グリーンデザート

和名:グリーンデザート

英名:Green Desert

1983年生

鹿毛

父:ダンチヒ

母:フォーリンクーリア

母父:サーアイヴァー

ダンチヒ産駒として初めて欧州で活躍した名短距離馬は種牡馬としては世界中の名短距離馬を輩出してダンチヒの後継種牡馬として大活躍する

競走成績:2・3歳時に英愛仏米で走り通算成績14戦5勝2着4回3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州において、レッドブルステーブルとイートンファームにより共同生産された。1歳9月のキーンランドセールに出品され、ドバイのシェイク・モハメド殿下により65万ドルで購入され、英国サー・マイケル・スタウト調教師に預けられた。主戦はウォルター・スウィンバーン騎手が務めた。

競走生活(2歳時)

2歳5月にニューマーケット競馬場で行われたアシュレイS(T5F)でデビューして、勝ち馬シュアブレードから2馬身半差の2着。6月のジュライS(英GⅢ・T6F)では、単勝オッズ4.5倍の評価を受け、2着アットオールアットオールに頭差、3着となったチェシャムSの勝ち馬バカロフにはさらに3馬身差をつけて勝ち上がった。続くリッチモンドS(英GⅡ・T6F)では、ノミネーションの2馬身半差2着だった(3着馬ボールドアレンジメントは後に仏グランクリテリウムとケンタッキーダービーで2着している)。

次走は9月のフライングチルダースS(英GⅡ・T5F)となった。ここではノーフォークSの勝ち馬マラブルを抑えて単勝オッズ2倍の1番人気に支持され、2着マラブルに首差で勝利した。その翌週にはミルリーフS(英GⅡ・T6F)に出走したが、ルクマンの3馬身差4着に敗退。その後のミドルパークS、デューハーストS、ウィリアムヒルフューチュリティSといった英国主要2歳戦には出走せずに休養入りし、2歳時の成績は5戦2勝となった。

本馬不在のミドルパークSはミルリーフSで2着だったジムクラックSの勝ち馬ストーカーが、デューハーストSはハンティングデールが、ウィリアムヒルフューチュリティSはジュライSで本馬に敗れたバカロフがそれぞれ勝利している。

競走生活(3歳前半)

3歳時は4月にニューマーケット競馬場で行われたヨーロピアンフリーH(T7F)から始動した。133ポンドという厳しい斤量が課せられたが、2着スペリーに1馬身差で勝利した。

続いて英2000ギニー(英GⅠ・T8F)に挑んだ。対戦相手は、クレイヴンSなど3戦無敗のダンシングブレーヴ、英シャンペンS・コヴェントリーSの勝ち馬でデューハーストS3着のシュアブレード、デューハーストSの勝ち馬ハンティングデール、レパーズダウンS・レパーズタウン2000ギニートライアルSの勝ち馬トカマデラ、サドラーズウェルズの2歳年下の全弟である愛ナショナルSの勝ち馬テートギャラリー、ヴィンテージS・グリーナムSの勝ち馬ファウストゥス、後にビワハヤヒデの父となるシャルード、ジョエルSの勝ち馬でグリーナムS3着のホールゲート、ギシュ賞2着馬ヘイルトゥロベルトなどだった。ダンシングブレーヴが単勝オッズ2.875倍の1番人気に支持され、シュアブレードが単勝オッズ4倍の2番人気、ハンティングデールが単勝オッズ9倍の3番人気、トカマデラとテートギャラリーが並んで単勝オッズ11倍の4番人気と続き、本馬は単勝オッズ13倍の6番人気だった。レースでは逃げるヘイルトゥロベルトの直後2番手を追走し、残り2ハロン地点の手前で先頭に立った。しかし本馬をマークするように追走していたダンシングブレーヴに残り1ハロン地点で並ぶ間もなくかわされてしまい、3馬身差の2着に敗れた(本馬から1馬身半差の3着はハンティングデールだった)。しかし後から見れば、本馬にとって距離が長いマイル戦で1980年代欧州最強馬ダンシングブレーヴの2着なら健闘したと言えるだろう。

2週間後の愛2000ギニー(愛GⅠ・T8F)では人気になったが、ベレスフォードS・テトラークSの勝ち馬フラッシュオブスティール、後のアーリントンミリオンS2着馬シャルード(ビワハヤヒデの父)といった面々に屈して、フラッシュオブスティールの6着と完敗。それから1か月後のセントジェームズパレスS(英GⅡ・T8F)では、3着シャルードを頭差で抑えるのが精一杯で、コヴェントリーSで本馬を破った後に英シャンペンSを勝ちデューハーストSで3着していたシュアブレードに2馬身差をつけられて2着に敗退。シュアブレードもこの年のクイーンエリザベスⅡ世Sを勝つ一流マイラーだったが、やはりマイル戦は本馬の守備範囲よりやや長いようであったため、夏場から短距離路線に向かった。

競走生活(3歳後半)

まずはジュライC(英GⅠ・T6F)に出走。キングズスタンドS・サンジョルジュ賞・グロシェーヌ賞と3連勝中のラストタイクーン、クリテリオンS・デュークオブヨークSの勝ち馬グレイディザイア、クイーンメアリーSの勝ち馬グウィディオンなどの実力馬が相手となった。しかし単勝オッズ2.75倍の1番人気に支持された本馬がレース中盤で早々に先頭に立って押し切り、2着グレイディザイアに3/4馬身差で勝利を収めた。

8月のスプリントCS(英GⅠ・T5F)では、前走4着のラストタイクーン、パレスハウスS・テンプルS・キングジョージSの勝ち馬でキングズスタンドS2着のダブルシュワルツの2頭が強敵だった。本馬はその2頭を抑えて単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持されたが、その2頭いずれにも屈して、ラストタイクーンの2馬身1/4差3着に敗れた。

9月のスプリントC(英GⅡ・T6F)では単勝オッズ2.25倍の1番人気に応えて、2着ホールゲイトに首差で勝利した。その後は渡仏してアベイドロンシャン賞(仏GⅠ・T1000m)に参戦。しかしダブルシュワルツ、プティクヴェール賞・サンジョルジュ賞・グロシェーヌ賞・セーネワーズ賞2回の勝ち馬パリオリ、ホールゲイトの3頭に屈して、ダブルシュワルツの2馬身差4着に敗れた。

その後は渡米してサンタアニタパーク競馬場で行われたBCスプリント(米GⅠ・D6F)に出走した。対戦相手は、トムフールH・フォアゴーHなどの勝ち馬でベルモントフューチュリティS・シャンペンS2着のグルーヴィ、ガヴァナーズHの勝ち馬ベッドサイドプロミス、アーリントンクラシックS・エクワポイズマイルHの勝ち馬で前年のBCスプリント2着のスマイル、ブルーグラスS・ルイジアナダービーの勝ち馬でフォアゴーH2着のテイラーズスペシャル、メドウランズBCHなど4連勝中のパインツリーレーン、カーターHの勝ち馬でメトロポリタンH2着のラヴザットマック、それに同じく欧州から遠征してきたダブルシュワルツなど8頭だった。短距離のGⅠ競走を勝っていたのは本馬とダブルシュワルツのみだったが、芝とダートの違いを考慮されたために評価されず、ダブルシュワルツは単勝オッズ21.9倍の7番人気、本馬は単勝オッズ33倍の8番人気だった。本馬はスタートが悪く後方からの競馬となり、道中で中団まで押し上げたものの直線で後退して、勝った単勝オッズ12倍の3番人気馬スマイルから11馬身差をつけられた9着最下位と大敗。ダブルシュワルツは8着であり、戦前の予想どおりに2頭ともダートでは通用しなかった。本馬はこのレースを最後に3歳時9戦3勝の成績で競走馬を引退した。

血統

Danzig Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Pas de Nom Admiral's Voyage Crafty Admiral Fighting Fox
Admiral's Lady
Olympia Lou Olympia
Louisiana Lou
Petitioner Petition Fair Trial
Art Paper
Steady Aim Felstead
Quick Arrow
Foreign Courier Sir Ivor Sir Gaylord Turn-to Royal Charger
Source Sucree
Somethingroyal Princequillo
Imperatrice
Attica Mr. Trouble Mahmoud
Motto
Athenia Pharamond
Salaminia
Courtly Dee Never Bend Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Lalun Djeddah
Be Faithful
Tulle War Admiral Man o'War
Brushup
Judy-Rae Beau Pere
Betty Derr

ダンチヒは当馬の項を参照。本馬は父の2年目産駒で、父の産駒として初めて欧州のGⅠ競走を制し、米国で供用されて米国を中心に活躍馬を出していた父の血が欧州にも広がる第一歩となった。

母フォーリンクーリアは不出走馬。本馬の全妹ユーセフィアの子にはミシカルガール【プリンセスマーガレットS(英GⅢ)】、孫には日本で走ったダークシャドウ【毎日王冠(GⅡ)・エプソムC(GⅢ)・2着天皇賞秋(GⅠ)】がいる。

フォーリンクーリアの母コートリーディーは競走馬としては33戦4勝と並だったが、繁殖牝馬としては非常に優れており、フォーリンクーリアの半兄アリウープ(父アルハタブ)【サプリングS(米GⅠ)】、半兄ネイティヴクーリエ(父エクスクルシヴネイティヴ)【セネカH(米GⅢ)・ブライトンビーチH(米GⅢ)・バーナードバルークH(米GⅢ)】、半妹アルセア(父アリダー)【ハリウッドスターレットS(米GⅠ)・サンタスサナS(米GⅠ)・アーカンソーダービー(米GⅠ)・ハリウッドジュヴェナイルCSS(米GⅡ)・デルマーデビュータントS(米GⅡ)・デルマーフューチュリティ(米GⅡ)】、半弟ケトー(父エクスクルシヴネイティヴ)【カウディンS(米GⅠ)】、半妹エイシャー(父アリダー)【レアパフュームS(米GⅡ)】、半妹アクウィリージャ(父アリダー)【ニューヨークH(米GⅡ)・ブラックヘレンH(米GⅢ)】、半弟トワイニング(父フォーティナイナー)【ウィザーズS(米GⅡ)・ピーターパンS(米GⅡ)】と活躍馬を数多く産み、1983年にはケンタッキー州最優秀繁殖牝馬に選ばれている。

コートリーディーは牝系子孫も発展させており、フォーリンクーリアの半姉プリンセスウーラ(父アルハタブ)の子にはアザーム【シドニーC(豪GⅠ)】が、半妹エンベリッシュド(父シアトルスルー)の子にはシアトルドーン【デラウェアH(米GⅡ)・スノーグースH(米GⅢ)】が、アルセアの子にはデスティニーダンス【シープスヘッドベイH(米GⅢ)】、日本で走って1994年の中央競馬最優秀三歳牝馬に選ばれたヤマニンパラダイス【阪神三歳牝馬S(GⅠ)】、孫にはバレット【フリゼットS(米GⅠ)】、BCクラシックの勝ち馬ブレイムの父であるアーチ【スーパーダービー(米GⅠ)】、アコマ【スピンスターS(米GⅠ)】、ヤマニンパラダイスの子であるヤマニンセラフィム【京成杯(GⅢ)】が、フォーリンクーリアの半妹で日本に繁殖牝馬として輸入されたバラダ(父ダマスカス)の孫にはノーリーズン【皐月賞(GⅠ)】、グレイトジャーニー【シンザン記念(GⅢ)・ダービー卿チャレンジトロフィー(GⅢ)】、玄孫にはワンアンドオンリー【東京優駿(GⅠ)・神戸新聞杯(GⅡ)・ラジオNIKKEI杯2歳S(GⅢ)】が、半妹メイディー(父ロベルト)の子にはデファクト【ヤングアメリカS(米GⅢ)】が、半妹ナマクア(父ストームバード)の子にはナマカランド【ランプライターH(米GⅢ)】が、エイシャーの子にはアルディザ【ゴーフォーワンドH(米GⅠ)】、アトリエ【モリーピッチャーBCH(米GⅡ)・ターンバックジアラームH(米GⅢ)・ネクストムーヴH(米GⅢ)】が、アクウィリージャの子にはバートリーニ【ジュライS(英GⅢ)】、孫にはバイエルン【BCクラシック(米GⅠ)・ハスケル招待S(米GⅠ)】が、半妹アミセッテ(父フォーティナイナー)の子にはキングオブローム【メルドS(愛GⅢ)】、スーパーエスプレッソ【アレールデュポンディスタフS(米GⅢ)】がいるなど、活躍馬のオンパレード状態となっている。コートリーディーの母チュールの従姉妹の子には米国の歴史的名馬スワップスがおり、カリフォルニアクロームも同じ牝系。→牝系:F21号族②

母父サーアイヴァーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は英国ナネリースタッド(シャドウェルスタッド)で種牡馬入りした。本馬が持っていたスピードを色濃く受け継いだ子が多く、産駒は世界各国の短距離の大レースで活躍している。産駒のステークスウイナーは97頭以上、繁殖牝馬の父としても75頭以上のステークスウイナーを送り出している。2011年に受精率低下のため28歳で種牡馬を引退した。その後もシャドウェルスタッドで余生を送っていたが、2015年9月に老衰のため32歳で安楽死の措置が執られた。本馬はオアシスドリームインヴィンシブルスピリットケープクロスなど後継種牡馬にも恵まれている。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1988

Colour Sergeant

ロイヤルハントC

1988

Redden Burn

デュッセルドルフ大賞(独GⅡ)

1988

Sheikh Albadou

BCスプリント(米GⅠ)・ナンソープS(英GⅠ)・スプリントC(英GⅠ)・キングズスタンドS(英GⅡ)

1989

Absurde

グロット賞(仏GⅢ)

1989

Magic Ring

ノーフォークS(英GⅢ)・ジョエルS(英GⅢ)

1989

Mojave

ハンガーフォードS(英GⅢ)

1989

Sahara Star

モールコームS(英GⅢ)

1990

Ardkinglass

ジャージーS(英GⅢ)

1990

Collier bay

英チャンピオンハードル(英GⅠ)・愛チャンピオンハードル(愛GⅠ)

1990

Desert Shot

アールオブセフトンS(英GⅢ)・ウインターヒルS(英GⅢ)

1990

Gabr

サンダウンマイル(英GⅡ)・クリテリオンS(英GⅢ)

1990

Mint Crisp

ヴィシー大賞(仏GⅢ)

1990

Tropical

フェニックススプリントS(愛GⅢ)・フライングファイブ(愛GⅢ)2回

1991

Owington

ジュライC(英GⅠ)・モエエシャンドンレネン(独GⅡ)・デュークオブヨークS(英GⅢ)・コーク&オラリーS(英GⅢ)

1992

Christmas Gift

ボイリングスプリングスH(米GⅢ)・ボーゲイH(米GⅢ)

1992

Desert Style

テトラークS(愛GⅢ)・バリーコーラスS(愛GⅢ)・フェニックススプリントS(愛GⅢ)

1993

Oriental Express

クイーンエリザベスⅡ世C・チェアマンズスプリント

1993

シンコウフォレスト

高松宮記念(GⅠ)・阪急杯(GⅢ)・函館スプリントS(GⅢ)

1994

Cape Cross

ロッキンジS(英GⅠ)・クイーンアンS(英GⅡ)・セレブレーションマイル(英GⅡ)

1994

Desert Story

ホーリスヒルS(英GⅢ)・クレイヴンS(英GⅢ)

1995

Desert Prince

愛2000ギニー(愛GⅠ)・ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ)・クイーンエリザベスⅡ世S(英GⅠ)

1995

Greenlander

ロベールパパン賞(仏GⅡ)

1995

Strike Hard

グリーンランズS(愛GⅢ)

1995

Tamarisk

スプリントC(英GⅠ)

1995

White Heart

チャールズウィッティンガムH(米GⅠ)・ターフクラシックS(米GⅠ)・エッティンゲンレネン(独GⅢ)

1996

Bint Allayl

ロウザーS(英GⅡ)・クイーンメアリーS(英GⅢ)

1996

メジロダーリング

函館スプリントS(GⅢ)・アイビスサマーダッシュ(GⅢ)

1997

Invincible Spirit

スプリントC(英GⅠ)・マクドナボーランドS(愛GⅢ)・デュークオブヨークS(英GⅢ)

1998

Rose Gypsy

仏1000ギニー(仏GⅠ)

1999

Heat Haze

ビヴァリーDS(米GⅠ)・メイトリアークS(米GⅠ)・ラスシエネガスH(米GⅢ)・チャーチルディスタフターフマイルS(米GⅢ)

2000

Alkaadhem

ジェベルハッタ(首GⅡ)・セレクトS(英GⅢ)

2000

Desert Lord

アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)

2000

Itnab

プリンセスロイヤルS(英GⅢ)

2000

New Seeker

ロイヤルハントC

2000

Oasis Dream

ミドルパークS(英GⅠ)・ジュライC(英GⅠ)・ナンソープS(英GⅠ)

2000

Splendid Era

ジョエルS(英GⅢ)

2001

Byron

ミルリーフS(英GⅡ)・レノックスS(英GⅡ)

2001

Diamond Green

ロシェット賞(仏GⅢ)

2001

Kheleyf

ジャージーS(英GⅢ)

2001

Lyonels Glory

フュルシュテンベルクレネン(独GⅢ)

2002

Kykuit

カルロキエザ賞(伊GⅢ)

2003

Markab

スプリントC(英GⅠ)・グリーンランズS(愛GⅢ)

2004

Only Answer

サンジョルジュ賞(仏GⅢ)・プティクヴェール賞(仏GⅢ)

2008

Maqaasid

クイーンメアリーS(英GⅡ)

2010

Mazameer

カブール賞(仏GⅢ)

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