和名:ヴェデット |
英名:Vedette |
1854年生 |
牡 |
鹿毛 |
父:ヴォルティジュール |
母:ミセスリッジウェイ |
母父:バードキャッチャー |
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名馬ヴォルティジュール産駒唯一の英国クラシック競走優勝馬にして大種牡馬セントサイモンの祖父となった英2000ギニー馬 |
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競走成績:2~4歳時に英で走り通算成績9戦7勝2着1回3着1回 |
誕生からデビュー前まで
チルトン氏とアンソニー・ハリソン氏の両名により生産された英国産馬で、父ヴォルティジュールの所有者だった第2代ゼトランド伯爵トマス・ダンダス卿の所有馬となり、ジョージ・アブデール調教師に預けられた。
競走生活(2・3歳時)
2歳8月にヨーク競馬場で行われたエグリントンS(T8F)でデビューして、1番人気馬オーグリーの3着。10月にはベッドフォードS(T5F)に出走して、単勝オッズ1.67倍の1番人気に応えて、2着ザウエスタンパワーに2馬身差で快勝した。2歳時はこの2戦のみだったが、年末には英2000ギニーの前売りオッズで8倍がつけられたというから、既に世代を代表する有力馬の1頭として評価されていたようである。
3歳時はその英2000ギニー(T8F17Y)から始動。11頭の出走馬の中で、単勝オッズ3.5倍の1番人気に支持された。もっとも、単勝オッズ5倍の2番人気にロヨラ、単勝オッズ5.5倍の3番人気にケント、単勝オッズ6倍の4番人気に後のセントジェームズパレスS勝ち馬アントンと続いており、飛び抜けた人気というわけではなかった。スタートが切られるとタービットという馬が逃げを打ち、本馬はその後方4番手を追走した。レースが終盤に差し掛かると、本馬と、本馬とは別の馬群内で走っていたロヨラが進出して、タービットをかわして先頭に立った。そこへロヨラと同じ馬群で走っていたアントンが一気に仕掛けて先頭を奪い勝利目前だったが、本馬がゴール前50ヤード地点で猛然とスパートしてアントンを差し切り、3/4馬身差をつけて優勝した(ロヨラはアントンから頭差の3着)。
しかしレース後の本馬は非常に消耗しており、厩舎まで脚を引きずりながら戻っていったという。そのために次走は8月のグレートヨークシャーS(T14F)まで待たねばならなかった。このレースでは3歳にしてアスコット金杯を制覇していたスカーミッシャー、後のグッドウッドC勝ち馬ソウンテラーという同世代の強豪2頭が対戦相手となった。しかし、本馬が単勝オッズ1.4倍という断然の1番人気に応えて、2着スカーミッシャーに3馬身差、3着ソウンテラーにもさらに3馬身差をつけて快勝した。その後はドンカスター競馬場で行われたフィッツウィリアムS(T6F)に出走して、ジムクラックSを勝っていた2歳牝馬プリンセスロイヤルに首差で勝利。さらにドンカスターC(T20F)に出走して、2着ブラックトミーに首差で勝利を収め、3歳時を4戦全勝の成績で締めくくった。
競走生活(4歳時)
4歳時は4月にニューマーケット競馬場で行われたポートS(T16F)から始動。対戦相手はオッドトリックという馬1頭だけであり、本馬が単勝オッズ1.67倍の1番人気に支持された。レースではスタートからリードしたものの、ゴール直前で差されて3/4馬身差で敗れた。しかし次走のエボアH(T14F)では、2着となった3歳牝馬タンストールメイドに半馬身差で勝利を収めた。斤量は本馬の119ポンドに対して、タンストールメイドは89ポンドであり、その差は30ポンドもあった。
続いて2連覇を目指してドンカスターC(T20F)に参戦。本馬が単勝オッズ1.5倍という断然の1番人気に支持され、単勝オッズ7倍の2番人気にグッドウッドCを勝ってきたアスコット金杯2着馬ソウンテラー、単勝オッズ8倍の3番人気にアスコット金杯・ゴールドヴァーズの勝ち馬でエボアHでは本馬の3着だったフィッシャーマン、単勝オッズ13.5倍の4番人気にブラックトミーが続いた。レースでは3着ブラックトミーを6馬身も引き離して本馬とソウンテラーの一騎打ちとなったが、本馬が半馬身差で勝利を収めた。本馬の勝利時における観衆の熱狂ぶりは凄かったらしく、歓声とウェーブの大きさは1850年に本馬の父ヴォルティジュールが英セントレジャーとドンカスターCを勝ち取って以来だったと評された。これが本馬の現役最後のレースとなり、4歳時の成績は3戦2勝となった。なお、本馬は慢性関節リウマチを患っていたと海外の資料にあるが、具体的にいつから発症していたのかは定かではない。
血統
Voltigeur | Voltaire | Blacklock | Whitelock | Hambletonian |
Rosalind | ||||
Coriander Mare | Coriander | |||
Wildgoose | ||||
Phantom Mare | Phantom | Walton | ||
Julia | ||||
Overton Mare | Overton | |||
Walnut Mare | ||||
Martha Lynn | Mulatto | Catton | Golumpus | |
Lucy Gray | ||||
Desdemona | Orville | |||
Fanny | ||||
Leda | Filho da Puta | Haphazard | ||
Mrs.Barnet | ||||
Treasure | Camillus | |||
Hyacinthus Mare | ||||
Mrs. Ridgway | Birdcatcher | Sir Hercules | Whalebone | Waxy |
Penelope | ||||
Peri | Wanderer | |||
Thalestris | ||||
Guiccioli | Bob Booty | Chantcleer | ||
Ierne | ||||
Flight | Escape | |||
Young Heroine | ||||
Nan Darrell | Inheritor | Lottery | Tramp | |
Mandane | ||||
Handmaiden | Walton | |||
Anticipation | ||||
Nell | Blacklock | Whitelock | ||
Coriander Mare | ||||
Madame Vestris | Comus | |||
Lisette |
父ヴォルティジュールは当馬の項を参照。本馬は父の初年度産駒にして、唯一の英国クラシック競走優勝馬である。
母ミセスリッジウェイの競走馬としてのキャリアは不明。母としては本馬の全妹キヴィーヴ【パークヒルS】も産んでいる。キヴィーヴの子にはキングコール【セントジェームズパレスS・アスコットダービーS】がいる他、孫にはリトリート【ドンカスターC】、曾孫にはサーヒューゴ【英ダービー】、牝系子孫にはウインザーラッド【英ダービー・英セントレジャー・コロネーションC・エクリプスS】、アワバブー【英2000ギニー・ミドルパークS】、セダン【伊ダービー・イタリア大賞・ミラノ大賞・伊共和国大統領賞・伊ジョッキークラブ大賞】、ネヴァーベンド【ベルモントフューチュリティS・シャンペンS・カウディンS・フラミンゴS】、ボールドリーズン【ハリウッドダービー・アメリカンダービー・トラヴァーズS】、メッキー【スーパーダービー(米GⅠ)・アーリントンミリオンS(米GⅠ)】、ビューティフルプレジャー【BCディスタフ(米GⅠ)・メイトロンS(米GⅠ)・パーソナルエンスンH(米GⅠ)2回・ベルデイムS(米GⅠ)・ヘンプステッドH(米GⅠ)】、ニューアプローチ【英ダービー(英GⅠ)・愛ナショナルS(愛GⅠ)・デューハーストS(英GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)・英チャンピオンS(英GⅠ)】、日本で走ったウィルディール【皐月賞】、シンコウフォレスト【高松宮記念(GⅠ)】、ネームヴァリュー【帝王賞(GⅠ)】などがいる。
ミセスリッジウェイの半妹スピンスター(父フラットキャッチャー)の曾孫にはエルマク【仏ダービー】、玄孫にはコリン【ベルモントS・サラトガスペシャルS・ベルモントフューチュリティS・メイトロンS・ウィザーズS】、牝系子孫にはドクターフリーランド【プリークネスS】、ボルコンスキー【英2000ギニー(英GⅠ)・サセックスS(英GⅠ)】、ヴィティージ【ロベールパパン賞(仏GⅠ)・モルニ賞(仏GⅠ)・英チャンピオンS(英GⅠ)】、トニービン【凱旋門賞(仏GⅠ)・伊共和国大統領賞(伊GⅠ)2回・ミラノ大賞(伊GⅠ)2回・伊ジョッキークラブ大賞(伊GⅠ)】、ライラニ【愛オークス(愛GⅠ)・ナッソーS(英GⅠ)・フラワーボウル招待S(米GⅠ)】、ロストインザフォグ【キングズビショップS(米GⅠ)】、日本で名種牡馬として活躍した月友、日本で走ったヒサトモ【東京優駿・帝室御賞典秋】、トウカイローマン【優駿牝馬(GⅠ)】、トウカイテイオー【皐月賞(GⅠ)・東京優駿(GⅠ)・ジャパンC(GⅠ)・有馬記念(GⅠ)】などがいる。ミセスリッジウェイの半妹ホワイトフェイス(父ターナス)の曾孫にはサイ【仏1000ギニー】、牝系子孫にはシカボーイ【凱旋門賞・クリテリウムドサンクルー・リュパン賞・ロワイヤルオーク賞】などがいる。→牝系:F19号族①
母父バードキャッチャーは当馬の項を参照。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬はザカリア・シンプソン氏が所有する英国ノーフォーク州ディススタッドで種牡馬入りした。6年目産駒から、シティ&サバーバンH・グッドウッドCを勝ち、英ダービーでブルーガウンの3着したスペキュラムが出たが、全般的に種牡馬成績は振るわなかった。そのためか、競走馬だけでなく狩猟馬生産用の種牡馬としても供用された(もっとも、これは父ヴォルティジュールの種牡馬生活後半も同じである)。17歳時には僅か42ギニーで転売されたというから、この時点で種牡馬としては殆ど用済みとみなされていたようである。しかしこの転売の翌年1872年に誕生したガロピンが英ダービーを勝つ活躍を見せ、その後の1878年にはスペキュラムが英ダービー馬セフトンの活躍により英首位種牡馬に輝く成功を収めた。さらにガロピンとその息子セントサイモンが種牡馬として凄まじい成績を収めたため、本馬の血は後世に絶大な影響力を有することになった。なお、本馬の没年や死因は不明である。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1862 |
Auditor |
トライアルS |
1862 |
Gardevisure |
ケンブリッジシャーH |
1865 |
Speculum |
グッドウッドC |
1865 |
Vex |
スチュワーズC |
1872 |
英ダービー・ニューS |