デイジュール

和名:デイジュール

英名:Dayjur

1987年生

黒鹿

父:ダンチヒ

母:ゴールドビューティ

母父:ミスタープロスペクター

他馬を寄せ付けぬ圧倒的な加速力を武器に欧州短距離路線を席巻し「世界で最も速い馬」と評された20世紀末英国の誇る稀代の超短距離馬

競走成績:2・3歳時に英仏米で走り通算成績11戦7勝2着3回

成長しても体高15.3ハンド程度という小柄な身体ながら、そのコンパクトな身体をばねのように使って抜群のスピードを発揮した稀代の快速馬で、レーシングポスト紙をして「世界で最も速い馬である」と言わしめた。現在でも近代欧州競馬における最強の短距離馬との呼び声が高い。

誕生からデビュー前まで

ジョージア・E・ホフマン氏により米国ケンタッキー州において生産された。前述のとおり小柄な馬だったが、父が快速種牡馬ダンチヒ、母はエクリプス賞最優秀短距離馬ゴールドビューティ、母の父は大種牡馬ミスタープロスペクターという血統背景から注目馬であり、ドバイのシェイク・ハムダン殿下によって165万ドルで購入され、英国ディック・ハーン調教師に預けられた。主戦はウィリー・カーソン騎手で、本馬の全レースに騎乗した。

競走生活(2歳時)

2歳6月にニューベリー競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスでデビューして、単勝オッズ1.53倍の1番人気に支持された。2番人気のソレイユグランという馬が単勝オッズ11倍だったから、完全に一本かぶりの人気だった。スタートは今ひとつだったが、すぐに加速していき、残り1ハロン地点で先頭を奪うと、2着となった単勝オッズ17倍の7番人気馬アルマグリブに2馬身差をつけて楽勝した。

翌月に同じニューベリー競馬場で出走したリステッド競走ローズボウルS(T6F)では、本馬が単勝オッズ1.62倍の1番人気に支持され、チェシャムSで2着してきたオサリオが単勝オッズ3.5倍の2番人気となった。しかし今回もスタートで後手を踏んでしまった本馬は、ゴール前で猛然と追い上げてきたものの、逃げた単勝オッズ11倍の4番人気馬ラッシュモアに届かずに半馬身差の2着に敗れた。それでも、3着となったオサリオには7馬身差をつけていた。

その後は呼吸器官に変調をきたして手術が行われたため、残りの2歳シーズンは棒に振ってしまい、2歳時の成績は2戦1勝となった。

競走生活(3歳前半)

3歳4月にニューマーケット競馬場で行われたリステッド競走ヨーロピアンフリーH(T7F)で復帰した。本馬が単勝オッズ5倍の1番人気に支持され、デューハーストS3着馬アンシャンが単勝オッズ5.5倍の2番人気、ジムクラックS2着・愛ナショナルS3着のブックザバンドが単勝オッズ7.5倍の3番人気、オサリオが単勝オッズ8倍の4番人気、ラッシュモアが単勝オッズ9倍の5番人気となった。しかし本馬にとっては7ハロンでも距離が長すぎたようで、中団追走から残り2ハロン地点で仕掛けるも伸びずに、勝ったアンシャンから6馬身1/4差をつけられた7着に大敗。8着ラッシュモアに短頭差先着するのが精一杯で、ローズボウルSで7馬身ちぎったオサリオ(アンシャンから1馬身半差の2着)に大きく先着されてしまった。

この後は英2000ギニーに出走する予定だったのだが、このレース内容から白紙となった。その代わりにノッティンガム競馬場に向かい、5月初めのヘディングリーS(T6F)に出走した。本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、ノーフォークS3着馬エラプスが単勝オッズ4倍の2番人気、オーソーシャープS3着馬フラワーガールが単勝オッズ8倍の3番人気となった。今回はスタートから先行してレース中盤で先頭に立った。そして残り1ハロン地点から二の脚を使って逃げ切り、9ポンドのハンデを与えた2着フラワーガールに2馬身差をつけて勝利した。

その後はニューベリー競馬場に向かい、前走から17日後のヒューウィリアムスS(T6F)に出走した。本馬が単勝オッズ2.75倍の1番人気、ヨーロピアンフリーH3着後に仏2000ギニーに出て4着だったブックザバンドが単勝オッズ2.875倍の2番人気となった。ここではスタートから先頭に立って逃げ切りを図ったが、単勝オッズ21倍の5番人気馬トッドに残り2ハロン地点で並びかけられた。ここから差し返そうとしたものの、残り1ハロン地点からひと伸びしたトッドに競り負けて頭差の2着に敗れた。

それから10日後にはサンダウンパーク競馬場にやってきて、テンプルS(英GⅡ・T5F)に出走した。対戦相手は、キングジョージS・パレスハウスSの勝ち馬で前年のナンソープS3着のスタトブレスト、プティクヴェール賞・デュークオブヨークSなど5連勝中のルガナビーチ、前年のキングズスタンドS2着馬ティガニ、コーク&オラリーS・サンジョルジュ賞2着のナビールダンサー、パレスハウスS3着馬ブライトンラッド、独国のGⅢ競走スプリンター賞の勝ち馬でコーク&オラリーS3着のサヴァーラサウンドなど7頭だった。スタトブレストが単勝オッズ3.25倍の1番人気、ルガナビーチが単勝オッズ4.33倍の2番人気、ティガニとナビールダンサーが並んで単勝オッズ6倍の3番人気で、本馬は単勝オッズ6.5倍の5番人気止まりだった。しかしスタートが切られると先行争いを制して先頭に立ち、そのまま徐々に差を広げていった。そして2着ティガニに2馬身差をつけて逃げ切り勝利した。

その後は25日後のキングズスタンドS(英GⅡ・T5F)に向かった。テンプルS7着後にグロシェーヌ賞を勝ってきたナビールダンサー、テンプルS2着から直行してきたティガニ、同3着から直行してきたスタトブレスト、同6着から直行してきたルガナビーチ、ジョエルSの勝ち馬アージェンタム、前走グロシェーヌ賞で2着してきたサンジョルジュ賞の勝ち馬ロンズヴィクトリー、パレスハウスS2着馬ブージー、デュークオブヨークS3着馬マドモワゼルクロエなど14頭が対戦相手となった。ナビールダンサーが単勝オッズ5倍の1番人気、ティガニが単勝オッズ5.5倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.5倍の3番人気、アージェンタムが単勝オッズ8倍の4番人気、ルガナビーチが単勝オッズ9倍の5番人気となった。雨天のため馬場状態が湿っており、ハーン師はそれを心配していたようだが、ハムダン殿下の主張によって出走に踏み切った。今回も本馬はスタートから先頭に立ち、そのまま他馬を引き付けて逃げ続けた。そして残り2ハロン地点で仕掛けると、残り1ハロン地点から後続を引き離し、唯一追いすがってきた2着ロンズヴィクトリーに2馬身半差、3着ルガナビーチにはさらに6馬身差をつけて勝利した。

競走生活(3歳後半)

その後の目標は、ジュライC・ナンソープS・スプリントCの英国短距離路線の最高峰3競走となった(日本ではこの3競走を総称して英国短距離三冠競走と呼ぶことがあるが、英国ではそうした表現は見られない)。しかしその中で最初に行われ、かつ最も格が高いとされるジュライCは軽度の怪我で回避となった。

そのため次走はキングズスタンドSから2か月後のナンソープS(英GⅠ・T5F)となった。キングズスタンドS13着後に出走したキングジョージSを勝ってきたアージェンタム、キングズスタンドS7着後に出走したキングジョージSでは6着だったスタトブレスト、キングズスタンドS3着後に出走したジュライCでは7着だったルガナビーチ、テンプルS4着後にキングジョージSで2着してきたブライトンラッド、愛フェニックスS・プリンセスマーガレットSの勝ち馬でモイグレアスタッドS・モートリー賞2着のファラオズディライト、米国から遠征してきたトゥルーノースH・ブージャムH・ボールドルーラーH・ローズベンHの勝ち馬でヴォスバーグS3着のミスターニッカーソンなど8頭が対戦相手となった。本馬が単勝オッズ1.73倍の1番人気、アージェンタムが単勝オッズ3.75倍の2番人気、スタトブレストが単勝オッズ15倍の3番人気、ミスターニッカーソンが単勝オッズ19倍の4番人気、ルガナビーチが単勝オッズ21倍の5番人気となった。

このレースで本馬はスタートこそあまり良くなかったが、抜群の手応えですぐに先頭を奪うと、他馬を引き連れて逃げ続けた。そして残り2ハロン地点で仕掛けて、残り1ハロン地点で後続との差を広げるというお得意の走りに持ち込んだ。最後は鞭も使わず馬なりのまま走り、2着スタトブレストに4馬身差、3着ファラオズディライトにはさらに2馬身差をつけて圧勝。勝ちタイム56秒16は従来の記録を1秒縮める驚異的なコースレコードであり、レーシングポスト紙は「実に印象的なレースでした」と賞賛した。なお、後に本馬の訃報を伝えるジャパン・スタッドブック・インターナショナルの記事(レーシングポスト紙の記事を引用したという)には、ハムダン殿下のレーシングマネージャーだったアンガス・ゴールド氏が「私は人生最後の日にヨーク競馬場でのことを思い出すでしょう。デイジュールは時速100万マイルでスタートし、疲れ始めただろうと思った時に新たな脚力で再び加速しました。これまで競馬場で目にした中で最も印象的な事柄の1つです」と語ったという話が載っていたが、時速100万マイル(≒160万km。地球を40周する距離)は誇張にすぎるだろう。

ナンソープSの15日後に出走したスプリントC(英GⅠ・T6F)では、ロウザーS・チェヴァリーパークS・モーリスドギース賞・クイーンメアリーSの勝ち馬デッドサーテイン、コーク&オラリーSの勝ち馬で愛2000ギニー・ジュライC2着のグレートコモーション、キングズスタンドS2着後に出走したリゾランジ賞を勝ってきたロンズヴィクトリー、いずれもナンソープSから直行してきたスタトブレストとファラオズディライト、ヒューウィリアムスSで本馬を破って勝った後にモートリー賞・フェニックススプリントSで3着してきたトッドなどに加えて、本馬が不在のジュライCを勝っていたテトラークSの勝ち馬で愛2000ギニー2着のロイヤルアカデミーも参戦してきた。本馬にとっては6ハロンでもやや長いかと思われたが、それでも単勝オッズ1.5倍の1番人気に支持された。ロイヤルアカデミーが単勝オッズ6.5倍の2番人気、デッドサーテインが単勝オッズ7.5倍の3番人気、グレートコモーションとロンズヴィクトリーが並んで単勝オッズ17倍の4番人気となった。

スタートが切られると本馬がすぐに先頭に立ち、後続を引き付けながら逃げ続けた。そして残り2ハロン地点で仕掛けて他馬との差を一気に広げていった。そこへ馬群の中からロイヤルアカデミーが飛び出して本馬に迫ってきたが、最後まで本馬の影を踏むことは出来なかった。最後は2着ロイヤルアカデミーに1馬身半差、3着ファラオズディライトにはさらに5馬身差をつけて逃げ切り優勝。英国短距離路線の頂点に立った。

その後は仏国に遠征して、アベイドロンシャン賞(仏GⅠ・T1000m)に出走した。対戦相手は、ナンソープSで6着だったルガナビーチ、スプリントC3着後に2戦未勝利だったファラオズディライト、スプリントC7着から直行してきたスタトブレスト、キングズスタンドS8着後にフライングファイブを勝っていたブージーなど5頭だったが、どれもこれも本馬とは勝負付けが済んでいた馬ばかりだった。スプリントCで5着に終わっていたロンズヴィクトリーは仏国短距離路線のトップを走っていた馬だったが、本馬から逃げるように回避していた(代わりにダイアデムSに出走して10馬身差で圧勝している)。そのため、本馬が勝つかどうかよりも、どのように勝つのかが焦点になる状況だった。

アベイドロンシャン賞が行われる直線コースは、ロンシャン競馬場の観客席から遠く離れてよく見えないのだが、スタートから瞬く間に先頭を奪い、レース中盤で後続に5馬身ほどの差をつけて独走態勢に入った本馬の姿だけは遠くからでもよく分かったという。ゴール前では馬なりで走り、2着ルガナビーチに2馬身差をつける完勝で、GⅠ競走3連勝とした。なお、このレースのゴール直前でスピードが一瞬落ちているのだが、その理由はコース内に延びていた何かの影を飛び越えたためであると言われている。映像で見ると、確かに何かを飛び越えるような仕草があり、鞍上のカーソン騎手が一瞬体勢を崩す場面が見て取れるのだが、後のBCスプリントと異なり地面に影が延びていたかどうかが判然としないため、真相は不明である。

BCスプリント

欧州最強短距離馬となった本馬は米国短距離王の称号をも戴冠するべく、ベルモントパーク競馬場で行われたBCスプリント(米GⅠ・D6F)に参戦した。対戦相手は、前走エインシャントタイトルBCHを勝ってきたコーウィンベイ、前年のBCスプリントを筆頭にサバーバンH・カーターH・トゥルーノースHなどを勝ちホイットニーH・フォアゴーHで2着していたダンシングスプリー、ナンソープS7着後にフィラデルフィアパークBCH・ブージャムHで連続2着していたミスターニッカーソン、一般競走3連勝で臨んできたセニョールスピーディ、サプリングS・フォールハイウェイトH・ブージャムHの勝ち馬カーソンシティ、テストS・ジェニュインリスクS2回・プライオレスS・バドワイザーBCH2回・バドワイザーBCSの勝ち馬で前年のBCスプリントで2着して前年のエクリプス賞最優秀短距離馬に選ばれた後の米国顕彰馬セイフリーケプト、フィラデルフィアパークBCHの勝ち馬でフランクJドフランシス記念ダッシュS2着・ヴォスバーグS3着のグリッターマン、トリプルベンドH・ベルエアH・アフィナミナンHの勝ち馬プロスペクターズギャンブル、日本の河内洋騎手が騎乗するカウディンS・シャンペンS・リヴァリッジSの勝ち馬でベルモントフューチュリティS・アーリントンクラシックS2着のアジュディケーティング、シェリダンS・コモンウェルスBCS・エクワポイズマイルHの勝ち馬で翌年のエクリプス賞年度代表馬に選ばれるブラックタイアフェアーなど13頭だった。ダート競走を走るのは初めてだった本馬だが、コーウィンベイと並んで単勝オッズ3.4倍の1番人気に支持された。ダンシングスプリーが単勝オッズ5.7倍の3番人気、ミスターニッカーソンが単勝オッズ8.2倍の4番人気、セニョールスピーディとカーソンシティのカップリングが単勝オッズ10.5倍の5番人気、セイフリーケプトが単勝オッズ13.2倍の6番人気となった。

スタートが切られるとセイフリーケプトが絶好のスタートからそのまま逃げを打ち、本馬が2番手、グリッターマンが3番手でそれを追走した。向こう正面でミスターニッカーソンが心臓麻痺を起こして落馬競走中止となり、それに巻き込まれたシェイカーニットも転倒するという事故があった(2頭とも命を落とした)が、逃げるセイフリーケプトと追いかける本馬には影響は無く、この2頭が並んで直線を向いた。直線では後続を引き離して、外側の本馬と内側のセイフリーケプトによる壮絶な一騎打ちが演じられた。そしてゴールまであと僅かのところで本馬が遂に前に出た。ところが次の瞬間、ブリーダーズカップ史上に残る珍事が起こったのである。本馬がコース内に延びていたスタンドの影を跨ぐように飛び跳ねてしまったのである。ここで一瞬本馬のスピードが落ちた隙を突いて再度セイフリーケプトが先頭を奪った。バランスを崩したカーソン騎手は慌てて体勢を立て直したが、時既に遅くセイフリーケプトに首差で敗れてしまった。なお、本馬はゴール地点にも延びていた別のスタンドの影をも再度飛び越えてしまっている(本馬の敗戦には2度目のジャンプも影響していると思っている人が多いようだが、2度目のジャンプ時には既にセイフリーケプトはほぼゴールしているから影響していない)。

本馬が影を飛び跳ねた理由は、その影を障害物か何かと勘違いしたためだとされている。後に本馬が種牡馬入りするシャドウェルファームの副代表リック・ニコルズ氏は「あれは彼の愛嬌でした」と後に語っている。優勝していれば欧州調教馬として史上初のBCスプリント制覇という快挙だったが果たせず、このレースを最後に3歳時9戦6勝の成績で競走馬を引退した。ただ、このBCスプリントの敗戦で本馬の名声に傷がつくことは無かったようである。

競走馬としての評価

この年の英仏の最優秀短距離馬だけでなく、名牝サルサビルを抑えて英年度代表馬にも選出された。また、国際クラフィケーションでは133ポンドという高評価が与えられた。この数値は2015年現在でも芝短距離部門における史上最高評価となっている(史上2位は2011年にブラックキャビアに与えられた132ポンド)。英タイムフォーム社のレーティングでは137ポンドの評価で、これは英国短距離路線においては、142ポンドのアバーナント、139ポンドのパッパフォーウェイに次ぐ第3位タイの評価(ライトボーイと同値。ブラックキャビアは136ポンド)であるが、上位2頭やライトボーイはいずれも1950年代の馬であるから、英国近代競馬において最高の評価を得ているのが本馬である事に変わりはない。

血統

Danzig Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Pas de Nom Admiral's Voyage Crafty Admiral Fighting Fox
Admiral's Lady
Olympia Lou Olympia
Louisiana Lou
Petitioner Petition Fair Trial
Art Paper
Steady Aim Felstead
Quick Arrow
Gold Beauty Mr. Prospector Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Gold Digger Nashua Nasrullah
Segula
Sequence Count Fleet
Miss Dogwood
Stick to Beauty Illustrious Round Table Princequillo
Knight's Daughter
Poster Girl Nasrullah
Banta
Hail to Beauty Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Lipstick Stymie
Pretty Jo

ダンチヒは当馬の項を参照。

母ゴールドビューティは現役成績12戦8勝。3歳時にフォールハイウェイトH(米GⅡ)・テストS(米GⅡ)・ラッシュランドS・スプリングヴァレーHを勝ち、6戦無敗で迎えたヴォスバーグH(米GⅠ)では脚を骨折しながらも3着(2着に繰り上がり)して、1982年のエクリプス賞最優秀短距離馬に選出された。故障休養明けの4歳時にもトゥルーノースH(米GⅢ)・リグレットHに勝っている。繁殖牝馬としても優秀で、本馬の半姉メイプルジンスキー(父ニジンスキー)【モンマスオークス(米GⅠ)・アラバマS(米GⅠ)】も産んでいる。メイプルジンスキーの子には1993年のニューヨーク牝馬三冠馬スカイビューティ【メイトロンS(米GⅠ)・エイコーンS(米GⅠ)・マザーグースS(米GⅠ)・CCAオークス(米GⅠ)・アラバマS(米GⅠ)・シュヴィーH(米GⅠ)・ヘンプステッドH(米GⅠ)・ゴーフォーワンドS(米GⅠ)・ラフィアンH(米GⅠ)・アディロンダックS(米GⅡ)・レアパフュームS(米GⅡ)・ヴェイグランシーH(米GⅢ)2回】、孫にはプレザントホーム【BCディスタフ(米GⅠ)】、テイルオブエカティ【ウッドメモリアルS(米GⅠ)・シガーマイルH(米GⅠ)】、曾孫にはパインアイランド【アラバマS(米GⅠ)・ガゼルS(米GⅠ)】、ポイントオブエントリー【マンノウォーS(米GⅠ)・ソードダンサー招待S(米GⅠ)・ジョーハーシュターフクラシック招待S(米GⅠ)・ガルフストリームパークターフH(米GⅠ)・マンハッタンH(米GⅠ)】、玄孫にはヴァイオレンス【キャッシュコールフューチュリティ(米GⅠ)】などがいる。

ゴールドビューティの祖母ヘイルトゥビューティの半姉プリンパーの子にはシーザーズウィッシュ【マザーグースS(米GⅠ)】がいるが、その後はかなり遡ってもなかなか特筆できる馬の名前が出てこない。名種牡馬ファラリス、米国顕彰馬スタイミー、英国三冠馬ゲイクルセイダーなどは同じ牝系だが、19世紀まで遡らないと彼等と本馬の牝系とは合致しない。→牝系:F1号族⑥

母父ミスタープロスペクターは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、ハムダン殿下が米国ケンタッキー州に所有するシャドウェルファームで種牡馬入りした。父ダンチヒの後継種牡馬として絶大な期待が寄せられたが、残念ながら期待に応える成績を残したとは言い難い。それでも勝ち上がり率は52%と比較的高く、産駒のステークスウイナーは30頭以上となっている。ちなみに、本馬のBCスプリントにおけるエピソードにちなんで名付けられたジャンプザシャドウという産駒もおり、54戦8勝の成績を挙げているが、グレード競走ではトレモントS(米GⅢ)の2着が最高だった。2010年1月に受精率低下を理由に種牡馬を引退。その後はシャドウェルファームで余生を送っていたが、2013年9月に老衰のため26歳で安楽死の措置が執られた。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1992

In Conference

ヒューマナディスタフH(米GⅢ)

1992

Millstream

ジョエルS(英GⅢ)・バリーオーガンS(愛GⅢ)

1992

ヒシチーム

JTB賞(金沢)

1993

With Fascination

カブール賞(仏GⅢ)

1994

Tipsy Creek

テンプルS(英GⅡ)・ノーフォークS(英GⅢ)

1994

シンコウスプレンダ

京成杯オータムH(GⅢ)・エルムS(GⅢ)

1995

Asfurah

チェリーヒントンS(英GⅡ)

1995

Hayil

ミドルパークS(英GⅠ)

1997

New Advantage

ゴールデンゲートダービー(米GⅢ)

2002

Eyjur

ブラジル共和国大統領大賞(シダージジャルジン)(伯GⅠ)

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