和名:ソーマレズ |
英名:Saumarez |
1987年生 |
牡 |
黒鹿 |
父:レインボークエスト |
母:フィエスタファン |
母父:ウェルシュページェント |
||
英国調教時代は芽が出なかったが仏国に移籍して開花しパリ大賞を制すると凱旋門賞では父レインボークエストとの父子制覇を果たす |
||||
競走成績:2・3歳時に愛英仏米で走り通算成績9戦5勝2着1回 |
誕生からデビュー前まで
サック・E・ロングトン氏により生産された英国産馬で、ナショナル・ホッケー・リーグのチームであるロサンゼルス・キングスを買収してオーナーになったばかりのブルース・マクネイル氏と、ロサンゼルス・キングスに電撃移籍した直後だったスター選手ウェイン・グレツキー氏の両名により38万ドルで購入されて、2人の共同所有馬(持分はマクネイル氏が75%、グレツキー氏が25%)となり、英国サー・ヘンリー・セシル調教師に預けられた。
競走生活(3歳前半まで)
2歳9月にレスター競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスで、米国から来た名手スティーブ・コーゼン騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ3.25倍で10頭立ての2番人気に推された。しかしスタートで後手を踏んでしまい、それでも馬群の好位につけるもここから伸びずに、勝った単勝オッズ13倍の5番人気馬アブスから6馬身差をつけられた4着に敗退。2歳時の出走はこれだけだった。
3歳時は、英国ノースヨークシャー州にあるリポン競馬場というローカル競馬場で4月に行われた、芝8ハロンの未勝利ステークスから始動。引き続きコーゼン騎手が主戦として騎乗した本馬は、単勝オッズ1.67倍で18頭立ての1番人気に支持された。今回もスタートは今ひとつだったが、すぐに位置取りを上げて直線入り口で4番手まで押し上げた。そして残り2ハロン地点で先頭に立つと後続を引き離し、2着となった単勝オッズ6倍の2番人気馬シャノンフラッドに7馬身差をつける圧勝で初勝利を挙げた。
次走は15日後にサンダウンパーク競馬場で行われたグラデュエーションS(T8F)となった。前走の鮮烈な勝ち方が評価されて、単勝オッズ1.62倍で11頭立ての1番人気に支持された。今回は過去2戦と異なりスタートが良く、そのまま先頭を走った。そして残り1ハロン地点から一気に後続馬をちぎり捨て、2着となった単勝オッズ4倍の2番人気馬タモノダンサーに10馬身差をつけるという、前走以上の内容で圧勝した。
次走は5月にチェスター競馬場で行われたリステッド競走ディーS(T10.5F)となった。対戦相手は、ロイヤルロッジS2着馬ブライダルトースト、ロワイヨモン賞・フィユドレール賞を勝ったスノーデイの息子であるサドラーズウェルズ産駒の期待馬ブルースタッグなど4頭だった。本馬が単勝オッズ2倍の1番人気、ブライダルトーストが単勝オッズ3倍の2番人気、ブルースタッグが単勝オッズ5.5倍の3番人気となった。今回も本馬はスタートから積極的に先行して、1ハロンほど進んだところから先頭に立って馬群を先導した。しかし残り1ハロン地点で外側からブルースタッグに並びかけられると競り負けて、3/4馬身差の2着に敗れた。
ちなみにブルースタッグは次走の英ダービーでクエストフォーフェイムの2着しているが、本馬は英ダービーには向かわなかった。ディーSのレース後に仏国のニコラ・クレマン厩舎に転厩して、仏国に主戦場を移すことになったからである。クレマン師は、英国のジョン・ゴスデン調教師、愛国のヴィンセント・オブライエン調教師、仏国のフランソワ・ブータン調教師などの元で修行し、ロイヤルヒロインやミエスクなどの一流馬の育成に携わった後、2年前に開業したばかりの新鋭調教師で、本馬を預かったときはまだ24歳だった。
競走生活(3歳後半)
仏国初戦はいきなりパリ大賞(仏GⅠ・T2000m)となった。ここでは、英2000ギニー・愛2000ギニー・ホーリスヒルS・クレイヴンSなど目下5連勝中のチロル、前走のジャンプラ賞を勝ってきたプリオロ、伊グランクリテリウム・伊2000ギニーの勝ち馬キャンディグレン、前走の仏オークスで2位入線4着降着だったカラーチャート、ギシュ賞の勝ち馬ロワドロム、ジョンシェール賞を勝ってきたボクシングテイ、フォルス賞を勝ってきたシフティングゴールドの計7頭が対戦相手となり、グループ競走における実績が無い出走馬は本馬のみだった。スタートが切られるとシフティングゴールドが逃げを打ち、本馬は2番手を追走。四角辺りでシフティングゴールドに並びかけると、残り400m地点で一気に抜け出し、直線の末脚に賭けたプリオロを6馬身差の2着に、チロルをさらに2馬身差の3着に下して完勝した。
夏場は休養に充て、秋は愛チャンピオンS(愛GⅠ・T10F)から始動した。エクリプスSの勝ち馬で英国際S2着・英ダービー3着のエルマームル、ロジャーズ金杯・プリンスオブウェールズSの勝ち馬で英国際S3着のバツーフ、ロイヤルホイップSを勝ってきたスプラッシュオブカラー、デズモンドSなど3連勝で臨んできたコストロマ、伊グランクリテリウム・伊2000ギニーの勝ち馬サイクストンなどが対戦相手となった。エルマームルが単勝オッズ3倍の1番人気、本馬が単勝オッズ3.5倍の2番人気、バツーフが単勝オッズ4.5倍の3番人気となった。しかしこのレースで本馬は原因不明の大凡走。勝ったエルマームルから実に31馬身差をつけられた7着と大惨敗を喫してしまった。
次走のプランスドランジュ賞(仏GⅢ・T2000m)からは、コーゼン騎手に代わって、プリオロの主戦としてパリ大賞で本馬の強さを嫌と言うほど認識していたジェラール・モッセ騎手を主戦に迎えた。対戦相手は、ガネー賞・イスパーン賞・ギョームドルナノ賞・ドラール賞・アルクール賞の勝ち馬クリエイター、モーリスドニュイユ賞・ラクープの勝ち馬フレンチグローリー、前走ゴントービロン賞を勝ってきたミスターリヴ、エクスビュリ賞の勝ち馬でガネー賞3着のマンソニエン、本馬のペースメーカー役としての出走だったノスフェラトゥの計5頭だった。クリエイターが単勝オッズ1.7倍の1番人気、本馬とノスフェラトゥのカップリングが単勝オッズ2.2倍の2番人気、フレンチグローリーが単勝オッズ8倍の3番人気、ミスターリヴが単勝オッズ11倍の4番人気となった。スタートが切られるとノスフェラトゥが逃げを打ち、本馬やクリエイターがそれを追って先行する展開となった。ノスフェラトゥが失速すると、クリエイターが代わって先頭に立ち、本馬が2番手で直線を向いた。そして残り400m地点で先頭を奪った本馬が、追い上げてきた2着ミスターリヴに2馬身差をつけて勝利した。
次走は凱旋門賞(仏GⅠ・T2400m)となった。対戦相手は、牝馬として90年ぶりの優勝となった愛ダービーの他にマルセルブサック賞・英1000ギニー・英オークス・ヴェルメイユ賞なども勝っていたサルサビル、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・グレートヴォルティジュールS・チェスターヴァーズの勝ち馬で愛ダービー3着のベルメッツ、コロネーションC・サンクルー大賞・プランスドランジュ賞・フォワ賞の勝ち馬でガネー賞2着のインザウイングス、リュパン賞・グレフュール賞・ニエル賞の勝ち馬で仏ダービー2着のエペルヴィエブルー、英セントレジャーの勝ち馬でクリテリウムドサンクルー1位入線2着降着のスナージ、愛1000ギニー・英国際S・ムシドラSの勝ち馬で前走ヴェルメイユ賞3着のインザグルーヴ、ヨークシャーオークス・リブルスデールSの勝ち馬で英セントレジャー2着のヘレニック、独国のGⅢ競走フュルシュテンベルクレネンの勝ち馬で仏ダービー3着のエルデリスタン、日本の柴田政人騎手が手綱を取る伊ジョッキークラブ大賞・ハードウィックS2回・セプテンバーS・カンバーランドロッジSの勝ち馬でキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS3着のアサティス、英チャンピオンS・セレクトSの勝ち馬リーガルケース、ギョームドルナノ賞の勝ち馬でニエル賞2着のアンティサール、ジェフリーフリアSの勝ち馬で英2000ギニー2着のチャーマー、コンセイユドパリ賞・エドヴィル賞2回の勝ち馬ロボレ、カンバーランドロッジSを勝ってきたイルドニスキー、フォワ賞で2着してきたサンクルー大賞3着馬ザルトタ、クリテリウムドサンクルー3着馬ギザ、本馬が惨敗した愛チャンピオンSで2着だったサイクストン、ミスターリヴなど20頭だった。目下6連勝中のサルサビルが1番人気に支持される一方で、過去に10ハロン前後の距離ばかり走ってきた本馬は、単勝オッズ17倍で7番人気の評価だった。
スタートが切られると、サルサビル陣営が用意したペースメーカー役のアルバドルが先頭に立ち、本馬は3番手を追走した。そして四角を回りながら先頭を奪うと、直線に入ってすぐに後続を引き離して、ロンシャン競馬場の長い直線で押し切りを図った。後方からはエペルヴィエブルーやスナージが追い上げてきたが凌ぎ切り、2着エペルヴィエブルーに3/4馬身差、3着スナージにはさらに半馬身差をつけて優勝。父レインボークエストとの親子制覇を成し遂げた。これによりロンシャン競馬場で走ったレースは3戦全勝となった。管理するクレマン師は、調教師として史上最年少の凱旋門賞制覇を達成した。また、本馬の所有者マクネイル氏は1987年の凱旋門賞をトランポリノで勝っており、2度目の同競走制覇となった。
その後は渡米して、ベルモントパーク競馬場で行われたBCターフ(米GⅠ・T12F)に挑戦した。凱旋門賞4着からの巻き返しを図るインザウイングス、プランスドランジュ賞4着後に加国際Sを勝ってきたフレンチグローリー、ボーリンググリーンH・タイダルHを勝ちアーリントンミリオン・ソードダンサーH2着の前年の加国三冠馬ウィズアプルーヴァル、前走ターフクラシックSで悲願のGⅠ競走初制覇を果たしてきたキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS・英国際S2着・英ダービー3着のカコイーシーズ、この年のケンタッキーダービー3着馬プレザントタップ、ハイアリアターフカップH・ボーリンググリーンH・ソードダンサーH2連覇とGⅠ競走4勝のエルセニョール、伊共和国大統領賞・ミラノ大賞・カールトンFバークHの勝ち馬でターフクラシックS2着のアルワウーシュ、ボルチモアBCH・サルヴェイターマイルHの勝ち馬でマンノウォーS2着・ハスケル招待H・トラヴァーズS3着のシャイトム、加国際Sで2着してきたサマーS・グレイSの勝ち馬スカイクラシックなど10頭が対戦相手となった。インザウイングスとフレンチグローリーのカップリングが単勝オッズ2.9倍の1番人気に支持され、本馬が単独で単勝オッズ3.7倍の2番人気となった。
スタートが切られると単勝オッズ6.8倍の3番人気だったカコイーシーズが先頭に立ち、スタートが今ひとつだった本馬が巻き返して、スカイクラシックと共に2~3番手を追走。しかしやや折り合いを欠く場面が見られ、モッセ騎手はカコイーシーズとスカイクラシックの直後に本馬をつけて宥めた。しかし向こう正面で早くもスカイクラシックの手応えが怪しくなると、それに巻き込まれる形でずるずると下がってしまった。何とかスカイクラシックをやり過ごして三角に入ってきたが、外側には先に仕掛けた馬達がいたため、内を突こうとしたのだが前が塞がって失敗。6番手で直線を向くと、そのまま伸びずにインザウイングスの11馬身差5着と完敗した。このレースを最後に、3歳時8戦5勝の成績で競走馬を引退した。
血統
Rainbow Quest | Blushing Groom | Red God | Nasrullah | Nearco |
Mumtaz Begum | ||||
Spring Run | Menow | |||
Boola Brook | ||||
Runaway Bride | Wild Risk | Rialto | ||
Wild Violet | ||||
Aimee | Tudor Minstrel | |||
Emali | ||||
I Will Follow | Herbager | Vandale | Plassy | |
Vanille | ||||
Flagette | Escamillo | |||
Fidgette | ||||
Where You Lead | Raise a Native | Native Dancer | ||
Raise You | ||||
Noblesse | Mossborough | |||
Duke's Delight | ||||
Fiesta Fun | Welsh Pageant | Tudor Melody | Tudor Minstrel | Owen Tudor |
Sansonnet | ||||
Matelda | Dante | |||
Fairly Hot | ||||
Picture Light | Court Martial | Fair Trial | ||
Instantaneous | ||||
Queen of Light | Borealis | |||
Picture Play | ||||
Antigua | Hyperion | Gainsborough | Bayardo | |
Rosedrop | ||||
Selene | Chaucer | |||
Serenissima | ||||
Nassau | Nasrullah | Nearco | ||
Mumtaz Begum | ||||
Meraline | Mieuxce | |||
Merina |
父レインボークエストは当馬の項を参照。
母フィエスタファンは現役成績19戦4勝。本馬の半姉カーニヴァルスピリット(父クリス)の子にはイグザルテイション【ガリニュールS(愛GⅢ)】、孫にはバズワード【独ダービー(独GⅠ)】、曾孫にはラッシュラッシーズ【コロネーションS(英GⅠ)・ヨークシャーオークス(英GⅠ)・メイトロンS(愛GⅠ)】がいる。フィエスタファンの半兄にはデリーリン(父デリングドゥー)【ホーリスヒルS(英GⅢ)・グリーナムS(英GⅢ)】が、フィエスタファンの全姉アネガダの子にはジョンフレンチ【ゴードンS(英GⅢ)】がいる。フィエスタファンの7代母オーリナは大繁殖牝馬プラッキーリエージュの半姉である。→牝系:F16号族③
母父ウェルシュページェントは現役成績20戦11勝。ロッキンジS2連覇・クイーンアンS・クイーンエリザベスⅡ世S勝ちがある名マイラーだった。ウェルシュページェントの父テューダーメロディはテューダーミンストレル産駒で、現役成績は23戦7勝。2歳時に6戦5勝の成績を残して英最優秀2歳牡馬に選ばれた。3歳時は米国で、4歳時は愛国で走ったが、3歳以降は好成績を残せなかった。種牡馬としてはテューダーミンストレルの後継として活躍した。
競走馬引退後
競走馬を引退した本馬は、セント・ジョージ氏達の種牡馬シンジケートによって800万ドルで購入されて仏国で種牡馬入りした。しかし種牡馬としては期待に応えられず、後に南アフリカのオデッサスタッドに移動して、2012年に25歳で他界した。産駒のステークスウイナーは12頭に留まったが、繁殖牝馬の父としては英ダービー馬オーソライズドを出して、その能力の一端を垣間見せてくれた。
主な産駒一覧
生年 |
産駒名 |
勝ち鞍 |
1992 |
Luna Mareza |
コリーダ賞(仏GⅢ) |
1993 |
Katun |
バルブヴィル賞(仏GⅢ) |
1993 |
Maroussie |
フィユドレール賞(仏GⅢ) |
1993 |
Steward |
シャンティ大賞(仏GⅡ)・メルセデスベンツ大賞(独GⅡ)・エドヴィル賞(仏GⅢ)・ヴィシー大賞(仏GⅢ) |
1993 |
Stretarez |
ヴィコンテスヴィジェ賞(仏GⅡ)・バルブヴィル賞(仏GⅢ)・オーモンドS(英GⅢ) |
1994 |
Silver Fun |
マルレ賞(仏GⅡ) |
1999 |
Belcore |
ミュラーブロート大賞(独GⅡ) |
1999 |
Loxias |
ジャンドショードネイ賞(仏GⅡ) |
2001 |
Diamond Quest |
キャノンサウスアフリカン金杯(南GⅠ) |