オース

和名:オース

英名:Oath

1996年生

鹿毛

父:フェアリーキング

母:シアーオダシティー

母父:トロイ

父フェアリーキングが他界したまさにその日にドバイミレニアムを破って英ダービーを優勝した本邦輸入種牡馬

競走成績:2・3歳時に英で走り通算成績7戦3勝2着1回3着1回

誕生からデビュー前まで

マックス・イザベル・モリス夫人により生産された愛国産馬で、1歳時にゴフ社主催のキルデアセールに出品され、サウジアラビアの王族アハメド・ビン・サルマン殿下が創設したザ・サラブレッド・コーポレーション社により45万ギニーで落札された。英国ロジャー・チャールトン調教師に預けられた。

競走生活(2歳時)

2歳6月にグッドウッド競馬場で行われた芝6ハロンの未勝利ステークスで、T・スプラーク騎手を鞍上にデビュー。単勝オッズ7倍の4番人気で、結果は最後方からの追い込み届かず2馬身半差の5着だったが、このレースの勝ち馬マクタリブは翌月のリッチモンドSを制しているし、2着馬コンプトンアドミラルは翌年のエクリプスSを勝利と、レベルの高いレースではあった。

このレース後に本馬はヘンリー・セシル厩舎に転厩し(ザ・サラブレッド・コーポレーション社名義となったのはこの時であるとする資料もある)、主戦にキーレン・ファロン騎手を迎えた。セシル師は本馬を小柄だが美しい馬であると評している。

次走は9月にヤーマウス競馬場で行われた芝7ハロンの未勝利ステークスとなった。後のドバイデューティフリー2着馬イアザールが単勝オッズ2.75倍の1番人気に支持され、本馬は単勝オッズ3.25倍の2番人気だった。ファロン騎手の手綱捌きで好位からそつなくレースを進めたが、ゴール前で左側によれてしまい、勝った単勝オッズ13倍の5番人気馬ヒューストンタイムと2着イアザールの頭差接戦から1馬身3/4差の3着に敗れた。

翌10月にノッティンガム競馬場で行われた芝8ハロンの未勝利ステークスでは、単勝オッズ1.8倍の1番人気に支持された。スタート後3ハロン地点で先頭に立つと、残り3ハロン地点ではいったん先頭を譲るも、残り1ハロン地点で再び先頭に立ち、2着チェルシーバラックスに2馬身半差で勝利。2歳時を3戦1勝の成績で終えた。

競走生活(3歳時)

3歳時は4月にニューベリー競馬場で行われたコンプトン条件S(T10F)から始動。ここではケープグレイスという馬が単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持されており、本馬は単勝オッズ4倍の2番人気での出走となった。ここではスタートから積極的に先行したが、ゴール寸前で単勝オッズ10倍の5番人気馬ルシードに首差捕まって2着に敗れた。

次走は英ダービーのトライアル競走であるリステッド競走ディーS(T10.5F)となった。単勝オッズ3倍の1番人気に支持された本馬は、最初は馬群の中団につけて、残り2ハロン地点で先頭に立つと、ゴール前ではファロン騎手が抑える余裕を見せながら、2着となった後のプリンセスオブウェールズS・ゴードンリチャーズS勝ち馬リトルロックに5馬身差をつけて圧勝した。

当初、本馬は英ダービーでは距離が持たないのではないかという声もあったが、既に引退していたウィリー・カーソン元騎手は、サルマン殿下は(本馬が)英ダービーには理想的な馬であると言ったと語り、ファロン騎手も本馬の進化には満足していると語った。また、管理するセシル師が既に3頭の英ダービー馬(スリップアンカーリファレンスポイントコマンダーインチーフ)を誕生させていた事も手伝って、本馬の評価は上昇し、英ダービーの前売りオッズは15倍まで跳ね上がった。その後の英ダービートライアル競走でこれといった馬が出なかったため、翌週には単勝オッズ7倍となった。

そして迎えた英ダービー(GⅠ・T12F10Y)では、超大物の誉れ高い3戦無敗馬ドバイミレニアムが単勝オッズ6倍の1番人気に支持され、本馬はリングフィールドダービートライアルSを勝ってきたルシードと並んで単勝オッズ7.5倍の2番人気となっていた。この3頭以外の出走馬は、ニューマーケットSを勝ってきたベストオール、愛2000ギニー馬サフロンウォルデン、ブルーリバンドトライアルS勝ち馬でリングフィールドダービートライアルS2着のダリアプール、チェスターヴァーズで1位入線するも進路妨害により4着に降着となっていたレーシングポストトロフィー3着馬ハウスマスター、ダンテSを勝ってきたソルフォードエクスプレス、ギシュ賞を勝ってきたヴァルロワイヤル、ホーリスヒルSの勝ち馬ブランカスター、クレイヴンSの勝ち馬コンプトンアドミラルなどだった。

英ダービーのレース前にはスタンド前で出走各馬の行進が行われるのだが、本馬はスタート前に焦れ込む癖があったため、ファロン騎手は行進の行列から早々に抜け出して本馬を宥めていた(行列を抜け出した事が咎められてレース後にファロン騎手は罰金を課せられた)。

スタートが切られると単勝オッズ34倍の14番人気馬オールザウェイが先頭に立ち、最内枠発走の本馬は隣の2番枠から発走したドバイミレニアムを見るように先行した。途中でドバイミレニアムが下がったために本馬の方が前に出て、道中は逃げるオールザウェイを見る形で5番手辺りを追走した。そのままの位置取りで直線を向くと、すぐ前を走っていたダリアプールの外側に持ち出してスパート。残り2ハロン地点で先頭に立ったダリアプールに残り1ハロン地点で並びかけると、叩き合いをすぐに制し、2着ダリアプールに1馬身3/4差をつけて優勝した。なお、本馬が英ダービーを勝った同日には父フェアリーキングが蹄葉炎のため他界しており、父に手向ける勝利ともなった。

その後、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDSに出走予定だった同馬主同厩の加国際S勝ち馬ロイヤルアンセムが負傷のため同競走を回避する事になり、本馬が代わりに出走する事になった。その前に愛ダービーに出走して仏ダービー馬モンジューと対戦する予定だったが、事前の調教の動きが悪かったために回避し、キングジョージⅥ世&クイーンエリザベスDS(GⅠ・T12F)に直行となった。このレースの出走馬は、仏2000ギニー・エクリプスS・マンノウォーS・コロネーションCとGⅠ競走4勝のデイラミ、プリンセスオブウェールズS・ドバイシーマクラシック・ハードウィックSの勝ち馬フルーツオブラヴ、前年の英セントレジャー勝ち馬でドバイシーマクラシック2着のネダウィ、英セントレジャー・コロネーションC・伊ジョッキークラブ大賞・ジョッキークラブSなどの勝ち馬で一昨年の英ダービー2着の実績もあったシルヴァーペイトリアーク、香港から遠征してきた香港チャンピオンズ&チャターC2回・香港金杯2回・香港国際ヴァーズの勝ち馬インディジェナス、前年の英セントレジャー3着馬サンシャインストリートといった古馬勢が中心で、3歳馬は本馬とダリアプールの2頭だけだった。本馬が単勝オッズ3.25倍の1番人気に支持され、デイラミが単勝オッズ4倍の2番人気、フルーツオブラヴが単勝オッズ5倍の3番人気となった。レースではダリアプールとネダウィが先頭を引っ張り、本馬はデイラミと並んで3番手を追走した。しかし直線に入ってしばらくしたところで突然失速したところを外側からデイラミが一気に突き抜けていった。結局勝ったデイラミから11馬身差をつけられた7着に大敗。ダリアプールが8着最下位で、3歳馬2頭は古馬にまったく先着できなかった。

このレース直後に、本馬は前脚の膝を亀裂骨折していた事が判明。3歳時における復帰は絶望的となってしまった。4歳時の復帰を目指してしばらくは現役登録がされていたが、10月に800万ポンドで優駿スタリオンステーションに購入されて日本で種牡馬入りする事が決定し、そのまま3歳時4戦2勝の成績で現役引退となった。

競走馬としての評価

本馬は第二次世界大戦後最弱の英ダービー馬の1頭に数えられてしまっているようである。3歳時における国際クラシフィケーション(現ワールド・サラブレッド・レースホース・ランキング)では同世代のモンジューより12ポンドも低い123ポンドであり、これは英ダービー馬としては1990年のクエストフォーフェイムと並んで当時最も低い数値だった(その後、これより数値が低い英ダービー馬が複数出た事や、2013年に実施されたワールド・サラブレッド・レースホース・ランキングの見直しにより、現在は最下位ではなくなっている)。

本馬が勝った英ダービーに出走していた馬達のメンバー構成を見る限りでは、それほどレベルが低い英ダービーではなかったはずであり、本馬は弱かったというよりも評価を上昇させる機会を得られなかったというほうが正しいのかもしれない。

血統

Fairy King Northern Dancer Nearctic Nearco Pharos
Nogara
Lady Angela Hyperion
Sister Sarah
Natalma Native Dancer Polynesian
Geisha
Almahmoud Mahmoud
Arbitrator
Fairy Bridge Bold Reason Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Lalun Djeddah
Be Faithful
Special Forli Aristophanes
Trevisa
Thong Nantallah
Rough Shod
Sheer Audacity Troy Petingo Petition Fair Trial
Art Paper
Alcazar Alycidon
Quarterdeck
La Milo Hornbeam Hyperion
Thicket
Pin Prick Pinza
Miss Winston
Miss Upward Alcide Alycidon Donatello
Aurora
Chenille King Salmon
Sweet Aloe
Aiming High Djebe Djebel
Catherine
Annie Oakley Big Game
Annetta

フェアリーキングは当馬の項を参照。

母シアーオダシティーは現役成績4戦未勝利。繁殖牝馬としては優秀で、本馬の半兄ペルダー(父ビーマイゲスト)【伊グランクリテリウム(伊GⅠ)・伊2000ギニー(伊GⅠ)・ガネー賞(仏GⅠ)】も産んでいる。本馬の半妹シアースピリット(父カーリアン)の子にはマニエール【ブランドフォードS(愛GⅡ)・キルボイエステイトS(愛GⅢ)】がいる。シアーオダシティーの半姉にはミスペタード(父ペティンゴ)【リブルスデールS(愛GⅡ)】がおり、ミスペタードの子にはリジュヴェネイト【パークヒルS(英GⅡ)・ムシドラS(英GⅢ)】が、曾孫にはパタヴェリアン【アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)】とエイヴォンブリッジ【アベイドロンシャン賞(仏GⅠ)】の兄弟、それに日本で走ったテンザンセイザ【京都新聞杯(GⅡ)・京阪杯(GⅢ)】が、玄孫にはテイエムオーロラ【府中牝馬S(GⅢ)】とレジェンドロック【はまなす賞・サファイア賞】の姉弟がいる。また、シアーオダシティーの全姉ゲイファンタジーの玄孫には日本でもお馴染みのスノーフェアリー【エリザベス女王杯(日GⅠ)2回・英オークス(英GⅠ)・愛オークス(愛GⅠ)・香港C(香GⅠ)・ジャンロマネ賞(仏GⅠ)・愛チャンピオンS(愛GⅠ)】がいる。日本で天皇賞秋など重賞5勝を挙げたホクトボーイも近親である(シアーオダシティーの母の従姉妹の子がホクトボーイ)。→牝系:F1号族⑥

母父トロイは当馬の項を参照。

競走馬引退後

競走馬を引退した本馬はすぐに来日し、11億4000万円のシンジケートが組まれて優駿スタリオンステーションで種牡馬入りした。種牡馬人気は比較的高く、供用初年度である2000年には72頭の繁殖牝馬を集めた。2年目は85頭、3年目は72頭、4年目は81頭、5年目は61頭、6年目の2005年は43頭の交配数だった。

しかし産駒の成績が振るわなかった(全日本種牡馬ランキングでは2007年の53位が最高)ため、2006年にシンジケートが解散されて愛国に戻っていった。当初は愛国クーラガウンスタッドで種牡馬入りする計画だったが、予定が変更されて2006年10月に愛国キルケニー市で行われたセリに出品され、マーティン・ドノホー氏に購入された。ドノホー氏はインドのマハラジャの代理人ユゴー・メリー氏のそのまた代理人だったため、本馬は2007年からインドで種牡馬生活を送る事になった。

主な産駒一覧

生年

産駒名

勝ち鞍

2001

キョウワハピネス

ファルコンS(GⅢ)

2003

オグリシルク

東海金杯(SPⅠ)

2004

トキノミスオース

ロジータ記念(SⅡ)

2004

ポエラヴァ

ノースクイーンC(H2)

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