アレクサンドローヴァ

和名:アレクサンドローヴァ

英名:Alexandrova

2003年生

鹿毛

父:サドラーズウェルズ

母:ショウク

母父:シャーリーハイツ

慢性的な出遅れ癖を持ちながらも史上5頭目の英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークス3競走制覇を達成した距離12ハロンのスペシャリスト

競走成績:2・3歳時に愛英仏で走り通算成績9戦4勝2着2回3着2回

誕生からデビュー前まで

クールモアグループ傘下のクエイブラッドストックにより生産された愛国産馬で、1歳10月のタタソールズセールにおいて42万ギニーの値段がついた。結局はクールモアの総裁ジョン・マグナー氏(名義はスーザン夫人)、マイケル・テイバー氏、デリック・スミス氏の3者の共有馬となり、愛国エイダン・パトリック・オブライエン調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳6月にカラー競馬場で行われたリステッド競走ブルースクエアS(T7F)で、主戦となるキーレン・ファロン騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ5.5倍の2番人気に推された。しかしスタートで出遅れて最後方からの競馬となってしまい、5頭を抜くのがやっとで、勝ったサハラプリンセスから6馬身3/4差の6着に敗れた。

次走は7月にグッドウッド競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスとなった。単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持されており、陣営も必勝を期していたはずだが、馬群の中団から伸びきれずに、勝ったデヴェロンから2馬身半差の3着に敗れた。

8月に愛国トレイリー競馬場で行われた芝8ハロンの未勝利戦が3戦目となった。ここでは単勝オッズ1.53倍の断然人気となり、今度こそ負けるわけには行かない状況だった。ところがまたしてもスタートで大きく出遅れて、最後方からの競馬となってしまった。これは駄目かと思われたが、レース中盤で仕掛けると瞬く間に先頭に立ち、そのまま後続をちぎり捨てて2着ナウチカルデザインに10馬身差をつけて圧勝した。

9月にはフィリーズマイル(英GⅠ・T8F)に出走。このレースにはスウィートソレラS・メイヒルSを連勝してきたナシージという有力馬が出走しており、単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持されていた。一方、未勝利戦を勝ってきただけの本馬だったが、その未勝利戦の内容が評価されて、単勝オッズ3.75倍の2番人気となった。スタートが切られるとナシージが果敢に先頭に立ち、対照的に本馬は後方からレースを進めた。そして残り2ハロン地点で進出を開始して、脚色が鈍ったナシージを抜き去ったのだが、左右によれている間に、2番手を走っていたプレステージS勝ち馬ナンニナに叩き合いに持ち込まれてしまい、競り負けて短頭差2着に敗れた。2歳時の成績は4戦1勝だった。

競走生活(3歳時)

血統背景などから距離が伸びてこその馬だと陣営は考えていたようで、3歳時は英1000ギニーを無視して英オークスを目指した。まずは英1000ギニーの10日後にヨーク競馬場で行われたムシドラS(英GⅢ・T10F88Y)に出走。単勝オッズ1.53倍という断然の1番人気に支持された。ところがスタートして間もなく落鉄して躓いてしまうアクシデントがあった。そのために後方からのレースとなってしまい、それでも道中で早めに仕掛けていったんは先頭に立ったものの、残り1ハロン地点で右側によれている隙に、単勝オッズ4.5倍の2番人気馬ショートスカートに差し返されて1馬身1/4差の2着に敗退した。

それでも次走は予定どおり英オークス(英GⅠ・T12F10Y)となった。勝ち星が未勝利戦のみでありながら、よほど素質が評価されていたのか単勝オッズ3.25倍で1番人気の支持を集めた。単勝オッズ5.5倍の2番人気がショートスカートとリヤルマの2頭で、英1000ギニー馬スペシオーサは単勝オッズ6倍の4番人気に留まった。レースでは、スタートから逃げを打ったスペシオーサを先頭に出走馬が一団となって進んだ。本馬は馬群の後方内側を追走し、タッテナムコーナーで外側に持ち出した。直線入り口ではまだ後方だったが、鞍上のファロン騎手の手はまだあまり動かなかった。残り2ハロン地点でファロン騎手が満を持して仕掛けると、瞬く間に他馬をかわして先頭に踊り出た。あとは後続を引き離すだけで、2着ライジングクロスに6馬身差をつけて圧勝した。

次走の愛オークス(愛GⅠ・12F)では仏オークス馬コンフィディシャルレディとの対決となったが、本馬が単勝オッズ1.53倍という断然の1番人気に支持された。レースの12日前、主戦のファロン騎手は八百長疑惑で逮捕・起訴されて、裁判終了まで英国内における騎乗が禁止されていた(後日、証拠不十分で無罪確定)が、愛国内のレースには騎乗可能だったため、このレースでも本馬にはファロン騎手が騎乗した。レースでは英オークスと同様に後方待機策から直線半ばで他馬をかわして先頭に立ち、そのまま引き離すというレースぶりで、2着スコティッシュステージに4馬身差をつけて完勝した。

本馬は続いてヨークシャーオークス(英GⅠ・T12F)に出走。ファロン騎手は前述の理由で騎乗出来なかったため、マイケル・キネーン騎手に乗り代わっていた。最大の強敵と目されていたサンクルー大賞勝ち馬プライドが回避したとはいえ、ムシドラSで本馬を破ったショートスカートの他、ミラノ大賞の勝ち馬シャムダラ、ランカシャーオークスの勝ち馬アレグレット、ノーブレスSの勝ち馬シナコヴァ、パオロメザノッテ賞の勝ち馬イグジビットワンと、本馬を含む出走馬6頭全てがグループ競走勝ち馬だったが、本馬が単勝オッズ1.44倍の断然人気に支持された。レースではスタート直後から最後方に陣取り、残り3ハロン地点から進出を開始。そして残り1ハロン地点で先頭に立ち、2着ショートスカートに3馬身半差をつけて完勝。1999年のラムルマ以来7年ぶり史上5頭目となる英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークスの3競走制覇を達成した(英国では“Oaks hat trick”と呼ぶらしい)。

次走は凱旋門賞ではなくオペラ賞(仏GⅠ・2000m)となった。主戦のファロン騎手はこの年の7月に行われたジャンプラ賞のレース後の薬物検査で引っ掛かっていたが、まだ仏国ジョッキークラブから正式な処分が出ていなかったため、このレースで本馬に騎乗することが出来た(この年の12月から半年間の騎乗停止)。対戦相手はアスタルテ賞・ヴェルメイユ賞と仏国GⅠ競走2連勝中のマンデシャ、南アフリカから来た名牝イリデセンス、フィリーズマイルで本馬を破ったコロネーションS勝ち馬ナンニナなどで、本馬が出走したレースの中で最もメンバーが揃ったレースとなった。それでも本馬は単勝オッズ1.73倍の1番人気に支持された。しかしまたしてもスタートで出遅れて最後方からのレースとなり、直線一気に追い込んできたが、先に抜け出して勝ったマンデシャから3馬身1/4差、2着となった翌年の同競走勝ち馬サトワクイーンからも2馬身半差をつけられて3着に敗退。3歳時はこれが最後のレースとなった。

この年に“Oaks hat trick”を含む5戦3勝の成績を残した本馬だが、直接対決で敗れたのが原因でカルティエ賞最優秀3歳牝馬のタイトルはマンデシャに取られてしまった。

当初は翌年も現役続行の予定だったが、結局復帰することなく4歳秋に引退が発表された。

競走馬としての特徴

本馬は12ハロンの距離では3戦全勝(全てGⅠ競走)なのに対して、それより短い距離では6戦して未勝利戦の1勝のみと、完全に12ハロンのスペシャリストであったと言える。もっとも、それは競走能力による距離適性の問題だけではなく、スタートで出遅れる事が非常に多かったため、短い距離のレースでは前に届かない事が多かったという理由もあったのは明白である。

血統

Sadler's Wells Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Lalun Djeddah
Be Faithful
Special Forli Aristophanes
Trevisa
Thong Nantallah
Rough Shod
Shouk Shirley Heights Mill Reef Never Bend Nasrullah
Lalun
Milan Mill Princequillo
Virginia Water
Hardiemma ハーディカヌート ハードリドン
Harvest Maid
Grand Cross Grandmaster
Blue Cross
Souk Ahonoora Lorenzaccio Klairon
Phoenissa
Helen Nichols Martial
Quaker Girl
Soumana Pharly Lyphard
Comely
Faizebad Prince Taj
Floralie

サドラーズウェルズは当馬の項を参照。

母ショウクは現役成績8戦1勝。その産駒には本馬の半姉マジカルロマンス(父バラシア)【チェヴァリーパークS(愛GⅠ)】がいる。マジカルロマンスは本馬が3歳だった2006年11月のタタソールズセールにおいて、460万ギニー(約935万ドル)で取引された。これは繁殖牝馬としては2005年に900万ドルで取引されたアシャドを上回る世界最高額である。マジカルロマンスのチェヴァリーパークS勝ちは最低人気での勝利であり、この高額は半妹である本馬の活躍によるところが大きいと思われる。ショウクの半姉ピュス(父ダルシャーン)の子にポンジー【ランカシャーオークス(英GⅡ)】、曾孫にチキータ【愛オークス(愛GⅠ)】が、ショウクの半妹シタラ(父サルス)の子にゴールデンソード【チェスターヴァーズ(英GⅢ)】がいる。デュンカ【仏1000ギニー(仏GⅠ)】、ドユーン【英2000ギニー(英GⅠ)】、日本で走ったアドマイヤボサツ【東京大賞典】やチアズグレイス【桜花賞(GⅠ)】も同じ牝系。→牝系:F21号族①

母父シャーリーハイツは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は愛国クールモアスタッドで繁殖入りした。しばらくは繁殖牝馬として結果を出していなかったが、8歳時に産んだ牡駒アレックスマイボーイ(父ダラカニ)がバルブヴィル賞(仏GⅢ)】を勝利している。

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