コロニアルアッフェアー

和名:コロニアルアッフェアー

英名:Colonial Affair

1990年生

鹿毛

父:プレザントコロニー

母:スナッグル

母父:ニジンスキー

ジュリー・クローン騎手に女性騎手として史上初の米国三冠競走勝利をプレゼントしたベルモントS優勝馬は古馬になっても活躍する

競走成績:2~4歳時に米加で走り通算成績20戦7勝2着4回3着3回

海外における女性騎手事情

サッカー、ソフトボール、レスリングなど、近年の日本スポーツ界では女性の活躍が目立つ。しかし日本競馬界においては、牝馬の活躍こそ目立つが、女性騎手の活躍はほとんど見られない。競馬界が男尊女卑的な風潮があることもあるだろうが、走るのは騎手ではなく馬である以上、他のスポーツのように男性騎手と女性騎手に分けてレースを行う事が難しいこともあるだろう(同じ公営競技でも、競艇ではわりと昔から女性の活躍が目立つし、競輪やオートレースにおいても以前よりは女性の活躍の場が増えている)。女性騎手が活躍するのは日本国内では地方競馬の一部か、そうでなければ漫画かゲームの世界に限られているのである。

世界に目を向けると、以前は日本と同様に男尊女卑的な風潮があったが、1970年代に入ると男性騎手に混じって活躍する女性騎手の姿がときどき見られるようになった。米国のジュリー・クローン騎手は世界の女性騎手の中でもトップクラスの活躍を見せた人物で、1981年の騎手デビューから2004年に完全に引退するまでに実に3704勝を挙げ、2000年には米国競馬の殿堂入りも果たしている。

日本と比べると海外で女性騎手の活躍が多いのは、乗馬を嗜む女性が海外では多いことも影響しているようで、クローン騎手も熟練した馬術家だった母親の影響を受けて騎手を志したという。彼女は1994年のマンノウォーS(騎乗馬ロイヤルマウンテンイン)、2003年のパシフィッククラシックS(騎乗馬キャンディライド)、同年のBCジュヴェナイルフィリーズ(騎乗馬ハーフブライドルド。女性騎手として史上初のブリーダーズカップ制覇)など、GⅠ競走も何勝もしているが、その中でも最大の勲章が1993年に本馬で制したベルモントSであろう。

誕生からデビュー前まで

本馬はハーマン・グリーンバーグ氏が所有する米国ヴァージニア州ラトリッジファームの生産馬で、1歳時にファシグ・ティプトン社が実施したサラトガセレクトセールに出品された。身体は大きかったがひょろ長く、当該セリに出品された馬の中では最も目立たない馬の1頭だったというが、それでもセンテニアルファームズにより10万ドルで購入された。本馬は血統的にスタミナが豊富であり、センテニアルファームズは最初からベルモントSを目標に置いていたようである。スコッティ・シュルホファー調教師に預けられた。

競走生活(3歳前半まで)

2歳10月にベルモントパーク競馬場で行われたダート7ハロンの未勝利戦で、クローン騎手を鞍上にデビューした。しかし単勝オッズ13.9倍で8頭立ての5番人気という低評価だった。レースでも馬群の中団追走から直線で伸びを欠き、勝った単勝オッズ3.6倍の2番人気馬フェロシャスリーから8馬身3/4差の3着という結果だった。

同月末にアケダクト競馬場で行われたダート8ハロンの未勝利戦には、リチャード・ミグリオーレ騎手を鞍上に出走。ここでも単勝オッズ11.6倍で9頭立ての5番人気という低評価だったが、2番手追走から三角で先頭に立つと、直線を独走して、2着カステリストリートに5馬身3/4差をつけて圧勝した。

11月に出走したアケダクト競馬場ダート7ハロンの一般競走では、クローン騎手を鞍上に単勝オッズ2.2倍の1番人気に支持された。ここでは3番手を走り、逃げる単勝オッズ3.8倍の2番人気馬ピースベイビーを直線で追いかけたが届かずに、3馬身差の2着に敗れた(本馬から2馬身差の3着が、後に本馬の好敵手となるヴァージニアラピッヅだった)。

12月のナシュアS(米GⅢ・D8.5F)ではミグリオーレ騎手とコンビを組んだが、単勝オッズ20.3倍で11頭立ての6番人気という低評価だった。レースでは馬群の中団後方を追走したが、直線で伸びずに、2着ローワーに6馬身半差をつけて勝った単勝オッズ1.6倍の1番人気馬ダルハートから9馬身3/4差の5着と完敗。2歳時は4戦1勝の成績に終わった。

3歳時は当初の予定どおり、ケンタッキーダービーもプリークネスSも無視してひたすらベルモントSを目標とするスケジュールを採った。まずは4月にアケダクト競馬場で行われたダート7ハロンの一般競走から始動した。クローン騎手を鞍上に単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持されると、後方2番手からの四角まくり戦法で、直線入り口では先頭に立ち、そのまま直線を独走して、2着クロスプレーに8馬身1/4差をつけて圧勝した。

翌月にベルモントパーク競馬場で行われたダート8ハロンの一般競走でもクローン騎手を鞍上に、単勝オッズ1.4倍の圧倒的1番人気に支持された。ここでは3番手の好位を進み、直線に入ってから前を差し切り、2着ハンニバルレクターに1馬身3/4差で勝利した。

次走のピーターパンS(米GⅡ・D9F)では、ウィザーズSで2着してきたヴァージニアラピッヅ、ウッドメモリアル招待S3着馬マークトツリー、ハンニバルレクターなどが対戦相手となった。ヴァージニアラピッヅが単勝オッズ2.5倍の1番人気、クローン騎手騎乗の本馬が単勝オッズ3.3倍の2番人気、マークトツリーが単勝オッズ3.6倍の3番人気となった。レースでは、ハンニバルレクターが同名の小説や映画の登場人物よろしく逃げを打ち、本馬は後方2番手につけた。そして四角でまくって直線入り口で先頭に立ち、そのまま押し切ろうとした。しかし直線入り口でも後方だったヴァージニアラピッヅが猛然と追い上げてくると、そのまま本馬をかわして勝利。本馬は1馬身3/4差の2着に敗れたが、3着以下には4馬身以上の差をつけており、内容的には合格点だった。

ベルモントS

そして目標としていたベルモントS(米GⅠ・D12F)に駒を進めた。主な対戦相手は、プリークネスS・ジムビームS・ブルーグラスSの勝ち馬でケンタッキーダービー2着のプレイリーバイユー、ケンタッキーダービー・シャンペンSの勝ち馬シーヒーロー、ヴァージニアラピッヅ、ダービートライアルS・ラファイエットSの勝ち馬でプリークネスS2着のチェロキーラン、パームビーチSの勝ち馬でアーカンソーダービー2着のキッシンクリス、欧州から遠征してきたクリテリウムドサンクルー3着馬アラント、ケンタッキーダービー3着馬ワイルドゲイルなどだった。プレイリーバイユーが単勝オッズ3.7倍の1番人気、シーヒーローが単勝オッズ4.2倍の2番人気、チェロキーランが単勝オッズ5.2倍の3番人気、ヴァージニアラピッヅが単勝オッズ5.9倍の4番人気と、この4頭に人気が集まった。単勝オッズ14.4倍の5番人気がキッシンクリスで、クローン騎手騎乗の本馬は単勝オッズ14.9倍の6番人気だった。

スタートが切られると、まずは単勝オッズ64倍の12番人気馬アントリムロードが逃げを打ち、チェロキーラン、ワイルドゲイル、シーヒーローなどがそれを追走。本馬は中団好位、プレイリーバイユーは中団後方を追走した。そして向こう正面に差し掛かったところで、1番人気のプレイリーバイユーが故障を発生して競走中止する波乱の展開となった。一方の本馬は、中団から徐々に順位を押し上げると直線入り口で先頭に立った。そして後方からの追い込みに賭けた2着キッシンクリスに2馬身1/4差をつけて優勝した。

この勝利により、クローン騎手は女性騎手として史上初の米国三冠競走制覇の快挙を達成した(これ以前に米国三冠競走に女性騎手が参戦した事例は7度あり、そのうち3度はクローン騎手によるものだったが、全敗だった)。もっとも、クローン騎手は、レース後すぐに予後不良と診断され安楽死の措置が執られたプレイリーバイユーのことを気にして、「(陣営にとって)それは家族の一因を失う事に等しいでしょう。彼はクラシック競走を1つ勝ち、もう1つも殆ど勝ったようなものでした。それは胸が張り裂けるような悲痛でした」と語り、喜びの色は控え目だった。なお、この勝利は2年前のハンセルによるプリークネスS・ベルモントS制覇や、同年のシーヒーローによるケンタッキーダービー制覇に続くヴァージニア州産馬による米国三冠競走優勝でもあり、ヴァージニア州の馬産界は大いに盛り上がったものだった。

競走生活(3歳後半)

その後は一間隔空けて、8月のジムダンディS(米GⅡ・D9F)に向かった。米国三冠競走には不参戦だったがコリンSを勝ちドワイヤーSでチェロキーランの2着してきたマイナーズマーク、ベルモントSで3着だったワイルドゲイル、同5着だったヴァージニアラピッヅ、同7着だったシーヒーローなどが対戦相手となった。シーヒーローと同じ126ポンドのトップハンデだった本馬が単勝オッズ3.1倍の1番人気に支持され、名牝パーソナルエンスン産駒の良血馬マイナーズマークが117ポンドという軽量の恩恵もあって単勝オッズ3.2倍の2番人気、121ポンドのヴァージニアラピッヅが単勝オッズ3.6倍の3番人気となった。レースでは単勝オッズ30.6倍の最低人気馬カポノストロが大逃げを打ち、ヴァージニアラピッヅ、マイナーズマーク、本馬の順で進んだ。やがてカポノストロが失速すると、ヴァージニアラピッヅとマイナーズマークの2頭が先頭に立ち、そのまま直線で叩き合いを演じ始めた。本馬は斤量の影響もあって、直線で前を行く2頭を捕らえることは出来なかった。結果はマイナーズマークが2着ヴァージニアラピッヅに首差で勝利を収め、本馬はヴァージニアラピッヅから4馬身半差の3着に敗退した。

次走のトラヴァーズS(米GⅠ・D10F)では、ハスケル招待Hを勝ってきたキッシンクリス、マイナーズマーク、ジムダンディS4着からの巻き返しを図るシーヒーロー、ドワイヤーSを勝ちハスケル招待Hでは4着だったチェロキーラン、それにカウディンSの勝ち馬ワレンダーといった同世代の有力馬が一同に会した。キッシンクリスが単勝オッズ3.6倍の1番人気で、本馬が単勝オッズ4.7倍の2番人気となった。レースは先行馬勢が揃って馬群に沈むハイペースの展開となった。本馬は馬群の好位5~6番手につけていたが、前の馬達が勝手に失速したために三角では先頭に押し出されてしまった。そして本馬を目掛けて後方から押し寄せてきたシーヒーロー、キッシンクリス、マイナーズマークの3頭にかわされてしまい、勝ったシーヒーローから3馬身差の4着に終わった。

次走は加国のウッドバイン競馬場で行われるモルソンエクスポートミリオン(加GⅡ・D9F)となり、鞍上はここでクローン騎手からホセ・サントス騎手に乗り代わった。主な対戦相手は、この年の加国三冠馬に輝いたばかりのピートスキ、シーヒーロー、前走2着のキッシンクリスなどだった。加国の三冠競走は加国産馬限定戦のため国際グレード格付けがされておらず、国際グレード競走勝ち馬ではなかったピートスキは、米国のGⅠ競走を勝っていた他の有力馬3頭より斤量が恵まれていた(具体的には5ポンドの差)。それもあってか、ピートスキが単勝オッズ2.65倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ4.5倍の2番人気だった。レースは単勝オッズ24.45倍の5番人気馬チアリーナイトを先頭に全馬が一団となって進むスローペースとなり、やがてピートスキが2番手から抜け出した。一方の本馬は直線に入るとまったく伸びを欠いてしまった。結局はピートスキが2着チアリーナイトに4馬身半差をつけて圧勝を収め、本馬はピートスキから10馬身1/4差をつけられた6着最下位に惨敗してしまった。この結果にも関わらず、本馬にはこの後もサントス騎手が騎乗することになり、クローン騎手は二度と本馬に騎乗することは無かった。

続くジョッキークラブ金杯(米GⅠ・D10F)では、ホイットニーHの勝ち馬ブランズウィック、ペガサスHを勝ってきたディアゾ、ウッドメモリアル招待S・ピムリコスペシャルH・サバーバンH・ゴーサムS・エクセルシオールHの勝ち馬デヴィルヒズデュー、前走ウッドワードSで大惨敗を喫していたマイナーズマークの4頭が対戦相手となった。ブランズウィックが単勝オッズ2.9倍の1番人気、ディアゾが単勝オッズ3.1倍の2番人気、デヴィルヒズデューが単勝オッズ3.2倍の3番人気と、順調に来ていた3頭に人気が集中し、本馬は単勝オッズ7.8倍の4番人気、マイナーズマークは単勝オッズ9.4倍の最低人気だった。スタートが切られると、ディアゾが先頭に立ち、マイナーズマークが2番手、本馬は最後方につけた。しかし積極的に行く馬はおらず、今回もスローペースとなった。そのまま全馬が団子状態で直線に入ってくると、馬群から抜け出したのは本馬とマイナーズマークの人気薄馬2頭だった。ゴール前では2頭の激しい叩き合いとなったが、マイナーズマークが競り勝ち、本馬は鼻差2着に惜敗した。

続いて米国西海岸に向かい、サンタアニタパーク競馬場で行われたBCクラシック(米GⅠ・D10F)に参戦。キッシンクリス、マイナーズマーク、デヴィルヒズデュー、ディアゾ、ワレンダーといった既対戦組の他に、ノーフォークS・パシフィッククラシックS・ウッドワードS・デルマーフューチュリティ・サンフェリペS・サンフェルナンドSを勝っていたバートランド、ハリウッド金杯・エディリードH・メドウランズCH・サンアントニオH・マーヴィンルロイH・ベルエアHの勝ち馬マーケトリー、ノーフォークS・ハリウッドフューチュリティ・チャールズHストラブS・サンタアニタH・オークローンH・ハリウッド金杯とGⅠ競走で6勝を挙げていた米国西海岸の雄ベストパルなどが対戦相手となった。バートランドやマーケトリーなど3頭がカップリングで単勝オッズ2.2倍の1番人気となり、ベストパルが単勝オッズ2.8倍の2番人気、キッシンクリスが単勝オッズ7.3倍の3番人気、本馬は単勝オッズ16.5倍の4番人気だった。レースはバートランドが馬群を引っ張り、本馬は馬群の中団につけた。しかし勝負どころで全く行き脚が付かず、ずるずると最後方まで下がってしまった。そして直線でも伸びず、勝ち馬から12馬身差の13着最下位に沈んだ。勝ったのは、馬群の中団後方から内側を通って位置取りを上げ、直線でバートランドを差し切った単勝オッズ134.6倍の最低人気馬アルカングだった。3歳時の成績は9戦3勝だった。

競走生活(4歳前半)

翌4歳時も現役を続け、4月にアケダクト競馬場で行われたウエストチェスターH(米GⅢ・D8F)から始動した。ここでは、チェロキーラン、ヴァージニアラピッヅといった古い好敵手が対戦相手となった。3頭ともまるで順調には来ていなかったが、実績では飛びぬけており、人気もこの3頭に集中。119ポンドのチェロキーランが単勝オッズ2倍の1番人気、116ポンドのヴァージニアラピッヅが単勝オッズ3.8倍の2番人気、121ポンドの本馬は単勝オッズ4.8倍の3番人気だった。レースではチェロキーランと本馬が好位の3~4番手につけ、ヴァージニアラピッヅは最後方に陣取った。そして四角でこの3頭が先頭に迫り、直線では三つ巴の争いとなった。最後にヴァージニアラピッヅが半馬身抜け出て勝利を収め、本馬が2着、チェロキーランが首差3着だった。

次走のエクセルシオールBCH(米GⅡ・D9F)では、BCクラシックで本馬に1馬身先着しただけの12着だったマイナーズマーク、ナッソーカウンティH・ジャマイカH・ワイドナーHなどを勝っていたウエストバイウエストなどと顔を合わせた。本馬とマイナーズマークが121ポンドのトップハンデで並んだが、前走の走りが評価された本馬が単勝オッズ2.5倍の1番人気に支持され、マイナーズマークが単勝オッズ3倍の2番人気となった。レースでは単勝オッズ6.7倍の3番人気だったコントラクトコートという馬が単騎で逃げを打ち、他の全馬は離れた位置を固まって追走。本馬はその後方馬群の先頭、すなわち2番手を追走した。109ポンドの軽量を活かして快調に逃げていたコントラクトコートの脚色は衰えず、そのまま直線で押し切りを図った。しかしそこへ斤量が12ポンド重い本馬が追い上げてきて、ゴール寸前でコントラクトコートをかわして首差で勝ち、鞍上サントス騎手による初勝利をマークした。

続くメトロポリタンH(米GⅠ・D8F)には、BCクラシックでは8着だったがオークローンH・ピムリコスペシャルHと連続2着して復調気配のデヴィルヒズデュー、前走カーターHでGⅠ競走初勝利を挙げてきたヴァージニアラピッヅ、カーターHで3着してきたチェロキーラン、前走3着のウエストバイウエスト、マーヴィンルロイHで2着してきたティナーズウェイといった馬達に加えて、ケンタッキーダービー惨敗後にマイル路線に矛先を向けてきたベルモントフューチュリティS・フロリダダービー・ブルーグラスS・ハッチソンSの勝ち馬ホーリーブルも参戦してきた。ホーリーブルが112ポンドという軽量も評価されて単勝オッズ2倍の1番人気に支持され、デヴィルヒズデューと共に122ポンドのトップハンデを課された本馬は単勝オッズ5.9倍の3番人気だった。スタートからホーリーブルが先頭に立ち、本馬は馬群の中団やや後方につけた。しかしこの距離とこの斤量差でホーリーブルと戦うのは無理があったようで、圧倒的な逃げ切り劇を演じたホーリーブルから13馬身差をつけられた8着と大敗してしまった。

競走生活(4歳後半)

2か月間の休養を経て、8月のサラトガCH(D9F)に向かった。マイナーズマーク、ワレンダー、ウエストバイウエストといった既対戦組の他に、1年半に及ぶ長期休養を経てこの年の4月に復帰していた2年前のトラヴァーズS・ジムダンディSの勝ち馬サンダーランブル、ドンH2回・フラミンゴS・ブルーグラスSなどの勝ち馬ピストルズアンドローゼズの姿もあった。ハンデキャッパーの斤量設定が絶妙であり、かなり難解なレースとなったが、113ポンドのウエストバイウエストが単勝オッズ3.9倍の1番人気、112ポンドのサンダーランブルと117ポンドのワレンダーが並んで単勝オッズ4.3倍の2番人気、120ポンドの本馬が単勝オッズ6倍の4番人気、マイナーズマークが単勝オッズ6.8倍の5番人気となった。しかしここでも本馬は全く何の見せ場も作れなかった。後方2番手で馬群を追走しただけで、直線でも全く伸びずに6着に敗退。本馬から13馬身前方でゴールした勝利馬は、2番手から抜け出したサンダーランブルだった。

次走のホイットニーH(米GⅠ・D9F)では、サンダーランブル、メトロポリタンH3着後にブルックリンH・サバーバンHを勝ってきたデヴィルヒズデュー、前走でサンダーランブルから4馬身差の2着だったウエストバイウエスト、同5着だったピストルズアンドローゼズなどが対戦相手となった。117ポンドのサンダーランブルが単勝オッズ2.4倍の1番人気、125ポンドのデヴィルヒズデューが単勝オッズ3.1倍の2番人気、113ポンドのウエストバイウエストが単勝オッズ5.8倍の3番人気で、117ポンドの本馬は単勝オッズ9.8倍の4番人気だった。スタートが切られると、単勝オッズ11.6倍の5番人気だったコントラクトコートが先頭を引っ張り、今回も本馬は後方2番手を追走した。ところが前走とはまるで別馬のようだった。三角から四角にかけて一気に位置取りを上げて直線入り口で先頭に踊り出た。そこへワンテンポ遅れて追い始めたデヴィルヒズデューが追い上げてきて、ゴール直前では本馬に迫ってきた。しかし本馬が8ポンドの斤量差を活かして逃げ切り、鼻差で勝利を収め、ベルモントS以来のGⅠ競走2勝目を挙げた。

続くウッドワードS(米GⅠ・D9F)では、メトロポリタンHの後にドワイヤーS・ハスケル招待H・トラヴァーズSと連勝してきたホーリーブル、デヴィルヒズデュー、この年のケンタッキーダービー馬でプリークネスS・ベルモントS2着のゴーフォージン、パシフィッククラシックSを勝ってきたティナーズウェイ、前年のジョッキークラブ金杯3着後に休養入りしていたが復帰後の一般競走を2連勝してきたブランズウィック、前年のエクリプス賞最優秀古馬牡馬に選ばれていたバートランド、前走4着のピストルズアンドローゼズの計7頭が対戦相手となった。ホーリーブルが単勝オッズ1.9倍の1番人気に支持される一方で、前走は斤量に恵まれた勝利という一面もあった本馬は単勝オッズ12.8倍の6番人気に留まった。スタートが切られるとバートランドが先頭を奪い、ホーリーブルは2番手につけた。本馬はデヴィルヒズデューを見るように後方2番手につけた。やがてホーリーブルが先頭に立ち、デヴィルヒズデューが上がっていくと、本馬もそれを追って進出を開始。3番手で直線に入ってきたのだが、ここから前の2頭に逆に引き離されてしまい、勝ったホーリーブルから6馬身半差、2着デヴィルヒズデューから1馬身半差の3着に終わった。

次走のジョッキークラブ金杯(米GⅠ・D10F)では、ホーリーブルの姿こそ無かったが、デヴィルヒズデュー、前走4着だったゴーフォージン、同7着だったピストルズアンドローゼズ、前年のBCクラシックで3着と健闘したもののその後は迷走状態に陥っていたキッシンクリスに加えて、この年のプリークネスS・ベルモントSの勝ち馬タバスコキャット、マンノウォーSで2着してきたエドモンブラン賞・ラクープの勝ち馬フラッグダウンも出走してきた。デヴィルヒズデューが単勝オッズ2.4倍の1番人気、タバスコキャットが単勝オッズ3.8倍の2番人気、本馬が単勝オッズ6.4倍の3番人気となった。スタートが切られると、ゴーフォージンとピストルズアンドローゼズの2頭が先頭争いを展開。本馬は馬群の中団後方を進んだ。やがてゴーフォージンが失速していくと、好位につけていたデヴィルヒズデューが入れ代わりに進出を開始。それと同時に本馬も仕掛けて上がっていった。そして本馬は三角から四角にかけて大外を豪快にまくると、直線入り口でデヴィルヒズデューをかわして先頭に立った。後はそのまま直線を押し切るという、前年のベルモントSを髣髴とさせるレースぶりで、2着デヴィルヒズデューに2馬身差をつけて勝利を収め、前年鼻差2着の借りを返した。

その後はチャーチルダウンズ競馬場で行われるBCクラシックに参戦して引退する予定であり、前年最下位にも関わらず前売りオッズで1番人気に推されていた(ホーリーブルが出走回避を表明していた影響もある)。ところがレースの2週間前にチャーチルダウンズ競馬場内の馬房の壁を蹴って右後脚の種子骨を骨折してしまった。生命には別状無かったが、BCクラシックには参戦できるはずもなく、そのまま4歳時7戦3勝で現役引退となった。

この年のエクリプス賞最優秀古馬牡馬の選考においては、オークローンH・カリフォルニアンSとGⅠ競走2勝を挙げたザウィキッドノースに僅か3票及ばず次点だった。

血統

Pleasant Colony His Majesty Ribot Tenerani Bellini
Tofanella
Romanella El Greco
Barbara Burrini
Flower Bowl Alibhai Hyperion
Teresina
Flower Bed Beau Pere
Boudoir
Sun Colony Sunrise Flight Double Jay Balladier
Broomshot
Misty Morn Princequillo
Grey Flight
Colonia URU Cockrullah Nasrullah
Summerleaze
Nalga Guatan
Nagoya
Snuggle Nijinsky Northern Dancer Nearctic Nearco
Lady Angela
Natalma Native Dancer
Almahmoud
Flaming Page Bull Page Bull Lea
Our Page
Flaring Top Menow
Flaming Top
Mirthful Flirt Raise a Native Native Dancer Polynesian
Geisha
Raise You Case Ace
Lady Glory
Glad Rags ハイハット Hyperion
Madonna
Dryad Panorama
Woodside

プレザントコロニーは当馬の項を参照。

母スナッグルは現役成績3戦未勝利。本馬の半姉デヴィルズフラート(父デヴィルズバッグ)は繁殖牝馬として日本に輸入され、オープン特別ジュニアCを勝ったアドバンスヘイローを産んでいる。スナッグルの半兄にはホワッツダット(父ビリーヴイット)【カウディンS(米GⅡ)】が、スナッグルの半姉ミススターク(父ヒズマジェスティ)の子にはスタークサウス【ルイジアナダウンズH(米GⅢ)2回】がいる。スナッグルの母マースフルフラートはゴールデンロッドS(米GⅢ)の勝ち馬で、マースフルフラートの母グラッドラグズは英1000ギニーの勝ち馬。マースフルフラートの半姉ベタービギンの孫にはプリンスオブバーズ【愛2000ギニー(愛GⅠ)】が、マースフルフラートの半姉ハッターズドリームの曾孫にはドリームズギャロア【マザーグースS(米GⅠ)】、玄孫にはシェイクザイードロード【ノーザンダンサーターフS(加GⅠ)】が、マースフルフラートの半妹タープシコーリスト【シープスヘッドベイH(米GⅡ)・ロングアイランドH(米GⅢ)】の孫にはユニオンラグス【ベルモントS(米GⅠ)・シャンペンS(米GⅠ)】、曾孫にはデクレレーションオブウォー【クイーンアンS(英GⅠ)・英国際S(英GⅠ)】が、マースフルフラートの半妹ダンシングラグズの孫にはボールダンシング【ジェニーワイリーS(米GⅠ)】がいる。→牝系:F13号族①

母父ニジンスキーは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬は米国ケンタッキー州ゲインズウェイファームで種牡馬入りした。1998年に新国に輸出される予定だったが、話が流れたために代わりに日本に輸入され、2000年からアロースタッドで種牡馬供用された。しかし日本における供用初年度の交配数は42頭で、2年目は23頭、3年目は10頭、4年目の2003年は27頭と交配数が伸び悩んだ。この2003年にジョン・ベレント氏に購入されて亜国へ移動し、エルパライソ牧場で種牡馬生活を続けた。種牡馬引退後の2013年4月に馬房内で倒れて息を引き取っているのが発見された。死因は心臓発作で、享年23歳だった。産駒のステークスウイナーは21頭(米国内では15頭)であり、それほど成功したとは言えなかったが、亜国ではGⅠ競走勝ち馬も輩出している。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

1996

Boston Party

クイーンズカウンティH(米GⅢ)

1997

Ubiquity

クラークH(米GⅡ)

1998

Bonus Pack

ドミニオンデイH(加GⅢ)

1998

Lakenheath

シルヴァービュレットデイS(米GⅢ)・アーリントンメイトロンH(米GⅢ)

2002

トミノアッフェアー

日高賞(水沢)

2004

Conocedor

ホアキンVゴンザレス大賞(亜GⅠ)

2006

Cafrune

ブエノスアイレス州大賞(亜GⅠ)・7月9日独立記念日賞(亜GⅢ)・クラシコホセデサンマルティン賞(亜GⅢ)

2008

En Motoneta

ビアモンテ賞(亜GⅢ)

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