カヤージ

和名:カヤージ

英名:Kahyasi

1985年生

鹿毛

父:イルドブルボン

母:カディッシャ

母父:ブラッシンググルーム

祖父ニジンスキー以来18年ぶりに無敗で英ダービーと愛ダービーの連覇を達成し、繁殖牝馬の父として良績を残す

競走成績:2・3歳時に英愛仏で走り通算成績7戦5勝2着1回

誕生からデビュー前まで

アガ・カーンⅣ世殿下により生産・所有された愛国産馬で、英国ルカ・M・クマーニ調教師に預けられた。主戦はレイ・コクレーン騎手で、本馬の全レースに騎乗した。

競走生活(3歳前半まで)

2歳10月にニューマーケット競馬場で行われたソーハムハウスS(T8F)でデビューし、後に伊ジョッキークラブ大賞・ハードウィックS2回・セプテンバーSなどを勝ち、日本で種牡馬として活躍する事になるアサティスを3馬身差の2着に抑えて初勝利を挙げた。2歳時はこの1戦のみだったが、クマーニ師とコクレーン騎手はこの勝利に興奮し、来年の英ダービーでも勝負になると思ったという。

3歳時は4月にサンダウンパーク競馬場で行われたハーヴェスターS(T8F)から始動した。他の出走全馬より5ポンド重い128ポンドの斤量ながらも単勝オッズ1.4倍の1番人気に支持されると、3番手追走から残り1ハロン地点で先頭に立ち、2着ノーケイに2馬身差で勝利した。次走のリングフィールドダービートライアルS(英GⅢ・T12F)では、ベレスフォードSの勝ち馬インサン、後にジェフリーフリアSを勝ち英国際Sで2着・キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSで3着するトップクラスなどを抑えて、単勝オッズ1.83倍の1番人気に支持された。ここでも先行して3番手で直線に入ると、残り1ハロン地点で悠々と抜け出し、2着インサンに2馬身差をつけて勝利を収め、英ダービー馬の候補として名乗りを挙げた。

そして迎えた英ダービー(英GⅠ・T12F)では、ダンテSを勝ってきたレッドグロウ、ウォーレンSとチェスターヴァーズを連続して圧勝してきたアンフワイン、ニューマーケットS・プレドミネートSを連勝してきた後の英セントレジャー馬ミンスターサン、本馬と同じくアガ・カーンⅣ世殿下の所有馬である3戦無敗の英2000ギニー馬ドユーン、英2000ギニー2着馬チャーマー、ダンテS2着馬ケファー、サンダウンクラシックトライアルS2着・ダンテS3着のホーリスヒルS勝ち馬グラシアルストーム、エーピーインディの叔父という良血馬アルマフティ、愛フューチュリティS・プレドミネートSで2着してきたシェリフズスター(セイウンスカイの父)などが対戦相手となった。レッドグロウが単勝オッズ3.5倍の1番人気、アンフワインが単勝オッズ5.5倍の2番人気、ミンスターサンが単勝オッズ7倍の3番人気、ドユーンが単勝オッズ10倍の4番人気で、本馬は単勝オッズ12倍で5番人気の評価だった。

スタートが切られると、アンフワイン、アルマフティ、マクサド、アルムハルハルなどが先頭争いを演じ、レッドグロウは好位、本馬は後方待機策を採った。本馬は後方のままタッテナムコーナーを回ってきたが、直線に入ると外側に持ち出して豪快な末脚を繰り出した。そして2番手で直線に入って残り2ハロン地点で先頭に立っていたグラシアルストームや、好位から伸びていたドユーンを残り1ハロン地点で捕らえて先頭に立つと、内側で粘った2着グラシアルストームに1馬身半差をつけて快勝した。勝ちタイム2分33秒84は1964年に電子計時が開始されて以降では最速となる好タイムだった(電子計時開始以前も含めると、アガ・カーンⅣ世殿下の祖父アガ・カーンⅢ世殿下の所有馬マームードが1936年に計時した2分33秒8が当時の最速記録)。

競走生活(3歳後半)

続く愛ダービー(愛GⅠ・T12F)では、仏ダービー馬アワーズアフター、グラシアルストーム、リングフィールドダービートライアルS以来の実戦となるインサン、シルヴァーSを5馬身差で勝ってきたキュリオなどを抑えて、単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。英ダービーと同様に後方待機策を採ったが、途中で他馬と接触した際に左前脚を負傷して出血するというアクシデントがあった。そのためか直線入り口でもまだ後方だったが、逃げるインサンをゴール直前で際どく短頭差で差し切って優勝。1986年のシャーラスタニ以来2年ぶり史上10頭目となる英ダービー・愛ダービーのダブル制覇(海外の資料では“Dual Derby Winner”と記載されている)を果たした。無敗で英ダービーと愛ダービーを制覇したのは、1970年に達成した本馬の祖父ニジンスキー以来18年ぶり史上2頭目だった。

怪我の影響でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSは回避して夏場は休養。秋は凱旋門賞を目指してニエル賞(仏GⅡ・T2400m)から始動した。仏グランクリテリウム・パリ大賞の勝ち馬フィジャータンゴ、愛ダービーから直行してきたインサン、愛ダービーでは9着に終わっていたアワーズアフター、後にオークツリー招待H・カールトンFバークH・チャールズHストラブS・サンフアンカピストラーノ招待Hと米国GⅠ競走を4勝するオカール賞勝ち馬ナスルエルアラブ、後にサンルイレイS・ハリウッドターフカップSを勝つサンクルー大賞3着馬フランクリーパーフェクト、クリテリウムドサンクルーの勝ち馬ワキリヴァーなどが出走してきた。例によって本馬は後方待機策を採り、直線入り口8番手から一気に追い込んできた。結果は4番手から先に抜け出したフィジャータンゴに首差届かず2着だったが、前哨戦としてはまずまずの内容だった。

そして迎えた本番の凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)では、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・エクリプスS2回・プリンスオブウェールズS2回などを勝っていたムトト、英オークス・愛オークス・ヨークシャーオークスを勝ち英セントレジャーで2着してきたディミニュエンド、ヴェルメイユ賞を勝ってきたインディアンローズ、伊共和国大統領賞2回・ミラノ大賞2回・伊ジョッキークラブ大賞の勝ち馬で前年の凱旋門賞2着馬トニービン、英ダービー7着後にプリンセスオブウェールズSを大圧勝してキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSでも2着していたアンフワイン、愛セントレジャーを勝ってきたダークロモンド、愛ダービー3着から直行してきたグラシアルストーム、サンクルー大賞・コンセイユドパリ賞・アルクール賞の勝ち馬ヴィレッジスター、マルセルブサック賞・愛2000ギニー・英チャンピオンS2回・ガネー賞・コロネーションC2回・英国際S・愛チャンピオンSとGⅠ競走9勝の名牝トリプティク、フィジャータンゴ、ニエル賞で5着だったワキリヴァー、同6着だったフランクリーパーフェクト、同11着だったアワーズアフターなどが対戦相手となった。5連勝中と絶好調のムトトが1番人気に支持され、本馬は2番人気に推された。24頭中22番枠発走の本馬は、道中は馬群の中団後方を進み、10番手で直線に入ると馬群の中から末脚を伸ばしてきたが、残り200m地点から今ひとつ伸びを欠き、外側から来たトニービンやムトトに差されるなどして、トニービンの6着(ただし着差は2馬身差)に敗退。このレースを最後に3歳時6戦4勝の成績で競走馬引退となった。

血統

イルドブルボン Nijinsky Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Flaming Page Bull Page Bull Lea
Our Page
Flaring Top Menow
Flaming Top
Roseliere Misti Medium Meridien
Melodie
Mist Tornado
La Touche
Peace Rose Fastnet Rock Ocean Swell
Stone of Fortune
La Paix Seven Seas
Anne de Bretagne
Kadissya Blushing Groom Red God Nasrullah Nearco
Mumtaz Begum
Spring Run Menow
Boola Brook
Runaway Bride Wild Risk Rialto
Wild Violet
Aimee Tudor Minstrel
Emali
Kalkeen Sheshoon Precipitation Hurry On
Double Life
Noorani Nearco
Empire Glory
Gioia Crepello Donatello
Crepuscule
Bara Bibi Bois Roussel
Masaka

イルドブルボンは当馬の項を参照。本馬は父が日本に旅立つ前に欧州に残した代表産駒。

母カディッシャは2・3歳時に仏で走り6戦2勝。本馬以外の主な産駒は半妹のカリアナ(父スリップアンカー)【セントサイモンS(英GⅢ)】である。カディッシャの牝系子孫は発展しており、本馬の半妹カシーダ(父ミルリーフ)の子にはカサーニ【ケルゴルレイ賞(仏GⅡ)】、カサーナ【ミネルヴ賞(仏GⅢ)】、孫にはカストリア【愛セントレジャー(愛GⅠ)・カラーC(愛GⅢ)】、チーター【ロバートGディック記念S(米GⅢ)】、ケサンプール【グレフュール賞(仏GⅡ)】が、本馬の半妹で日本に繁殖牝馬として輸入されたカディザデー(父ダルシャーン)の子にはサニングデール【高松宮記念(GⅠ)・CBC賞(GⅡ)・ファルコンS(GⅢ)・函館スプリントS(GⅢ)・阪急杯(GⅢ)】、孫にはアウロラプラネット【読売レディス杯】がいる。カディッシャの半妹カシュカ(父ザミンストレル)の子にはキーチェンジ【ヨークシャーオークス(英GⅠ)】が、同じく半妹のカラタ(父アサート)の子にはキサンガ【セントサイモンS(英GⅢ)】、孫にはミラン【英セントレジャー(英GⅠ)】が、同じく半妹のカリカラ(父ダルシャーン)の子にはカラジャナ【クレオパトル賞(仏GⅢ)】がいる。

カディッシャの母カルキーンの従姉妹の子には第1回BCターフの優勝馬ラシュカリがいる。カルキーンの母ジョイアの従兄弟にはオグリキャップの母父としても知られるシルバーシャーク【アベイドロンシャン賞・ジャンプラ賞・イスパーン賞・ムーランドロンシャン賞】がいる。ジョイアの祖母マサカは英オークス・愛オークスの勝ち馬で、その母マジデーは愛1000ギニー・愛オークスの勝ち馬。マサカの半弟には米国顕彰馬ギャラントマン【ベルモントS・ピーターパンS・トラヴァーズS・ジョッキークラブ金杯・メトロポリタンH・ハリウッド金杯・サンセットH】がいる。→牝系:F5号族②

母父ブラッシンググルームは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は、アガ・カーンⅣ世殿下が所有する愛国バリーメニースタッドやギルタウンスタッドで種牡馬入りした。愛国で12年間暮らした後、2000年に仏国ノルマンディーのボネヴァル牧場に移動した。2008年に腫瘍による苦痛を訴えたために23歳で安楽死の措置が執られた。産駒のステークスウイナーは52頭であるから、種牡馬としては好成績を残したと言える。ただし、牝馬の活躍馬が多く、後継種牡馬には恵まれていない。しかしその分だけ繁殖牝馬の父としては優秀で、多くの活躍馬を出している。他界した2008年には母父としての代表産駒である凱旋門賞馬ザルカヴァの活躍により仏母父首位種牡馬を獲得した。日本調教馬として重賞を勝った産駒はいないが、豪州調教の名障害競走馬カラジが中山グランドジャンプを3連覇している。母父としてはザルカヴァの他にダンシリバンクスヒル兄妹達などを出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1990

Massyar

ガリニュールS(愛GⅡ)

1990

Shaiybara

リューテス賞(仏GⅢ)

1991

Bayrika

ベルトゥー賞(仏GⅢ)

1992

Shemaran

ガリニュールS(愛GⅡ)・ロイヤルホイップS(愛GⅢ)

1993

Shamadara

マルレ賞(仏GⅡ)

1994

Vereva

仏オークス(仏GⅠ)

1995

Enzeli

アスコット金杯(英GⅠ)・ドンカスターC(英GⅢ)

1995

Karasi

中山グランドジャンプ(日JGⅠ)3回

1995

Zainta

仏オークス(仏GⅠ)・サンタラリ賞(仏GⅠ)・ヴァントー賞(仏GⅢ)・ノネット賞(仏GⅢ)

1997

Mouramara

ロワイヤリュー賞(仏GⅡ)

1997

Nazirali

サンルイオビスポH(米GⅡ)

1998

Choc Ice

EPテイラーS(加GⅠ)

1998

Darasim

ケルゴルレイ賞(仏GⅡ)・グッドウッドC(英GⅡ)・グラディアトゥール賞(仏GⅢ)・オーリアンダーレネン(独GⅢ)

1999

Khalkevi

パリ大賞(仏GⅠ)・オカール賞(仏GⅡ)

2000

Kalabar

ギョームドルナノ賞(仏GⅡ)

2002

Finalmente

ヘンリーⅡ世S(英GⅡ)

2002

Kasbah Bliss

カドラン賞(仏GⅠ)・グラディアトゥール賞(仏GⅢ)2回

2003

Pearl Sky

エクスビュリ賞(仏GⅢ)

2003

Varevees

グラディアトゥール賞(仏GⅢ)

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