バードストーン

和名:バードストーン

英名:Birdstone

2001年生

鹿毛

父:グラインドストーン

母:ディアバーディー

母父:ストームバード

ベルモントSでスマーティージョーンズの無敗の米国三冠達成を阻止したムラ馬は種牡馬としても安定感に欠け最高のスタートを切るもその後は今ひとつ

競走成績:2・3歳時に米で走り通算成績9戦5勝

誕生からデビュー前まで

米国の名門馬産一族ホイットニー一族の代表者コーネリアス・ヴァンダービルト・ホイットニー氏は1992年に93歳で死去した。彼は生涯で4度結婚しており、遺産は彼の最後の妻で26歳年下のマリー・ルイーズ・ホイットニー夫人に引き継がれた。

彼女は夫から受け継いだ1億ドルとも言われる莫大な遺産、牧場や競走馬を元にメアリールー・ホイットニー・ステーブルを設立し、競走馬の生産と所有を継続した。また、彼女は引退競走馬の保護運動に多額の寄付をするなど様々な活動も行い、“The Queen of Saratoga(サラトガの女王)”の愛称で親しまれている米国社交界の名士である。

本馬は、そんな彼女がケンタッキー州において生産・所有した馬である。米国ニコラス・ジトー調教師に預けられた本馬は、1歳年上の半姉バードタウンがケンタッキーオークスやエイコーンSを制する活躍を見せており(バードタウンもホイットニー夫人の生産・所有馬であり、ホイットニー夫人は女性として史上唯一のケンタッキーオークス馬の生産者及び所有者となっている)、デビュー前から期待されていた。

競走生活(2歳時)

姉のバードタウンがテストSで2着に敗れた1週間後の8月2日に同じサラトガ競馬場で行われたダート6ハロンの未勝利戦で、エドガー・プラード騎手を鞍上にデビューした。姉の敗戦が影響したわけでもないだろうが、本馬は単勝オッズ4.85倍で3番人気の評価。単勝オッズ3.15倍の1番人気に支持されていたのは、ジェリー・ベイリー騎手が騎乗するテメスカルリッジという馬だった。しかしスタートから逃げるテメスカルリッジを3番手で追走すると、三角では先頭に立って後続を引き離し続け、最後は2着となった単勝オッズ4.15倍の2番人気馬ボールドラヴに12馬身半差という大差をつけて圧勝した。

4週間後のホープフルS(GⅠ・D7F)では、フラッシュS・サンフォードSなど3戦無敗のチャペルロイヤルが単勝オッズ1.65倍の1番人気、プラード騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ3.3倍の2番人気、バッシュフォードマナーSの勝ち馬でサラトガスペシャルS3着のライムハウスが単勝オッズ11.3倍の3番人気という、一騎打ちムードとなった。しかし本馬はスターティングゲートにぶつかって出遅れてしまい、後方のまま末脚不発で、6馬身半差4着に敗れた。レースは、ベイリー騎手が騎乗する単勝オッズ13.5倍の4番人気馬シルヴァーワゴンが最後方からまくって直線入り口で先頭に立ち、2着チャペルロイヤルに4馬身差をつけて圧勝した。

それから5週間後のシャンペンS(GⅠ・D8.5F)では、チャペルロイヤル、2戦2勝のリードザフットノーツなどが相手となった。チャペルロイヤルが単勝オッズ2.55倍の1番人気で、過去2戦で敵だったベイリー騎手が騎乗する本馬が単勝オッズ3.25倍の2番人気、リードザフットノーツが単勝オッズ5.1倍の3番人気となった。スタートが切られるとチャペルロイヤルが逃げを打ち、本馬は馬群の中団を追走。直線入り口でチャペルロイヤルに並びかけると、直線で突き放して、2着チャペルロイヤルに2馬身半差をつけて完勝を収め、姉に続くGⅠ競走制覇を果たした。

米国西海岸のサンタアニタパーク競馬場で行われるBCジュヴェナイルは回避して、2歳時は3戦2勝の成績で終えた。

競走生活(3歳初期)

3歳時は2月にガルフストリームパーク競馬場で行われたダート8ハロン70ヤードの一般競走から始動した。ここでもベイリー騎手とコンビを組み、単勝オッズ1.2倍という圧倒的な1番人気に支持された。そして馬群の中団追走から直線であっさりと抜け出し、2着となった単勝オッズ12.7倍の4番人気馬ケイプジンスキーに3馬身差をつけて楽勝した。

その後はフロリダダービーに向かう予定だったが、予定を変更してケンタッキー州ターフウェイパーク競馬場で行われるレーンズエンドS(GⅡ・D9F)に出走。今回もベイリー騎手とコンビを組み、単勝オッズ1.6倍という断然の1番人気に支持された。スタートから馬群の好位5番手につけたのだが、何故か直線でまるで伸びず、勝った単勝オッズ17.4倍の6番人気馬シニスタージーから10馬身3/4差も離された5着に沈んでしまった。シニスタージーはグレード競走出走歴が無かった7戦2勝馬(レース前)で、しかも次走のウッドメモリアルSで10着と惨敗するような平凡な馬だったため、それに完敗した本馬はケンタッキーダービー有力候補の座から一気に転落してしまった。

それでも出走した次走のケンタッキーダービー(GⅠ・D10F)では、ベイリー騎手に代わって再びプラード騎手とコンビを組んだ。対戦相手は、レベルS・アーカンソーダービーなど6戦無敗のスマーティジョーンズ、ハリウッドフューチュリティ・ハリウッドプレビューSの勝ち馬でブルーグラスS2着のライオンハート、ウッドメモリアルS・ローレルフューチュリティの勝ち馬タピット、ブルーグラスS・ケンタッキージョッキークラブS・イロコイSの勝ち馬でフロリダダービー3着のザクリフスエッジ、シャムSの勝ち馬でウッドメモリアルS2着のマスターデヴィッド、サンヴィンセントS・サンラファエルSの勝ち馬でサンタアニタダービー2着のインペリアリズム、シャムS・ルイジアナダービー・アーカンソーダービーと3戦連続2着してきたボレゴ、フロリダダービーを勝ってきたフレンズレイク、サンタアニタダービー・ジェネラスSの勝ち馬キャッスルデール、シャンペンS6着後にナシュアS・レムセンS・ファウンテンオブユースSを勝っていたリードザフットノーツ、BCジュヴェナイル2着馬ミニスターエリック、イリノイダービーを勝ってきたポラーズヴィジョン、ホープフルS5着後にハッチソンS・タンパベイダービーを勝ちブルーグラスSで3着していたライムハウス、BCジュヴェナイルを勝っていた前年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬アクションディスデイ、レキシントンSを勝ってきたクイントンズゴールドラッシュなどで、同世代の有力牡馬勢が漏れなく出走してきた。スマーティジョーンズが単勝オッズ5.1倍の1番人気、ライオンハートが単勝オッズ6.4倍の2番人気、タピットが単勝オッズ7.4倍の3番人気、ザクリフスエッジが単勝オッズ9.2倍の4番人気と続く一方で、本馬は単勝オッズ22.2倍の9番人気だった。スタートからライオンハートが逃げて、スマーティジョーンズなどがそれを追って先行。本馬は後方待機策を採った。しかしレースはライオンハートを直線で抜き去ったスマーティジョーンズがそのまま完勝し、本馬は直線で伸びずに、スマーティジョーンズから15馬身1/4差の8着と何の見せ場も無かった。

ベルモントS

プリークネスSは回避し、ベルモントS(GⅠ・D12F)に直行した。このレースでは前走プリークネスSを11馬身半という記録的大差で圧勝して、1978年のアファームド以来26年ぶり史上12頭目の米国三冠馬どころか、1977年のシアトルスルー以来史上2頭目となる無敗の米国三冠馬までも期待されていたスマーティジョーンズが、単勝オッズ1.35倍という圧倒的な1番人気に支持されていた。スマーティジョーンズの強さに恐れをなした有力馬の回避が多く、スマーティジョーンズの三冠阻止のために参戦してきたのは、サンタアニタダービー3着・プリークネスS2着のロックハードテン、前走ピーターパンSを圧勝してきたパージ、ウッドメモリアルS・プリークネスS3着のエディントン、ケンタッキーダービー12着後にピーターパンSで3着してきたマスターデヴィッド、サーバートンSを勝ってきたロイヤルアソールトといった面子だった。

一応の対抗馬に指名されたのはロックハードテンで、単勝オッズ7.7倍の2番人気。パージが単勝オッズ10.6倍の3番人気、エディントンが単勝オッズ15.2倍の4番人気、マスターデヴィッドが単勝オッズ25.5倍の5番人気、ロイヤルアソールトが単勝オッズ28.75倍の6番人気で、本馬は単勝オッズ37倍で9頭立て7番人気という低評価だった。

スタートが切られるとまずはパージが先頭に立ち、ロックハードテンとスマーティジョーンズが先行。プラード騎手鞍上の本馬は馬群のちょうど中団でレースを進めた。スローペースだったために、向こう正面でスマーティジョーンズが抑えきれない様に先頭に立った。その後もしばらく本馬は動かず、三角手前になってようやく追撃を開始した。そして三角から四角にかけて前を行くロックハードテンとエディントンをかわして2番手に上がり、さらにスマーティジョーンズとの差を詰めていった。しかし直線に入ってもスマーティジョーンズの脚色は良く、そのまま独走態勢に入るかと思われた。後続馬は全く追ってこなかった。ただ1頭、本馬を除いては。本馬は後続を大きく引き離して、スマーティジョーンズを単独で追撃していった。そして残り1ハロン地点から脚色が衰えたスマーティジョーンズをゴール前でかわして1馬身差で勝利を収め、大記録を阻止した。

ゴールの瞬間、スマーティジョーンズの無敗の三冠達成の瞬間を見ようとベルモントパーク競馬場に詰め掛けた12万139人という同競馬場史上最多の観衆達は一様に静まり返ってしまった。プラード騎手がゴール直後にスマーティジョーンズ鞍上のスチュアート・エリオット騎手のほうを振り向いて労わるように頭を軽く叩いた場面と、ホイットニー夫人が「私はプラード騎手に2着で良いですと言い続けていたのですが」と申し訳無さそうに語った場面が印象的だった。

もっとも、本馬を管理するジトー師にとってはベルモントS初勝利(2着は過去5回あった)で、これで米国三冠競走全制覇(ケンタッキーダービーはストライクザゴールドとゴーフォージンで、プリークネスSはルイカトルズで勝っていた)となった事もあり、彼だけは「私にとって最大の勝利です」と喜びを顕わにしていた。

競走生活(3歳後半)

その後の8月にスマーティジョーンズが故障でリタイアしたため、本馬が3歳牡馬のトップという事になるはずだったが、トラヴァーズS(GⅠ・D10F)では3歳馬限定戦にも関わらず、単勝オッズ5.8倍で7頭立ての4番人気止まりだった。前走がフロック視された事に加え、スマーティジョーンズの三冠を阻止した本馬に対する風当たりが強かったのも一因と思われる。単勝オッズ3.6倍の1番人気にはケンタッキーダービー2着・プリークネスS4着後にベルモントSを回避してロングブランチBCS・ハスケル招待Hを連勝してきたライオンハートが支持され、ケンタッキーダービー5着後にドワイヤーSとジムダンディSで連続2着してきたザクリフスエッジが単勝オッズ4.15倍の2番人気、ベルモントSでは最下位だったが前走ジムダンディSを圧勝してきたパージが単勝オッズ5倍の3番人気、ダービートライアルS・ウエストヴァージニアダービーの勝ち馬サーシャックルトンが単勝オッズ8.2倍の5番人気、ベルモントS4着後に出走したジムダンディSでも4着だったエディントンが単勝オッズ10.7倍の6番人気、ノーザンダンサーSの勝ち馬でスワップスBCS2着のスワーヴが単勝オッズ15.2倍の最低人気だった。

スタートが切られるとライオンハートが逃げを打ち、パージやエディントンがそれを追撃。プラード騎手鞍上の本馬は後方2番手からじっくりとレースを進めた。そして向こう正面から進出を開始すると、失速するライオンハートやパージと入れ代わるように、直線入り口で先頭に立った。そこへ最後方からの追い込みに賭けたザクリフスエッジが追ってきたが、ゴール前では逆に差を広げて、2馬身半差をつけて完勝した。

これでようやく現役3歳馬最強と認められた本馬は、続いてローンスターパーク競馬場で行われたBCクラシック(GⅠ・D10F)に参戦。ヴォスバーグS・トムフールH・フィリップHアイズリンBCH・ウッドワードSと4連勝中のゴーストザッパー、前年のBCクラシックとこの年のドバイワールドCを筆頭にパシフィッククラシックS・グッドウッドBCH2回・サンアントニオHを勝っていたプレザントリーパーフェクト、前走ジョッキークラブ金杯を勝ってきた前年のケンタッキーダービー・プリークネスSの勝ち馬ファニーサイド、ホイットニーH・ケンタッキーCクラシックH・コーンハスカーBCHなど5連勝中のロージズインメイ、スティーヴンフォスターH・レーンズエンドS・ワシントンパークH・ケンタッキーCクラシックH・ホーソーン金杯の勝ち馬でホイットニーH・パシフィッククラシックS2着・ケンタッキーダービー3着のパーフェクトドリフト、BCディスタフ・サンタマルガリータ招待H・アップルブロッサムH3回・ミレイディBCH2回・ヴァニティH2回・ゴーフォーワンドH・スピンスターSとGⅠ競走11勝を挙げていた一昨年のエクリプス賞年度代表馬アゼリ、日本から参戦してきたダービーグランプリの勝ち馬パーソナルラッシュなどが対戦相手となった。ゴーストザッパーとプレザントリーパーフェクトの古馬2頭が単勝オッズ3.5倍の1番人気で並び、本馬が単勝オッズ7.5倍の3番人気となった。

スタートが切られるとゴーストザッパーが快速を活かして先頭をひた走り、プラード騎手鞍上の本馬はやはり慎重に中団後方からレースを進めた。しかし馬群に包まれてしまい、向こう正面で位置取りを上げる事が出来なかった。四角では外側に持ち出したが、やはり他馬が壁になって進出できなかった。そしてそのまま直線でも伸びずに、勝ったゴーストザッパーから12馬身半の7着に敗れた。

その直後に左前脚球節に軽度の骨折が判明したため、翌11月に引退が発表され、3歳時6戦3勝の成績で競馬場に別れを告げた。勝つときは確かに強いが、負けるときは目も当てられない惨敗ばかりと言う極端な馬だった。そのため、エクリプス賞最優秀3歳牡馬の座も当然のようにスマーティジョーンズのものとなった。

血統

Grindstone Unbridled Fappiano Mr. Prospector Raise a Native
Gold Digger
Killaloe Dr. Fager
Grand Splendor
Gana Facil Le Fabuleux Wild Risk
Anguar
Charedi In Reality
Magic
Buzz My Bell Drone Sir Gaylord Turn-to
Somethingroyal
Cap and Bells Tom Fool
Ghazni
Chateaupavia シャトーゲイ Swaps
Banquet Bell
Glenpavia Pavot
Gaffery
Dear Birdie Storm Bird Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
South Ocean New Providence Bull Page
Fair Colleen
Shining Sun Chop Chop
Solar Display
Hush Dear Silent Screen Prince John Princequillo
Not Afraid
Prayer Bell Better Self
Sunday Evening
You All Nashua Nasrullah
Segula
Honey Dear Counterpoint
Miss Thrill

グラインドストーンは当馬の項を参照。

母ディアバーディーは現役成績20戦2勝。その産駒には2003年のエクリプス賞最優秀3歳牝馬に選ばれた本馬の半姉バードタウン(父ケープタウン)【ケンタッキーオークス(米GⅠ)・エイコーンS(米GⅠ)】がいる。ディアバーディーは12頭の産駒全てが勝ち上がるという非常に優秀な繁殖成績を収めており、2004年には本馬の活躍もあってケンタッキー州最優秀繁殖牝馬に選ばれた。

ディアバーディーの母ハッシュディアは、ダイアナH(米GⅡ)2回・ロングアイランドH(米GⅡ)2回・タイダルH(米GⅡ)勝ちなど23戦11勝の活躍馬。ハッシュディアの母ユーオールはアッシュランドSの勝ち馬で、ユーオールの母ハニーディアはニューヨークHの勝ち馬。ハニーディアの母ミススリルの全姉ボーンフールの曾孫には米国顕彰馬エインシャントタイトル【チャールズHストラブS(米GⅠ)・カリフォルニアンS(米GⅠ)2回・ハリウッド金杯(米GⅠ)・サンアントニオH(米GⅠ)】がいる。また、ミススリルの祖母ブラインドデートの半姉ブロッサムタイムの子には米国顕彰馬ブルーラークスパー【ベルモントS・サラトガスペシャルS・ウィザーズS・アーリントンクラシックS】がいる。→牝系:F8号族①

母父ストームバードは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、米国ケンタッキー州ゲインズウェイファームで種牡馬入りした。初年度の種付け料は1万ドルと安価(同時期に種牡馬入りしたスマーティジョーンズは10万ドル)で、種牡馬としての期待は低かった。しかし初年度産駒からケンタッキーダービー馬マインザットバード、ベルモントSで父子制覇を果たしエクリプス賞最優秀3歳牡馬にも選ばれたサマーバードを輩出。初期の産駒成績が不振だったスマーティジョーンズとは対照的に、種牡馬として絶好調のスタートを切った。この2頭が活躍した翌年2010年の種付け料は3万ドルまで上昇した。しかし本馬は競走馬としてだけでなく、種牡馬としても安定感に欠けるようで、その後の種牡馬成績は今ひとつで、2015年現在は種付け料5千ドルまで下がっている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2006

Birdrun

ブルックリンH(米GⅡ)

2006

Livin Lovin

テンプテッドS(米GⅢ)

2006

Mine That Bird

ケンタッキーダービー(米GⅠ)・グレイS(加GⅢ)

2006

S. S. Stone

スキップアウェイS(米GⅢ)

2006

Summer Bird

ベルモントS(米GⅠ)・トラヴァーズS(米GⅠ)・ジョッキークラブ金杯(米GⅠ)

2011

Florida Won

オンタリオダービー(加GⅢ)・シーグラムCS(加GⅢ)

2011

Noble Bird

スティーヴンフォスターH(米GⅠ)

2011

Thank You Marylou

ドッグウッドS(米GⅢ)

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