アイスカペイド

和名:アイスカペイド

英名:Icecapade

1969年生

芦毛

父:ニアークティック

母:シェナニガンズ

母父:ネイティヴダンサー

競走馬としては一流半だったがノーザンダンサーに次ぐニアークティック直系第2の主流の祖となったラフィアンの半兄

競走成績:2~4歳時に米で走り通算成績32戦13勝2着6回3着1回

誕生からデビュー前まで

米国ケンタッキー州クレイボーンファームにおいて、メリーランド州ローカストヒルスタッドの所有者スチュアート・S・ジャーニー・ジュニア氏とバーバラ・ジャーニー夫人の夫妻により生産・所有された。

牝馬としては非常に大柄な馬だった半妹ラフィアンと異なり、成長しても体高は15.3ハンドという小柄な馬だった。しかも非常に激しい気性の持ち主で、クレイボーンファームの育成担当者ニック・ロッツ氏をてこずらせたという。こうした体格や気性などの特徴は、同じくニアークティックを父に持つノーザンダンサーと通じるものがあった。当初はフランク・ホワイトリー・ジュニア調教師(後にラフィアンも手掛けることになる)に預けられたが、後に彼の息子デヴィッド・ホワイトリー調教師の管理馬となっている。

競走生活

2歳時に競走馬デビューして、この年は10戦4勝の成績を挙げているが、ステークス競走で入着することは無かった。

3歳時は4月にデラウェアヴァレーH(D6F)に出走して、オーバーアレンジド、シェブロンフライトに続く3着に入った。翌月のケンタッキーダービーを始めとする米国三冠競走にはすべて不参戦であり、裏街道を進んだ。5月にはウィザーズS(D8F)に出走して、前走のプリークネスSで2着してきたレムセンS・ダービートライアルSの勝ち馬キートゥザミント(後にこの年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬に選ばれる)の1馬身差2着と好走。6月のサラナクS(D8F)では、後にジムダンディS・メトロポリタンH・ガヴァナーS・ユナイテッドネーションズHなどを勝つテンタムを2着に破って、ステークス競走の初勝利を挙げた。

8月のケルソH(D6F)も勝ち、同月末のフォールハイウェイトH(D6F)ではスピンスターS・ヴェイグランシーHの勝ち馬シュークルートの2着だった。さらに9月のロングポートH(D7F)では、スウィフトS・ベイショアSの勝ち馬エクスプローデントを2着に破って勝利。スタイヴァサントH(D8F)では再びテンタムを破って勝利した。同年にはモンマスパーク競馬場ダート6ハロンの一般競走で、1分08秒6のコースレコードを計時している。3歳時の成績は14戦6勝だった。

4歳時は6月のナッソーカウンティH(米GⅢ・D7F)で、2着トラフィックコップに5馬身半差をつけて、1分20秒4のレースレコードで勝利。このレース後に本馬の権利の一部がD・S・マクバリッシュ夫人により45万ドルで購入された。7月のウイリアムデュポンジュニアH(米GⅡ・D8.5F)では微妙に距離が長いはずだったが、チャールズHストラブS・ハリウッドジュヴェナイルCSS・カリフォルニアジュヴェナイルS・サンハシントSの勝ち馬ロイヤルオウルや、リグスH・カムデンHの勝ち馬モベイを蹴散らして勝利した。8月のアトランティックシティH(D8.5F)でも、サプリングS・ワシントンパークHの勝ち馬ストーンチアヴェンジャーを2着に破って勝利した。4歳時の成績は8戦3勝だった。この年限りで競走馬を引退。

引退の理由は怪我などではなく、本馬のあまりの気性の激しさのため、人間を傷つけることを恐れたジャーニー・ジュニア氏が引退を決定したのだという。もっとも、現役時代に本馬の気性難が原因で誰かが怪我をしたということは無かったという。また、その優れたスピードは評判になっていたという。

馬名の“Icecapade”は、英語の“Ice”と“Escapade”の結合語で、1940年から長年にわたり米国で実施されたアイススケートショーのことだという。なお、“Escapade”は「常軌を逸した行為」の意味で、「いたずら」という意味の母シェナニガンズ(Shenanigans)の馬名にちなんでいるようである。

血統

Nearctic Nearco Pharos Phalaris Polymelus
Bromus
Scapa Flow Chaucer
Anchora
Nogara Havresac Rabelais
Hors Concours
Catnip Spearmint
Sibola
Lady Angela Hyperion Gainsborough Bayardo
Rosedrop
Selene Chaucer
Serenissima
Sister Sarah Abbots Trace Tracery
Abbots Anne
Sarita Swynford
Molly Desmond
Shenanigans Native Dancer Polynesian Unbreakable Sickle
Blue Glass
Black Polly Polymelian
Black Queen
Geisha Discovery Display
Ariadne
Miyako John P. Grier
La Chica
Bold Irish Fighting Fox Sir Gallahad Teddy
Plucky Liege
Marguerite Celt
Fairy Ray
Erin Transmute Broomstick
Traverse
Rosie Ogrady Hamburg
Cherokee Rose

ニアークティックは当馬の項を参照。

母シェナニガンズは米で走り22戦3勝、メリーランドフューチュリティで2着している。繁殖牝馬としては優秀であり、本馬の半妹にして米国競馬史上最も有名な悲劇のヒロインであるニューヨーク牝馬三冠馬ラフィアン(父レヴュワー)【ソロリティS(米GⅠ)・スピナウェイS(米GⅠ)・エイコーンS(米GⅠ)・マザーグースS(米GⅠ)・CCAオークス(米GⅠ)・ファッションS(米GⅢ)・アストリアS(米GⅢ)・カムリーS(米GⅢ)】、本馬の半弟バックファインダー(父バックパサー)【ウイリアムデュポンジュニアH(米GⅡ)】も産んでいる。ラフィアンは夭折したために子孫を残せなかったが、その代わりに本馬の半妹ラフター(父ボールドルーラー)が牝系子孫を伸ばしており、その子にブルーエンスン【ウッドローンS(米GⅢ)】、ライトスピリッツ【ランプライターH(米GⅢ)】、プライヴェートタームズ【ウッドメモリアルS(米GⅠ)・ゴーサムS(米GⅡ)・マサチューセッツH(米GⅡ)・フェデリコテシオS(米GⅢ)】が、孫にメサビメイデン【ブラックアイドスーザンS(米GⅡ)】、ウォーニンググランス【フォートマーシーH(米GⅢ)】、コロナドズクエスト【ハスケル招待H(米GⅠ)・トラヴァーズS(米GⅠ)・カウディンS(米GⅡ)・レムセンS(米GⅡ)・ウッドメモリアルS(米GⅡ)・リヴァリッジS(米GⅡ)・ドワイヤーS(米GⅡ)・ナシュアS(米GⅢ)】が、玄孫世代以降にオーブ【ケンタッキーダービー(米GⅠ)・フロリダダービー(米GⅠ)】、サジェスティヴボーイ【ラウル&ラウルEチェバリエル大賞(亜GⅠ)・エストレージャス大賞ジュヴェナイル(亜GⅠ)・ドスミルギネアス大賞(亜GⅠ)・亜ジョッキークラブ大賞(亜GⅠ)・フランクEキルローマイルS(米GⅠ)】など、活躍馬が多く出ている。

シェナニガンズの半姉ブラーニーキャッスル(父ナスルーラ)の孫にはサイボーグ【モーリスジロワ賞】、曾孫にはグリーンフォレスト【モルニ賞(仏GⅠ)・サラマンドル賞(仏GⅠ)・仏グランクリテリウム(仏GⅠ)・ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ)】、玄孫にはエピトム【BCジュヴェナイルフィリーズ(米GⅠ)】が、シェナニガンズの半姉ロングフォード(父メノウ)の子にはキャッスルフォーブス【ソロリティS・エイコーンS】、孫にはアイリッシュキャッスル【ホープフルS】、アルペンラス【メイトロンS(米GⅠ)】が、シェナニガンズの半姉レイクス(父ターントゥ)の子にはアイリッシュカウンティ【アスタリタS】、玄孫世代以降にはシェアードアカウント【BCフィリー&メアターフ(米GⅠ)】、ニューイヤーズデイ【BCジュヴェナイル(米GⅠ)】が、シェナニガンズの半妹キャッスルハイド(父タルヤー)の曾孫にはデーモンズビーゴーン【アーカンソーダービー(米GⅠ)】、パインブラフ【プリークネスS(米GⅠ)】、玄孫にはフサイチペガサス【ケンタッキーダービー(米GⅠ)】が、シェナニガンズの半妹アイリッシュトリップ(父グローブマスター)の孫には日本で走ったグローバルゴット【北上川大賞典2回・みちのく大賞典】がいる。

シェナニガンズの母ボールドアイリッシュの半姉ブランサムも牝系子孫を発展させており、孫にハイヴォルテージ【メイトロンS・セリマS・エイコーンS・CCAオークス】、曾孫にステューペンダス【アーリントンH・ホイットニーH】、インプレッシヴ【サラトガスペシャルS】、グレートパワー【サプリングS】、ワイズエクスチェンジ【フラミンゴS・ファウンテンオブユースS】、玄孫世代以降にマジェスティックライト【スワップスS(米GⅠ)・モンマス招待H(米GⅠ)・エイモリーLハスケルH(米GⅠ)・マンノウォーS(米GⅠ)】、レヴェランス【ナンソープS(英GⅠ)・スプリントC(英GⅠ)】、日本で走ったドリームジャーニー【朝日杯フューチュリティS(GⅠ)・宝塚記念(GⅠ)・有馬記念(GⅠ)】、史上7頭目の中央競馬三冠馬オルフェーヴル【皐月賞(GⅠ)・東京優駿(GⅠ)・菊花賞(GⅠ)・有馬記念(GⅠ)2回・宝塚記念(GⅠ)】の兄弟がいる。

ボールドアイリッシュの母エリンはガゼルHの勝ち馬で、その半妹ポティーンの子にはスィーン【アーリントンラッシーS】、ポットラック【ピムリコフューチュリティ・アーリントンクラシックS・ジョッキークラブ金杯】、米国顕彰馬ビウィッチ【アーリントンラッシーS・アッシュランドS・ヴァニティH】がいる。→牝系:F8号族③

母父ネイティヴダンサーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ゲインズウェイファームで種牡馬入りした。本馬と同じくニアークティックを父に、ネイティヴダンサーを母父に持つノーザンダンサーの系統が世界の血統図を塗り替えるほど繁栄したため配合相手に制限がかかる中で、73頭(69頭とする資料もある)のステークスウイナーを送り出して種牡馬として大きな成功を収めた。ステークスウイナー率は12.5%(又は11.8%)だった。北米首位種牡馬になる事は無かったが、1984年には北米種牡馬ランキングでシアトルスルーに次ぐ2位、1990年には同4位(1位はアリダー)に入っている。1988年11月にゲインズウェイファームにおいて19歳で他界した。

本馬の代表産駒の1頭イズヴェスティアは、1990年に前年のウィズアプルーヴァル(当馬の従兄弟)に次ぐ史上4頭目のカナダ三冠馬となり、同年のソヴリン賞年度代表馬・最優秀3歳牡馬・最優秀芝牡馬を受賞した名馬だったが、翌年10月のロスマンズ国際Sにおいて左後脚を骨折して予後不良となり、本馬の後継種牡馬になることはできなかった。しかしワイルドアゲインやクレヴァートリックが後継種牡馬として成功し、現在も直系は残っている。また、繁殖牝馬の父としても優れており、レディーズシークレットマークオブディスティンクションなど70頭以上のステークスウイナーを輩出した。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1976

Ice Cool

テヴェレ賞(伊GⅡ)

1979

Delicate Ice

ブラックアイドスーザンS(米GⅡ)

1980

Am Capable

アフェクショネイトリーH(米GⅢ)・ディスタフH(米GⅢ)

1980

Fatih

アーケイディアH(米GⅡ)・ゴールデンゲートH(米GⅡ)

1980

Hyperborean

スワップスS(米GⅠ)

1980

Kingsbridge

加ブリーダーズS

1980

Wild Again

BCクラシック(米GⅠ)・メドウランズCH(米GⅠ)・ニューオーリンズH(米GⅡ)・オークローンH(米GⅡ)

1981

Don Rickles

ナシュアS(米GⅢ)

1982

Tiffany Ice

サンフォードS(米GⅡ)

1985

Ice Tech

ハニービーH(米GⅢ)

1986

Ski Champ

5月25日大賞(亜GⅠ)

1986

Wonders Delight

スカイラヴィルS(米GⅡ)・アルキビアデスS(米GⅡ)

1987

Izvestia

クイーンズプレート・加プリンスオブウェールズS・加ブリーダーズS・モルソンエクスポートミリオン(加GⅡ)・カナディアンターフH(米GⅡ)・フォアランナーS(米GⅢ)・エクリプスH(加GⅢ)

1987

Rue de Palm

デルマーデビュータントS(米GⅡ)

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