和名:シックスパーフェクションズ |
英名:Six Perfections |
2000年生 |
牝 |
鹿毛 |
父:ケルティックスウィング |
母:ヨジャ |
母父:リヴァーマン |
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不利を受けるレースが多く能力に見合う競走実績は残せなかったが、伯母ミエスクに続くBCマイル・ジャックルマロワ賞制覇を達成する |
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競走成績:2~4歳時に仏英愛米で走り通算成績14戦6勝2着6回3着1回 |
誕生からデビュー前まで
ニアルコスファミリーにより生産・所有された仏国産馬で、仏国パスカル・F・バリー調教師に預けられた。
競走生活(2歳時)
2歳6月にシャンティ競馬場で行われたジャルダン賞(T1100m)で、主戦となるティエリ・テュリエ騎手を鞍上にデビューした。単勝オッズ6倍の2番人気だった本馬は、好位を追走してゴール前で追い上げるも、伯母ミエスクの主戦騎手だったフレデリック・ヘッド調教師の管理馬トレヴィゼに3/4馬身届かずに2着に敗れた。勝ち馬トレヴィゼは競走馬としてはこれが生涯唯一の勝利ながら、後に凱旋門賞2連覇の女傑トレヴの母となる馬だった。
2戦目は、4週間後にドーヴィル競馬場で行われたリステッド競走ローランドシャンビュール賞(T1400m)だった。ここでも単勝オッズ6.6倍の2番人気だったが、2着ネリーノーランに6馬身差で圧勝して初勝利を挙げた。
翌8月に同コースで行われたカルヴァドス賞(仏GⅢ・T1400m)では、単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持された。ここでは3番手の好位追走から残り200m地点で一気に先頭に立ち、2着となった単勝オッズ14.4倍の4番人気馬ロンドンネットドットコムに4馬身差をつけて完勝した。
2歳最終戦は、10月のマルセルブサック賞(仏GⅠ・T1600m)となった。2戦2勝のエトワールモンタント(後のフォレ賞勝ち馬)、チェリーヒントンS2着・ミルリーフS3着のカシス、チェリーヒントンS・モイグレアスタッドSで各3着してきたパールダンス、デビュータントSを勝ってきたレインボーズフォーオール、同2着だったイエスタデイなどが対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持され、エトワールモンタントが単勝オッズ6.4倍の2番人気、パールダンスが単勝オッズ6.5倍の3番人気となった。スタートからエトワールモンタントが逃げを打ち、本馬は馬群の中団を追走した。そして5番手で直線に入ると、残り200m地点でエトワールモンタントを抜き去り、最後は2馬身差をつけて完勝した。
2歳時は4戦3勝の成績で、フィリーズマイルなど3戦無敗のソヴィエトソング、チェヴァリーパークSを勝利した5戦3勝のエアウェーヴ、ロウザーS・プリンセスマーガレットSの勝ち馬でチェヴァリーパークS2着の4戦3勝馬ルシアンリズムなどを抑えて、カルティエ賞最優秀2歳牝馬に選ばれた。
競走生活(3歳前半)
3歳時は4月にメゾンラフィット競馬場で行われたリステッド競走インプルーデンス賞(T1400m)から始動した。単勝オッズ1.6倍の1番人気に支持された本馬だが、馬群の中団で激しく折り合いを欠いてしまい、テュリエ騎手が手綱をとても強く引っ張っていた。さらには残り300m地点で進路を失うなど、レース内容としては最悪に近かったが、それでも残り200m地点で抜け出して2着キャムシーフェルズに1馬身半差で勝利した。
次走は仏1000ギニーではなく英1000ギニー(英GⅠ・T8F)となった。この年の英1000ギニーはおそらく同競走史上最高のレベルを誇っており、フィリーズマイルなど3戦無敗のまま挑んできた前述のソヴィエトソング(古馬になってファルマスS2回・サセックスS・メイトロンSとGⅠ競走4勝を挙げて、翌年のカルティエ賞最優秀古馬に選出)、唯一の敗戦は仏グランクリテリウムでカルティエ賞最優秀2歳牡馬ホールドザットタイガーの3着に敗れたのみの4戦3勝馬インターコンティネンタル(古馬になってBCフィリー&メアターフ・メイトリアークSなどを制して2年後のエクリプス賞最優秀芝牝馬に選出)、UAE1000ギニーを勝ってきたメゾソプラノ(後にヴェルメイユ賞を勝利)、4戦3勝で挑んできた前述のルシアンリズム(後にコロネーションS・ナッソーS・ロッキンジSにも勝利)、フレッドダーリンSの勝ち馬タントローズ(翌年にスプリントCを勝利)、フィリーズマイル・ロックフェルSで2着していたカジュアルルック(次走の英オークスを勝利)といった、後のGⅠ競走勝ち馬がずらりと並んでいた。他にもネルグウィンSを勝ってきたクルード、チェリーヒントンSの勝ち馬スピノラ、メイヒルSの勝ち馬サミットヴィル、UAE1000ギニー2着馬ゴンフィリア、この年のプリティポリーS(このレースがGⅠ競走になったのは惜しくも翌年から)を勝つハナミ、レパーズタウン1000ギニートライアルSで2着してきたランクレッセ、ネルグウィンS3着馬ヘクターズガールなどが出走していたから、どの馬を買うべきなのかファンは迷いに迷う状況だった。
そんな稀に見るハイレベルなメンバー構成の中で、単勝オッズ2.75倍の1番人気に支持されたのは本馬だった。そして、ソヴィエトソングが単勝オッズ5倍の2番人気、インターコンティネンタルが単勝オッズ6倍の3番人気、メゾソプラノが単勝オッズ8倍の4番人気、ルシアンリズムが単勝オッズ13倍の5番人気と続いていた。
スタートが切られると、単勝オッズ17倍の7番人気馬ヘクターズガールが先頭に立ち、メゾソプラノ、ゴンフィリアなどがそれを追撃。本馬、ソヴィエトソング、インターコンティネンタル、ルシアンリズムなど有力馬の大半は馬群の中団から後方辺りにつけた。残り2ハロン地点の勝負どころで後方にいた有力馬勢が一斉に仕掛けて上がっていった。もちろん本馬も上がっていこうとしたのだが、ここで馬群に包まれて抜け出せなくなってしまった。本馬がもたもたしている間に、インターコンティネンタルが先頭に立ち、さらにそれをルシアンリズムがかわした。残り1ハロン地点でようやく馬群を抜け出した本馬はゴール前で猛然と追い上げてきたが、この超ハイレベルなメンバー構成の中では完璧な騎乗をしなければ勝てなかったようで、明らかに脚を余して、ルシアンリズムの1馬身半差2着に敗れてしまった。
次走は愛1000ギニー(愛GⅠ・T8F)となった。ルシアンリズム、前走3着のインターコンティネンタル、同4着のソヴィエトソングといった有力馬勢の大半は不在であり、前走とは打って変わってかなり薄いメンバー構成となった。テュリエ騎手に代わってジョニー・ムルタ騎手とコンビを組んだ本馬が単勝オッズ1.3倍という断然の1番人気に支持され、前走8着のイエスタデイが単勝オッズ6.5倍の2番人気、アサシSで後の愛オークス馬ヴィンテージティプルを2着に破ってきたワライフが単勝オッズ10倍の3番人気、レパーズタウン1000ギニートライアルSを勝ってきたディミトロワが単勝オッズ17倍の4番人気、マルセルブサック賞で本馬から7馬身差の3着だったルミナタと前走15着のランクレッセが並んで単勝オッズ21倍の5番人気であり、ほぼ確実に本馬が勝ちそうな雰囲気だった。
スタートが切られると、まずはランクレッセが先頭に立った。ディミトロワやイエスタデイがそれを追って先行して、本馬は馬群の中団につけた。19頭立ての多頭数だった前走と異なり、今回は8頭立てだった。それにも関わらず、直線でムルタ騎手は内側を突こうとして失敗し、残り2ハロン地点で馬群に包まれてしまった。残り1ハロン地点で馬群を抜け出して追い上げてきたが、イエスタデイに短頭差届かずに2着に敗れてしまった。勝ったイエスタデイは後に英オークス・ヴェルメイユ賞・オペラ賞で2着しているから決して弱い馬ではなかったし、本馬から3/4馬身差の3着だったディミトロワは後のフラワーボウル招待S・アメリカンオークスの勝ち馬であるから、先にメンバーが薄いと書いたけれどもレベルが低いレースというわけではなく、脚を余して勝てるようなものでは無かったということである。
競走生活(3歳後半)
その後は少し休養し、8月のアスタルテ賞(仏GⅡ・T1600m)で復帰した。前走イスパーン賞でファルブラヴの2着してきた前年の仏オークス・オペラ賞の勝ち馬ブライトスカイ、仏オークスで3着してきた仏1000ギニー馬ミュージカルチャイムズ、前走クロエ賞を4馬身差で圧勝してきたアカゴ、インプルーデンス賞で本馬の2着後にヴァントー賞を勝っていたキャムシーフェルズなどが対戦相手となった。再びテュリエ騎手が騎乗した本馬が単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持され、アカゴが単勝オッズ3.8倍の2番人気、ブライトスカイが単勝オッズ5.9倍の3番人気、ミュージカルチャイムズが単勝オッズ6.5倍の4番人気となった。レースでは、キャムシーフェルズのペースメーカー役だったテッサリーフが逃げを打ち、過去2戦で脚を余した反省からか本馬は3番手につけた。そして残り400m地点で仕掛けて、残り200m地点で先頭に立った。しかし今回は仕掛けが早すぎたようで、本馬よりワンテンポ遅れて仕掛けたブライトスカイにゴール直前でかわされてしまい、首差2着に敗れた。
次走はジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)となった。英1000ギニーも同競走史上屈指のメンバー構成だったが、この年のジャックルマロワ賞もまた同競走史上屈指と思われる好メンバーが名を連ねた。かつて英シャンペンSでロックオブジブラルタルに黒星を付けた後に2度の長期休養に追い込まれていたが前走クイーンアンSを勝って復活したドバイディスティネーション、前年のBCマイル・ロンポワン賞を勝っていた同じニアルコスファミリーの所有馬ドームドライヴァー、前年の仏2000ギニー・ジャックルマロワ賞を勝っていたヴァオリミクス、5連勝でこの年の仏2000ギニーを勝利したクロドヴィル、3戦無敗の仏オークス馬ネブラスカトルネード、独2000ギニー馬マルティロ、メシドール賞を勝ってきたスペシャルカルドゥーンなどが出走。日本からも、前年のNHKマイルCの勝ち馬でこの年の京王杯スプリングCを勝っていた勝浦正樹騎手騎乗のテレグノシス、中山記念・マイラーズCを勝ち安田記念で3着してきた後藤浩輝騎手騎乗のローエングリンの2頭が参戦していた。ドバイディスティネーションが単勝オッズ2倍の1番人気に支持され、本馬が単勝オッズ4.33倍の2番人気、ドームドライヴァーとネブラスカトルネードが並んで単勝オッズ8倍の3番人気、マルティロが単勝オッズ17倍の5番人気となった。
スタートが切られると、本馬陣営が用意したペースメーカー役のフォーマルハウトが逃げ、ドバイディスティネーション陣営のペースメーカー役ブレイタントや、ローエングリンがそれを追撃。本馬は馬群の中団好位につけた。残り400m地点でネブラスカトルネードが先頭に立ち、そこにテレグノシスやドームドライヴァーなども並びかけて横一線の勝負となった。しかしそこへ後方から本馬がやって来てまとめて差し切り、2着ドームドライヴァーに短首差で勝利した。テレグノシスはさらに1馬身差の3着、ローエングリンは10着だった。
その後は一間隔を空けてから、米国サンタアニタパーク競馬場で行われたBCマイル(米GⅠ・T8F)に向かった。さすがBCマイルだけあって、英1000ギニーやジャックルマロワ賞にも引けをとらないかなりの有力馬が顔を揃えた。ブルーグラスS・ハスケル招待H・ルイジアナダービーの勝ち馬でトラヴァーズS2着・ケンタッキーダービー3着の3歳馬ピースルールズ、エディリードHの勝ち馬でシューメーカーBCマイルS2着のスペシャルリング、オークツリーBCマイルSなど3連勝中のデザインドフォーラック、ミドルパークS・ジュライC・ナンソープSの勝ち馬でこの年のカルティエ賞最優秀短距離馬に選ばれるオアシスドリーム、この年の英2000ギニー馬で愛ナショナルS・デスモンドSも勝っていたリフューズトゥベンド、キーンランドターフマイルSで3着してきたクリテリウムドメゾンラフィット・メイカーズマークマイルS・アットマイルの勝ち馬タッチオブザブルース、キーンランドターフマイルSを勝ってきたパーフェクトソウル、ニアークティックSを勝っていた加国の実力馬ソアリングフリー、クレメントLハーシュ記念ターフCSSで3着してきたデルマーHの勝ち馬アイリッシュウォリアー、愛国際S・アーケイディアHなどの勝ち馬センチュリーシティ、タンフォランH・フランクEキルローマイルHの勝ち馬でエディリードH2着のデカーチー、ケルソBCHを勝ってきたフリーフォーインターネットの合計12頭が対戦相手となった。2歳時は芝路線で活躍していたピースルールズが単勝オッズ4.1倍の1番人気に支持され、スペシャルリングが単勝オッズ6.1倍の2番人気、本馬とデザインドフォーラックが並んで単勝オッズ6.3倍の3番人気となった。
本馬には、米国の名手ジェリー・ベイリー騎手が米国内限定で騎乗した。スタートが切られるとピースルールズが先頭に立ち、ソアリングフリー、デザインドフォーラックなどがそれを追撃。13頭立ての12番枠という外枠発走だった上にスタートダッシュがつかなかった本馬は、馬群の中団後方につけた。ピースルールズが逃げて作り出したペースは、最初の2ハロン通過が22秒28、半マイル通過は45秒4というハイペース。このペースが祟ったのか、ピースルールズは四角途中で馬群に飲み込まれ、本馬を含む後続勢が一斉に押し寄せてきた。2~3番手を追走していたソアリングフリーとデザインドフォーラックが直線でいったんは先頭に立ったが、そこへ馬群の中から本馬とタッチオブザブルースの2頭が叩き合いながら伸びてきた。残り1ハロン地点で失速した前の2頭をかわした本馬とタッチオブザブルースに加えて、ゴール前で猛然と追い込んできたセンチュリーシティによる三つ巴の勝負となったが、2着タッチオブザブルースを3/4馬身押さえ込んだ本馬が優勝し、1987・88年に2連覇した伯母ミエスクに続くBCマイル制覇を成し遂げた。
3歳時の成績は6戦3勝(うちGⅠ競走2勝)だったが、カルティエ賞最優秀3歳牝馬の座は英1000ギニー・コロネーションS・ナッソーSを制したルシアンリズムに、エクリプス賞最優秀芝牝馬の座はBCフィリー&メアターフを勝ったイズリントンに奪われてしまった。
競走生活(4歳時)
ミエスクに続くBCマイル連覇を目指して4歳時も現役を続行。まずはミエスクの4歳時と同じく5月のイスパーン賞(仏GⅠ・T1850m)から始動した。ジャックルマロワ賞6着後にムーランドロンシャン賞を勝っていたネブラスカトルネード、ローマ賞の勝ち馬サンストラッチ、独国のGⅡ競走モーリスラクロアトロフィーの勝ち馬チェックイット、前年のジャンプラ賞・伊2000ギニーで2着していたプリンスカークの4頭が対戦相手だった。実績的には本馬とネブラスカトルネードの牝馬2頭が群を抜いており、本馬が単勝オッズ1.73倍の1番人気、ネブラスカトルネードが単勝オッズ2.625倍の2番人気で、3番人気のサンストラッチは単勝オッズ11倍という完全なる2強ムードだった。
スタートが切られると単勝オッズ21倍の4番人気馬チェックイットが先頭に立ち、ネブラスカトルネードが2番手、本馬は4番手につけた。直線に入るとネブラスカトルネードが先頭に並びかけようとしたが、非常に嫌々ながら走っているのが誰の目にも明らかなほど折り合いを欠いていたネブラスカトルネードは先頭に立つ間もなく失速。その代わりに残り300m地点で仕掛けた本馬が、残り200m地点で先頭に立った。これで本馬の勝利かと思われた次の瞬間、最後方からの直線勝負に賭けていた単勝オッズ26倍の最低人気馬プリンスカークにかわされてしまい、半馬身差の2着に敗れた(ネブラスカトルネードは5着最下位だった)。
次走はクイーンアンS(英GⅠ・T8F)となった。3歳時は4戦未勝利に終わるも前走リッジウッドパールSを勝ってきたソヴィエトソング、ネブラスカトルネード、前年のBCマイル11着後は迷走していたリフューズトゥベンド、ロッキンジSで2着してきたキウスーラ賞3回・エドモンブラン賞の勝ち馬サルスロン、ロッキンジSで3着してきたノーズダンサー、イスパーン賞で3着だったチェックイットなどとの対戦となった。対戦相手の中に過去に本馬に先着経験がある馬が1頭もいなかった事もあり、本馬が単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持され、ソヴィエトソングが単勝オッズ7倍の2番人気、ネブラスカトルネードが単勝オッズ8倍の3番人気となった。ところが本馬は馬群の中団後方を進むも、残り1ハロン地点で右側によれて失速し、勝ったリフューズトゥベンドから4馬身差の6着に敗退。生涯唯一の着外に終わったばかりか、過去に先着を許した事が無かったリフューズトゥベンド、ソヴィエトソング(2着)、ネブラスカトルネード(4着)などに先着されるという結果となった。
その2か月後には汚名返上を期して、前年に勝利したジャックルマロワ賞(仏GⅠ・T1600m)に参戦。このレースには、英1000ギニー・愛1000ギニー・コロネーションS・チェリーヒントンS・クイーンメアリーSなどを勝っていた天才少女アトラクション、前走モーリスドギース賞で2着してきたモルニ賞・クリテリウムドメゾンラフィットの勝ち馬ウィッパー、クインシー賞・パース賞・エドモンブラン賞・シュマンドフェルデュノール賞を勝ってきたマイリスク、クイーンアンSで本馬より上位の3着だったサルスロン、ジャージーSの勝ち馬ケレイフ、前年の本馬と同じくアスタルテ賞で2着してきたフレッドダーリンSの勝ち馬マジェスティックデザート、ファルマスSで3着してきたサンドランガン賞の勝ち馬バカー、ミルリーフS・レノックスSの勝ち馬バイロンなどが対戦相手となった。本馬が前走の敗戦にも関わらず単勝オッズ2.625倍の1番人気に支持され、前走のファルマスSでソヴィエトソングの2着に敗れるまでは8戦全勝だったアトラクションが単勝オッズ3.75倍の2番人気、ウィッパーが単勝オッズ7.5倍の3番人気となった。
スタートが切られると、本馬陣営がアトラクション潰しのために用意したラビット役のフォーマルハウトが強引に先頭を奪い、アトラクションは2番手、本馬はウィッパーと共に中団につけた。このレースは重馬場で行われており、前脚を外側から内側に巻き込むように叩きつけながら走るという独特の走法だったアトラクションには厳しく、フォーマルハウトに競られた影響もあって早々に失速。そして本馬とウィッパーの2頭がほぼ同時に中団から抜け出してきたが、過去に重・不良馬場では5戦4勝だったウィッパーのほうが脚色は良く、一足先にゴールイン。本馬は1馬身差の2着に敗れた。
その後は前年同様に米国に向かい、ローンスターパーク競馬場で行われたBCマイル(米GⅠ・T8F)に参戦した。米国競馬名誉の殿堂博物館S・ジャマイカH・ヒルプリンスSなどの勝ち馬アーティーシラー、フォースターデイヴH・ターフマイルS・トロピカルパークダービー・パームビーチSなどの勝ち馬ナッシングトゥルーズ、前走ムーランドロンシャン賞で5着だったウィッパー、エディリードHを2連覇してきた前年の同競走8着馬スペシャルリング、ラホヤH・デルマーダービーを連勝してきたブラックドーン、アットマイル・ハイランダーS・プレイザキングHなど5連勝中だった前年の同競走5着馬ソアリングフリー、サンフランシスコBCマイルHの勝ち馬でシューメーカーBCマイルS2着のシングルタリー、仏2000ギニー・セントジェームズパレスS・ムーランドロンシャン賞で各2着だったロシェット賞の勝ち馬ダイヤモンドグリーン、ケルソBCHを勝ってきたミスターオブライエン、バーナードバルークHの勝ち馬シルヴァーツリー、前年のアスタルテ賞10着以来の本馬との顔合わせとなるジョンCメイビーH・オークツリーBCマイルSの勝ち馬ミュージカルチャイムズ、ムーランドロンシャン賞で3着だったレイルウェイSの勝ち馬アントニウスピウス、パットオブライエンBCH・デルマーBCカップHで2着だったサンタカタリナS・ストラブSの勝ち馬ドメスティックディスピュートの13頭が対戦相手となった。前年に比べると対戦相手のレベルは一枚落ちであり、米国競馬名誉の殿堂博物館S・ジャマイカHと連続圧勝してきたもののGⅠ競走は当時未勝利だったアーティーシラー(「当時」としたのは翌年のBCマイルを勝っているため)が単勝オッズ4.8倍の1番人気に支持され、ナッシングトゥルーズが単勝オッズ5.3倍の2番人気、連覇がかかる本馬が単勝オッズ6.9倍の3番人気、ウィッパーが単勝オッズ8.1倍の4番人気、スペシャルリングが単勝オッズ9.6倍の5番人気だった。
スタートが切られると、ソアリングフリーがスペシャルリング、ドメスティックディスピュート、ウィッパーなどを引き連れて逃げ、本馬はやはり中団好位を追走した。そして四角で位置取りを上げていこうとしたが、ここで馬群に包まれて進路を失い、鞍上のベイリー騎手が立ち上がるほどの不利を受けた。本馬が立ち往生している間に、対照的に馬群の間を上手くすり抜けた単勝オッズ17.5倍の8番人気馬シングルタリーが一気に先頭に立った。そして単勝オッズ32.4倍の13番人気馬アントニウスピウスの追撃を半馬身凌いで優勝。一方の本馬は、直線入り口で後方4番手の位置取りまで下がってしまったが、ここから直線一気の末脚を繰り出して、アントニウスピウスまで1馬身半差の3着まで盛り返しており、不利さえ無ければ勝っていたのではと思わせる惜しい内容だった。このレースを最後に、4歳時4戦未勝利の成績で競走馬を引退した。
不思議な馬名だが、これは仏教用語の「六波羅蜜多」のことであるらしい。波羅蜜多とは般若経に出てくる、悟りを完成させるための修行のことであり、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・知恵の6種類があるそうである。
血統
Celtic Swing | ダミスター | Mr. Prospector | Raise a Native | Native Dancer |
Raise You | ||||
Gold Digger | Nashua | |||
Sequence | ||||
Batucada | Roman Line | Roman | ||
Lurline B. | ||||
Whistle a Tune | Double Jay | |||
Siama | ||||
Celtic Ring | Welsh Pageant | Tudor Melody | Tudor Minstrel | |
Matelda | ||||
Picture Light | Court Martial | |||
Queen of Light | ||||
Pencuik Jewel | Petingo | Petition | ||
Alcazar | ||||
Fotheringay | Right Royal | |||
La Fresnes | ||||
Yogya | Riverman | Never Bend | Nasrullah | Nearco |
Mumtaz Begum | ||||
Lalun | Djeddah | |||
Be Faithful | ||||
River Lady | Prince John | Princequillo | ||
Not Afraid | ||||
Nile Lily | Roman | |||
Azalea | ||||
Pasadoble | Prove Out | Graustark | Ribot | |
Flower Bowl | ||||
Equal Venture | Bold Venture | |||
Igual | ||||
Santa Quilla | Sanctus | Fine Top | ||
Sanelta | ||||
Neriad | Princequillo | |||
Sea-Change |
父ケルティックスウィングは当馬の項を参照。
母ヨジャは不出走馬。ヨジャの半姉には20世紀のマイル女王ミエスク(父ヌレイエフ)【BCマイル(米GⅠ)2回・サラマンドル賞(仏GⅠ)・マルセルブサック賞(仏GⅠ)・英1000ギニー(英GⅠ)・仏1000ギニー(仏GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)2回・ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ)・イスパーン賞(仏GⅠ)】がいる。ミエスクの子には名種牡馬キングマンボ【仏2000ギニー(仏GⅠ)・セントジェームズパレスS(英GⅠ)・ムーランドロンシャン賞(仏GⅠ)】、イーストオブザムーン【仏1000ギニー(仏GⅠ)・仏オークス(仏GⅠ)・ジャックルマロワ賞(仏GⅠ)】、ミエスクズサン【リゾランジ賞(仏GⅢ)】、孫にはランプルスティルトスキン【モイグレアスタッドS(愛GⅠ)・マルセルブサック賞(仏GⅠ)】、曾孫にはタペストリー【ヨークシャーオークス(英GⅠ)】、リアルスティール【ドバイターフ(首GⅠ)】、玄孫にはカラコンティ【BCマイル(米GⅠ)・ジャンリュックラガルデール賞(仏GⅠ)・仏2000ギニー(仏GⅠ)】がいる。また、ヨジャの半姉ワンライフ(父レミグラン)の子には日本で走ったキュンティア【2着阪神三歳牝馬S(GⅠ)】、孫にはオディール【ファンタジーS(GⅢ)】、曾孫にはルカヤン【仏2000ギニー(仏GⅠ)】がいる。母系には他にもミエスクの項に記載したとおり多くの活躍馬がおり、名牝系である。→牝系:F20号族②
母父リヴァーマンは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬はニアルコスファミリー所有のもと、米国で繁殖入りした。初子の牡駒プラネットファイヴ(父ストームキャット)がグロシェーヌ賞(仏GⅡ)を勝つなど13戦3勝の成績を残した後に豪州で種牡馬入りしている。