ、イスパーン賞で2着してきたプッサン、パオリニ、アールオブセフトンSの勝ち馬インディアンクリークなどが対戦相手となった。シーズン初戦のイスパーン賞で3着と無難にまとめてきたバンクスヒルが単勝オッズ4.5倍の1番人気で、本馬とネイエフが並んで単勝オッズ5倍の2番人気となった。

レースでは最後方を追走すると、残り3ハロン地点から進出を開始。今回も頭を異様に高くする例の走法だったが、それにも関わらず素晴らしい伸びを見せ、残り1ハロン地点で先頭に立つとそのまま独走して、2着インディアンクリークに5馬身差をつけて圧勝。バンクスヒルはインディアンクリークから3/4馬身差の3着、ネイエフはさらに1馬身半差の4着だった。

次走のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)では、前年の英2000ギニー馬ゴーラン、ヨークシャーC・ハードウィックSの勝ち馬ジンダバッド、ネイエフ、仏オークス・ヴェルメイユ賞・ガネー賞の勝ち馬で前年の凱旋門賞2着馬アクワレリスト、コロネーションCを勝ってきた前年の独ダービー馬ボリアル、コロネーションC・ハードウィックSと続けて2着してきたキングエドワードⅦ世Sの勝ち馬ストーミングホームなどを抑えて、単勝オッズ2.625倍の1番人気に支持された。レースでは馬群の外側最後方につけて、残り3ハロン地点で仕掛けた。しかし今回は直線半ばで失速してしまい、ゴーランの8馬身1/4差5着と完敗した。

次走の愛チャンピオンS(愛GⅠ・T10F)は、生国の愛国における最初で最後の出走となった。エクリプスS・愛ナショナルSの勝ち馬で英2000ギニー・英ダービー2着のホークウイング、伊グランクリテリウムの勝ち馬で愛ダービー・エクリプスSと続けて2着してきたショロコフ、愛オークスを勝ってきたマルガルラ、イスパーン賞を勝っていた同厩馬ベストオブザベスツ、ヴィンテージS・セレブレーションマイル・クイーンアンSの勝ち馬ノーエクスキューズニーデッドなどが対戦相手となった。超大物の誉れ高かったホークウイングが単勝オッズ1.73倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気、ショロコフが単勝オッズ9倍の3番人気だった。

スタートが切られるとショロコフが先頭に立ち、ホークウイングやベストオブザベスツがそれを追って先行。一方の本馬は相変わらずスタートが悪く、道中は4番手につけた。そのままの位置取りで直線に入ると、ショロコフが失速して、ホークウイングとベストオブザベスツが叩き合いながら先頭に立った。この2頭のいずれかが勝ち馬と思われたとき、爆発的な末脚を繰り出した本馬が前の2頭をまとめて差し切り、2着ホークウイングに短頭差、3着ベストオブザベスツにさらに首差をつけて勝利。前年までの勝ち切れない本馬の姿はそこには無かった。

続いて地球の裏側に回り、コックスプレート(豪GⅠ・T2040m)に出走。このレースには、前年のコックスプレートを筆頭にレイルウェイS・オーストラリアンC・アンダーウッドS2回・ヤルンバS・コーフィールドCとGⅠ競走7勝の豪州最強馬ノーザリー、コーフィールドギニー・ヤルンバSの勝ち馬で後にノーザリーに代わって豪州最強馬に上り詰めるロンロ、コックスプレート2回・香港マイル・フライトS・ドンカスターH2回・クールモアクラシック2回・オールエイジドS2回・マニカトS・ワイカトドラフトスプリント2回とGⅠ競走13勝の世界的名牝サンラインという、いずれも豪州競馬史上にその名を刻む3頭の超一流馬も参戦していた。他にもクイーンエリザベスS・ジョージメインSの勝ち馬デフィール、ブルーダイヤモンドSの勝ち馬ベルエスプリ、後にコックスプレートを2勝するフィールズオブオマー、サイアーズプロデュースS・シャンペンS・ドンカスターマイルの勝ち馬アサーティヴラッドなども参戦しており、極めてレベルが高い戦いとなった。ノーザリーとロンロが並んで単勝オッズ4倍の1番人気、サンラインが単勝オッズ6倍の3番人気、デフィールが単勝オッズ8倍の4番人気、本馬が単勝オッズ9倍の5番人気だった。

レースではサンラインが逃げを打ち、ノーザリーがそれを追って先行。一方の本馬は6番手につけた。そして残り400m地点で仕掛けて追い上げていった。直線入り口では先頭から5馬身差ほどあったが、ムーニーバレー競馬場の非常に短い直線をよく追い込み、勝ったノーザリーから1馬身1/4差、やはり追い上げて2着に入ったデフィールから首差の3着に入り、サンライン(4着)やロンロ(6着)に先着して、欧州一の実力の片鱗は見せた。

この年最後のレースとなった香港C(香GⅠ・T2000m)では、前走のマイルCSで2着してきたエイシンプレストン、前走ジャパンCでファルブラヴの2着していたエディリードHの勝ち馬サラファン、パオリニ、香港チャンピオンズ&チャターC勝ち馬ハウスマスター、ジャンドショードネイ賞・ドラール賞を勝っていたデンマーク最強馬ダノマスト、プレシジョンなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持され、エイシンプレストンが単勝オッズ3.8倍の2番人気となった。ここでは激しく折り合いを欠きながら馬群の中団後方につけ、直線入り口10番手から追い上げてきた。しかし残り300m地点で進路が塞がる不利を受けた影響もあり、勝った単勝オッズ65倍の9番人気馬プレシジョンの7着に敗退(エイシンプレストンは5着だった)。もっとも、勝ったプレシジョンとの差は2馬身1/4差であり、もう少しスムーズなレースが出来ていれば勝っていたかもしれない内容だった。

この年に世界6か国を走り回り8戦3勝(3勝は全てGⅠ競走)を挙げた本馬は、この年のカルティエ賞最優秀古馬に選出された。同時にこの年のワールドシリーズレーシングチャンピオンシップの競走馬部門でも32ポイントでトップになった。

競走生活(5歳時)

5歳時はドバイワールドCを目標として、3月のマクトゥームチャレンジR3(首GⅡ・D2000m)から始動した。初のダート競走だったが、先行して残り400m地点で先頭に立ち、そのまま押し切って、2着となったボルチモアBCHの勝ち馬グランドルフットに半馬身差で勝利を収め、ダート適性を示した。

本番のドバイワールドC(首GⅠ・D2000m)には、前年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS2着後に英国際Sを勝っていたネイエフ、ダンテS・セレクトS・マクトゥームチャレンジR2の勝ち馬で英ダービー3着・英チャンピオンS2着の同厩馬ムーンバラッド、フロリダダービー・ブルーグラスS・ドンHと米国ダートGⅠ競走3勝のハーランズホリデー、前年のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS4着後にフォワ賞・エクスビュリ賞を勝ち香港ヴァーズで2着していたアクワレリスト、グランドルフットなどが出走してきた。英国ブックメーカーのオッズでは、ネイエフが単勝オッズ2.375倍の1番人気、ムーンバラッドが単勝オッズ3.75倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6倍の3番人気、ハーランズホリデーが単勝オッズ6.5倍の4番人気だった。デットーリ騎手がムーンバラッドに騎乗したため、本馬にはジェイミー・スペンサー騎手が騎乗した。レースでは馬群の中団を進んだが、直線で今ひとつ伸びずに、ムーンバラッドの6馬身差4着に終わった。

その後は再度欧州に向かい、連覇を目指してプリンスオブウェールズS(英GⅠ・T10F)に出走した。ムーンバラッド、前走イスパーン賞を勝ってきた前年のジャパンC・伊共和国大統領賞・ミラノ大賞の勝ち馬ファルブラヴ、ドバイワールドCで3着だったネイエフ、ナッソーS・ヨークシャーオークスの勝ち馬イズリントン、前年の香港C2着・ドバイデューティーフリー2着・クイーンエリザベスⅡ世C3着と堅実な走りを続けていたパオリニ、伊ダービー・伊共和国大統領賞の勝ち馬ラクティなどが対戦相手となった。前走に続いてデットーリ騎手が騎乗したムーンバラッドが単勝オッズ3倍の1番人気で、今回もスペンサー騎手とコンビを組んだ本馬が単勝オッズ5倍の2番人気となった。しかし例によってスタートで出遅れた本馬は、そのまま最後まで伸びずに、逃げて失速したムーンバラッドをかわした程度で、ネイエフの12馬身差7着に敗退した。

次走のエクリプスS(英GⅠ・T10F7Y)ではムーンバラッドが不在だったため、鞍上はデットーリ騎手に戻った。対戦相手はネイエフ、英ダービーで4着してきたノーズダンサー、前走3着のイズリントン、同5着のファルブラヴ、前年のカルティエ賞最優秀2歳牡馬に選ばれていた仏グランクリテリウム勝ち馬ホールドザットタイガーなどだった。ネイエフが単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持される一方で、本馬は単勝オッズ10倍の5番人気まで評価を下げていた。そしてまたもスタートで出遅れて後方からの競馬となってしまった本馬は、直線に入っても伸びきれずに、ファルブラヴの6馬身差8着に敗れた。

次走のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(英GⅠ・T12F)では、ファルブラヴ、前走2着のネイエフに加えて、英ダービー馬クリスキン、仏ダービー・ドバイシーマクラシックの勝ち馬で凱旋門賞2着の同厩馬スラマニ、愛ダービー馬アラムシャーなど、初顔合わせとなる強豪馬勢の姿もあった。デットーリ騎手がスラマニに騎乗したために、マイケル・キネーン騎手とコンビを組んだ本馬だったが、単勝オッズ34倍で12頭立ての11番人気という低評価だった。チークピーシーズを装着して臨んだ本馬だったが、やはりスタートで出遅れて最後方からの競馬となってしまい、そのまま全く伸びずに、勝ったアラムシャーから28馬身差もつけられた11着と生涯最悪の惨敗を喫してしまい、このレースを最後に5歳時5戦1勝の成績で競走馬を引退した。

競走馬としての特徴

馬名はニュージーランド先住民の言葉で「(驚くほど)魅力的な者」という意味である(実際の馬名由来は両親の名前の一部分を組み合わせたものだと思われるが)。その名前のとおり明るい栗毛色に大きな流星、3本の脚にソックスを履いた見栄えが良い馬だった。

しかし気性にはかなり問題があったらしく、ゴドルフィンのレーシングマネージャーであるサイモン・クリスフォード氏は「始めから終わりまで不親切な馬」「ひどく怒りっぽい」と評し、デットーリ騎手も「狂気の馬」「悪夢」「非常に個性的で非常に才能がある馬」と褒めているようなそうでないような評価をしている。

コックスプレートでは、気性が悪い本馬がスターティングゲート内で暴れる危険性を考慮して、本馬のみ他馬より2倍程度大きな特製のゲートが用意されたという。

ドバイワールドCや5歳時のキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSでデットーリ騎手が本馬に騎乗しなかったのも、本馬の気性を嫌ったせいだと言われている(ドバイワールドCで彼は当初出走予定だったスラマニを選択しており、スラマニがドバイシーマクラシックに方針変更すると今度はムーンバラッドを選択している。キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSでもスラマニに騎乗している)。

血統

Grand Lodge Chief's Crown Danzig Northern Dancer Nearctic
Natalma
Pas de Nom Admiral's Voyage
Petitioner
Six Crowns Secretariat Bold Ruler
Somethingroyal
Chris Evert Swoon's Son
Miss Carmie
La Papagena Habitat Sir Gaylord Turn-to
Somethingroyal
Little Hut Occupy
Savage Beauty
Magic Flute Tudor Melody Tudor Minstrel
Matelda
Filigrana Niccolo Dell'Arca
Gamble in Gold
Bordighera Alysheba Alydar Raise a Native Native Dancer
Raise You
Sweet Tooth On-and-On
Plum Cake
Bel Sheba Lt. Stevens Nantallah
Rough Shod
Belthazar War Admiral
Blinking Owl
Blue Tip Tip Moss Luthier Klairon
Flute Enchantee
Top Twig High Perch
Kimpton Wood
As Blue Blue Tom トンピオン
Pink Silk
As Well スパイウェル
Echasse

グランドロッジは当馬の項を参照。

母ボルディゲラは3歳時に仏で走り5戦1勝、リステッド競走テュイルリー賞で2着した程度の競走馬だったが、繁殖牝馬としては本馬の半弟ジョージワシントン(父デインヒル)【英2000ギニー(英GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ)・フェニックスS(愛GⅠ)・ナショナルS(愛GⅠ)・レイルウェイS(愛GⅡ)】も産んでおり、産駒がカルティエ賞最優秀2歳牡馬・3歳牡馬・最優秀古馬を全て制圧するという好成績を挙げている。ボルディゲラの母ブルーチップはペネロープ賞(仏GⅢ)に勝つなど15戦4勝。しかし近親には他に活躍馬がおらず、ブルーチップの6代母まで遡ってようやく仏オークス馬ペリューシュブルーの名前が出ている程度である。NARグランプリ年度代表馬に2度選出された公営競馬の名牝ラブミーチャンはペリューシュブルーの牝系子孫出身馬だが、本馬の近親であるとは言えない。→牝系:F5号族①

母父アリシーバは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、日本の優駿スタリオンステーションと、豪州ハンターリージョンスタッド(ダーレー・オーストラリアの運営)を行き来するシャトル種牡馬となった。当初はまずまずの数の繁殖牝馬を集め、日本における供用初年度の2004年は76頭、2年目の2005年は69頭、3年目の2006年は72頭、4年目の2007年は49頭の交配数だった。2005年と2006年は半弟ジョージワシントンが活躍した時期であり、それも本馬の種牡馬人気にある程度影響を及ぼしたようである。しかし2007年にデビューした初年度産駒から活躍馬が出なかったため、5年目は19頭、6年目は13頭と交配数が下落。豪州でも目立った活躍馬が出なかったため、2010年に愛国に戻り、以降はダーレーグループ所属のウッドランズスタッドで暮らしている。全日本種牡馬ランキングでは2011年の64位が最高だった。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2005

リフレックス

赤レンガ記念(H2)・瑞穂賞(H2)

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